転生したら進撃の巨人の世界だった   作:棚町薫の妻

1 / 2
 最近の進撃の巨人の熱さに耐えられずに投稿


転生

 「いやだぁ!離せ!楽園送りなんてあんまりだぁあ!」

 

 「さっさといけエルディア人!それとも巨人の餌になるか?」

 

 

 

 なにが、間違えだったんだろうか。それとも、こうなるべくしてなったんだろうか

 

 

 もしも何かを間違えていたとすれば、それは七年前、いや、生まれた事が間違いだったのかもしれない

 

 

 

 

ー822年ー

 

 その日、エルディア人のある家庭に女の子が産まれた。金髪碧眼で、この地域には多いだろう特に特徴もない子だ

 

 だが、見た目とは裏腹にその精神は到底普通のものでは無かった

 

 

 (この赤ん坊の心情を答えなさいって問題が来たら、転生したら進撃の巨人の世界だった、これで百点だな)

 

 

 

 

ー823年ー

 

 

 

 

 転生してから一年がたったけど、正直まだ慣れないことばっかりだ。何より前と性別が違うしな

 

 

 

 前世で死ぬ前は転生なんか信じちゃいなかったけど実体験するとはなぁ。いや、まだ走馬灯の最中だったり脳だけ生きて何かしらの実験に使われていたりする可能性もないわけではない

 

 でもそればっかり考えてちゃまともな生活なんかできない、そう思っていた

 

 

 

 まぁこれは、ここがまともだったらの話だったんだけどな

 

 

 

 

 

 

 ここが進撃の巨人の世界だと気が付いたのは産まれてすぐだ。エルディア人の紋章を腕に着けているのが見えたからすぐにわかった

 

 最初は大好きな作品の世界に生まれ変わった事に激しく喜んだ。喜び過ぎて両親に心配されるくらいにだ

 

 

 

 だが、その気持ちがなくなるのはすぐだった

 

 

 

 

 前世とは違い、親不孝ではなく親孝行をして生きようと思った。エルディア人だからといって頭が良くても悪いことはないだろう。そんな軽い気持ちだった

 

 俺はすぐにここの言葉を覚え、文字も次第に読めるようになった。勿論前世の俺にそんな器量はないが、赤ん坊の頭ってのはよっぽど柔軟らしくすぐに身についた

 

 

 そしてこっちの世界でも元の世界でも共通の数学が異常に解けた所から、俺の両親はおかしくなった

 

 

 「なぁ、前から思っていたんだが、この子は天才じゃないのか?」

 

 「あ、やっぱりそうかしら?私もそう思ってたのよ!この子は絶対に特別な才能を持っているわ!」

 

 

 

 次の日から一歳の子供に教えるような内容ではない物を学ばされた

 

 でも俺は、その期待に応えたくて望む結果を出してきた 

 

 

 

 

 まだこの頃の両親は、愛があった

 

 

 

ー825年ー

 

 

 三歳になりいくらかが過ぎたある日の夜、俺はトイレに起きた所で父さんの部屋の明かりが灯っているのを見つけた

 

 ただの興味本位だったが、父さんの仕事部屋を見てみたくなった。家では一切そういった話をしてくれない父さんがどんな事をしているのか気になってしまった

 

 

 

 父さんは机で眠っていて、何か書類を見ていたようだった。書類をそっと引き抜いて見ると暗号のようなものが書かれていた

 

 

 前世の俺には無理だが、この世界で元より頭が良くなった俺にはこの書類がなんの目的で作られたもので、どういった内容なのかわかってしまった

 

 

 

 

 

 

 書類の暗号は、エルディア復権派から送られた連絡の物だった

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ジェリア、お前、読んだのか?いや、読めたのか?」

 

 

 

 ここからだ。ここからが間違いだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 翌日に知らない男が家に来て、次々に俺に質問したり書類と同じような暗号解読をさせられた

 

 

 最初は俺を仕事に使う事を批判的だった母さんも、俺が解けば解くほど顔色が変わり、いつからか父さんと同じ顔になった

 

 

 

 

 

ー827年ー

 

 

 「やったぞ!今度の妨害作戦も成功だ!全部お前のおかげだジェリア!」

 

 

 七歳になった頃には復権派のアジトに連れて行かれ同胞達に紹介なんかもされた。そこにはあのダイナとグリシャも居て、その頃には俺の頭はおかしくなっていた

 

 

 

 何人何十人からの期待と、大好きな作品に自分が入っているという陶酔感に酔いしれて、これが俺の転生した理由だと思い続けた

 

 

 

 

 本気でやれば出来たはずだ。ジークの摘発の阻止も、この国の中で全てを変えてしまうことも

 

 だが、心の何処かで勝手にブレーキは踏まれていたようで、俺は全てを成し遂げていないのにどうにかなると謎の自信を持っていた

 

 結局俺は、原作を大きく変える事を恐れた、ただの臆病者だったわけだ

 

 

 

 

 

ー831年ー

 

 

 

 自らジークに接触してエルディア人がどれだけ民を救ってきたのか、どれだけ富を築き上げて来たのか。それを踏みつけ躙り過去の歴史を不当に変えた憎きマーレに、体験したこともない恨み辛みを言い続け、この作戦が成功した暁にはどんな楽園が広がっているかを話して納得させたかと思いこんでいた

 

 だが流石は驚異の子。俺はただ彼の演技に騙されていただけだったようだ

 

 

 

 

ー832年ー

 

 

 そして歴史通りにジークは密告をした

 

 

 勝手に抑え込んだと思っていた俺には予想外だったし、それを知りもしない他の奴らはもっと驚いただろう

 

 元の進撃の巨人の世界とは違って、このエルディア復権派は上手くやっている。全てが俺のおかげだったとは言わないが、大きな影響を与えただろう

 

 存在は伝わっていただろうが、尻尾は見せずになんとかやってのけてきた

 

 

 この密告が歴史による修正力なのか、俺の努力不足だったのか、それともここで歴史を変えてしまうとエレンが生まれなくなる事によるフクロウの妨害なのか

 

 

 何が原因だったかはわからない。だがこれが、俺の間違い。多すぎて何がなんやらわからないくらいだ

 

 こう考えているのもただの現実逃避だ。だってこんなの受け入れられないじゃないか

 

 

 

 

 

 「へへっ、中々イイ締め付けじゃねぇか。顔も良いし、これでエルディア人じゃなきゃなあ」

 

 

 等間隔に叩きつけられるような音と一緒に水音がする

 

 

 

 「おい!バレたらどおすんだよ!エルディア人となんて…」

 

 「バレなきゃいいだろうがよ!それに、どうせこいつはこれから楽園送りだ。誰も文句は言わねぇよ」

 

 

 

 前世じゃ童貞だったんだけどなぁ。先に処女が失われるなんて、思ってもいなかった

 

 

 「ップ、フハ、アハハハハハハ!」

 

 

 そんな事を考えていたら、自然に笑いが込み上げてきた。自分で考えたギャグが面白かったんだろう

 

 

 

 「チッ!この女イカれやがった!こっちに集中しろ、締りが悪くなるだろうが、よぉ!」

 

 

 

 ドゴッ、と音がするほど顔を強く殴られる。どうやらこいつのお気に入りのヤリ方らしい。どうでもいいけど

 

 

 今はただただ笑っていたかった。男として、いや女としての尊厳の喪失に。自分の思い込みの激しさに。何より、こんな残酷な世界に生まれてしまった事に

 

 

 「ウ、ハハハハッ!ヒィッー!ヒイッー!っく、ふひ、くふぅ、ヒャハハハゔぁ」

 

 

 「うるせぇんだよ!黙ってろ!」

 

 

 今度は首を締められる。それでも笑いは途絶えなかった

 

 

 

 

 

 

 

 

 「起きろ、立て」

 

 

 気がつくと船はもうパラディ島の港に着いていた

 

 

 

 

 

 「ッ!ジェリア!お前の、お前のせいで、お前があの暗号を間違えたんだろ!そうじゃなかったらこんなことにはならなかったのに!」

 

 「そうよ!貴女のせいよ!こんな、こんな、あともう少しだったのにィイ!」

 

 

 

 外に出ると早速罵倒をもらった。顔が腫れて視界が悪くなって誰に言われているのかわからないが酷い言い草だ

 

 ジークに摘発された事を知らされていないんだろうか。それとも誰かに罪を着せないと頭がおかしくなりそうなのか

 

 

 まあどっちでもいいや。もう終わる事だ

 

 

 

 

 

 「座れ」

 

 

 縁に座らされてぼんやりと考える。何が間違えたんだろかと

 

 

「いやだぁ!離せ!楽園送りなんてあんまりだぁあ!」

 

 「さっさといけエルディア人!それとも巨人の餌になるか?」

 

 

 

 なにが、間違えだったんだろうか。それとも、こうなるべくしてなったんだろうか

 

 

 もしも何かを間違えていたとすれば、それは七年前、いや、生まれた事が間違いだったのかもしれない

 

 

 

 周りの視線、期待、空気を読む、全てが前世じゃ大っきらいな物だった。だけど俺はそれに逆らえなかった

 

 だから、だから今度の生ではそれに負けずに、自分の意思で生きたいとそう思っていたのに

 

 

 

 

 

 自由だ

 

 

 

 

 俺は自由が欲しい

 

 

 

 

 

 エレンや始祖ユミルのような崇高な意味での自由じゃない

 

 

 自分の、弱い自分の気持ちを殺して檻を破壊した先にある、誰もが普通に持っている自由が欲しい

 

 

 でもこんな事はもう考えなくてもいい

 

 

 

 「打て」

 

 

 

 

 

 これもある意味自由、なのかもな

 

 

 

 

 

 

 カッ、と雷のような光を放って俺という存在は死んだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 はずだった

 

 

 

 

 

 

 

 「ギャハハハハ!あの巨人、巨人の癖に小さいなぁ!2メートル行ってないんじゃないか!?ハハハハ!」

 

 

 「ははっ、巨人の中の小人。小人の巨人って所か?人に間違えられて食われるんじゃないのか?ははははっ!」

 

 

 

 懐かしいあだ名だ。前世で呼ばれたあだ名が聞こえた

 

 

 巨人になった後はずっと悪夢を見ると言う。それかと思ったが違うようだ

 

 俺は、俺はまだ自由じゃなかった

 

 

 

 

 

ー833年ー

 

 

 

 ずっと歩いている。夜が来たら座り、日が昇れば歩く。どこへ?壁に向かってだ

 

 

 

 

 最悪な事に、巨人化した後も俺の意識は消えなかった。これは俺の、何もせずに周りに流された俺への罰なんだろうか

 

 もしそうならもう罰なんて与えてくれなくて良い。もう十分理解したし今後二度と間違わないだろうという自身がある

 

 

 

 だから早く自由(殺して)になりたい

 

 

 

 

ー834年ー

 

 

 最近の趣味は野生生物の鑑賞だ。この体の便利な所は野生生物があんまりビビらずに目の前まで近づいてくれる所だろう

 

 この辺が何処なのか知らないが森がだいぶ多くなって鹿やら猪やらリスやらが居て見ててとても楽しい

 

 

 唯一の欠点は、自分の体を動かせないところだろう

 

 

 

ー835年ー

 

 

 なんだか意識が飛んでいることが多くなった。でもたまに夢を見れるから良い

 

 もしもこの意識が完全に飛んだら俺が終わるってんならもっと良い。動物鑑賞も飽きてきた事だし早く終わらせてくれ

 

 

 

 

 

 

ー836年ー

 

 

 

 

 そう言えばエレンやミカサ達はもう産まれたかな?時間がわからないから今が何年なのかもわからない

 

 

 もしもう産まれてるなら早く殺しに来て欲しい。早くエレン(自由)に会いたい

 

 

 

 

ー837年ー

 

 

 言葉にするものはない

 

 

 

ー838年ー

 

 

 

 この前不思議な夢を見た。ずっと砂漠で座っている夢だ

 

 その夢を見ている時は、とても気分が良かった

 

 

 

ー839年ー

 

 

 

 死にたい

 

 

 死にたい死にたい

 

 

 

 死にたい死にたい死にたい

 

 

 

 

 

 死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい

 

 

 

 

ー840年ー

 

 

 

 不思議な夢を見る事が多くなり、意識が戻ることが少なくなった

 

 

 そういえばこの前不思議な夢に女の子が出て来た

 

 

 

 

 

ー841年ー

 

 

 

 不思議な夢の中で女の子が手が届く位近くに来た。目が、というか顔が死んでいるように無表情で怖かった

 

 

 

 

 

ー842年ー

 

 

 

 違った。無表情のように見えるけどあれは怒っているんだ。誰に?何に?これは俺が見ている幻覚なのか?

 

 俺の心の体現だとしたら随分可愛らしい心だ

 

 

 

 もう殆ど夢から覚めていない

 

 

 

 

 

 

 

ー843年ー

 

 

 ほぼ夢から覚めずに女の子の怒り顔を見ていたら、何だかこっちまでムカムカしてきた

 

 一度何に怒っているの?と聞いたが、チラ見されて無視された。悲しくなったが、それよりも苛つきが大きくなった

 

 

 

 もう夢からは当分覚めていない

 

 

 

 

 

 

ー844年ー

 

 

 やることも無いしずっと何に怒っているのかを聞き続けた。付き纏い360度色々な方向から聞き続けた

 

 そうしたら流石にキレたのか俺を押し倒してきた。こんなちっちゃな女の子に力負けするとは思っていなかった

 

 

 殴られるのかと思ったら、女の子は砂をかけてきた。でも悪意がある感じのかけかたじゃない

 

 顔も、いつもみたいに怒っている顔じゃない。何というか、困惑している顔?

 

 

 

 

 されるがままになってみると全身くまなく砂をかけている。でも大量にではなく、全身に少しづつかかるくらいに

 

 

 何をしているのか聞いたら、音がなった

 

 

 

 

 分厚い何かが壊れたような音が

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー845年ー

 

 

 

 巨大な音と共に、目が覚めた。ぼんやりと目を開くと目の前には白一色だ

 

 いや、これは、壁だ。とてつもなくデカイ壁

 

 

 

 というか、なんで俺はこんな所に?さっきまで道で歩いていたのに

 

 

 

 ドスン、と重機のような重い音が後ろでした

 

 

 振り返ると、そこには何やら笑みを浮かべている生物、いやこれは

 

 

 

 

 

 巨人だ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。