転生したら進撃の巨人の世界だった   作:棚町薫の妻

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 失踪します


記憶の喪失

 

 

 

 「そういやそろそろ着く頃かなぁ」

 

 「えっと、戦士達のことですか?」

 

 

 「いやぁ、それもあるけどね」

 

 「はぁ……?」

 

 

 

 (俺の初恋相手とか、ね)

 

 

 

ー845年ーシガンシナ区

 

 

 突如現れた壁をも越える巨体な巨人が、壁の門を蹴り破壊し、百年間平穏だった壁内を一瞬にして地獄へと変えた

 

 

 これをもって人類に変化が訪れる

 

 復讐を決意するもの

 

 戦士の使命を果たすもの

 

 そして、永き眠りから目覚めた異物

 

 

 異物を組み込んだこの世界がどう変化するのか、それは誰にもわからない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「うわあああああああぁ!」

 

 久し振りに声を出した気がする、そんな場違いな考えをしながらひた走る

 

 そういや体を動かすのも久し振りだ。ってそんな事を考えてる場合じゃない!なんだここ?なんなんだここは!?

 

 

 俺の名前は、名前はちょっとわかんないや。じゃあ何人だ?多分日本人だ

 

 そうだ。日本人で、そんで進撃の巨人を読んでいることは分かる。そして推定ここはその世界だ

 

 

 いや、何回考えてもそこがわからない!何で進撃の巨人の世界に?これが流行りの転生物なのか!?だったらせめて壁内にしてくれよ!

 

 転生じゃなくて転移物か?それにしても色々と疑問があるけど、まず何でこんなに足が速いんだ?

 

 

 いや、それは巨人から逃げるのにはありがたいことだから感謝しておこう。取り敢えず逃げなくては

 

 どこへ?もちろん、周りは巨人だらけだから、壁内にだ!

 

 

 

 

 

 

 

 壊された門から壁内へ入るとそこは阿鼻叫喚の地獄だった。至る所に巨人がおり、人間を捕まえて喰っている

 

 ちらほらと立体起動装置で戦っている者もいるけど、倒せずにやられている方が多い

 

 

 この中にエレンの家を襲っている巨人も居るんだろうけど、悪いが今は人の事を気にしてられない

 

 

 確かこの時は調査兵団達主力メンバーは遠征で壁外にでているんだっけか。でもその帰りを待って待機なんて考えられないし、助かるかもわからない

 

 

 まだウォールローゼの門は閉まっていない。確かエレン達はそれまでに門を通って、船に乗るんだったと思う。取り敢えず落ち着けるまでは疑問は全部忘れろ!

 

 

 走る、走る。たまに建物に隠れながら走り続ける。悲鳴が聞こえるけど全部無視しろ

 

 

 やめろ、そんな目で見るな。俺に助けを求めるような目は、ん?いや、助けを求めるような目じゃない

 

 

 まるで怯えてるような目だ。なぜ?

 

 

 

 そこで今の俺の姿に気が付いた。裸だ

 

 だがただの裸じゃない。なかった

 

 

 

 

 俺の竿と玉がなくなっていた

 

 

 

 

 

 

 

 いや、混乱しすぎておかしくなりそうだけど息子の事は今はいいや。うん、置いておこう

 

 そうしないと頭がパンクしそうだ。今はタダハシロウ

 

 

 

 

 

 

 走り続けてやっと門が見えて、簡単な防壁を作っている兵士たちが見えてきた

 

 間に合った。鎧に破壊される前に入ってしまえば助かる目処があるはずだ

 

 

 

 「止まれ!お、お前は人間か!?」

 

 

 

 そういって兵士、おそらく駐屯兵団の人達が銃を向けてきた

 

 最初は後に巨人でもいるのかと思ったが、居ない上に質問の仕方がおかしかった

 

 

 巨人と確信しているならこんな事は聞かずに撃つはずだ。ならこの質問は

 

 

 

 「お前だ!お前に言っているんだ!!そこの黒髪おと、男!?わからんがお前だ!」

 

 

 次はバッチリと目があった。この銃は俺に向けられている

 

 

 「に、人間です!」

 

 「そ、そうか!紛らわしい格好しやがって、早くこっちに来い!」

 

 

 意図せずエレンと同じ台詞が出てしまった。それにしても、何故巨人に間違えられるのかと思ったら、息子がないから小さい巨人かと思われたのか?

 

 

 「おい!こいつに腰に巻けるようなものをくれてやれ!」

 

 なにやら布をくれた。これで巨人に間違えられることはないだろう

 

 

 「早く行け!まだ船はあるはずだ!」

 

 「はい!ありがとうございます!」

 

 

 無駄話なんてしている暇ではない。もうすぐ鎧がここの門を破壊するんだ

 

 でもこの人達は?今、たったの一瞬だけだけど優しくしてくれたこの人達は、どうなる?

 

 

 

 「早く行けぇ!死にたいのかぁあ!走れガキィイ!!!」

 

 

 震えている

 

 

 俺よりも大の大人達が、震えながらそこに立っている

 

 怖いはずだ。いつ巨人が来るか、自分達に倒せるのか、なんで俺達が、そう思っているこの人達が震えながら俺を生かそうとしている

 

 

 俺はこの人達に、逃げてと言えなかった。震えながらも覚悟を決めた彼等に、そんな侮辱する様な事は言えなかった

 

 走った。後ろを振り返らずに走った。大きな音が後ろからしても振り返らずに走った

 

 

 

 気がつけば定期便に辿り着いて、そこでようやく後ろを振り返った

 

 

 

 鎧の巨人はすでに居なかったが、ウォールマリアが突破された証とばかりに無垢の巨人達がうろついている

 

 あそこにいた人達は殆ど死んだだろう

 

 俺が言わなかったからだ。俺が言えば、信じられなかったかもしれないが死人は減ったかもしれない

 

 

 

 

 

 

 

 でも、それで生き延びてもあの人達は自由だっただろうか

 

 弱い自分を圧し殺して覚悟を決め、ここで死ぬ覚悟を、心臓を捧げる覚悟を無下にして彼らは自由と言えたんだろうか

 

 

 

 俺は、俺は

 

 

 

 

 「駆逐してやる!!」

 

 

 

 

 俺はそこで

 

 

 

 

 

 

 「この世から…一匹…残らず!!」

 

 

 

 

 

 

 自由を見た

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「そうかそうか、記憶喪失か。まあ困ったときゃ助け合いだ。記憶が戻るまで家に居たらえぇ」

 

 記憶喪失として引き取られた先は気の良い白髪の爺さんとその孫娘がいる開拓地だった。事実俺には記憶、エピソード記憶というものが一切なかった

 

 知識だけ存在して、それをどう学んだかの記憶がない。だが『進撃の巨人』という作品があった世界にいた以上、俺は転生か転移をしてきたのは間違いがない

 

 

 「自分で言うのも何ですけど、よくこんな変なやつを受け入れてくれましたね」

 

 「なぁに!お前さんは年のわりにゃあガタイがええし働き手として期待してんだからよぉ!逆にワシを恨むかもな、カッカッカ!」

 

 

 こんな事を言っているが、この爺さんは底無しのお人好しだ。ただでさえ貧困の酷い開拓地で普通子供一人を受け入れられる余裕なんてないはずだ

 

 だけどこの人は助けてくれた。この恩は労働で返すことにしよう

 

 

 

ー846年ー

 

 

 この一年で随分いろいろなことが分かってきた

 

 まず一番重要なことだが、俺は巨人だ。無垢なのか9つの巨人なのかはわからないが、とにかくこの体は巨人の体だ

 

 畑作業で手に傷がついたときに蒸気を上げながら治っていくのを見て気が付いた

 

 

 

 だが謎な事が多い。なぜ巨人になったのか、なぜこんなにも小さい巨人なのか、なぜ一年間も巨人の体を維持できているのか

 

 謎は多いが利点はある。深い傷じゃなきゃ死ぬことは無いし、おそらくアッカーマンと同じもしくはそれを上回る力や体力や素早さがある

 とにかく素早さが上なのはこの世界に転生(?)してきた時にわかっている。あの巨人から逃げた時は馬よりも速かったかもな

 

 これがわかった時に息子は死んだ訳ではなかったとわかって安心した

 

 

 だが次で躓いた。俺はこの体から出ることができない

 

 

 

 巨人とわかった日の夜にこそこそと人気のない所でこの体から出ようと思ったが、まるでへばりついたガムのように剥がれなかった

 

 ここでわかった事は、俺は無垢の巨人ではなく知性のある巨人だという事。剥がれはしなかったが、確かに中の体がある事が確認できた

 

 まだ時間はある。少しづつ進めていこう

 

 

 

 「おぉ〜い!お前さん働きすぎだぁ!ちょっと休憩しようやぁ〜!」

 

 

 遠くで爺さんが声を掛けてくる。日の傾き具合を見ればもう昼過ぎだ

 

 

 

 「いやぁ〜お前さんは働きすぎだて。これ以上畑が広がったらワシじゃ管理しきれんて」

 

 「なら俺が全部やるよ。爺さんはゆっくり休んでなよ」

 

 「そういうわけにもいかんよ。若いものにばっかり任せちゃおけん。アウラからも何とか言ってやってくれや」

 

 「えぇ!?わ、私?」

 

 こいつは爺さんの孫娘のアウラ、とても地味だで周りの目を常に見ていて空気を読もうとする、居るだけで苛つくやつだ

 

 「わ、わかんないよぉそんなのぉ」

 

 そして周りの意見がどちらかに偏ってないと答えが出せない。見ても居ても苛つく才能を持っている、ある意味で天才だ

 

 本当にこの行動力のある爺さんと同じ血が通っているのか、実はこいつも爺さんが拾った子だったり。まあどうでもいいや

 

 

 そうだそうだ、俺の体のことだった。何よりも驚いたのは自分が巨人だったことだが、次に驚いたのは

 

 

 「うむ、今日の飯も美味いのアウラ。お前さんは良い嫁になりそうやなぁ」

 

 「い、いやぁそんな。褒め過ぎだっておじいちゃん」

 

 

 「……うまい」

 

 

 「えっ、あ、あ、あ、あり、がとう」

 

 

 

 この巨人の体は飯が食える。これは驚きだった

 多分だけど、他の巨人、例えば車力の巨人は何ヶ月も巨人の体でいられるが、その間の本体へのエネルギーはどうなっているのだろうか

 

 これは仮説程度のものだが、他の巨人はあの巨体を少しづつ消費して本体にエネルギーを与えていて、車力はその効率が良いから何ヶ月も巨人化していられるんだろう

 

 たが俺の巨人は違う。他の巨人と違って小さい俺の体はそんな何ヶ月も耐えれる程の肉は無いしエネルギー効率もよくはないだろう

 

 だから飯を食えるような構造になっているんだろう。恐らく本体とこの体の食道は繋がっていて、この体で食えば栄養になる、んだと思う

 

 それが俺の考えた俺の構造だ。これ以上はハンジさんとかに解剖してもらうしかない。絶対嫌だけど

 

 

 ‥それにしてもうまいな。人を苛つかせるのと飯を作る才能だけは認めよう

 

 

 

 「えへ、へ」

 

 

 

 

 「あ、そうだ爺さん。俺、来年の訓練兵に参加する。そんで兵士になるんだ」

 

 「……………ぇ」

 

 「お前さんもしかして、ここんところ畑広げてたんは」

 

 

 「あぁ、俺が居なくなっても二人でやっていけるようにな。維持できなかったら作物だけ取って出来る範囲でやってくれれば、あいつ等に納めた後も少しは貯蓄できるだろ」

 

 

 「記憶はどうするんや?まだ戻ってないやろ」

 

 

 「そっちの方は、わからんけど。多分ここでじっとしてるよりは動いた方がいいだろうし、なにより俺は外の世界を見てみたい」

 

 すまんエレン。言い訳にお前の言葉を使うことを許してくれ

 

 

 「お前さんまさか、調査兵団に入るつもりかえ?」

 

 「ッ!?や、やだ!そ、そんなのダメぇっ!!」

 

 

 俺が調査兵団に入ると知った瞬間、初めて聞く大声でアウラが叫んだ

 

 

 「そんなの、駄目!絶対、絶対行かせない!やだ、やだよ、死んじゃやだよぉお父さん!」

 

 

 「落ち着くんじゃアウラ。ほら、こっちきんしゃい」

 

 

 

 爺さんがアウラを抱き締めて、大丈夫大丈夫と何度も言って小屋へ連れて行った

 

 

 2、30分ほどすると爺さんだけ出てきて、少し話をしようと言ってきた

 

 

 「あん子の父親、ワシの息子はのぉ、調査兵団だったんや。いっつも門の近くで帰りを待っててのぉ、父親を見つけるといの一番に駆け寄ってたものよ」

 

 「もしかしてその父親って…」

 

 「あぁ、ある日にな、仲間ぁ庇って死んだらしくてな。おめぇの子のことを忘れてぽっくり逝っちまっただ」

 

 「なるほどな。だからあんなに調査兵団って言葉に敏感な訳か」

 

 「それだけじゃねぇ。父親くらいならまだあん子はまだでーじょぶだったかも知んねぇ。

 

 父親が逝ってすぐ後にこの間の巨人騒ぎだ。あん時に母親とワシの嫁さんまで逝っちまってなぁ。なぁんでこげな爺が生き残っとるんじゃろかねぇ」

 

 

 爺さんとアウラだけだから、そういった事なんだろうとは思っていたが、父親が死んだ後すぐに母親と祖母まで死んだのか

 

 それであんな感じの性格になってしまったのか。今まで少し酷い態度を取りすぎたかな

 

 

 「いや、あん子が内気なんは元からやて!」

 

 「元からかよ!」

 

 

 カッカッカと不思議な笑い方をする爺さんを横目に考える

 

 話を聞いて可哀想だとは思ったが、それでもずっとここにいるわけにはいかない。俺にだってやりたい事はあるし、寿命の件だってある

 

 

 

 「悪いけどよ爺さん。俺はずっとここに居るつもりはねぇ。俺はやりたい事が、なしとげなきゃいけない事があるんだ」

 

 

 

 「…そういう所に惹かれたんやろなぁ」

 

 爺さんは何か小声で言うと眩しそうな目をして俺を見てきた

 

 

 「ワシは止めんし、アウラにも止めさせねぇ。お前さんは自由な道で生きんしゃい。そんで孫でも出来たら顔見せてくりゃ、この老いぼれは満足よ」

 

 

 ありがとう、爺さん。でもな

 

 

 「俺、竿も玉も無いんだわ」

 

 

 

 そう言うと爺さんは思い出して、またカッカッカと不思議な笑い方をした

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「私も、私も兵士になる」

 

 翌日、アウラが顔を合わせるなりそう言ってきた。確かに俺は止められなくなったが、逆にこいつも止められなかったみたいだ

 

 

 「…爺さんは、いいのか?孫を自ら死なせに行くような真似をして」

 

 「昨日話し合ったことや。ワシからはもう何も言うこたぁねぇ。長く生きても短く生きても好きなこたぁやってるほうがえぇ」

 

 そうか。爺さんはそういう答えが出たんだな。息子とその嫁と自分の妻を殺した原因に、孫娘が向かう事を覚悟したんだ。弱い自分を圧し殺して出した結果だ

 

 なら、俺から爺さんに言うことはない

 

 けど

 

 

 「お前は、何の為に兵士になる?」

 

 「…えっ?」

 

 「何かしたくて兵士になるんだ?それを決めろ。もし俺を、父親や母親の様にしたくないって陳腐な考えならそれを改めろ」

 

 「そういう、わけじゃ」

 

 「これが当たってるとか当たってないとかはどっちでも良い、勝手な妄想だ。だけど、自分の為になる理由を一つ作って、必ずそれを成し遂げたいと思え。

 人っていうのは何かに酔っていないとやっていけない、そう誰かが言ってた」

 

 「私は、その…」

 

 「別に今決めなくても良い。だが、来年までに必ず決めろ。そうじゃなきゃ無理やりにでも置いていく」

 

 

 そう言い畑作業に向かうと、その日はそれから一言も話さなかった

 

 

 

 

 

 

 そして厳しい冬を越え、春風が来た辺りでようやくアウラは答えを出した

 

 

 

 

ー847ー

 

 

 「貴様は何者だ!!」

 

 ついにこの日がやって来た

 

 周りを見渡すとアニ、ベルトルト、ライナーの戦士三人に加えユミルまでいるから最後まで疑問だった9つの巨人の誰かを喰ったのか、と言うのが解消された

 

 

 転生特典とやらなのかわからないが、精々上手く使わせてもらおう

 

 

 

 『お前さん、名前はてめぇで決めとったが、名字はどうするんや?』

 

 『もし決めてないようなら、ワシ等の名字を貰ってくれんかの?孫娘以外助けられんかったボンクラの名字でも良ければやがのぉ』

 

 『そぉかそぉか。ならお前さんの名前は…』

 

 

 

 「貴様は何者だ!!」

 

 「出身区不明、ジェイル・ブレイズンです!」

 

 

 

 




 誰にもわからない、そう、この作者にすらな
 作者の目を持ってしても見通せぬとは…
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