実際に私も苦労したポイントですし。
フォーサイドの劇場でトンブラを救ったネス達は、彼らのトポロ・ラストライブを見送った後でホテルに泊まり、フォーサイドでの2回目の夜を過ごした。 そして、翌日。
「わぁ、やっぱりいろんなものが売ってるね」
「これは、色々目移りしちゃうわ」
「ここを歩いているだけでも、楽しくなるなぁ」
フォーサイドでもっとも大きなデパートに、3人は買い物をするために訪れていた。 このデパートで買い物をすれば、今後の冒険の準備もできるし、長い旅の息抜きも出来る。
「よし、思い切りお買い物しちゃおう!」
ネスの言葉にジェフもポーラも同意し、3人で一緒にデパートの中を探検していた。 途中で新しいバットやフライパン、季節に会わせた服、なにかあったときのための薬。 装備品として使えるアイテムや、ジェフになら使いこなせそうなちょっと危ない道具や、彼なら直せるかもしれない壊れた備品なども入手できた。
「特にジェフが楽しんでない? 今回のお買い物……」
「確かに……」
ご満悦で購入した道具を鞄に入れているジェフをみて、ネスとポーラは密かにそうツッコミを入れたのだった。 そうして買い物を一通り終えた彼らは、ファストフード店へいきポテトやバーガーを食べようとしていた。
「あ、そうだ」
「どうしたの、ネス?」
注文していた物が運ばれるまでの間のこと。 ネスはふとあることを思い出した。
「ボク、買い忘れた物があったんだ! ちょっと買ってくるね!」
「一緒にいこうか?」
「大丈夫、すぐに戻るから! ここで待ってて!」
そう、ネスはポーラとジェフに言い残して、買い忘れた物を買いに行った。
「どうしたのかしら、ネス?」
「さぁ?」
立ち去っていったネスに対し、2人は首を傾げた。
そうして数分後、ネスは目当てのものを購入できたことを報告した後で、ジェフとポーラと共に、ハンバーガーやポテトを食べてコーラを飲んで、3人での昼食を堪能したのだった。
昼食も無事に終え、ネス達は買い物も十分に済んだという事でデパートを出てどこかへ行こうかと相談をしていた。
「次はどこへ行く?」
「うーん、いまおもえば、このフォーサイドで、なにかあったんだっけ」
「ああ……そういえば、その辺調べてないな……」
そこでネス達は、フォーサイドにもギーグの手がおよんでいるかもしれないことを思い出す。 唯一気になる情報と言えば、短期間でこのフォーサイドの街を思うがままにするほどの権力を得たというモノトリーなる人物のことだ。
どこから手を着けるべきか考えていたとき、ネスはふとあることを思いついた。
「そうだ、ジェフにポーラ」
「どうしたの、ネス?」
「実はボク、さっきよさそうな物を見つけたんだ」
そういってネスは、昼食の時に抜け出して買いに行ったというものを、2人に見せた。 それは、赤と白と青の、ボーダーのリストバンドだった。
「リストバンド?」
「それも、4つ?」
「ボク達3人と、いつか仲間になる子の分も含めて買ってみたんだけど、これを今からボク達でわけあって、お揃いでつけてみようよ」
「わぁ、なにそれすてき! 楽しみだわ!」
「それは、なんだかおもしろそうだね」
「でしょ!」
自分達と、後に合流するであろう4人目の仲間で、お揃いのリストバンドをつけてみたい。 ネスは3人でこれを売られてる場所を通ったとにこれを見かけ、以来ずっとそう思っていたのだ。
そんなネスの思いに共感する一方で、ジェフは呆れたように言った。
「でも、それだったら一緒に歩いているときに言ってくれればよかったじゃないか」
「あ……あはははは……」
ジェフが言うのもごもっともだが、ネスはそれにたいしては苦笑で返すしかなかった。 まさか自分がそんな願望を抱いていたなど、正直照れくさいのだ。
「もう、ネスってば……」
そんなネスの気持ちを感じ取ったポーラは、クスクス笑った。 そして、早速そのリストバンドを3人でわけあって、つけようとした、そのときだった。
「わっ!?」
「なに!?」
「て、停電!?」
突然デパートの中が暗くなった。元々の明かりはおろか、非常電源や外からの光もないその空間に、ネス達は驚き戸惑う。
「きゃああッ!」
「ポーラッ!?」
突如、暗闇の中からポーラの悲鳴が聞こえてきた。 その悲鳴の真意を確かめるべく、ネスはポーラの名前を大声で呼ぶ。
「ポーラ! どこだ、ポーラァ!」
ネスは必死にポーラの名前を呼ぶが、返事はない。 そこでジェフはなんとかバッグから小型の懐中電灯を取り出し、周囲を照らす。 そうしてネスとジェフは互いの姿をなんとか視界に入れることができたものの、ポーラの姿はどこにもなかった。
さっきの悲鳴からして、彼女は何者かに連れ去られてしまったのだと推測できる。 ポーラの行方を心配するネスとジェフの耳に、デパートのアナウンスが入ってくる。
「なんだ?!」
「お呼び出しを申し上げます。 オネットからお越しのネス様……お友達のポーラ様が、4階の事務所でお待ちです……クケッ」
「なんだって!?」
ポーラを連れ去った犯人は、4階にいる。 罠かもしれないが、その罠ごと壊して突き進むしかないと知ったネス達は、彼女を助けるために意を決する。
「いこう、ジェフ!」
「ああ! もちろんだ!」
ネスとジェフは、迷いなく4階にあるという事務所に向かったのだった。 道中で店にあったようなレコードやカップが襲いかかってきたものの、ネス達はそれらとも全力で戦い退ける。
そうしてデパートを上へ上へと進んでいくと、突然アナウンスが響きわたった。
「ネス様。 ネス様。 クケックケックケ……お早く、ポーラ様のところに、お急ぎください……クケクケクケクケ……」
「くそ、ふざけたまねをするな!」
そのアナウンスは、まるでネス達を煽っているかのようだった。 そして、そんなネス達の行く手を阻むかのように、敵が襲いかかってくる。 敵を倒して進むとまた、ネス達を煽るようなアナウンスが響く。
「ジェフ、手を抜かなくていいからね」
「もちろんだ、ハナからそんなつもりはないよ」
ネスとジェフはそのたびに、怒りのボルテージを上げていった。 そして、それを解放する相手はすでに決めている。 それを示すように、ネス達は4階の事務室の扉を開け、そこにいた怪物に向かって言う。
「お前が、ポーラをさらったんだな……」
「クケックケクック……よく、ここまでたどり着いたな」
目玉がみっつついた、無数の触手をはやした、奇妙な怪物だった。 デパートの怪人というべきその存在は、ネス達の殺意に呼応するかのように、殺意を向けてくる。
「このデパートが、お前達の墓場になるんだ! クケッ!! しねぇ!!」
「ここで死ぬのは、お前だ!」
ネスはそういいきると、バットをふるい怪人に攻撃をする。 その一撃を触手で受け止めた怪人はそのままネスを投げ飛ばすが、ネスは壁をうまく蹴ってダメージを軽減させる。 そんなネスに怪人が追撃を食らわせようとすると、ジェフがペンシルロケットを放って怪人に大ダメージを与える。
「いまだ、ネス!」
「ああ!」
それによりうまれたスキを、ネスは逃さない。 ジェフの声に答えて動き出したネスは、バットを大きく振り回し、スマッシュヒットを決めた。 その一撃をもろにうけた怪人は、壁に強くたたきつけられる。
「さぁ、はけ! お前、ポーラをどこに連れて行った! ポーラを返せ!」
「……クケクケクケクック……!」
「なにがおかしいんだ!」
もう動けない怪人は、気味の悪い笑い声をあげた。 それにたいしネスが怒鳴ると、怪人は最期の言葉をネスに向ける。
「おれを倒しても……クッ、ギーグ様の……いまごろ、ポーラはモノトリーの……グゲッ……!」
そう言い残し、デパートの怪人は塵となって消滅した。 それと同時にデパートも停電の状態から回復する。 デパートの中にいた人達も、停電していたことは知っていたが、なにが起きていたのかはいっさいわかっていない様子だった。 だが、ネスとジェフの心はまだはれなかった。 本来助けるべき仲間が、ここにいなかった…つまり、まだ助けられていないからだ。
「……ポーラ……!」
ネスは、どこかへ連れ去られたポーラの身をただ心配していた。 その手に、ポーラの分のリストバンドを握りしめながら。
ポーラはモノトリーに連れ去られてしまったらしい。 彼女を連れ戻すには、モノトリーのいるモノトリービルに行くしかない。 だが、このビルは関係者以外立ち入り禁止だというのだ。 ネス達も乗り込もうとしたものの、やはり子どもと言うだけあってあっという間に追い出されてしまった。
「まさか、ポーキーが関わっていたなんて……」
「ネス……」
そのとき、ネスはある意味で変わり果ててしまったと言うべきであろう、お隣さんだったポーキーと遭遇した。 ポーキーはいまや、モノトリーの右腕にまでなってしまったのだという。 ネスを貧乏人扱いし、自分こそが偉いのだといってネスとジェフをその部屋から追い出してしまった。 途中でポーキーの父にも遭遇したのだが、その父も息子の権力にすっかりおぼれてしまっていた。 その光景にネスは、ショックのようなものを受けてしまう。 だが、ネスはこれでおれるわけにはいかないと、気を持ち直す。
「でも、立ち止まれないよ。 あの2人の目をさまさせないと」
「そうだね……ここは冷静に、情報収集をして、あのビルに入る方法をさがそう」
「うん、わかったよ」
そう、ジェフのアドバイスに従いネスは、ビルに入る方法を探すためにフォーサイドの街を調べてまわることにした。 そして、その道中。 酒場のそばで人だかりを発見し、そちらに目が向いた。
「なんだ……?」
ネスもそれにつられて意識を向けてみると、その先に知っている男の姿があったので、ネスは驚いた。
「あれって……トンチキさん!?」
「ネス、知り合い?」
「うん!」
ネスはあわてて人混みをかき分けて、トンチキの元へ向かった。 そこに倒れているトンチキは服はぼろぼろで、顔もぼろぼろで、息も絶え絶えといった様子だった。
「トンチキさん、トンチキさん!」
「……ゼィ……ゼィ……ネス………ネス、だろ……? 目の前が、ぼやけて……よく見えないけど、おまえ、ネス……だよ……な……?」
「そうだよ、ネスだよ!」
トンチキは苦しそうにしながらも、ネスの顔を久し振りに見れたことが影響しているのか、口元にわずかに笑みを浮かべていた。 そんなトンチキの姿を見て、ネスはなぜ彼がこのような姿になったのか、その理由を尋ねようとする。
「トンチキさん、なにがあったの!?」
「……あの、ハッピーハッピー村の、カーペインターが、おかしなものを……ゼーゼー……隠し持ってたんだ。 そいつを、おれが、盗んできて、この街で売ろうと思った……」
懐かしい名前に対し目を丸くするネスに対し、トンチキは、カーペインターが持っていたというものについて、説明をする。
「……物知りのじいさんが、マニマニのあくま……と、呼んでた……」
「マニマニのあくま……」
「不吉な色をした、人形だった……で、モノトリーのやろうに騙されて、とられちまった……ドロボーのおれを、騙しやがって……」
「じゃあ、今のトンチキさんのケガって……!」
「しかも、この秘密を知っている、おれを……つけねらって、消そうとしやがったんだ………」
「!」
「……ヤツは、あの人形から……悪魔のパワーを、受けてるんだ……」
トンチキのその台詞で、気付いた。 今この街を牛耳っているといっても過言ではないモノトリーが、さえない不動産やから成り上がり、あそこまでの権力を手に入れたのは、そのマニマニのあくまの力を得たからだ。 それを手に入れたカーペインターが、あのような力を手に入れたのだから、モノトリーも同じなのだと、ネスはすぐに気付いた。 一緒にいたジェフも、眉間にしわを寄せている。
「……ネス……」
「なに?」
そして、ゼィゼィと荒い呼吸を繰り返しつつ、トンチキはネスにあることを託すため、彼に情報を伝える。
「……いいか……一度しか言わないから、よく聞くんだ。 ……酒場の……カウンターの中を……調べるんだ………」
「わかった」
その言葉を信じることにしたネスは、トンチキの情報を確かに受け止めた。 短くて一瞬だが、そのときの言葉と表情でトンチキは悟った。 ネスならば、この状況を打破し、自分の無念を晴らすだろうと。 自分と同じ目に遭う人を、2度と生み出したりしないだろうと。 それを確認できて満足をしたのか、トンチキは立ち上がってあるきだした。
「と、トンチキさん!」
「これは……おれの最後の頼みだ……。 後を追うんじゃねぇよ……ドロボーの、いぢが、ある」
「……!」
「死ぬ前の一句だ。
おでかけは、ひとこえかけて、かぎかけて。 トンチキ」
それをきき、何かを悟ったネスは少し泣きそうな顔になる。 そんなネスの頭を、トンチキは帽子越しにぐしゃりとなで、にかっと笑って言った。
「あ・ば・よ!」
そういって、トンチキはよたつきながらも歩いていった。 途中で何人かがトンチキに駆け寄ろうとしたが、トンチキは人を近づけさせまいとにらみ返して、追い払った。
「ネス……」
「…………」
そんなトンチキの姿を、ネスは見えなくなるまでずっとみていた。 本当は追いかけて助けたいが、トンチキの意志も尊重したい気持ちにおそわれている。 そして、自分はここで泣けないのだという自覚もある。 そんなネスの気持ちを悟ったジェフは、彼にそっと声をかける。
「一緒に、モノトリーと戦おう。 ポーラも、必ず助け出そう」
「……うん……!」
自分はここで立ち止まれない。 受け継がねばならない意志、助けなければならない仲間、救わねばならない場所、止めねばならない存在が、彼にはあるのだから。
「いくぞ!」
ネスは、ジェフと共に、立ち向かうことを決めた。
あのリストバンドのくだりは、そのうち回収します。
というか回収したいよ。
次回はマザー2の名物世界に突入です。