MemoryStamp   作:彩波風衣

16 / 37
今回はお待ちかねの場所に冒険に出かけます。


16.MoonSide

 

 デパートで楽しくお買い物をして、これから4人の仲間としての絆の形をあらわそうとしたときに、事件は起きてしまった。 ポーラが、デパートの中で誘拐されてしまったのだ。 誘拐の主犯はフォーサイドの権力者であることはわかっているものの、相手の力が強すぎて警察は無能となっている。

 

「トンチキさんの遺志をついで、ボクがモノトリーを止める。 そのためにも……彼の言っていた酒場にいくよ、ジェフ」

「ああ」

 

 そんなとき、ネスはトンチキに再会した。 トンチキはモノトリーの力の正体、その手がかりが酒場にあるとネス達に情報を伝え、そのまま消えた。 ネス達はトンチキの思いを受け継ぐため、彼に触れることなく、彼の言葉に従って酒場に潜入した。

 

「本来子供は入れないけど……」

「こういう時間なら、以外とガバガバなんだよね」

 

 酒場が一番にぎわうのは、夜からだ。 だから、2人は一夜を過ごし早朝にホテルを出て、酒場に潜入したのだ。 思いの外隙だらけだったので、ネスもジェフも容易く入ることができた。 こうでもしなければ、子供であるネスとジェフは酒場なんて場所に、簡単には入れないからだ。

 

「よし、ここがカウンターの奥にあたる場所だね」

「……」

 

 トンチキの言うとおりにするならば、ここになにかの手がかりがあるはずだ。 彼の言葉を信じて、ネス達はカウンターの奥に足を踏み入れて片っ端から調べる。

 

「ジェフ、これ!」

「どうしたんだ?」

 

 そんなとき、ネスは不自然なものを発見し別の場所を調べていたジェフの名前を呼ぶ。 ジェフがネスの声に従ってその場所に行ってみると、そこには人が一人は入れるくらいの小さな扉があった。 普通ならば、こんな場所は店の店主がいることもあって、滅多に気付かないだろう。

 

「こんな小さな、かくし扉が……?!」

「ジェフ!」

「うん、開けよう!」

 

 2人は一応そこをノックして、返事がないのを確認してから扉を開ける。 その瞬間、ネスとジェフの視界は、一瞬で白い光に包まれた。

 

「な、なんだぁ!?」

「うわ!?」

 

 光に耐えられなかった2人は目を閉じてしまう。 やがて光は消えていき、2人はゆっくりと目をあけた。

 

「……え……!」

 

 だが、目を開けたとき2人は、奇妙な世界に迷い込んでいた。 そこは、フォーサイドとは似て非なる場所であった。 暗い世界に、物体がある所だけわずかに光を放っている。 人はいるようだが、生気は感じられない。

 

「なんだ、ここは……!?」

「ここは、ムーンサイドだよ」

「む、ムーンサイド!?」

 

 偶然近くにいた人が、ネスの声が聞こえたようであり、ここがムーンサイドという場所であることを伝えてきた。

 

 

 

「な、なんでボク達はこんなところに……ムーンサイドなんて場所も知らないし……ボク達は、ただ……」

 

 自分たちはただ、酒場の奥のカウンターを調べて、そこにあった小さな隠し扉を調べただけなのだ。 それがまさか、未知の世界の入り口だったなんて、誰が予想できようか。

 

「まさか、これがモノトリーの権力の、秘密……?」

「これで権力なんて得られるのか!?」

「ここを探索すれば、出口も見つかるかもしれないし、その秘密の正体を確かめられるかもしれないよ」

「……」

 

 ジェフの冷静なアドバイスに対し、ネスはそれ以外の方法はないと思い直し、彼の言うとおりにこのムーンサイドを探索することにした。 現に、ここへの入り口であるはずのあの隠し扉はここにはなく、帰ることができなくなっているのだ。

 

「というわけで行動を起こしてみたのはいいんだけど……やっぱり不気味だ……」

 

 まずは自分達がいた酒場を外に出て、ネスとジェフは周囲を警戒しつつ進んだ。 途中で奇妙な絵画や動く消火栓に襲われたりもした。 そんなとき、道を歩く人が彼らにある情報を伝えてきた。

 

「このムーンサイドでははいがいいえでいいえがはい。 これがじょうしきさ。 オーケー?」

「は」

「いいえ」

 

 あやうく素直に反応して返事をしようとひっかかりかけたネスをジェフが制止した。 ここではイエスとノーが反転しているのだ。 そんなジェフの返事を聞いた人は機嫌をよくしながら立ち去っていった。

 

「ようこそ、ムーンサイドへ。 よう こそムー、そムー ンサインサイ、ンサイ、サイドへ」

「ようこそ、ようこそ、ようこそムーンサイドへ」

「マニマニをなんとかしないと。 ナイフがさびないうちにマニマニをなんとかしないと」

「ようこそムーンサイドへ。 よムうこそーンサイドへ。 ムよーンサうイこドそへ」

「こよそそこよそそこよこそうようそここそようムンムンムンサイサイムンサンイムムードへ」

「ムムムムムムーーンンサイッドオォォオオォへ、ようこそそそそそおそそそそ」

 

 町にいる人々に声をかけてみても、老若男女関係なく意味不明な言葉を吐くのみ。 もはや、言葉なのかどうかもわからない。 建物の中にはいってそこにいる人に声をかけても、結果は同じだった。

 

「これはなんのホネかわかりますか? これはあなたのホネ、ホネ、ホネ」

「よう、おれのキライなたべものはなにか、しってるか? こたえは、ハンバーグだ」

「ここ、ムーンサイド、ムーンサイド、ここ」

 

 さすがにここまで聞いてくると、疲れてくる。 ジェフは話についていけず、頭痛を起こしたのか頭を抱えていた。

 

「ああ……誰も彼も、言ってることがメチャクチャだ……できれば、もうこれ以上話したくない……」

「うん……ボクもできればもう、話したくないよ……。 でも、話を聞かないと出口の手がかりも見つからないし……」

「そりゃ、そうかもしれないけど……」

 

 ネスも、こうしてムーンサイドの人達の話を聞くことなどもうやめたいのである。 だが、ただ街の中を歩いていたり、襲いかかる敵と戦ったり、細部を見て回るだけでは、黄金の像の在処も元の世界へ戻るための出口も見つからないのである。 そのため、嫌々ながらもネスはこうして、町の人に話しかけている。

 

「ハロー!」

「えっ」

「そして……グッドバイ!」

「わぁ!?」

 

 だが、次に話した男はネスに向かってそういうと、2人の視界は一気に変わる。 気がつくと2人は、さっきと全く違う場所にいたのだ。 おそらくは、どこかの室内だとおもう。

 

「こ、ここどこ!?」

「なんだぁおまえらは?」

 

 するとそこで、この部屋の主であろう男がネス達に気づき声をかけてきた。 苛立っているらしい、男はネス達にむかって、いきなり怒鳴ってくる。

 

「おれはな、いまひまでひまで、てがはなせねぇんだよ!」

「え、ひまって」

「どうしてもはなしがしたけりゃ、そこにいるおれぼあいぼうにはなしでもしな!」

「え?」

 

 ネス達は別の方向をみるが、そこには誰もいない。 この男もムーンサイドの人間なので、ほかの人間と同じように可笑しいだけなのだろうか。 どこに誰がいるというのか。

 

「あんたら、おいらがみえるのか?」

「え、いや……あっ」

 

 思わず見えてないって返事をしてしまい、ネスは慌てる。 これでは見えてるって言ってしまっているだけだとすぐに気付いたから。 そんなネスの反応など無視して、笑い声は聞こえてくる。

 

「ヒッヒ。 おいらがみえるってか。 ヒッヒ、あんたらりっぱなムーンサイドびとだぁよ」

「……あれ?」

「ネス、あまり関わるな」

「……」

 

 戸惑うネスに、ジェフはこれ以上関わらない方がいいと判断し、男にこの部屋の出口をたずねる。

 

「あの、ここを立ち去りたいんですけど……ドアは?」

「ドアだと、そんなもんはここにゃねぇよ! おれのひまをジャマするやつぁとっとと、でていけ!」

「わっ!」

 

 この部屋に入ったときと同じだ。 男の言葉と同時に2人の意識は一瞬とび、気がついたら別の場所にとばされていた。

 

「とりあえず、あの部屋からは脱出ができたな」

「うん」

 

 

 とりあえず、その場所から移動をして引き続きフォーサイドに戻る道と黄金の像を探し始めるネスとジェフ。 そんな2人の耳に、あの見えない男のものであろう声が響きわたる。

 

「おもしろそうだから、あんたたちについていくぜ。 ジャマはしねぇからあんしんしなよ」

「は、ハァ……」

 

 こんなことを言われたら、こいつはこのまま自分達につきまとうだけだろう。 なにもジャマをしないというなら問題ないということにしておくが、たびたび自分の姿を自慢してくる。 つながった眉だの、全部が金歯だの。 ネスとジェフはそれにたいし適当な返事をしつつ、視界に目的のものらしき黄金の物体が入ってくる。

 

「あれは……!?」

 

 黄金のなにか、それが自分達の探すマニマニの悪魔ではないか。 至近距離で確かめないと、わからない。 だが、そこへ通る道は一カ所しかない。

 

「あそこにいければいいのにな……」

「あの男がジャマをしているな……話を聞いてみよう」

「うん」

 

 ネスとジェフは意を決して、道を塞いでいる男に声をかける。 男は彼らに、こう告げた。

 

「マニマニのぞうなら、このすぐさきにある。 でもおれがじゃましてるから、いけないぜ……」

 

 やはりこの先にあるのはマニマニの悪魔だったのだ。 それを男から告げられたことで確信を得たネスとジェフ。 そんなとき、男はあるものに気付きうれしそうな声を上げた。

 

「お、おやおや!? そこのおひとは!」

「ん?」

「これはおどろいた! りっぱなつながりまゆにキンバの、いいおとこですなぁ! よし、こんなガキどもほっといて、いまからいっしょにバーボンでもひっかけに、さぁいきましょうぜ!!」

「ヒッヒ、いいないいな、のむのいいな!」

 

 そういうと、男は透明人間を連れてどこかへ行ってしまった。 ネスとジェフは、道中で透明人間がつながり眉に金歯を自慢していたが、聞き流していた。 適当に聞き流していた情報が、まさかここで役に立つとは、少しも思っていなかった。

 

「つながり眉に、金歯……どんな人間だったんだ……」

「想像しない方がいい、というかしたくない」

「うん、それが正解だよ。 たぶん」

 

 なにはともあれ、こうして黄金像に近づくことができるようになった。 ネスとジェフは、黄金の像のほかにもう一つ、見えていたものについて口にする。

 

「さぁて、ビルの間から見えてたけど……」

「あの変な黄金の像をじーっとみてる、あの人がおそらくは」

「モノモッチ・モノトリーかな」

 

 黄金の像の前、そこには一人の老人の男性がいた。 ネスとジェフは、ポーラのことの怒りを込めて、彼に向かって怒鳴る。

 

「やい、モノトリー!!」

「追いつめたぞ!!」

「つきまとうな! わ……わたしは、モノトリーなんかじゃない!」

「なにをいってんだ! じゃああんたは誰なんだ!? ポーラをどこにやった、なにをたくらんでる!!」

「ッ!」

「まて、逃げるな!」

 

 ネスはモノトリーを捕まえようとしたが、モノトリーは消えるように姿を消してしまった。 周囲を探ってもどこにもモノトリーの姿はなく、ここは逃げられてしまったのだと悟る。

 

「……どこかへ行っちゃった」

「ネス、あの人が気になるのはわかるが、今は」

「うん、わかってるよジェフ」

 

 ジェフに言われて、ネスは冷静さを取り戻し、マニマニの悪魔と向かい合った。

 

「あいつだ、あいつが噂の黄金像……マニマニの悪魔だ!」

「やるぞ!」

 

 ネスとジェフは、互いに顔を見合わせてうなずきあって、どこかでみたような黄金の像と向かい合った。

 

 

 

「お前をここで、ぶっ飛ばす!」

 

 そう宣言したネスはヨーヨーを取り出してそれを振り回し、それで中距離の攻撃を繰り出そうとする。 だが、マニマニの悪魔はそれをはじきとばし、ヨーヨーはネスの顔に命中した。

 

「うわぁぁ!」

「ネス!」

 

 ジェフがネスのなを叫んでいる間に、マニマニの悪魔はジェフに突進して頭突きを食らわせてきた。 ぐぁ、と痰を吐いたジェフは背後にとばされ、そんなジェフにマニマニの悪魔が黄金の短剣を突き立てようとしてきたが、それはネスが放ったシールドが妨げる。

 

「こっちだ悪趣味色の像野郎! お前はボク達が倒してやる!」

 

 ネスがそう叫ぶと、マニマニの悪魔はネスに向かって短剣を振り回してきた。 ネスはそれをシールドで防ぎつつバットで応戦していく。 そんなとき、体勢を立て直したジェフはその手にあるアイテムを持ち、構えて放つ。

 

「ペンシルロケット5、発射ぁ!!」

 

 その5発のペンシルロケットはマニマニの悪魔にヒットし、マニマニの悪魔はその大ダメージの影響でよろめく。

 

「いまだ、ネス! おもいきりやれっ!」

「OK!」

 

 ジェフの声に答えたネスは、その手にPSIのパワーをためて、一気に解き放つ。

 

「PKキアイ! からのっ!」

 

 強力なPSI攻撃を受けて倒れかかっているマニマニの悪魔に、ネスはとどめの一撃として、渾身の力を込めてバットを豪快にふるい、マニマニの悪魔を攻撃した。

 

「食らえぇぇぇっ!!」

 

 その一撃はスマッシュヒットだったようだ、バットの一撃を受けたマニマニの悪魔の体に大きくヒビがはいっていき、やがて大きな音を立てて崩壊した。 同時に、白い光に包まれた。

 

「……う……」

 

 まるでムーンサイドに迷い込んだときのようだ、と思ったのもつかの間。 2人は気がついたら、倉庫のような場所にいた。 ネスとジェフは、今自分達がいるのは、本物のフォーサイドなのかと確認をとる。

 

「ここ、て……元の、フォーサイド?」

「みたいだな……ネス、これをみて」

「えっ?」

 

 ジェフは自分達のそばに転がっている金色の破片を指さした。 それは、顔や体の部分からマニマニの悪魔だと思われる。 屈んで、それを分析したジェフは、このマニマニの悪魔が結局なんだったのかを見抜き、解説する。

 

「マニマニの悪魔の正体は……幻影マシーンだったんだ……」

「げん、えい?」

「つまり、幻というわけだ。 そこには本来ないのに、あるように見せかけるものだよ」

 

 ジェフの話が本当なら、自分達がみたムーンサイドという場所は、このマニマニの悪魔によりつくられた、幻の世界だったということになる。 そして、その一方でネスは、このマニマニの悪魔に関わった人がとんでもない力を手に入れていた理由に気付き、彼らのことを思い出す。

 

「じゃあ、ライヤーさんも、カーペインターさんも、モノトリーも……さっきまでのボクやジェフも……これで全部、幻を見せられていた、ということ?」

「だろうね……」

「……」

 

 こいつのせいで多くの人々が苦しめられて、トンチキも犠牲になってしまった。 それに気付いたネスは、ここで破壊したのは正解だったと思い直し、事実上彼のカタキを討ったし犠牲も増えないだろうと読んだ。

 

「おまえ、遠くを見ているような虚ろな目をして、倉庫の中を歩きまわってったぞ?」

「え、マジ?」

「マジだ。 夢でも見てたのか?」

 

 そのとき、その倉庫にいたネズミから衝撃の証言をきいて、ネスとジェフは呆然とする。 自分達が必死でムーンサイドを探索する様子は、端から見たら変人のようだったのだろう。 正直恥ずかしい、穴があったら入りたいとすら思えてくる。 そして同時に、恐怖すら覚えてくる。

 

「この像の存在は……下手な怪談とか都市伝説よりも、ずっとずっと怖いな……」

 

 もし自分達があのマニマニの悪魔を倒せなかったら、どうなっていたのだろうか。 考えただけでゾッとする。

 

「まさに、悪魔だったね……この黄金の像は……」

「うん」

 

 これを生み出したのも、ギーグだったりするんだろうか。 ネスは、この粉々に壊されたマニマニの悪魔をみて、ギーグを討つ決意をさらに高めた。 そして、それを可能にするためにポーラを救出し、最後の仲間とも合流する必要があることも。

 

 




うぅん、ムーンサイドってこんな感じでいいかな?
いろいろ詰め込んだら文章がおかしくなるのでさっぱりさせたつもりですが…どーでしょ?

次回はモノトリービルに挑みます!
目標はポーラ救出です。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。