お楽しみあれ。
そうして新しい仲間・プーと冒険をすることになったネス達は、そのプーがやたら高価な宝石を持っていることに気付いた。 彼にその宝石のことを聞いてみると、荷物の中にたまたま入っていたらしい。 きっとこの荷物を用意した人が、自分の旅の資金源にしようとして荷物に入れたのだろうとも。 宝石がたやすく手に入る彼の正体に疑問を抱きつつも、ネスはプーにある相談を持ちかけ、それを実行した。
「なんかルビーを使わせちゃって、ゴメン」
「気にする必要はない、必要なことなのだろう?」
それは、博物館のヒエログリフを見るための、通行税のようなもの。 ヒエログリフを持っているという博物館の職員の元へ向かい、プーがその宝石を差し出すと、彼は鼻息を荒くさせながらそれを受け取り、ヒエログリフを見せてくれることになった。
彼の宝石が通行税になってしまった事にたいしネスは後ろめたさを覚えるものの、プーは彼らがこうする必要があったと理解を示しており、ともにヒエログリフを見に行った。
「あれがヒエログリフかぁ……でも、文字が少しも読めないや」
それには文章が書かれており、ネスはその文章が自分達に重要なことであると直感で感じ取ったのだが、肝心の文章が読めなかった。 これは、異国の言葉だったからだ。 ポーラとジェフもお手上げらしい。
そんな時、プーが前に出てその文章に目を通すと、うんとうなずく。
「この字ならおれは読めるぞ」
「ホント? じゃあ読んでくれる?」
「わかった」
ネスに言われ、プーはその文章を声に出して読み上げる。
「天よりの侵略者に我々は四角錐の要塞を建造し、戦いに備えた。 しかし、我々は敗れた。 だが、我々の要塞はスカラビの神々によって守られた。 天からきた侵略者は、1000年ごとに生まれ変わり、おそってくるという。 侵略者は、時の彼方に隠れ、悪の巣箱をおいた。 時の彼方は、魔境の遙か先。 地の底の向こう。 魔境は暗き闇。 タカのめだけがみる。 スフィンクスがすべてをまもり、真の勇者の訪れを待つ。 このように、スフィンクスの前でおどれ」
プーはそう読み上げ、最後に何かの図式を紙に写しがきをすると、ネスに次の目的地を伝える。
「ネス、なんとかしてスカラビにいってみよう」
「うん」
「よーし、そうとわかれば早速! 船で海を渡ろう! そんでもってスカラビへいこう!」
「ええ!」
そうして次の目的地を改めて決めた4人は、博物館を出ようとしていた。
「うわわっ!」
それをキャッチすると同時に受話器をとる形になってしまったネス。 受話器越しに、大きな声が聞こえてきた。
「もしもし! チャップスティックくんかい!?」
「はい、違います」
速攻でそう返事をしたが、相手は間違えたままで話を一方的に進めてきた。 どうも、彼はとんでもないものを発見してしまい、それを報告したくて電話をしてきたのだという。 ネスは何度も違うって言いたかったが、彼はテンションが異常なまでにあがっており、ネスの話がまったく入ってこない様子だった。
「ひとのはなしをきけぇ!」
ネスのそんなツッコミもむなしく終わり、相手は電話を切ってしまった。 しばらく呆然としていたネスだったが、電話の内容が妙に頭に着いた。 あの電話の声が大きかったから、というわけではない、別のものがあるのだ。
「どうする、ネス?」
「……ちょっとひっかかるから、一度フォーサイドに行ってみようとおもう」
そうネスはいいつつ、彼らの許可を得てから、テレポートをしてフォーサイドへ向かったのだった。
テレポートを駆使してフォーサイドに向かったネスは、電話の主である、博物館のライスボウルの元に向かった。彼はネス達に自分の新発見を見てほしければ、今劇場で大人気の女性アーティスト・ビーナスのサインと交換だと言ってきた。 ネス達はややあきれつつも、彼の願望を叶えることにしたのである。
「ねぇ、ネス」
「ん?」
「さっきステージに上り込んできたのって、あの人じゃ……」
「……」
そのステージもついでにみたのだが、その際にネス達は、ステージに上がり込む中年男を目撃したのだ。 ステージはビーナスにあてられたスポットライトのみだったのだが、それでもわずかに何かが見えた。 その姿を見たジェフはなにかに感づいて、小声でネスに声をかけてきた。
「ジェフ、謎のままにしておいたほうがいい謎というのもあるんだよ」
「……りょ、りょうかい……」
ネスの言葉に対し、ジェフもそれを受け入れてうなずいた。 一緒にいたポーラやプーも、同じ表情をしている。
なにはともあれ、ビーナスのサインは無事にゲットできた。 何故かバナナに書いたものではあるが、ライスボウルはそれでも満足したようだ。 そして、奥の方にけた違いな大きなネズミと、マグネットヒルと呼ばれる場所を発見したことを伝え、あとは事故責任と言うことで通された。
「不思議な名前の場所に、けた違いに大きいネズミ、か……。 なにか、心当たりはあるか?」
「うん、ありまくりだね」
疑問を抱いていたプーにネスはそう返事をしつつ、その先の道へいく。 彼らがたどり着いた場所は、下水道だった。
「うげ、下水道だ」
「奥に進むには、たまに水の中に足を踏み入れないと行けないのか」
「えぇ……」
それにたいし、ネスはすぐに顔を青ざめさせた。 下水道の水は明らかに汚く、まだ浄水されておらず生活用水がそのまま流れているかのようだった。 男の自分がここまで不快感を抱いているのであれば、女であるポーラはどんな気持ちだろう。
「……」
「ぽ、ポーラ……」
「……さぁ、すぐにいって早急にクリアすれば大丈夫よ。 いきましょう」
「あ、うん……?」
ポーラはそういうとそのままネス達に同行する形で共に下水に足を踏み入れた。 彼女も意を決して挑んでいるのだと、彼女の表情や姿勢から感じたネス達は、ここは男らしく覚悟を決めることにし、同じく下水に足を踏み入れた。
「こっちくんなゴミ箱!」
そうして4人は下水道を進んでいく。 途中ではあれとか、動くゴミ箱とかが、悪臭や不快感で攻撃をしてくる。 それをなんとか我慢しつつ、ネス達はそれを苦戦しながらも撃退する。 人数が多くてよかった、とこのとき強く感じた。
「ふぅ……ようやく、退けられたわね……」
「あ、うん」
今、敵を退けたところで、ポーラは確認する。 そうして先へ進もうと言ってくるポーラを見て、ネス達は疑問を抱く。
「ポーラ、ずいぶんと先を急ぐなぁ……」
「相当我慢しているな……ここは、早々にクリアした方がいいだろう」
「う、うん」
やっぱりポーラも、この状況を深いに思っているのに違いないようだ。 今はわがままを言うわけには行かないと言う責任感から、ここでは文句を言わないように、グッと不快感をこらえているのだ。 そんな我慢強い彼女に自分達にしてあげられることといえば、早々にこの下水道やその先に待ち受けるものを突破することだ。
そう気を引き締めていった彼らの前に、やはりというべきか、あの光がたたずんでいた。
「なんだ、あの大きな光は」
「ボクの場所を守るヤツだよ。 そいつを倒さないと、ボクの場所に入れない」
「なるほど」
状況を理解したプーは、戦う構えをとる。 そうしておきまりのせりふを聞いたネス達は、早速戦い始める。
ライスボウルの言っていたとおり、そこを守っていたのは、きょだいネズミだった。 その体から放たれる悪臭や不気味な姿に五感を狂わされ苦しめられたものの、ネス達はなんとか辛勝する。
「よし、到着できたぞ……ここが、マグネットヒルか!」
「中央に不思議な鉱物があるな……なにか、強い磁気を持ってる……」
そうして彼らがたどり着いたのは、強い磁気を含んだ大きな鉱物が中心に存在している不思議な場所、マグネットヒルに到着した。 目的の場所にたどりついたポーラは、ひとまず安堵しつつもさきほどの戦いを振り返る。
「食べ物で回復してなかったら、マズかったかもね」
「そうだね……って、プー? 大丈夫?」
「え」
そんなとき、プーの顔色がどこか優れないことに気付いたジェフがプーに声をかけてみると、プーはやや元気のない様子で振り返った。 彼が突然不調になるなんて、なにがあったのだろうかと問いかけてみるが、彼は難でもないと返した。
「まぁ下水道でものを食べたら、どんなものでも美味しく感じないわよ。 気にしない気にしない」
「……そうか……」
ポーラの言葉に対し、プーもそう返すが明らかに元気がない。 その一方でネスは、音の石を使ってマグネットヒルの音を記憶していた。
「よし、マグネットヒルの音を記憶したぞ……って、あそこに変な箱がある」
音が入ったことを、石をあてて確認したネスは、近くに不思議な箱がおかれていることに気付く。 昔読んだ、異国の絵本の記憶が正しければ、玉手箱という名前だったはず。 ネスはそう思いながらもその箱を開けてみる。 すると箱の中から煙がほわほわんとあふれ出てきて、ネスは驚く。
「わっ!」
「ネス!?」
その煙とネスの声に気付いたポーラ達は、急いでネスのところに駆け寄る。 ネス自体は無事であり、彼らに大丈夫と告げた後で煙を払い、その箱に入っているものに目を向ける。
「こ、これは」
玉手箱に入っていたものは、ネスにはほ乳瓶に見えた。 そのほ乳瓶になにか、デジャヴを感じたネスだったが、目をこすって改めてみてみると、そこにはほ乳瓶ではないものがあった。
「あれ?」
そこにあったのは、ニンジンだった。 いかにも、ウサギあたりが好みそうなニンジンだった。 そうネスがぽろりと口に出すと、プーはあることに気づき、彼にその話をする。
「早速だがネス、おれはこのニンジンに心当たりがある」
「え、ホント?」
「ああ」
意外にもプーがこのニンジンに関する情報を持っていることにたいし、ネスはキョトンとしつつも、自分達が今いる場所を思いだした。
「……とりあえず、まずはホテルに帰ろうか。 下水道をもう一度通ることになるけど、体をさっさと洗い流したいし……」
「そうだな、この状態のまま話をするのはおれも不服だ」
帰り道の下水は、すぐに洗い流せるから我慢できるとして、彼らは早急にマグネットヒルをあとにし、行きとは倍のスピードで下水道を引き返していった。 そしてフォーサイドのホテルの人に驚かれつつ、彼らはホテルにチェックインし、そのまま部屋へ早急に向かい、順番に風呂に入っていった。
ちなみにそのお風呂は、ポーラが一人だけだったのにたいし、ネスとジェフとプーは3人で一緒に入ったとか何とか。
そうしてお風呂に入って全員下水道のにおいと汚れを洗い流してスッキリさせたところで、ネス達は今日がんばった自分達をねぎらうため、食事をとった。 ホテルのレストランで思い切り食事をとったネス達は、満足げに部屋に戻ってきた。
「ふぅ、おなかいっぱいだし料理も美味しかったし、文句なしだね!」
「そうだね」
ぼふん、とベッドの上で寝ころびつつ、ネスとジェフは会話をしていた。 そして思い出すのは、以前にこのフォーサイドのホテルに泊まったときのことだった。
「にしても、なんか、前に泊まったときよりも、レストランの食事代がやすくなったよね」
「……まぁ、あのときの支配者が支配者だったし……もうここは平和から、安定してるんじゃないかな?」
「そっか……」
あのときといまを比べて、考えるネス。 そんなに時間はたってないはずなのに、昔のことのように感じる。 ぼーっとしてきたネスに対しジェフは、今後の計画を立てようと促して、テーブルのある隣の部屋にむかう。 そんなとき、プーに異変が起きていた。
「うぅん……」
「ぷ、プー!? どうしたの!?」
テーブルの上で、顔を伏せてるプーを見て、ネスとジェフは驚く。 一緒にいたポーラは、今のプーの異変に対し説明をしてきた。
「……さっきの夕食の後、また少し体調を崩しちゃったみたいなの……」
「えぇ!? さっきあんなに普通に食べてたじゃない!」
確かに彼らは出された食事を、残さず全部食べていた。 だからネス達も、彼は普通に食事が出来ていると安心していたのだ。 時にフォークやナイフ、スプーンの使い方を教えたこともあったが、食べる様子は全然普通だったのだ。 だが実はあれが、プーの演技のようなものだったと知り、ネス達は驚く。 そんな彼らに対し、プーは事実を伝える。
「すまん、実はあまり、異国の料理が口に合わなくて……いや、味は決して悪くはないんだが……どうも、なじめない、というべきだろうか……」
「そうだったの!? じゃあ、もしかして下水道であんな顔色だったのも、そのせい!? 周囲の環境、まったく関係なかったの!?」
「……」
ネスの言葉に対しプーはうなずいた。 それをきいた3人は、表情が一気に凍る。
「プー……」
「す、すまん! わがままなのは承知だ! これから、克服を……」
プーは自分が好き嫌いをしているのが原因だと気づき、あわてて彼らに謝罪をする。 この状況でこんなことをして、許されるわけがないのはプー自身も自覚をしていたから、ずっと我慢して食べて、悟られないようにしていた。 だが、ここでボロが出てしまい、彼らに迷惑をこれからもかけてしまう。 そんなことを感じたのだ。
「口に合わないなら、なんで早く言ってくれなかったの!!」
「え?」
だが、彼らが口にしたのは、まったく関係のないことだった。 彼らの言葉に対しプーは目を丸くし、戸惑う。 そんなプーに対し、ネス達はさらに言ってくる。
「そりゃあ、こんな状況で、私たちに大事な使命を与えられた冒険なんだし、ワガママなんて簡単にいえないこともあるとおもうわ! それが食べ物のことなら、なおさらよ!」
「でも、苦手なものとか、どうしても無理なことはしなくてもいいし、それを我慢してまで平気な振りをされるくらいなら、そのせいでキミが体調を崩すくらいなら、堂々と言ってくれてた方がマシだよ!!」
「国が違えば食文化も違う……すっと食べてたものと違う者をいきなり食べたら、誰でも戸惑うことばかりだ。 誰だってありえるケースだし、それに気付いたところで君に失望しないんだし、迷惑なんておもうわけがないから、気にしなくたっていいんだよ」
そうポーラ、ネス、ジェフの言葉を聞いていくにつれ、プーは見開かされた目を少しずつ細め、彼らに告げる。
「……心配かけさせて、すまなかった」
「プー……」
「事前に伝えておけば、どんな内容でも……誰も苦労はせずにすむ。 そんな簡単なことなんだな」
「そうだよ、簡単なことだよ」
「だから、おれのことはしっかり、皆にはなしていく……たとえば、食べ物の口に合うか否か……とかな……」
そういいつつ、プーは彼らに自分のことを正直に打ち明けることを約束した。 同時に、自分のこれからの目標も。
「おれも出来る限りは、この国のものを食べれるようになるから」
「うん!」
そうして、今回を通してプーのことがわかった気がしたネスだった。 この交流が、これからの彼らの冒険に大事なことを教えてくれることだろう。
ちょっとだけ、プーの食べ物に関する仕様にもふれてみました。
というわけで、話は続きます。