もうこの長編は私の好きにやってます。
おそくても。
フォーサイドの博物館の裏、下水道の先にあったパワースポット・マグネットヒルを攻略したネス達は、その夜はフォーサイドのホテルで一泊した。 その際にプーの食事事情に関する重大な秘密に気付き、彼らは今後はプーにもしっかりと気をつかうことをきめる…という出来事があった。
「え……ランマに?」
「ああ」
そして朝食の席のこと。 ネス達は、プーからある話を聞く。 その話というのは、マグネットヒルで発見した、普通のものとは思えないニンジンのことだ。 プーはこのニンジンに心当たりがあると言っていた。 どうも、彼の故郷に秘密があるらしいのだ。
「国の中で、てこでも動かないような奇妙なウサギがいたのだ。 おれにはあのウサギに見覚えがなくてな……なによりもそのウサギの奥の方に、洞窟が見えたんだ」
「うんうん……って、まさか!?」
プーの話に対しネスは何かに気づき声を上げると、プーはうなずいた。
「お前達が今まで行ったことがあるというパワースポットに関する話と照らし合わせるならば、あの場所こそが、パワースポットへつながる道なのだろう」
それをきいたネスは、目を輝かせながら前のめりになって、プーに言う。
「ナイス! ナイスだよプー! そこにいけば、ボクにまたパワースポットの力が得られるかもしれない! これはいくしかないよっ!!」
「そ、そうか……では早速行ってみるか!」
「いくいく! 今のボクは絶好調なんだ! いけるよっ!!」
そう語るネスの顔には、自信にあふれていた。 ここまでの旅が順調だっただけに、調子があがっているのだろう。 とにもかくにも、プーの故郷に新しいパワースポットの手がかりがあるという事で、彼らはランマに向かうことを決めた。
「よし、早速行こう! そんでもってまたパワースポットの力をもらっちゃおう!」
「もうネス、はしゃがないで!」
「……やれやれ、だな……」
テンションのあがっているネス、たしなめるポーラ、呆れるプー。
「果たして、調子に乗っているのか自信がついているのか……どっちなんだろうね」
と、ジェフはぽつりとつぶやいていたのだが、ネスはそれに気付いていなかった。 それどころか、ジェフに早く自分達のところへ行くよう促してくる。
「ほらほら! ジェフもこっちきて! プーのテレポートでランマにいくよ!」
「……はいはい……」
そう答えつつジェフは、ネス達の元へ向かい、4人がそろったところでプーはテレポートを使う。 それにより4人は、一瞬で大陸すら越えてチョンモ大陸のランマ王国まで飛んでいったのであった。
「へぇ……ここがランマ王国なんだ……」
「そうだ。 とりあえず……ようこそ、我が国へ。 といっておくべきか?」
初めて体感する異国というものに興味津々なネスに対し、プーは少し茶化すようにしてそう言って見せた。 一緒にいたポーラとジェフも、初めての場所にたいしソワソワしているようだ。
「なんか、不思議な気持ちになるわ。 やっぱり、初めて全く違う国にきたからかしら……」
「僕もちょっと興奮するな。 チョンモなんて初めてくるし……いろいろ見て回りたくなってくる」
それぞれで感想を漏らすポーラとジェフに対し、プーもまんざらでもないような顔になる。
「そういわれると、この国の人間として……誇らしい気持ちになるな」
「プー、あの大きな建物は?」
「ん? ああ……あれはランマの王族の住まいである宮殿だ」
「へぇ」
奥に見える大きな建物に関するプーの解説を聞いて、ネスは感心する。
あそこにいる王族というのはどんな人だろうか、とネスが気になっていると、この国にすむ一人の女性が、ある人物に気付いた。
「まぁ、王子様だわ!」
「え?」
「ホントだわ、プー王子様よぉ!」
「プー王子さまぁぁ!」
ランマにいる女性は次々に、黄色い声と共にプーの名前を口にしていった。 しかも、王子というワードとともに。 それをきいたネスとポーラとジェフは、驚愕する。
「「「王子様!!?」」」
「っ!!!」
騒ぎが大きくなったことに対しプーは焦りを覚え、ネスの手を引いて走り出した。 ポーラとジェフも彼に続いていき、やがて女性の黄色い声が聞こえなくなっていった。
「あーん、どっかいっちゃったぁ……」
「ざんねん!」
そうして目的の場所に到着し、また周囲にその声が聞こえなくなったところで、プーは自分のほかに3人の姿があるのを確認しつつ、額の汗を拭う。
「……はぁ、目的の場所に着いたぞ……」
「ど、どういうこと!? あの人達、貴方のことを、お、お、王子様って呼んでたんだけど……」
「……」
「まさか、あの宮殿に住んでるランマの王族って……キミ、なの?」
「……」
ネスの一方的な問いかけにたいし、プーは口を閉ざしてしまった。 どう説明すればいいものか、と困惑しているようだ。 だがやがて、自分達のすぐ近くに例の場所があるのに気付いて、彼はそちらに意識を向けさせることで回避した。
「それよりも、ここが、おれの言ってた場所だ」
「えっ」
「……詳しいことは……ここを攻略したらはなす、でどうだ」
「……わ、わかった……」
そのときのプーに、すごみを覚えたネスはそれに従うことにした。 いずれにせよ、ここにきた目的がパワースポットにあるのは確かで、ここをクリアすればネスの力が覚醒する準備が整ってくる。 それに、プーが約束を守ってくれるかもしれないとも思う。
「このウサギが、そうなんだね。 んじゃ早速っと」
そういってネスは、洞窟の入り口をふさぐ大きなくろいウサギに例のニンジンを差し出した。 正直そのウサギの異質さにネスは首を傾げるもの、ニンジンを差し出したら、ウサギはあっさりと姿を消してしまった。
「どっかいっちゃった」
「これで洞窟に入れるな」
あのウサギの謎は解けないが、ああいった不思議なことはこの旅が始まってから何度もあったので、もう気にしてもしょうがないというか、なれてきているので、なにも言わないでおいた。 だから、彼らは洞窟にそのまま入っていった。 洞窟の中では何かがはじける音がしていた。
「なんか、ランマの城下町とはまた違った雰囲気の場所ね」
「こんな場所があったとは……」
「意外とそういうのあるよね」
そんな対話をしている彼らの前に、奇妙な姿の敵が現れる。 その敵にたいし、ネスはバットで対抗してスマッシュヒットをきめ、鎮めた。
「おぉ、一撃!」
「へっへへ! 楽勝だね!」
一撃で敵を倒したネスは、白い歯をみせて余裕の笑みを浮かべたのだった。 それにたいしポーラもプーも関心をしていたのだが、ジェフだけがどこか浮かない顔をしていた。
「どうしたの?」
「なんでもないよ、先へ進もう」
自分の心配をしてきたポーラに対しジェフは冷静にそう返すと、奥に別の敵がいたことに気付いてそちらに向かってレーザー銃を放った。
「え、敵がいたの!?」
「あぶなかったね……油断をしないようにしなきゃ」
「おぉっと、ボクとしたことが危なかったよ! キミもなかなかやるね、ジェフ!!」
「そうだね」
ネスの少々上から目線のような言葉に対してもジェフは冷静にそう返しつつ、歩き出した。 そんなジェフの姿に対しネスは首を傾げる。
「どうしたんだろ、ジェフ?」
今のジェフの態度にたいしての疑問を残しつつも、まぁいいやと済ましてネスは、先陣を切って歩き出していった。 プーとポーラも、それに続いていく。
洞窟の中に生息する、不思議な生命体は、引き続きネス達の行く手を阻むように執拗に攻撃を仕掛けてきた。
「PKファイアー!」
「PKフリーズ!」
「PKキアイ!」
ポーラ、プー、ネスのPSI攻撃が、大勢の敵を攻撃する。 そしてジェフが抱えていた、大型の筒状の兵器が追撃を仕掛ける。
「スーパーバズーカ、発射ッ!」
ジェフの一撃がいい感じにトドメとなったようだ。 そうしてこの戦いに勝利したことをネスは喜び、胸を張って歩いていく。 するとその先に宝箱があったので、ネスは興味本位でそれをあけ、中を確認する。
「うわぁ、豪華な腕輪だ」
「ホントだ」
宝箱に入っていたのは、金色の細かい装飾が施された腕輪だった。 非常に高価なものであることが一目でわかるその腕輪をみたプーは、目を丸くさせつつつぶやく。
「……まさか、ここにこんなものがあるなんてな……」
「なにか知ってるのかい?」
プーはその腕輪について知っていることを打ち明けた。
「大昔、王家の宝が4つほどあって、それが散り散りになってしまったという伝説があるんだ。 最初はただの伝説かと思っていたんだが……書物でみた腕輪がここに、現実として存在しているのなら、本物であることが証明される」
「そうだったんだ」
「じゃあ、これはプーが持ってたほうがいいわね」
「いいのか?」
「もちろんよ」
そう仲間達に言われ、プーは腕輪を受け取りそれを腕につけた。 割としっくりくることから、彼がこの腕輪を身につけるにふさわしい人物であることがわかる。 さらに、プーの話が事実だとすれば、これ以外に王家の宝が3つあるということになる。
「意外と冒険を続ければ、他の3つの王家の宝も見つかったりしてね」
「ああ」
全部そろえば、プーは完璧な存在になれるだろう。 そんな感じで今後の冒険に胸を躍らせていたネス達の前に、あの大きな光が立ちふさがってきた。
「おぉ、あれはあのときみた、大きな光だ!」
「よくきたな。 ここは6番目のお前の場所だ。 だが今は私の場所だ。 奪い返せばいい。 できるものなら」
「はいはい、わかってますよーっ」
同じ台詞を語る光に対しネスはそう適当に返事をしつつ、戦闘態勢に入る。 光の中から現れたのは、稲妻や嵐の力を持つ、2体の魂のようなものだった。 魂達は絡み合いながら、ネス達をにらみつけると、大嵐を巻き起こしてきた。
「きゃあ!」
「ぐっ……!」
4人はなんとか耐えてみせると、今度は相手は稲妻を放ってきた。 それは前に飛び出したネスがフランクリンバッジで弾いてみせ、それを相手が受けている隙をついてバットを振るう。 だがその動きは回避され、相手はネスにタックルを仕掛けて吹っ飛ばしてしまった。
「わぁ!」
「ネスッ」
「くっ!」
ネスが吹っ飛ばされた直後にジェフがレーザーガンを放って攻撃し、その間にネスはなんとか体勢を立て直した。 再びネスに向かって電撃が襲いかかるが、ネスは先ほどと同じようにバッジで弾いたため、無事だった。
「ポーラ!」
「ええ!」
「「PKフリーズ!」」
そして、反撃をするべくポーラとプーが同時に冷気のPSIを放ち、相手を冷気で包み込む。 その冷気にふるえているイナズマ・アラシは、冷気を払いつつ彼らを攻撃するつもりで、さっきと同じような大嵐を起こそうとする。 それに気付いたジェフは、ペンシルロケットを構えるとそれを5発放つ。
「ペンシルロケット5!」
そのペンシルロケットが相手に命中したことで、嵐の威力は軽減される。 今がチャンス、とにらんだネスは一気に接近して必殺の技を放つ。
「えぇぇーいっ! PKキアーイッ!」
その至近距離の攻撃系PSIが2匹に命中し、光の中に消えていった。 それで、この戦いに勝利をしたと確信を得たネスは、大喜びする。
「やったぁぁ! また勝てたぞー! 6個目の音もゲットしちゃおう!」
「とはいえ、さっき実は危なかったんだぞ!? わかってるのか!?」
「勝てたから結果オーライじゃん! そんなピリピリしないで、音をひろいに行こうよっ!」
「ああネス! まったくもうっ!」
ネスにはジェフの説教言葉が、聞こえていないようだ。
「ここが、ピンククラウドかぁ……」
ランマの雰囲気に合っているような、桃色の雲がただようその場所は、不思議と神経が落ち着き、浄化させるような感覚になる。 そうして心が落ち着いていくのを感じていると、ネスはそこに母の姿が見えた気がした。
「ママ?」
そうつぶやいたとき、彼の顔をポーラがのぞき込むようにその顔色をうかがってきた。
「どうかしたの、ネス?」
「な、なんでもない、大丈夫!」
そう慌てて首を横に振ったネスにたいし、ポーラはキョトンとしていた。 そんなポーラをよそに、ネスは音の石が暖かくなっているのに気付き、それを手に取り音を確認する。
「……うん、ピンククラウドの音がこの石に記憶されたよ!」
「じゃあ、目的達成ね」
「その通り!」
そして、4人はランマの国に帰っていったのだった。
その日、4人はプーの実家ともいえる宮殿でお泊まりをすることになった。 事情を知ったプーの側近・イースーチーはネス達を歓迎し、豪華な食事を彼らに振る舞い、寝る場所まで用意してくれた。
「でもまさか、プーが本当にこの国の王子様だったなんて!」
「驚いちゃったね!」
この手厚い歓迎と周囲のプーにたいする態度で、プーが本物のランマ王族であることを実感するネス達。 それにたいしプーは大袈裟だとやや呆れ気味に言うと、ネスはピンククラウドの洞窟に入る前にプーと約束をしていたことを思い出して、その話を突きつけてくる。
「そうだ、ピンククラウドを攻略したわけだし」
「ああ、話をしよう」
それは、プーの正体に関する話だった。 プーはその約束を果たすため、彼らと向かい合う形になって、口を開く。
「彼女たちが言っていたとおり……おれはこの国の将来を任された身。 いわば、ランマ王族の王子なんだ」
「なんで、それを隠してたの?」
「今は、必要ないからだ」
ざっくりと言い切るプーに対し驚くネス達。 プーは、冷静に話を進めていく。
「お前達が超能力と呼ぶ力……それをおれは生まれつき持っていた。 ランマの王族は国を守るために、力と精神力を鍛える必要がある。 そのために、幼い頃から厳しい修行をする義務があるのだが……おれの場合は、特に厳しい修行を受けさせられた」
「そうだったんだ」
彼の戦闘能力の高さの理由を知り、納得する3人。 きっと自分達の想像を遙かに超えることをしてきたのだろうと思いながら、プーの言葉に耳を傾ける。
「今、この状況下にあり天のお告げとやらがあり、こうしてお前達とともにあることで……何故おれが特別な力を持っていたのかを、理解したんだ。 おれは、ギーグとやら倒し平和を守る使命を、もとより背負っていたのだと」
「そうね」
「……だが……」
「だが?」
プーは、衣服を強く握りつつ、自分の胸の内を語る。
「……そこにおれは、王子という立場を持ち込みたくない。 おれが王子だと知られれば、おれは変に気遣われてしまうし、距離も離れてしまうだろう。 王族であることを特別視してしまい、それ故に調和が乱れてしまうことも……ゴマをすられることも、陰口をたたかれることも、おれは好まん。 自分が王子の立場を、王家の血筋を……利用することがイヤだと思っているから、なおさら……な……」
その言葉で、プーの心情を知ったネスとポーラとジェフ。 そんなとき、彼らは口元に笑みを浮かべ、ネスから順番に彼に声をかけていった。
「そんなこと、気にしなくていいよ! プー」
「ん?」
「そうね。 そりゃあ王子様なんて知ったときはビックリしちゃったけど……でも、プーはわたし達と一緒にギーグを倒すために冒険の旅に出てくれて、わたしと出会ってくれたんだものね。 なにより、一緒に戦っているときも、強くて頼りになるわっ」
「それに、あの食べ物の口に合うか合わないかのワガママを言わないところとか……僕達の話に耳を傾けたりするところとか、決して自分を強く出さないところとか……どれも王族をいいわけにせず一人の少年、一緒に戦う仲間としてみてくれてるって証拠だしね」
「キミがボク達を仲間としてみてくれるなら、ボクもキミを仲間としてみる。 キミが王族っていうのを持ち上げてほしくないなら、言わない」
そうポーラとジェフに続いて、ネスは彼に言う。
「だから、今後もプーはプーってことでいこうよ」
「そうね」
「そうしてくれ」
「そうだね」
互いの住んでいる場所も、学歴も立場も身分も、性別も年齢も、なにも関係はない。 ともにあるという強い気持ちが、彼らにはしっかりとあるからだ。
仲間達の関係性も大事にしてかいてるつもりですが…果たしてその様子を読んでくださってる方々に伝わるだろうか。