うまく物語を進めるにはこうするしかなかったんだ、ゆるせ…。
魔境と呼ばれる地に到着したネス達は、この地を攻略するために、沼の中を突き進んでいった。 途中でここに密輸のために訪れていた怪しい商人からすごい威力のありそうなペンシルロケットを購入したり、様々な敵と遭遇しては戦闘を繰り広げたりしながら、タカのめによって開かれた地を探索していく。
「ねぇ、ネス」
「どうしたの?」
「あそこ」
その途中、ポーラはあるものを発見しネスを呼び止めてその方向を指さす。 彼女が指し示した方向には、一機の墜落したと思われる、黄色いヘリコプターだった。 こんなところにヘリコプターがあるなんて、とネスは首を傾げる。
「ヘリ、コプター?」
「このヘリコプター、なんか……見覚えがない?」
「………」
ポーラに言われ、ネスは自分の記憶を探り出す。 そして、脳裏によみがえるのは大都会の景色、その中でも目立つ高層のビルの屋上。 そして、ヘリコプターに乗る金髪で太った少年の姿。
「ポーキー!?」
すべての記憶がつながったとき、ネスはこのヘリコプターを使ったであろう少年の名前を口に出す。 このヘリコプターがここに落ちているということは、ここにポーキーが足を踏み入れたということだ。
「あいつも、マニマニのあくま……さらにはギーグに関わってる可能性が高いんだよな……ということは、この近くにポーキーがいて、ギーグも近いと言うことなんだろうか?」
「たぶん……」
「ポーラ?」
ポーキーの話をしていくにつれ、ポーラの顔が曇っていく。 そんなポーラの変化に気付いたネスが顔色をうかがうと、ポーラは口を開こうとして閉ざし、そして彼に告げた。
「……思うことはいっぱいあるけど、ここじゃ少しはなしにくいのもあるし、魔境をさらに越えてから、言いたいことを言うね」
「なんだよ、随分ともったいぶるなぁ」
「ごめんね、ちょっと待っててね」
「しょうがないか、こんなところで長話もしてられないし。 今は先に進むことを優先しよう」
「ええ、ありがとう」
ネスはポーラに対し違和感を覚えつつ、彼女もこのまま隠すつもりはないそうなので、今は彼女の要望にしたがいこれ以上を追求せず、魔境を突破することを優先することにした。 早速それを実行すべく、ネスは動き出し、ポーラもジェフもそれについていった。
「……」
ただ、ジェフは黙っていた。 何故ならばスカラビの街の中をプーとともに歩いているとき、奇妙なものを発見したことを、思い出してしまったからだ。 周囲の人に話を聞いてからは、その発見したものを、ポーキーのなごりと呼ぶようになったことも。
「……ネスには言わない方がいいよな、うん……」
「ジェフ、どうかしたの?」
「なんでもないよ、大丈夫だ」
その時のことを悟られないように、ジェフはネスに笑顔を向けながらそう返事をしたそうな。
そのまま沼を突っ切るように突き進んでいたネス達だったが、その途中でありえない異臭を察知した。
「……うぐっ……!?」
「……やだぁ、なにこの変なにおいぃ……?」
「……な、なんかこのにおい、どこかで……」
一面が沼で覆われている魔境でも、異彩を放つ悪臭。 それに3人は苦しみつつも、同時にこのにおいに対し既視感を覚えた。 このにおいを、以前にも嗅いだことがある気がする。
「ぐぇーっぷっぷっぷっぷ……」
「……こ、この下品丸出しの気色悪い笑い声は……ま……まさか……!?」
その笑い声で、ネスは悪臭を放つものの正体を確信した。 姿を現したのは、ぶくぶくと時折泡立つ液体の体にぎょろりとでている目、大きな牙の生えた口…そんなおぞましい姿をした怪物であった。
「グケグケ……おまえたちはわすれたかもしれないけど、グケグケ……おれは、かえってきたゲップー!」
「ゲップー!?」
それは、かつてゾンビ達を操ってスリークの一帯を支配していたギーグの手下・ゲップーだった。 ゲップーは体を濁った緑色から濁った赤紫色へと変化させていた。
「むかしおまえと、たたかったことがある。 プハーッ! どうだ、おぼえているか?」
「ぐっ……」
「あのゲップーさまが、しゅぎょうをつんで、もっとつよくなって……ふっかつしたのさ! ゲローップ!! なまえもかえたんだ。 ゲロゲロゲロゲロゲロゲロ……」
「……ああもう、あんたが出てくるから気分は最悪よ……」
汚い言葉を連発する上ぐちょぐちょと音を立てており悪臭を放つ。 そんなまさに汚物以外にたとえようのない怪物に対し、ポーラは若干グロッキーな状態になって頭を抱えながら、そう呟いた。
そんなポーラを含め、ネスとジェフに対しゲップーは下水道のようなひどい口臭を放ちながら、言葉をはっする。
「ここでおとこっぽいせりふをいわせてもらうぜぇ……へどをはくまで、くるしめぇぇ!」
「どこが男っぽいんだよ! この汚物!」
「もう一度お前を、ぶっ飛ばしてやる!」
そういってネスは早速PKキアイを放ち、ジェフも立て続けにスーパーバズーカを発射する。 その連続攻撃にもゲップーは平然と耐えた。
「うそっ!?」
「負けないわよ! PKファイアーッ!」
今度はポーラが前にでて、熱気のPSIを放ちゲップーを攻撃した。 ゲップーはそれに苦しみ、体から触手を生み出してポーラを叩いてきた。
「きゃあぁぁっ!」
「ポーラッ!」
連続で触手にたたかれるポーラを救出するために、ネスはPKキアイを放ち自分達に注意を向けさせる。 その間にポーラもなんとか立ち上がり、ネスに襲いかかろうとした触手をPKフリーズで凍らせて動きを封じ、それにネスがバットでの一撃を加えた。
「食らえ! ペンシルロケット!!」
そこにさらに、ジェフがペンシルロケットを放ってゲップーに大ダメージを与えた。 その一撃を受けたゲップーは吹っ飛び、そこにネスとポーラは容赦なくPSIで追撃を与え、その場に大爆発を起こす。
「グゲェェェーーッ!!」
「やったか!」
ゲップーの悲鳴を聞き、その場に煙が舞い上がったことで、彼らは再びゲップーに勝てたのかと思いこんだ。
「ここで、くたっばってたまるかぁぁぁ!!」
「わぁぁぁぁ!?」
だが、そう簡単には行かなかった。 ゲップーはネスの足下から現れて、そのままネスを飲み込むようにして彼の体を自分の粘液で包み込んだ。 それにより、ネスは体の自由を奪われる。
「ね、ネス!」
「くっ……!」
ネスは必死にそれを取り払おうとするが、動きが柔すぎて振り払えない。 PKキアイを放ったりバットをふるいたくても、粘液からでる悪臭で気分を害されて、本来の力が発揮できない。
そんな状態のネスの背後にゲップーは現れると、ポーラとジェフに向かって笑い声をあげた。
「ゲゲゲゲゲ、ゲロゲロゲロ……! さぁさぁどうするぅぅぅ? このまま、こいつともどもこうげき、できるかぁ?」
「な、なんて卑怯な……」
「ど、どうしよう……!?」
ゲップーはこのままネスを盾にするつもりだ。 2人がそれを感じて動けなくなったころに、ゲップーは攻撃のチャンスとにらみ、そのままポーラとジェフを、ネスを包んでいるものと同じ粘液を放って彼らの動きを封じた。
「うわぁ!」
「ポーラ、ジェフッ!」
「……ぁ……ぅあ……」
しかもポーラとジェフを包み込む液体は、2人の全身を包んでいる。 顔まで包んでいる以上呼吸ができなくなっており、このままでは息ができなくなってしまう。 さらに悪いことに、彼らの体は引きずり込まれるように、ズブズブと沼の中に沈んでいった。
「く、くそぅ……! ぐぁぁぁ……!」
このままでは自分はゲップーの中に沈んで行くし、2人の身も危ない。 なんとかしてこれを取り払い、抜け出さねば。 ネスは必死にあがく。 いくら最悪な悪臭といえど、このにおいを気にしたらダメだと自分に言い聞かせて、ネスが力を振り絞ろうとした時だった。
「PK……サンダーッ!!」
「えっ!?」
「ぐぎゃあぁぁぁぁ!?」
突如真上から雷が落ちてきて、ゲップーを攻撃した。 その電撃はフランクリンバッジを持っていたネスには効かず、彼を包む粘液にのみ効果を発揮したようであり、ネスはそこから解放された。
「うはっ……はぁ……はぁ……!」
「……う、く……苦しかった……!」
「いったい、なに、が……?」
同時に、ジェフとポーラも粘液による拘束から解放されたようだ。 どうやらこの粘液はゲップーが操っていたと言うだけあって、ゲップーが大ダメージを受けたことで力が弱まったようだ。 それにより3人は解放された。
だが、誰が自分達を解放してくれたのだろうか。 疑問を抱いていた3人の前に、見知った顔の少年が現れた。
「プーっ!」
それは、しばらく修行をするために自分達とは別行動をとっていた仲間・プーだった。 プーはネス達の前にたち、ゲップーをにらみつける。
「なんだ、きさまはぁ」
「貴様ごときにおれの名を知る権利はない」
怒りを露わにしたゲップーに対し、プーは冷徹にそういい放った。 それによりゲップーの中に怒りがたまっていき、プーはさらに言葉をつなげていく。
「彼らにはこれ以上、手出しはさせない……いや、貴様はもう、誰にも手出しはできない! 今ここで、おれが葬るからだ!!」
「なにをぉぉお? ゆるせん、ころすっ!!」
プーの挑発ともとれる言葉の連続に、ゲップーは怒り狂い、プーに襲いかかってきた。 このままでは彼が危ない、と思ったネスは彼の名前を叫ぶ。
「プーッ!」
「……集え、星の力よ……」
だがプーは一切動じることなく、なにかを呟くと、その手に巨大な力をためて天に向かって解き放つ。
「PKスターストームッ!!」
そしてプーが、その技の名前を叫びながら手を大きく振り下ろすと、それと同時に星形の力の塊が空から激しく降り注ぎ、ゲップーに襲いかかった。
「ぐぁぁぁぁぁぁっ!!」
その攻撃を受けたゲップーは、星が命中したところから蒸発するように身体が消滅するのを感じながら激しい断末魔をあげた。 焼けるように溶けて蒸発するように、激しい痛みはゲップーを苦しめ、やがてゲップーは光とともに消滅する。
「………」
「……かった……」
「すごい……なんて、力なの……」
ゲップーが敗れ去り、PKスターストームの威力を目の当たりにした3人は呆然とする。 そんな彼らに対し、プーは振り返ると彼らの安否を気にしながら癒しの力を解き放つ。
「大丈夫だったか!? 待ってろ、今すぐに回復をするからな!」
プーは一人ずつ確実に体力を回復させていきつつ、全員がなんとか無事であることを確認する。 だが、ネスの顔がキョトンとしていたので、プーは彼にだけなにかあったのではないかと心配をした。
「おれは……間に合ったのか? それとも……手遅れだったか?」
「どっちでもいいよ、そんなもん!」
ネスはプーに、勢いよく抱きついた。 わ、とよろめくプーにたいし、ネスは嬉しい気持ちを全力でプーにぶつけてくる。
「タイミングのおそいはやいなんて、どうでもいいんだよ! キミが駆けつけてくれて、嬉しいんだからさ! しかも、あんなすっごい技もひっさげてきて……!! ボク達を助けてくれて……よかったよぉ!」
「もう、ネスってばオーバーね……。 でも、プー! きてくれてありがとう! あなたのおかげで、助かったわ!」
「今の戦いはもちろん……また君と冒険できるのが、心強くて頼もしいよ!」
プーに満面の笑顔で抱きついているネス、その後ろでプーとの再会を大きく喜ぶポーラとジェフ。
「……やれやれ、だな」
やや大袈裟ながらも自分の帰還を心から喜んでくれるネス達に対し、プーはまんざらでもない笑みを浮かべたのだった。
そうして無事に合流を果たしてゲップーを打ち倒した4人は魔境でも安全そうな陸上の小さな洞窟にはいり、そこで野宿をすることになった。 その洞窟の中には幸いにも、キレイな泉があったのでそこで軽くからだを清め、汚れた服を着替えることができた。
「はぁ、魔境探検も大変だったわね」
「まだ道は長い……今日はここでゆっくり体を休めて、一気に突破をしよう」
「そうだね、ゲップーとの戦いでだいぶ疲れたもんね」
「ヤツがいなかったら、僕達は今日で魔境を突破できたのになぁ……」
そう魔境での記憶をめぐりつつ、ネス達はプーの方に話を向ける。
「それにしても、プー!」
「ん、なんだ?」
「さっきゲップーを倒したあのPSI、すごかったね! あれが、キミが修行で身につけた、星を落とす方法っていう大技なの!?」
「ああ、PKスターストームという技だ」
プーはネスの言葉に頷き、修行の話をした。 かつてランマで自分が受けていたものよりきついスケジュールで修行をしていたこと、改めて自分の、王子とはまた違う運命を実感させられたこと。 その修行の内容は、想像を超えるものだったので、ネス達は目を丸くしていた。
「そんな厳しいことをしてきたの?」
「ああ、無茶だとあの老人にも言われた。 ふつうは長い時間をかけてじっくりやるものだったのを、おれは短い期間に一気に積めてやったからな……。 彼が言うには、それでは体をこわしかねないと言わせるものだった……実際にやってみて、厳しいものばかりだったからな」
「なんで、そこまで……そんな、へたをしたら君自身が危なくなるような真似を……」
話を聞くにつれ、今のプーの状態にたいする不安を覚えたようだ。 彼を心配してそう問いかけると、プーは3人の顔を見て、答えを出した。
「お前達のためだ」
「えっ……」
「お前達のことを考えたら、おれ自身もいてもたってもいられなかった。 必ず修行を果たして、再びお前達とともに旅をし、戦うと誓った……そんなお前達を……おれを王子ではなく一人の仲間としてみてくれたお前達を、おれはそのままにしておきたくなかったんだ」
短い時間に一気に修行を積めて乗り越えたのも、そしてあの場に駆けつけて、修行で得た力を発揮したのも、プーからすればすべて、ネス達のためだったのだ。 そこには、自分を尊重してくれた彼らにたいする、プーの思いがあったからである。
「……幸いだったのは、本当にその修業の果てに、目的だった"星を落とす方法"……すなわち、PKスターストームを、予定より早く会得できたことだ」
「……プー……」
「だから……間に合って、駆けつけて……助けられてよかった……」
そう語るプーの表情は、本当に安堵しているからこその表情だった。 そんな柔らかく暖かい顔もできるのだと彼らはおもいつつ、改めてプーが仲間として合流できたことにたいする喜びを伝える。
「プー!」
「ん?」
「ありがとう、それと」
「おかえりなさい!」
「……ああ……ただいま、といえばいいか?」
4人はそう言葉を交わしあい、笑いあうと、それぞれで値支度を整えて早く寝た。 明日こそ魔境を突破する、4人そろった今ならできるという自信が、彼らを休ませるのだろう。
「……ふふ……」
プーは、自分よりも先に眠りについた彼らを見つめつつ、安堵したほほえみを浮かべていた。 そして、彼らを本心から守りたいと願いながら、プーも遅れて眠りについたのであった。
というわけで、また4人がそろったので、このパーティーで冒険が進みます。
ようやくここまでこれたな…。