今回はオネットイベントその2とその3。
あの警察の無能さと市長のやらしさは妙にリアルな感じがするのはなんでだろう。
シャーク団のボス・フランクとの勝負に勝利したことでシャーク団をおとなしくさせたネスは、その謝礼としてジャイアントステップへ進むためのカギを、市長であるゲーハー・ピカールから受け取った。
「もしそこでキミがどんな目にあっても、私に責任を……追求しないでね」
と、ネスにカギを渡すとき市長はそう懇願してきた。 その言葉をネスは適当に流し、カギを受け取ってすぐに市役所を後にした。
「得しないよね、あの市長」
ネスは市長に対しそれだけの感想を残すと、ジャイアントステップのカギを握りしめて、そちらへ向かう。
道中では購入したハンバーガーとオレンジジュースを口にして休憩をしたりもしたが、ネスは歩みを止めたりしない。 午前中でシャーク団との激闘を経験し、午後にはこれからジャイアントステップをクリアすることが、今のネスの目標だ。
「だいぶ力も体力も戻ったし、この調子でガンガンいっちゃえばいっかぁっ!」
そして、今。
オレンジジュースとハンバーガーで元気を取り戻したネスは、再び歩き出した。 そうして彼は無事にジャイアントステップに到着し、カギを開けてそのジャイアントステップに足を踏み入れる。
「ここがジャイアントステップに続く洞窟かぁ……。 思えば、昔からオネットにあるのに、一度も入ったこともなかったなぁ」
意外と身近な場所ほど足を踏み入れたことがないスポットというものが存在するものである。
ネスはそれを今、ここで体感した。 ここが自分と地球の力を一体化させて、悪の親玉たるギーグを倒すための力を得るための、パワースポットなのだろう。 何故そのような場所で、何故自分だけができるのだろうか。 ネスには疑問が募るが、今はそれどころではない。
「どんなことを考えるにしても……」
ネスはぐ、と音の石を大事そうに握りしめた後、顔を上げた。
「ここにきた以上は、クリアしないと!」
自分でこうすることを決めたのは、結局自分なのだから。 だから、この洞窟はなんとしてでも突破するべきなのだろう。 ネスは、そう自分の覚悟を確認して、洞窟の中を突き進むのであった。
「うっへぇ、きもちわるっ」
ねっとりとした液体にまみれたバットを、わき水で洗うネス。 この洞窟には奇妙なナメクジが多く生息しており、皆ネスを見かけたとたんに襲いかかってきたのだ。 ネスはバットをぶんまわしてナメクジを追い払ったり倒したりしてきたのだが、そのときナメクジの粘液がバットにまとわりついてしまったらしい、バットはぬめぬめしてしまったのである。
「あー……塩でももってこればよかった……」
あのナメクジ達に塩でもかけてしまえば、簡単に勝てそうな気がした。 だが今からここをでて塩を買いに行くにしても、それでは非常に手間がかかる。 なんとしてでも今日のうちに、このジャイアントステップを攻略したいネスとしては、その手間はかけたくないものであった。
「とかいってたらまたきたしっ! あっちいけってば! しっし!」
「チューチュー!」
「ネズミも出てくるなぁぁ! しっし!」
なめくじだけでなく、ネズミもこのジャイアントステップに多く生息しているらしい。 彼らもバットを振り回すことで追い払っていき、ネスは洞窟をさらに奥へ進んでいった。
「んっ?」
そして奥に進んだネスは、洞窟の中であるにも関わらず不自然に明るい場所があることに気付いた。 それに不信感を抱いたネスは、そこに向かって走っていく。
「光のかたまり?」
その先にあったものを、ネスはそう表現した。 そこにあったのは、ネスの言ったとおりのもの…大きな光が集まった球体が、洞窟の穴の前に立ちふさがるように存在していたのだ。 これはなにか怪しい、と直感でかんじたネスは、その光の前にでる。 普通の人ならおそれて逃げ出すところだが、ネスはそんなことはなく、堂々と光の前にでた。
「……よく、きたな」
「!?」
ネスが自分の前に立ったことに気付いたのか、光は突然言葉を発した。 驚くネスの前で、光はそのまま言葉を発し続ける。
「ここは、一番目の『お前の場所』だ。 だが、今はおれの場所だ」
「……そこを、よこせ!」
「奪い返してみるといい……できるものならばな」
「やっぱり、そういう展開ってわけなんだね……」
マンガやゲームでありがちな展開だと、ネスはその口に自然と笑みを浮かべ、強気な表情を浮かべてバットをその光に向ける。
「上等だよ、かかってこい!!」
そうネスが言うと、光はその姿を見る見るうちに変えていった。 そうしてネスの前に、別の姿で現れる。
「巨大な……蟻……!」
ネスの言うとおり、それは巨大な蟻だった。 その巨大な蟻にひかれたのか、この洞窟に生息していた大きめの蟻が群をなして、そのキョダイアリに群がっていく。 相手は大勢いるんだな、と悟ったネスは、自分の力を一点に集中させ、PKキアイを放つことで蟻の群を一掃した。
「いっけぇ!!」
残るはキョダイアリのみ、となったところでネスはそのキョダイアリに向かってバットで殴りかかった。 それでキョダイアリにまずはダメージを与えることに成功するが、そのまま反撃としてキョダイアリの複数の足がネスに襲いかかる。
「うわぁ!」
虫の足はネスに細かい傷を与え、さらにたいあたりをしかけてネスを吹っ飛ばす。 ネスは後方にふっとばされたが、すぐに立ち上がって見せた。 そんなネスに向かって、キョダイアリは再びたいあたり攻撃を仕掛けてくる。
「この!」
ネスはそれを打ち返そうと、バットを振り回してキョダイアリのたいたりをバットで受け止める。 そこから、まるで剣の唾競り合いのような展開に転び、ネスは持ちこたえつつ声を上げた。
「負けるもんか、負けるもんか!! ボクは……お前を倒して、ジャイアントステップに! ボクの場所に行くんだ!」
そう声を上げたことでネスの中に力がみなぎったらしい、ネスのバットがキョダイアリを吹っ飛ばし、キョダイアリを壁にたたきつけた。
「PK・キアイッ!」
そして、ネスはキョダイアリにとどめの一撃を与える。
「グォォォォォォオッ!!!」
そのPKキアイの力に飲まれ、キョダイアリはそのまま消滅していった。 ネスはこの闘いに勝利したことにたいし、笑みを浮かべてうなずいた。
「OK! 勝てたっ!」
そうしてキョダイアリを撃退したネスは、自分だけの場所とされる、ジャイアントステップにたどり着いた。
「ここが、ジャイアントステップ……」
巨人の足跡、という名前の通り、そこにはネスの数倍の大きさはあるであろう足跡が存在していた。 自然にできたくぼみが偶然足跡のようになったものであるという説もあれば、本当に巨人がそこを踏んだことで生まれた足跡であるという説もある。 そんな場所に、ネスは降り立った。
「不思議な気持ちになるな」
と、ネスはその場所に対する感想を口にする。 そして、ネスはそこで自分の目の前に小さな尨犬の姿を見たような感覚を覚える。
「今の……ちっちゃな頃の、チビ?」
その犬はまさか、チビなのだろうか。 そう感じたネスだったが、その犬の姿はすでに見えず、かわりに音の石が光る。 それを握りしめてみると、自分の中にメロディーが流れてくるのを感じた。
「なにか、音が入ったみたいだ」
とりあえず、ここでの目的は果たしたんだ。 ネスはそうおもい、ジャイアントステップをあとにした。 これと同じことを、あと7回やる必要があり、また7つ見つける必要もあるのだろうと、思いながら。
ジャイアントステップをでたネスは、警察に見つかってしまった。 立ち入り禁止の札を無視したとして、警察署に呼び出すというものだった。 突然すぎる展開についていけないネスだったが、警察はそんなネスの心境を無視して彼を警察署に連れて行ってしまった。
「ちょっと、ボクを呼び出すなんてどういうこと!?」
ネスは警察に対し、そう怒号をとばした。 その声は警察署の外まで聞こえており、町の人たちは警察署を白い目でみてくる。 そんな町の人たちの目線に気付いたのか、警察官達はそろって窓のカーテンを閉め始めた。 そんな彼らをネスはにらみつけつつ、彼らにさらに事情を尋ねていく。
「だいたい、ボクはシャーク団をおとなしくさせたから、市長にカギをもらってあそこに入ったんだぞ! 責任を問うなとは言われたけど、だからといってこれでボクがわざわざ立ち入り禁止を破ったことにはならないだろ!? どういうつもりなんだよ!! ちゃんと説明しないと納得できないよっ!!」
「ああわかったわかった!! 話をするからおとなしくなれ!!」
観念した警察官は、そこから立ち入り禁止の意味を説教してきた。 そこには税金に関する話も入ってきて、ネスは少しあきれていた。 これでは説明と言うよりただただ愚痴をこぼしているだけだとネスはおもう。
「話はそこまでにしないか」
「なんだと……って、ショチョーッ!!」
「署長?」
話を止めてきた人物が署長だと気付いた警察官は、彼に対しペコペコと頭を下げてきた。 そして署長はネスの方をみた。
「そもそも今は非常事態で、あちこちを封鎖してオネットの町を守っているのだ。 子供は子供らしく、うちでニンテンドーをやっていればいいのだ」
「……そうかもしれない。 だけど、ボクはどうしてもジャイアントステップにいかなきゃいけなかったんだ! そして、これからどうしても、ツーソンにいかないといけないんだ! だから、ジャイアントステップにもカギをもらっていったし、あなた達にもお願いをしてツーソンの道の封鎖もときたいと思っていたんだ!」
「………」
「警察官として……ギネスと安全、どっちが大事なんだ! 警察の偉い人なら、答えてみろ!」
ネスの言葉を生意気だと感じた警察官はネスの胸ぐらをつかんできた。 だがそれでもネスの強気な姿勢と表情は崩れず、それをみた署長は警察官の腕をたたいて、ネスを彼から解放した。
「君には、どんなことになってでも先へ進むという覚悟があるというのだね?」
「うん」
「……いいだろう。 その覚悟を示すため、私についてきなさい」
署長に言われ、ネスは彼と共に奥の部屋へはいっていった。 そこには、5人の警察官が集まっていた。
「どうしてもツーソンの道をあけたくば、彼らとの闘いに勝利してみるといい!」
「……え」
「君の覚悟を、我々に示してもらおうか!」
それをきいたネスの顔は今、チベットスナギツネのような顔になっているのだろう。 そして、ボキボキと余裕の表情で待ちかまえる警察官たちにたいし、ネスは自分の中の力を一点に集めていった。 その気配を感じた警察官たちは、戸惑う。
「な、なんだ?」
「大人気なさすぎだろ税金泥棒どもぉぉぉっ!!」
そうネスは怒りとツッコミを含んだ大きな声を上げ、警察官をPKキアイで一掃してみせたのだった。 それにより警察官はボロボロになり、余波を受けた署長がネスに挑みかかるが、ネスは密かに目覚めさせていた技・PKシールドで物理攻撃を防ぎつつ、署長の鳩尾にバットをクリーンヒットさせた。
「……ここまでの力が君にあったとは……我々の完敗だ。 ツーソンの道は明日にでも開くだろう。 事情や君の素性はあえて聞かないでおくとして、今後の武運を祈るよ……」
「うん、ありがとう!」
警察官を相手に圧勝して見せたネスは、スッキリしたように満面の笑顔を見せて、そう言ったのだった。
そうしてネスは一日の激闘を終え、疲労感を全身に感じながら、傾いている日をみつめて呟く。
「あーやれやれだな……今日は、家に一旦帰ろうかな」
旅立ちを宣言したばかりなのに、実家に帰るのはいかがなものかと自分でも思うのだが、ホテル代の節約にもなるしなにより安心できる。
「……恥ずかしくても、お金の節約になるからまだいいよね、マシだよね」
そうつぶやきながら家の近くにきたネスは、一人の男の子に声をかけられる。
「あれ、ネスだ」
「ピッキー?」
それは、ポーキーの弟・ピッキーだった。 ピッキーは、ネスに声をかけてくる。 あることを尋ねるために。
「ねぇ、ポーキー兄ちゃんをみなかった?」
「え、ポーキー? いいや、みてないけど……」
「そっかぁ」
わざわざ兄の行方を聞いてくると言うことは、家にいないということだろうか。 ネスは疑問を抱きつつ、ピッキーにそのことを直接問いかける。
「もしかして、今家にいないの?」
「うん……突然、家を飛び出したみたいなんだ。 置き手紙もなにもなくて、パパやママになにもいわずにいなくなっちゃったんだ」
「えぇ!?」
それをきき、ネスは驚く。 いくらなんでもポーキーがなにも言わずに突然姿を消すなんてありえない、と。 両親ならともなく、弟にもなにもわないなんて。 少し心配そうにしているピッキーに、ネスは自ら協力を申し出てみた。 まだポーキーが近くにいるかも知れない、と思いながら。
「これから一緒に探してみる? ボクも手伝ってあげるから」
「……ううん。 もうすぐボクも門限だし……そもそも勝手に出かけたり、門限を破ったりなんかしたら、またケツたたきにあっちゃうから。 今パパもママも、お買い物してるんだけどね。 心配だけど、今日はもうあきらめるよ」
「……そうなんだ」
ミンチ家は親が好き放題しているにも関わらず、子どもたちにはそういう厳しい話を持ちかけてくる。 ピッキーも本当なら、今からポーキーを探しにいきたいところなのだろう。 彼の複雑な状況に少しあわれみを覚えたネスは、せめてもの助け船を彼に与える。
「まぁもしボクがポーキーを見つけたら、帰るように説得してみるよ。 だからピッキーは、ポーキーの帰りを待ってて。 もしなにかあったら、ボクの家を頼ってもいいし、ボクやトレーシーに相談するといいよ。 今は、自分の身を守っててくれ」
「……うん、ありがとう」
ネスの言葉を聞いたピッキーは少し心が軽くなったらしい、少し笑ってそう答えた。 そしてネスにお礼を言いながら家に帰っていき、残されたネスはピッキーの言葉を気にしていた。
「ポーキーがいなくなった……か……」
その言葉になにか、ひっかかるものを覚えたが、今はなにも手がかりがないので、その異変を心に留めておくことにした。 そうしてネスは自分の家の扉を開ける。
「ただいま」
「あらお帰りネスちゃん」
「お兄ちゃんお帰り!」
家にはいると、ママもトレーシーも、まるで何事もなかったかのようにネスを受け入れる。 それがネスにとってはありがたく思えた。 そうして手洗いとうがいをすませ、夕食の席になったとき、あることに気付いたトレーシーがネスに話題を持ちかけてくる。
「そういえばお兄ちゃん、冒険の旅にでるんじゃなかったの?」
「うん、そうしたかったんだけど……もうオネットの冒険だけでくたくたになっちゃって……」
「そうだったの」
不良軍団を撃退し、洞窟一つを攻略し、警察官をぎゃふんといわせる。 それを一日でやって疲れないはずがないし、それで疲れたと言われても誰も否定はできないことだ。 そしてネスは、今日はあっさり帰ってきたことに対し、自分に情けなさを覚えてそのままを口にする。
「せっかく堂々と旅立ちを宣言しておいて、一日で帰ってくるのは少しかっこわるいかなとは思ったんだけどね……」
そう苦笑しつつハンバーグを食べるネスに、ママは思ったことを口に出した。
「ママはネスがかっこわるいと思わないわ」
「え?」
「ネスががんばったことは、ネスの顔を見ればわかることだもの。 あなたのがんばりを、かっこいいとか悪いとかで片づけるつもりはないわ。 それに、ここを帰る場所としてちゃんと認識してもらうのは、ママにとっても嬉しいことなのよ」
「……ママ……」
「最初はいつでも家に帰ってきていいのよ。 貴方にはこれからどんどん頑張ってもらえれば、自分で決めたことをちゃんとやる気でいれば、何度振り返ることになっても、全然いいのよ」
そう堂々と答える母に対し、ネスは自然とその顔に笑顔を浮かべていった。 そして、ネスはそんなママの愛情を受け取り、お礼の言葉を口に出した。
「ママ、ありがとう!」
「親として、これくらいはできて当然のことよっ」
ネスのお礼のママはそういって、得意げにウィンクをしてみせた。
次回はツーソンに突入します。
のんびり更新でいきますね。