ここではトンデモな異変が起きていますが、そのことには一切触れないようにかいています。
なので、心が広く精神がしっかりとした、頭のいい読者さんも、気にすることなく一切触れないようにお願いしますね。
「……あれ……ここ、どこ……?」
気がついたらネスは、全く知らない場所にいた。 その世界に戸惑いつつ、気を失うまでのことを必死に思い出すネス。
「えぇっと……ボクはたしか、ファイアスプリングにいって……そこで、最後の音を見つけて、8つのすべてのメロディーをそろえて……音楽を聴いて……そのまま……」
そこでネスは、共に戦ってきた仲間達のことを思い出した。 ポーラ達のことを。 彼らは今、どうしているのだろうか。 そう思ったネスは、一刻も早く仲間の元に戻らねばと立ち上がる。
「ボク、早くポーラとジェフとプーのところに戻らないと……」
そう自分を奮い立たせて、このどこかメルヘンチックな世界を抜けていこうとしたネスは、そこにいた不思議な老人に声をかけた。 その老人はまるで、以前にプーに修行をつけさせようとしていたあの老人にソックリだったが、気にせずに話をきくことにした。
「あの、ここってどこなんですか」
「おお、ついに目覚めたようじゃな」
「めざめたね」
「えっ」
そこにさらに、以前に見かけたような黒いウサギもあらわれて、話に加わってきた。 そして、ネスが目を覚ましたことに気づいた彼らは、そのままこの場所についての話をする。
「ここはマジカントの国。 君のこころが生み出した国」
「マジカント……」
「ネス、お前は地球の8つのパワースポット、全てに立った」
「う、うん」
「そのことが、このこころの国……マジカントを生み出す条件だったのじゃよ」
どうやここは、マジカントというらしい。 こころの国とはどういうことだろうか。 これができることによってなにが起きるのだろうか。 ネスは、それを確かめるために引き続き、老人の話を聞く。
「このマジカントにはお前のこころの中にある、美しさも優しさも、悲しみも憎しみも……むろん、邪悪なものや凶暴なものもあるのだ」
「……」
「そして、その中心に真理につながる……エデンの海が、存在しているのだ」
「エデンの海……」
そこが、これから自分が行くべき場所なのだろうか。 そのエデンの海という場所が、今の自分にとっては重要な場所なのだろうか。 予感と疑問を募らせるネスに対し、黒いウサギはいう。
「ゆっくりと自分のこころを探検してみなよ、ネス」
それだけをネスに言い残して、黒いウサギはぴょんぴょんと跳ねながら、その場を離れていった。 呆然としながらネスは、気を失った直後にみた夢のことを思い出す。
「そういえば、なんだか……とても懐かしくて、あたたかいような、フシギな夢を見た気がするなぁ……」
なにはともあれ、ここが自分のこころの中の世界ということで、あの黒いウサギが言っていたように、自分のこころがどんなものをかを今一度、マジカントを探索することで知っていくことにしたネス。 まず最初に彼が発見したのは、あの人物だった。
「あれ……トンチキさん……!?」
「ネス!」
それは、フォーサイドで別れた泥棒の、トンチキだった。 ネスはあれが、トンチキとの最後の会話だったから、こころの中の世界とはいえ、もう一度会えると思っていなかった。 驚きを隠せていないネスに対し、トンチキは笑って言う。
「ネス、お前は……いやがるかもしれないけれど、お前って、若いときの俺ににてるんだ」
「え、そうなの?」
「オレにはもう、なにもすることもできないけどさ……ネス、がんばってくれ!」
彼の遺志、自分はこれからも受け継いでいくべきなのだろう。 そう、再びトンチキの姿を見たことでネスは改めて思い、少し顔をうつむかせた後でうなずき、顔を上げる。
「うんっ、がんばる」
ネスが顔を上げたときには、そこにはもうトンチキの姿はなかった。 きっと、この言葉は届いているだろうとネスは信じて、さらにマジカントを進んでいくと、その先には予想外の人物がいた。
「ママ、トレーシー、チビ!?」
そこには、ネスの家族がそろっていたのである。 まさかここで会えるとは思っていなかったネスは最初こそ驚いていたものの、このマジカントがなんなのかを思い出したネスは、納得した。
「……ま、まぁ……ここがボクのこころの中って言うくらいだから、いて当然か……」
やや無理矢理な気もするが、それで納得するべきだろうと気を持ち直し、そこにいる母と妹に声をかけていく。
「ネスおにいちゃん!」
「トレーシー」
「マジカントのずっと奥に、エデンの海があるわよ。 他の人には近寄れない不思議な場所なのよ。 がんばってそこへ向かって。 わたしにしてあげられることがあったら、いってね」
「うん、でも大丈夫だよ」
「なーんだ」
相変わらず小さいながらもしっかりとした妹だ、とネスは苦笑しつつ、隣にいた母親にも声をかける。
「ママ」
「まぁ……どうしたのネス、冒険の旅に疲れたの?」
「だ、大丈夫だよ、ママ」
「そうよね、疲れたなんて言ってられないわね。 しっかり、ネス! ファイトよ、ファ・イ・ト♪ ネス♪」
「うん」
明るくて優しい母に、ネスは気持ちが軽くなった。 そして一緒にいるチビにも声をかけてみると、チビはネスが生まれるよりずっと前からあの家にいたのだと言ってきたのだ。 そんな自慢話を聞きつつ、ネスは家族の後ろにある黒電話に気づく。 その黒電話が、自分の父親の印象なのかもしれない、とネスはすぐに気づいた。 それと同時に、むなしさを覚えながら。
「自分のことながら悲しい」
そう、黒電話状態の父親に対し、ネスは悲しい気持ちになったのだった。 とにもかくにも、ここには家族の姿があるので、旅の途中でよく自分が陥っていたホームシックの心配はないだろう。 そうして彼はマジカントを隅々まで探索した。 懐かしいものや不思議なもの、中にはいてほしくないようなものにまで遭遇しながら。
「ゾンビやゲップーまでいるのかよぉ……どうなってるんだよ、ボクのこころってやつは……」
ほかにも学校の友達や知り合い、動物達の姿を見かけて声をかけていった。 彼らに対し懐かしさを覚えつつ、ネスはやがてある少年に遭遇する。
「ぽ、ポーキー……」
それは、今自分とは敵対関係にある幼なじみ…またのなを、最悪の隣人である、ポーキーだった。 彼とは因縁があるし長いつきあいと言えばつきあいなので、自分のこころに印象強く残っててここにいてもおかしくないかもしれない。 そう思いながらネスがポーキーの前に立つと、ポーキーはソファに腰掛けながら、ポツポツと語り出す。
「……ネス……おまえは、いいよな……なんか、おまえがうらやましいよ」
「……」
「……おれなんか、ダメさ。 だけど、ネス」
「ん?」
「……ま、いいよ。 いつまでもやっていこうぜ。 な」
その言葉に秘められたメッセージに対し、ネスはどう反応をすればいいのかわからなくなる。 そんな彼にいってあげられる言葉は、ただ、これからの決着の付け方だ。
「今キミがどこにいるかはわからないけど……取り返せるか取り返せないか……決着をつけて、ハッキリさせないとダメだね」
この先戦うなら、必ず決着はつくだろう。 そうすれば、これから彼との関係がどうなっていくのかにも、どうしたらいいのかなども、答えがみつかる。 ネスは、彼のこともなんとかしなければならないと改めて実感し、そこにいる彼に誓う。
「絶対に、決着をつけよう……!」
そうポーキーに伝えるようにして、ネスはそこから立ち去っていった。 そのとき、ポーキーの表情に変化が起きていたのだが、それには誰も気づいていない。
そうして歩いていった先で、ネスは小さな墓を発見した。 墓標には、ブンブーンという名前が書かれている。
「ブンブーン……」
あの日のことを思い出す。オおネットのはずれに隕石が降ってきたあの日のことを。 自分は隕石と共に現れた小さな虫に、自分の運命を告げられて、宇宙人と遭遇して力を借りて、そして音の石とそれに力を宿す方法を最後に、ブンブーンは死んでしまった。 ポーキーの母親に殺されたのだ。
「……ブンブーンの言うとおり、ボク……音の石を持って、パワースポットを巡ってマジカントを展開させて、ここにいるよ。 見てくれているかな?」
ネスはそっと、ブンブーンの墓に語りかける。
「ボクはブンブーンの予言通り、最高の仲間に出会えて……一緒に強くなって仲良くなって、がんばってきたんだ。 ボクたちでブンブーンの遺志を受け継いでいるし、ギーグも必ず倒してみせるから……だから、ずっと見守っていてね」
そう天国にいるであろうブンブーンに告げたネスは祈ると、そこを立ち去っていった。 奥の方にはいくつもの奇妙な敵がいたので、心強い仲間になるであろう不思議な鳥人間・フライングマンを仲間にして一緒に戦いつつ、彼はある場所を目指す。
「この先が、エデンの海なんだね?」
「うむ」
ネスは直感で感じた。 その道の先に、エデンの海というのが存在していることを。 そこにいた仙人風の老人に確認をとると、老人はネスにエデンの海についての話をしはじめる。
「エデンの海は、究極の知恵が渦巻いているところ。 並大抵のことでは、そこへはゆけぬ。 宇宙の真理に一瞬だけふれることができる場所だ。
だが、そこへ行くことが……お前の不幸になるかもしれぬぞ」
「……」
老人に言われ、ネスは一瞬戸惑うが、それでもエデンの海に行くことをきめる。
「たとえ怖くても、自分のことなら立ち向かわなきゃ……ボクが、いかなきゃ、なにも変わらない。 不幸だって、乗り越えてみせる。 それを、やりたいんだ」
「……」
老人はネスの言葉を受けると、それ以上はなにも言わなかった。 老人の言葉を受けてネスはエデンの海を目指して突き進む。 途中の敵を退けながら。
「うごぉ!」
「フライングマンッ!」
だがその途中、敵の猛攻と激しい連戦でダメージがたまっていたフライングマンが、ついに限界をむかえたらしく、倒れてしまった。 慌ててネスが敵を打ち払い、フライングマンに駆け寄ると、彼はネスに最期の言葉をつげてきた。
「だいじょうぶ。 ここで死んでも、悔いはない。 私はあなたの勇気だから……私が死んでも、勇気は死なない。 誇って進め」
「……うんっ!」
それにたいしネスは力強くうなずいて返し、フライングマンが完全に消滅するまで看取った後、再び歩き出した。 そうして彼は道の奥にある不思議な柱を見つけ、それにふれる。
「わぁ!?」
ふれた瞬間にネスは、さっきまでとは全然違う場所にとばされた。 全身が水に浸かっており、ここがエデンの海なのか、とネスは察して周囲をみる。
「ここに、ボクのこころの中心があるって言うのか……」
ゴクリ、とネスは生唾を飲み込む。 自分のこころの中心にあるもの、と、その正体にたいし鳥肌が立つほどの不穏な予感がしたのだ。 その真実はネスに不幸を与えるかもしれないとも言われたのもあり、ネスは今まで以上に緊張していた。 それでもネスはその不安を振り払い、その正体を確かめるためにエデンの海を進んでいく。
「グゲェェェ!」
「うぎゃああ!?」
海の中をズンズンと歩いて進んでいった先に、自分が恐怖を覚えた存在といえる、クラーケンがいた。 幸いにもクラーケンはおたけびこそあげているものの、ネスには気づいていないようであり、クラーケンの視界に入らないようにネスは物陰に隠れながら進む。
「むやみな争いは避けるべきだよね、うん!」
そう自分に言い聞かせつつ、ネスはふっと思ったことを口に出す。 ここにくると不幸になると聞いてたから、自分にとって怖いものとして、あのクラーケンがでたのだろう。 何故自分があのクラーケンをおそれるのか、ネスには心当たりがちゃんとあった。
「ボクがあいつをおそれてるのは……あいつが、ポーラを痛めつけたからだろうな……。 ちょうど、ボクが調子乗ってたときだったし……」
まるで黒歴史を掘り返された気分になり、ネスはこのことにたいし克服しているんだとまた自分に言い聞かせて、エデンの海の中心に向かい、自分のこころの中をこの目で確かめる。
「あれは……!?」
ネスは、その先にあるものにたいして、目を丸くした。
一方、そのころ。
突然ネスが倒れるというアクシデントに遭遇したことで戸惑いを見せるポーラ達は、できるだけ熱を防げる場所へ向かい、そこでネスを横にさせた。
「……ハァッ……!」
「どう、プー」
「……ダメだ……」
なにか体に異変がきたのではないかと思ったプーは、自分が使える限りの回復系のPSIを試していたのだが、どれも効果がなく、首を横に振った。 なんとか彼を起こそうと必死になっていたプーの額には、疲弊と周囲の熱気の影響からか、汗が流れていた。 彼のその汗をジェフは拭ってやりつつ、この状況にたいし疑問を募らせていた。
「音の石からメロディーが流れたと思ったら、ネスが急に倒れるなんて……直前までぜんぜん元気だったのに、急になにがあったのだろう。 回復系のPSIも、きかないんだろう?」
「ああ……体力にも状態にも、なにも異常がない……これは、また別の昏睡状態のようだ」
さらに、とプーはネスの手にふれて、指を動かそうとする。 ところが、ネスの手は音の石を握りしめたまま、指一本も動かない。
「この手が、音の石をつかんではなそうとしない……まるで、くっついてしまっているかのようだ」
「……そこが妙なんだ。 原因が音の石なのは間違いないが、ネスがはなそうとしないから調べられない。 原因が分からないと、ネスをどう救出すればいいのかがわからない……」
そう語りあうジェフとプーの前で、ポーラは黙って祈るような形で座り込んでいた。
「……」
「ポーラ?」
「テレパシーを使っているのか?」
ポーラはテレパシーが使える。 それで彼女はネスの様子を確かめているのだ。 そうしてテレパシーを使用して彼のことを確かめるポーラは、ゆっくり目を開けた。
「ネスは今、自分自身と向かい合ってるわ。 これは、彼自身の戦い……」
「え?」
「とても厳しい試練を受けている……だけど、それを、ネスが自分で乗り越えないと、彼はずっと眠り続けてしまう……。 わたしたちは、見ているしかないわ……彼が、起きる時を待って、起きてくると、信じるだけ……それしか、できない……」
「……ネスは今、その試練に単身で立ち向かっている、だがそこにおれ達は介入できない、ということか?」
「……ええ……」
どうやらポーラは、今ネスの意識がここではなく別のところにあって、かつネスが起きあがる条件まで知ったようだ。 ジェフとプーにこの状況を伝えると、彼らは黙ってネスの顔を見た。
「……ネス……」
ただポーラは、大きな青い瞳を潤ませつつ、音の石を握りしめているネスの手に自分の手を重ねて、祈った。
「……帰ってきて、ネス……」
どこかにあるというネスの意識に対し、ポーラはそう強く願ったのだった。
最後の一ページは、文字数の関係でつけたしたものです。
仲間達の様子も描いてみたいと思ったのもありますけどね。