MemoryStamp   作:彩波風衣

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暗いオネットを探訪。
ちょっとこういう展開を描いてみたかったので、オリジナルな流れもあります。


32.暗闇の中のオネット

 

 8つのパワースポットの力を受け取り、飛躍的に強くなったネスは、地球からのメッセージを受け取り、ギーグの元へ向かうためにまずはサターンバレーに向かったのだった。

 

「サターンバレーに到着っ!」

 

 サターンバレーには相変わらずどせいさん達がのんびりと過ごしており、穏やかな空気が漂っている。 本当にここに、ギーグのところへ向かうための手がかりがあるのだろうか。 疑問を募らせるネス達は、奥に何か、丸い鉄の塊のようなものがあるのに気付いた。

 

「なにアレ?」

「鉄でできた……大きなどせいさん、かしら……」

 

 その奇妙な物体に対し首を傾げつつ、ネス達はそれに近づく。 その側には数体のどせいさんだけでなく、アップルキッドやアンドーナッツ博士の姿があった。

 

「アップルキッド!」

「アンドーナッツ博士!」

「おお! きましたね!」

 

 名前を呼ばれて、アップルキッドもアンドーナッツ博士も、ネス達にこたえた。 アップルキッドは嬉々として、彼らに語る。

 

「ちょうどよかった、予定通りだ! ぼくとアンドーナッツ博士とどせいさん達とで、ついにスペーストンネルを完成させたんです!」

「おお!」

「じゃあ、これがその、スペーストンネルなのね」

 

 どうやら、このどせいさんの形の機械が例の、スペーストンネルらしい。 アップルキッドはその完成がうれしいのか、さらに語り出す。

 

「これは、時空間・瞬間・移動装置なんです。 でも、まだ空間移動が出来るだけの状態ですが……敵のいる場所をサーチしますと、それがどうやら、伝説の地底大陸を示しているんです!」

「地底大陸!」

 

 あんなところに、ギーグがいるというのだろうか。 自分達がすでに通った道である地底大陸の秘密をしったネス達は驚きつつも、アンドーナッツ博士にも話をきく。

 

「いやぁ、彼らどせいくん達は実にすばらしい人々だよ!」

「どせいくん」

「ひと?」

「うん、アップルくんも若いのにたいしたもんだ」

 

 アンドーナッツ博士に誉められてアップルキッドが照れる一方で、博士はもう一つ気がかりなことがあるらしく、そのことをネス達に告げる。

 

「……それはさておき、実は、初期型のスペーストンネルが盗まれてしまったんだ」

「えぇ!?」

「なんでも、服を着たプタのようなものが、どせいさんを脅かして乗っていったという」

 

 そのワードに対し、ネスは言葉に出来ない感情におそわれて、身震いをした。 どせいさんを脅したという、服を着た豚のようなものの正体に、彼は感づいたのだ。 そんなネスの反応に気付いたジェフが、彼らに呼びかける。

 

「ま、まぁとりあえず使ってみるとしようか。 これを使えば、ギーグの元へ行って戦えるんだろう? そこに……その服を着た豚のようなものが、いるかもしれない」

「……うん、そうだね。 乗ってみよう」

 

 ジェフの声かけによりネスは落ち着きを取り戻し、スペーストンネルに4人で乗り込み、代表してジェフがスイッチを入れる。 うまくいけばこのままギーグの元へ迎えるはずなのだが、妙なことに機体はなにかの異変を起こしていた。

 

「なんか、様子がおかしいぞ、この乗り物!?」

「ジェフ、これ、ほんとに動いてる!?」

「ゆ、ゆれるぅ!」

「あれ、なんだろ、僕はスイッチを押しただけなんだけど、へ、へんだな!?」

 

 スペーストンネルの異変にたいし4人は困惑し、スペーストンネルは地上から10センチぐらいあがってから、やがて激しい音を立てて揺れ、黒い煙が舞い上がり、着地した。

 

「「「「うぎゃあ!!!!」」」」

 

 その衝撃と同時に、4人はスペーストンネルから投げ出され、黒い煙のせいで体が黒ずんでしまった。 そんな彼らを前にして、アンドーナッツ博士はポツリとつぶやく。

 

「うーむ、やっぱりダメか」

「「「「おいぃっ!!!!」」」」

 

 4人は同時にツッコミを入れた。 それと同時になぜか、彼らの体も元通りになる。

 

 

 スペーストンネルが失敗に終わったことに対し怒りを見せるネス達にたいし、アンドーナッツ博士はあくまでも冷静に、原因について語る。

 

「実は材料が一つ足りなかったんだ。 しかしそれは、この地球上の物質ではないんだ」

「えぇ!?」

「あれは……わしがまだ、若い頃……落ちてきた隕石から、採取したものなんだ。 最近、どこかで隕石をみなかったかね?」

 

 その言葉を聞いて、ネスは少し考えた後である記憶を脳裏によみがえらせる。 自分がつい最近目撃した隕石は、あれしかないからだ。 早速ネスは、そのことを博士に伝える。

 

「みた、みたよ! オネットの町に落ちてきたんだ、そこかボクは旅にでたんだ!」

「それだ! その隕石のカケラでもあれば、物質XYZを合成できるぞ!」

 

 その隕石のカケラがあれば今度こそ、スペーストンネルが完成しギーグの元へむかい、最後の戦いに挑める。 それに気付いたネス達に、アンドーナッツ博士は不吉な予感を伝えてくる。

 

「……しかし、君達がオネットに隕石のカケラを取りに行くことを、ギーグとかいう敵が簡単に許すとはおもえない」

「だろうな」

「おそらく、オネットは……すでに奴らの手に落ちているに違いない」

「!」

「オネットの町はどんな様子なのか……注意の上にも注意を重ねて、オネットに向かってくれ」

「……わかった」

 

 オネットが今、ギーグの手に落ちて恐ろしいことになっているかもしれない。 その可能性を知らされたネスは、すぐにテレポートでオネットに向かうが、その光景に呆然とさせられた。

 

「そんな、オネットが……」

「あちこちに変なやつらが、うじゃうじゃいるな……」

 

 オネットには人の気配がなければ、街灯もついておらず暗雲がのしかかっているかのように空も暗く、空気も重くて冷たい。 本来は明るいはずの故郷のあまりの変わりように、ネスはショックを受けた。

 

「……」

「ねぇ、ネス」

「ん?」

 

 言葉を失っているネスに対し、ポーラはある提案をしてくる。

 

「隕石のある場所はわかってることだし、一度貴方の家に行ってみましょう」

「え、だけど……」

「遠慮はいらないよ」

「そうだ。 お前の大事な家族がいるのだろう? 顔を合わせてもバチはあたらないと思うぞ」

「……」

 

 彼らはネスに、気をつかってくれているのだ。 今ここで自分は大丈夫だと言ってごまかしても、彼らには通じないだろう。 そう思ったネスは、まずはまっすぐに実家へと向かった。

 

「た、ただいま」

「ネスッ」

「お兄ちゃん!」

「っわんっ!」

 

 家に帰ってきたネスを、母と妹と犬が出迎えてくれた。 再会を抱きしめあって確認するネスは、家族の無事を改めて確認する。

 

「ママ、トレーシー……それとチビ。 みんな、無事なんだね」

「わんわんっ」

「次いで扱いするな? まぁそんな細かいことは気にしないでよ。 みんなが無事で、こうして顔を見ることが出来て……これでも安心してるんだよ、ボク」

「……クーン……」

 

 そうチビに告げると、ネスは母と向かい合う。

 

「まぁ……まぁ……よくここまでたどりついたわね……」

「……」

「今、このオネットはとんでもないバケモノがうようよしてて……町の人はみんな、ガタガタ震えて部屋の中に閉じこもっているのよ」

「ママは、大丈夫?」

「ママは平気なの。 でもちょっと怖いから、静かにしてるのよ」

「あのさ、ママ」

 

 自分はこれからまた、冒険にでると言おうとしたネスにたいし、ママは首を横に振った後、にっこりと笑って彼に言う。

 

「なにもいわなくてもいいの、ママは分かっているつもりよ」

「……ママ……」

「だから、あなたは出来ることをしなさい。 まだ、やることあるんでしょう?」

 

 自分がまたどこかへいくにも、母はいつも自分を明るく見送ってくれた。 彼女は、息子を信じてるから送り出してくれるのだ。 それを感じたネスは、力強くうなずく。

 

「ちょっと、行ってくるよ!」

「ええ、行ってらっしゃい。 みんなも、ネスをお願いね。 ママ、みんなの分を含めて、あなたの大好物を作って待っているわね」

「はい!」

「うん!」

 

 ネスと仲間達は母の言葉にしっかりとうなずいて返し、4人で隕石の元へ向かった。 そんな彼らの後ろ姿を見て、母はぽつりとつぶやく。

 

「ネス……ママは、信じてるからね……」

 

 

 オネットにはかつて、野生動物が多くいただけで、ネス一人でも簡単に対処できる弱いものばかりだったのだが、今は全然状況が違っている。 ここがギーグの支配下におかれてしまった影響だろうか、段違いで強い宇宙生物のようなバケモノがあらゆるところで屯していた。

 

「PKキアイΩ!」

「PKファイアーΩ!」

 

 そんな敵をかいくぐりながらネス達は、隕石のある丘の道に入ってきたネス達。 だがそこには、オネットのほかの場所と比べて全然多い数の敵が集結していて、ネス達に容赦なく襲いかかってきた。 それにたいしネス達は、全力投球で迎え撃つ。

 

「スーパーバズーカ、発射!」

 

 ネスとポーラが広範囲のPSIで一気に攻撃をしかけ、そこにジェフがスーパーバズーカを発射して追い打ちをかける。 それらの攻撃を受けて弱った敵にたいし、プーがとどめを刺す体制に入り仲間に呼びかけ始める。

 

「みんな、さがれ!」

「オッケー!」

「PKスターストームッ!」

 

 4人は息のあったプレーで自分達の前に立ちふさがっていたバケモノ達を一掃した。 視線の先には隕石があることから、このバケモノ達は意図的にネス達の前に現れて、彼らの進行を必死になって妨げようとしているのがわかる。

 

「……今オネットを支配下において、暗い雰囲気を漂わせて……家族や町の人を怖がらせているのも……ギーグが、ボクの不安をあおるためにやってるんだろうね……」

「なるほど……そういう作戦でもあったのか……」

「……まぁ、ボクには無駄だけどね。 ますます、ギーグにあったときに、ボコボコにしてやろうって気持ちがわき上がっただけだ。 あいつは絶対に許せない」

 

 そう語るネスの目は、本気だった。 ギーグのこの作戦はネスの神経を逆撫でさせて、戦う意欲をわき上がらせたのだ。 そんなネスとともにさらに敵を退けつつ、彼らは隕石の元にたどり着いた。

 

「すごい……」

「大きいな……」

「こんなのが落ちてたのね……って、どうしたのネス?」

 

 そう3人が隕石の感想を口にしている横で、ネスが考え込んでいるような顔をしていたのに気付いたポーラがネスに声をかけると、ネスは我に返って、この場所への思いを口に出した。

 

「いや、思えばここから、ボクの冒険がはじまったんだなって……ちょっとだけ思っただけだよ」

「そっか、ネスはここから旅立つことを知ったのね」

「まぁね」

 

 そのときに、ネスの運命は大きく変わったのだ。 今ではもう昔のことのように思えてならない。 いつか、思い出話をするときまで、当時のことの話はとっておくことにし、ネスは目的のものである隕石のカケラを、削り取って取り出す。

 

「やった、隕石のかけらをゲットだ! ねぇジェフ、これでいいと思う?」

「ああ、十分だろう」

「よかった」

 

 こうして、目的のものを手に入れたネスは、そのカケラをアンドーナッツ博士のところへ届けた後で、今夜は自分の家に泊まることを彼らにもすすめてみる。 明日にはもう、準備がすんでいるとのことだ。

 

「とりあえず、今日のところはみんなでボクの家においでよ。 ママがボク達のご飯を作って、お泊まりの準備をしてくれてるみたいだし」

「そうだな。 ここは、そうしよう」

「僕達が泊まっていった方が、キミの家族を守れそうだしね」

「ゆっくり休んで、鋭気を養いましょうよ」

「……うん!」

 

 そうして隕石のカケラをアンドーナッツ博士とアップルキッド、そしてどせいさん達にたくしたネス達は、ネスの母が待っているということでオネットのネスの家で一晩休むことにしたのだった。 テレポート様々だ、といいながら、彼らはネスの母の手料理を堪能した。

 

「……にしてもまさか、洋食が苦手なプーが完食できるなんて思わなかったよ」

「ちゃかさないでくれ。 流石に拒否はできないからな。 ……だが、それ以上に、お前の母上の料理は、フシギとおいしいと思えたから完食できたんだ。 本当においしい料理だったよ」

「確かに、元気いっぱいになれるものがある……僕も、ゆっくりできるな……」

 

 それほどまでに、ネスの母の手料理がおいしく、皆が楽しめて安らぎを得られたのだろう。 その一方でポーラは、前にこの家に泊まっていった時のことを思い出しながらぽつぽつと語り出す。

 

「前に泊まっていったときも思ったけど……ここは、フシギと暖かいものに包まれているのね。 居心地がいいわ」

「ああ、この家の人達は今の町の光景におびえているようなことを言っているが……明かりの有無に関係なく、明るい……」

「なんとなくだけど、ネスがああいう性格に育つのも納得がいくね」

 

 ネスがあのように明るく、勇気もあって優しい少年に育ったのは、こういう家庭で育ったからだろう。 暖かくて安心できて、穏やかなこの家庭を成立させている者は何なのか、わかってはいるけどあえて答えを口には出さない。 ポーラ達は、その意味を感じるだけで十分だから。

 

「じゃあみんな、お風呂に順番に入っていって、すぐに寝ちゃおう」

「うん」

 

 そうして、ネス達は全員入浴をすませ、ネスの部屋で4人一緒に眠ったのだった。

 

 

 4人はふつうに眠っていたのだが、ネスは一人だけ不意に目を覚まし、音を立てないように起きあがって部屋を出る。

 

「……」

 

 彼が立っていたのは、部屋のすぐ外の廊下、その窓際。 その窓からは、あの丘が見える。

 

「……ボク、とうとうここまできたんだな……」

 

 ネスが思い出すのは、隕石が降ってきたあの日のこと。 あの日にネスは好奇心のままにあの隕石に接近し、ブンブーンと出会い自分の運命を知らされた。 それが、自分の冒険の始まりだった。 自分はそれを得て強くなっていき、この町より広い世界を知り、ポーラやジェフ、プーといったかけがえのない親友を得ることが出来た。

 

「……もうすこし、なんだ……」

 

 自分の力が覚醒したいまなら、きっとギーグにも打ち勝てる。 ここに集った仲間と一緒ならできる。 ネスはそう思った…否、思いたかったのだ。 彼にとって大事なものは数多くある、自分が守りたいのはそれらだ。

 

「……そうだ、もうおびえてる余裕なんてないんだ……ボクがやらなきゃ、誰がやるんだ……」

 

 この覚悟の確認も、ある意味では自分に対する言い聞かせなのかもしれない。 ネスは、決戦の時が近いのを感じているがゆえに、こうして言葉に出し自分の運命を認識させていたのだろう。

 

「ネス、どうしたの?」

「ポーラ」

 

 そう一人でいたネスの元に、ポーラが歩み寄ってきた。 起こしちゃったかと思ったネスがポーラに謝罪混じりに言うと、ポーラは首を横に振った。

 

「いいの、わたしが自分で起きただけだから」

「そうなんだ」

 

 そう話をして、2人は軽く笑いあったが、それ以上の会話は続かなかった。 思えば、彼女とこうして2人きりになったのは、随分と久し振りな気がする。 そんなとき、ポーラは自分達の強さについてつぶやく。

 

「……わたしも、ネスも……ジェフもプーも、本当に強くなったよね……」

「……うん……」

「わたし一人だったら、途中でくじけてたかもしれない……捕まったときも、泣いてたかもしれない……でも、みんながいたから、わたしはここにいるんだろうなぁ……って、思うの……」

「……」

 

 ポーラのつぶやきを聞いたネスは、また黙った。 彼女の姿を見て、ネスは内心で改めて、この少女を守らなければと覚悟を決め直す。 そうして無意識のうちにネスは、自分に重圧をかけていっていたのだ。

 

「ネス」

「ん、なに」

 

 そんなネスの無意識の自分に対しての重責に気付いたらしい、ポーラはネスの名前を呼びつつ彼を自分の方に向けさせ、その頬にキスをした。 不意打ちのほっぺキスにたいし、ネスは思わず赤面してキョトンとする。

 

「え?」

「……これは、私の誓いのようなものよ」

「ちかい?」

 

 照れながら、ポーラはキスの意味を伝えていく。

 

「私、絶対に貴方のことも……今まで会ってきた人も、仲間のことも、絶対に守る……この命に代えてでも、絶対に守るわ」

「……ポーラ……」

「ああでも……命に代えてでも、とは言っちゃったけど……私は自分も生きて帰るつもりよ。 ギーグになんか殺されない、戦って勝っていくつもり。 命に代えてでも、というのは……それだけの覚悟と思いがあるということよ」

「……」

「だから、ネスにいま、その気持ちを受け取ってほしかったの。 私が貴方を、みんなを……絶対に守るから……ね……」

 

 そう、ネスはポーラのこころの強さを感じた。 彼女も、そしておそらくは彼らも、自分と同じ気持ちだろうと、ネスはポーラの言動を通して感じ取った。 そして、同時に改めて、自分の使命を自覚する。 重圧とはまた、違う形で。

 

「ボクも、同じだ」

「ネス……」

「ボクのことをみんなが守るっていうなら、ボクもみんなを守る! 絶対に、みんなでギーグを倒して、一緒にこの世界に帰ってこよう! 今はキミとここで、約束する……!」

「……」

「誰一人として死なせない、誰も死なない……絶対に……」

 

 そう語りながら、ネスはポーラを抱きしめた。 ポーラは逃げることなく、慈しみのほほえみを浮かべながらそっと、ネスを抱きしめ返した。

 

「うん、みんなで勝ちましょうね」

「うん」

 

 そう、ネスとポーラは暗い部屋で2人で抱きしめあいながら、戦いの勝利と生還を約束した。

 

 

 

 




一番書きたかったのは、最後のネスとポーラの対話なんじゃないかと言われれば、否定できる気がしない。
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