できれば最終回までは、こんなことが起きてほしくないなぁ。
ギーグの支配下におかれたオネットから、無事に目的のものを手に入れたネス達は翌日、スペーストンネルの改造が終わったというアンドーナッツ博士からの連絡を受けて、サターンバレーへ向かおうとしていた。
「いってらっしゃい、ママはいつもみたいに待ってるわ」
「わんわん!」
「絶対に、しんじゃいやよ!」
「うん、大丈夫だよ。 いってきます!」
そうネスは家族と言葉を交わして、サターンバレーへテレポートしていった。 そこでは大勢のどせいさん、どこからきたのかわからないような探検家、アップルキッド、アンドーナッツ博士が待っており、奥にはどせいさんの形をした鉄製の乗り物。
「あれで、最終決戦の地へいけるのか……」
「……なんかしまらないな」
「そこ、つっこんじゃダメよ」
プーとネスとポーラがそんなやりとりをしている前で、アンドーナッツ博士は誇らしげに、スペーストンネルの解説をする。
「ついに完成したぞ、スペーストンネル2! 君達の冒険を支援するサポート能力もあるから、心配せずに乗り込みたまえ!」
「そいつはすごい!」
「しかし! 二度と帰れぬ旅になるかもしれない。 その準備をパーフェクトにしてからいくべきかもしれない」
そうアンドーナッツ博士が忠告すると、ネス達はそれぞれで答える。
「もう準備はできているし、二度と帰れないなんてことは考えてないよ! 絶対にギーグを倒して世界の平和を守って帰ってくる、そのために強くなってきたんだから、必ずそれを成し遂げてみせる!!」
「私も、神様に何度も祈ってきたわ……どうか、私達を守ってほしいって……もう一度、みんなで笑って暮らせる世界にしてほしいって。 その願いを神様がかなえてくれるって信じてる。 そして、なによりも私はみんなを信じてる。 一緒に帰れるって……信じてるから、大丈夫!」
「僕も不可能を可能にする科学者の卵だ……普段は役に立たなくても工夫をすればよみがえって新たな力へと変えてきた……今回もそれらと同じように、帰れない可能性を否定して、帰れる可能性を生み出す! もちろん、目的を果たした上で、だ!」
「俺は、将来的に国を背負いたつ者だ。 俺でなくては誰が、すべての責任を背負い、強くランマの国を守るべきか……考えたこともない。 俺には巨悪を倒した上で生き残って、やるべきことがある! そのためにも、一歩も退かない!!」
ネス達が告げたのは、それぞれの覚悟。 それを受け取ったアンドーナッツ博士は、静かに頷くと、彼らにスペーストンネルに乗るよう促す。
「では、いくといい!」
アンドーナッツ博士の言葉を受けたネス達は一斉にスペーストンネルにのりこむと、ジェフがスイッチをおして動かし始めた。
「いくよ、みんな!」
「ああ!」
「ええ!」
「うん!」
「スペーストンネル2・起動!」
そうして動いたスペーストンネルは、周囲に電波を流しつつサターンバレーから消えた。
スペーストンネルに搭乗した4人はやがて、暗い空間にねじ曲がったような大事がたつ場所にたどり着いた。 スペーストンネルの外に出た4人は、自分達がたどり着いた場所の景色を確認する。
「ここは?」
「最低国、とモニターには出てきてるね」
「なんか、イヤなカンジの名前の場所ね……」
彼らがたどり着いた最低国というのは、今まで世界各地を旅していたネス達にとっても、まるで見たことのない光景が広がっていた。 ここが、スペーストンネルが察知した、ギーグの居場所なのだろうか。 そもそもこんな場所がこの世界に存在していたのか、彼らの中に疑問が募る。
「本当にこの世界の場所なのか? まるでしんじがたい……それほどまでに……」
「うん……暗くて……不気味……」
「絶対に、離れないようにして歩いていこう」
「そうだね」
周囲を4人で調べるために歩いていくと、仙人のような老人が現れてプーに新しい力を授けて立ち去っていった。 そこからさらに奥へ進んでいくとその先の崖に鉄の残骸と怒声さんが見えた。
「あ、どせいさんだ」
「そういえば、服を着たブタのようなものが、どせいさんを脅してスペーストンネルに乗っていったって言っていたな……あそこにいるどせいさんは、そのどせいさんなのだろう」
「近くには、鉄の残骸あがるしね……」
「……」
ここにどせいさんがいるとは思わなかったネス達は、どせいさんに声をかける。 どせいさんはネス達に、自分がここにいる経緯を語る。
「さらわれたよぼく。 さらったよわるいやつ。 いっちゃったよわるいやつ」
「……その悪いヤツって、どこにいるの?」
「どこへ むかしへ。 ぷー」
「え?」
昔へいった、というのはどういう意味だろう。 どせいさんの言葉の意味を理解できないネス達は、周囲になにもないのを改めて感じた。
「道は続いてないし、なにもいないし……どうしたらいいのかしら」
「ギーグは、どこにいるんだ……? もし、どせいさんの話が本当なら、ギーグは昔、にいるらしいが……その昔、というのがわからないな……追いかけるにしても、手がかりや方法がわからないままだ」
「うーん……」
とりあえずこの状況を打破する方法を見つけだす必要がありそうだ、とネス達が考え込み始めたときだった。 目の前になにか強い、力の気配を感じた。
「あれって、スペーストンネル?」
一度は敵か、とみがまえたネス達だったが、そこにあらわれたのは新しいスペーストンネルだった。 これを開発できる技術を持っているのは、あのサターンバレーに集ったあの人達くらいだ。 そう思っていたネス達の前に、この新たに現れたスペーストンネルに乗っていた者達が姿を現した。
「どせいさん!」
「アンドーナッツ博士!」
「アップルキッド!」
それは、どせいさんとアンドーナッツ博士とアップルキッドだった。 どせいさんは先にこの世界にいたどせいさんに駆け寄っていき、アンドーナッツ博士はこの完成度に満足しているようなコメントを口に出す。
「いやぁ、あっという間に、スペーストンネル3が完成したぞ」
「えぇ?!」
「どせいさん達の科学技術はすごいぞ!」
アンドーナッツ博士の言葉に驚く一同。 スペーストンネルの量産に成功したのはどせいさんの力だというのなら、どせいさんという生き物の可能性というのは未知数になる。 同時に、どせいさんの謎も深くなった。
「どせいさんって、いったい……」
そんなどせいさんに疑問を抱きつつ、ネス達は今自分達が詰んでいる状況に陥っていることを打ち明けた。 話を聞いたアップルキッドとアンドーナッツ博士は、ギーグについて判明した事実を伝えてくる。
「ギーグは、この同じ場所から……つまり、過去のこの場所から、攻撃を仕掛けているんだ」
「え、そんなことが可能なの!?」
「おそらくは……」
やはり自分達が討つべき相手は、恐ろしい力を持っているようだ。 それにたいし一瞬恐怖を覚えたものの、同時にそんな危険な存在が野放しになったら危険だと判断し、改めて闘う意志を固める。 そんなネス達に、アップルキッドは闘う方法を呟く。
「……ギーグを倒すんだったら、このスペーストンネル3で、過去へワープして戦わなくては……」
「そうだね」
「……でも……」
だがそれ以上のことは、アップルキッドはいわず口を閉ざした。 なにがあったのだろうと思っていると、ジェフがアンドーナッツ博士に話を切りだしてきた。
「父さん、僕達もギーグを追って過去に飛びます! とばせてください! 可能でしょう!?」
「……」
「父さん!!!」
ジェフに迫られ、アンドーナッツ博士は顔をうつむかせる。 そんな歯切れの悪い父に対しジェフが強くそう呼ぶと、アンドーナッツ博士は苦い顔で呟く。
「いいにくいのだが……」
「?」
それだけを言って、アンドーナッツ博士は遠くへ歩いていってしまった。 様子のおかしい博士に、ネス達の疑問が募る。
「博士?」
「追いかけてみよう、ネス」
「うん」
そうしてネス達はアンドーナッツ博士からさらに詳しい話を聞くべく、博士を追いかけていった。 その道の先では、アンドーナッツ博士がポツンとたっており、ネス達が自分達のところに駆け寄ってきたのを確認すると、アンドーナッツ博士は口を開いた。
「ネス! 過去から攻撃をしてくるギーグを倒すには、過去にワープする必要があるのだ……むろん、それはスペーストンネル3で出来ることなのだが……」
「だが?」
「……この装置は、生き物を……生命体を、ワープさせることが出来ない」
「えっ」
「ワープのプロセスで命は消え去ってしまうんだ」
つまり、自分達は過去に行くことができない。 それを聞かされてネス達は呆然とする。 このままでは、ギーグを倒すことができない。 為すすべはないのかとネス達は絶望した。
そんな彼らに対し、アンドーナッツ博士は過去のギーグを倒しにいく方法を正直に伝える。
「方法は、ただひとつ。
君達の頭脳プログラムをロボットに移植して過去へゆくしかない」
「なっ……!?」
「その場合、君達のスピリットは、ロボットの方へいってしまう。 君達の肉体は、ただの抜け殻になるわけだ。 過去での戦いが終わって、スピリットが戻ってくると言う可能性は予測できない」
つまりそれは、生まれ育ち自分として生きてきたこの肉体を捨てる、という選択だった。 元の世界に戻れるという可能性はきわめて低く、ギーグを倒したら本当に戻ってくることができないと言う事実を突きつけられる。 最初に意気込んでスペーストンネルに乗り込んだ時とは全然違う覚悟と、これから自分達がしなけれならない手段に、ネス達は絶望した。
そんな彼らに、アンドーナッツ博士は問いかける。
「選ばれた4人の諸君 それでも過去の世界にいってくれるか!?」
その問いかけに、4人はしばらく黙ってしまった。 その沈黙にたいしアンドーナッツ博士はそれ以上はいわず、その場に黙ってたっていた。 彼らの返答を、待つことにしたのだ。
「……みんな……」
そして、少し離れたところでネスは、ポーラとジェフとプーにたいし口を開く。 3人とも複雑そうな顔をして、考え込んでいた。
「と……とんでもないことに、なっちゃったね……」
「ええ……ギーグと全力で闘って、勝って帰るつもりでいたのに……まさか、本当に生きて帰れるかわからない状況になってしまうなんて……」
「しかも、ロボットに移植……考えただけで、恐ろしい手術だ……」
「……もとより命がけは覚悟していたが、この方法と真実は、それを遙かに上回るな……」
ネスも、ポーラもジェフもプーも、この方法にたいしどっちをとるべきなのかに迷っているようだ。 どちらをとった方がいいのかは、彼らも当然わかっている。 だが同時に、逆の選択をとる者の気持ちというのも、理解できる。
「……みんなは、どうする? これで、本当にいいの?」
「……ネスは、どう?」
「……ボク、は……」
ネスは少し考えた後、ゆっくり顔を上げる。
「ボクはみんなが大好きだ。 みんなと冒険した世界が大好きだ。 生まれ育ったあの世界、家族、友達……なによりも、キミ達のことが、大好きだ」
「……ネス……」
「……だから、ボクは……守れるから、守りたいから……」
ネスは今の表情をしっかりと彼らに見せて、自分の決断を告げる。
「たとえロボットになってでも、ギーグと戦うことにするよ!」
「ネス……!」
「それに、このスペーストンネルに乗り込むときに自分でいったんだ。 二度と帰れない可能性なんていらないって! だから、絶対にギーグを倒して、魂だけになっても……どんなことがあっても、帰ってくるって
今決めたんだ! ボクは、そのために……地球と心を一つにして、強くなったんだから!」
「……」
「今ここでボクが戦わないと、ボクは大事なものを守れない……もう誰も失いたくない、傷つき苦しむ姿を見たくない。 だから、ボクはギーグを倒しにいく!」
そうネスの決意を聞いて、ポーラは頷いた。
「私もいくわっ」
「ポーラ!」
「私も、大切なもの……守りたいもの……いっぱいあるもの。 その中には、あなた達もちゃんといるから……だから、この力も、願いも、体も、心も……すべてを捧げる覚悟がある。 この世界のために、私はすべてを使ってほしいと思ってるわ。 だから、それを証明するために、戦います」
ポーラもロボットになって戦うことを決意したことを告げて、それに感化されてジェフも答える。
「僕もいこう」
「ジェフ!」
「僕が君達に出会えたのも、偶然なんかじゃない。 君達が僕を必要としてくれたから……出会う前から僕を仲間と言ってくれたから、僕は、ここまでこられたんだ。 自分のやり方で大切な人を守れることがわかったから……ここまでこれたんだ。 だから、この僕の力、世界を守るために使いたい」
ジェフがいうと、それに続けるようにプーも口を開いた。
「俺を忘れるなよ」
「プー!」
「俺のこの才も、鍛えて得たものも……全てはこのときの為なのだろう。 今、それを感じ取っている。 自分の国だけよければいい、なんて小さな規模では、王子失格だ……俺は、これを越えて帰り、お前達に見合う王になりたい。 国はもちろん、数多くのものを守る強気王になりたいんだ! そのためにも、ここで退くわけにはいかん!」
そうして4人の思いはそろい、ネス達は意を決してアンドーナッツ博士に自分達の選択をつげに言った。
「アンドーナッツ博士、ボク達は過去にいってギーグと戦います!」
そのネス達の返答を聞いたアンドーナッツ博士は、めがね越しに目を丸くさせ、改めてネス達に確認をとる。
「……もう今までの君達の姿に戻れないかもしれないんだが……ほんとうにそれでもいいか」
「うん。 もうみんなで決めたんだ。 それに、絶対に後ろ向きなことは考えない。 戻れない可能性を否定して、なにがなんでも……必ず、生きて帰ってくるよ」
「私達、絶対に負けないから……信じて待っててほしいです」
「覚悟は決めた、もう後戻りはしない」
「父さん……僕も、そのつもりです。 彼らと最後まで、ともにありたいのです!」
そう4人の言葉を聞いたアンドーナッツ博士は、彼らの覚悟を受け止め、しっかりと頷いた。
「そうか……そこまでの……わかった」
「……」
「君達、せめて私に、今の君達の姿をよく見せてくれ」
そういって、アンドーナッツ博士は4人の顔をじっと見た。 そして、自身もまた彼らの魂をロボットに移植する手術を行う覚悟を決めると、実行することにした。
「よし、スタンバイだ!!」
そうして一度サターンバレーに帰ってきた一同は、ロボットに魂を移植する手術を受ける。 受ける前に、4人でしっかりと手を重ねて、言葉を交わして。
「絶対に乗り越えるぞ!!」
「ああ!」
「ええ!」
「うん!」
その言葉を最後に、手術は行われた。 長い手術の果てに、彼らの魂は体を抜けだしロボットに移動し、彼らの肉体はぴくりとも動かない抜け殻となっていた。 そうしてロボットと化した4人は、スペーストンネルに乗り込み、過去の世界へ向かう体制に入る。
「ネス、ポーラ、プー。 そして……私の息子ジェフ。 コックピットに座ってくれ。 もう、後戻りはできないぞ。 せめてネスくん。 スペーストンネルのスイッチを、自分の手で押してくれ」
そうアンドーナッツ博士の言葉にたいし、ネスはうなずいた。 そんな彼らに、アンドーナッツ博士は告げる。
「君達の真の勇気を知っている人間の数は、ほんの一握りだが……君達が、その勇気で救う人々の数は計り知れない。 こんな場面に居合わせることのできた私は……幸せ者だ」
徐々にマシンが動き出して、電波が流れる。 その様子をそこに集ったどせいさんやアップルキッド、そしてアンドーナッツ博士が見届けようとする。
「行くといい……行くべき所へ……」
その言葉と同時に、スペーストンネスがその場所から消えようとしていた。 いよいよ、過去へ飛んでいく瞬間がこようとしているのだ。
「みんな! 必ず、この世界に帰ってきてみせるから!! みんなで!!!!」
そうネスは、消える間際にアンドーナッツ博士達に向かって叫んだのだった。
というわけで、ロボットとなり過去の最低国へいくことになりました。
最後の決戦、その瞬間まで、みまもってくださいませ。