MemoryStamp   作:彩波風衣

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なんとか細かい隙をついて投稿していきたいよ、ほんとに。
今回は最終決戦ほんとの終わりです。
彼らの戦い、最後まで見てください。


36.祈りよ、届いて

 

 暴走を始めたギーグが本能のままに荒れ狂い、ネス達も一方的に攻められ続けていた。 反撃を試みるも、手応えを感じず、苦戦を強いられた。 そんなとき現れたポーキーの挑発を聞いたネス達は、それをこの状況を打破するための起点にするために行動を起こした。

 

「……祈ります……この声が届くことを……」

 

 それは、ポーラが祈ることで使えるテレパシーだった。 ネス達は元の世界の人々…自分達が関わってきた人々を信じて、彼らに助けを求めるため、テレパシーで助けを求めることを決めたのだ。 そのためにポーラは祈ることに集中し、ネスとジェフとプーはそんなポーラを守るために立ちふさがる。

 

「……私達に、力を……ちからを、貸してください。 神様がいるのなら……神様……誰か…………」

 

 そうポーラがつぶやきながら祈った、そのとき。

 スペーストンネルを利用して元の世界にある、サターンバレーに戻ってきたアンドーナッツ博士とどせいさん、アップルキッドが何かに気付いて空を見上げた。

 

「これは……?」

「ぽえぇん」

「今、助けを求める声が……すごく、気持ちが高ぶってます」

「……まさか……」

「……どうか、彼らが無事に帰ってきますように……」

 

 アップルキッドとアンドーナッツ博士、谷に住まう探検家や多くのどせいさん達が、未だかつてない気持ちの高ぶりを感じたことで、自分たちが見送ったネス達の無事を強く祈った。

 その祈りがネス達の元に届き、背景と化したギーグの姿が揺らいだ。 どうやら、不安定になっているようだ。

 

「こ、効果があるみたいだぞ!」

「そうとわかれば、だ!」

「ポーラ、キミのことはボク達が全力で守る! キミは祈り続けてくれ!」

「うん!」

 

 ポーラはネスの言葉にたいし頷くと、再び祈りだした。

 

「……どうぞ、私達に力を貸してください! 私達の想いが届いた人……誰か……」

 

 ポーラの祈りは、今度はサマーズにいたあのバンドグループの元に届く。 祈りを聞いた彼らはすぐに反応を見せる。

 

「今の声……誰かはわからないけど……なんとなく、見捨てちゃいけない気がする」

「おれもなんとなく、そう思うぜ」

「祈ろう」

 

 トンズラブラザーズは突然誰かに呼び止められたような気がして、祈りを捧げる。 この声の主が、助かるようにと、強く。

 その祈りはネス達の元に届き、再びギーグの姿が揺らぐ。

 

「ネスサン……ネスサン……チガウ……チガウ……」

 

 その反動からか、ギーグは強いエネルギーを発してネス達に攻撃を仕掛けてきたが、ネスのPKキアイとプーのPKスターストームがそれに対抗し、ダメージを軽減させる。 その傷はすぐに、ジェフがいやした。

 

「もっとだ!」

「……私達に、力を貸してください! この祈りをどうか、世界中に届けてください」

 

 ポーラの祈りは今度は、彼女にとってかけがえのない存在の元へ届く。 場所は、ツーソンだ。

 

「ポーラ……ポーラ、どうか、無事でいてくれ……愛する娘よ……無事で、いてくれ……」

「……神様、娘をお守りください」

「おねえちゃん、かえってきてね」

「わたしたちのだいすきな、ポーラおねえちゃん……まってるからね……」

 

 その声を聞いたのは、ポーラの両親と、幼稚園の幼い子供達だった。 ポーラの声が聞こえたような気がした家族は、愛する娘の無事強く祈ったのだった。

 

「……トモダチ……チガウ……チガウ……チガウ……」

「少し弱くなってきてる!」

「いいぞ!」

 

 そのポーラの家族の祈りが、ギーグを弱体化させていた。 その証拠に、ギーグの前にたったネス達もガードをするだけで、ギーグの攻撃をしのげていた。

 

「もっと多くの人に、祈りが届きますように」

 

 

 

 ポーラはまだまだ、祈り続ける。

 その祈りは今度は、はるか北の、ウィンターズまで届いた。

 

「……ジェフ……ボク、待ってるよ……ここで待ってるから……だから、はやく、帰ってきて……」

「ジェフ、まだおまえの勉強や技術を見習いたいぜ……」

 

 そこでは、トニーがその声を聞いて、ジェフのことが急に気がかりになり、同じ学生寮の人たちを集め、共にジェフの無事を強く祈ったのだ。

 その力がギーグにヒットし、ギーグは大きなダメージを受ける。

 

「キ モ チ イ イ……チガウ……チガウ……」

「よしっ!」

 

 さらに祈りは続き、今度はその祈りははるか東の国である、ランマまで届いた。

 

「プー王子……」

「王子、貴方は生きて国に帰るべきです……私達にまた、あのすてきな姿を見せてくださいまし……」

 

 ランマ国の女性達は、プーが死ぬ夢から目覚め、その夢が現実にならないようにと、プーの無事を強く祈った。

 その祈りもまた、ここに届く。

 

「ウレシイ……ウレシイ……チガウ……ネスサン……」

 

 それらの祈りの力により、ギーグはますます弱っていく。 だが直後に激しい攻撃を放ってきた。

 

「うわぁぁっ!!」

 

 ネス達は総力を挙げてそれを迎え撃つが、やはり大ダメージはぬぐい去れない。

 

「みんなっ!」

「迷うなポーラ!!」

「祈り続けてくれ! 君の祈りを聞いた人達の願う気持ち……それが、こいつを倒す一番の方法なんだからっ!!」

「……っ!」

 

 自分の代わりにダメージを受ける少年達に対し戸惑いを見せるポーラだったが、3人はそう呼びかけて、ポーラには自分の役目に集中するように促す。 そんな彼らの言葉をきいてポーラはすぐに冷静さを取り戻し、再び祈りを通してテレパシーを送った。

 

「……ネス?」

 

 その祈りは意外な人物に届いた。 それは、オネットでかつて不良集団のボスとして動いていたフランクだった。 ポーラの祈りの声を聞いたフランクは、窓の外に目をむけた。

 

「……無事に帰ってこいよ……ネス……」

 

 フランクはふと、ネスの幼い顔を思い出して、ネスの無事を強く祈ったのだ。

 その祈りはギーグに襲いかかり、ギーグの体力を一気に削る。

 

「……ネスサン……ネスサン……ネスサン……ネスサン……」

「いいぞ、こいつかなりキテる……」

「これで……一気に決める……お願い……どうか……どうか……この祈り、届いて……私達を信じてくれている人の元に……!」

 

 その想いと共にポーラは、今までにないほどに強く祈った。 その祈りは、ある家族の元に届く。

 

「……」

 

 その祈りを聞いたのは、ネスの母親だった。 それをきいた母は、ネスのことを思い出し、真っ暗な家の外の光景と暗い家の中を見つめていた。 オネットは未だに暗く、冷たい空気に包まれている。

 

「ママッ!」

「トレーシー」

 

 そんな母の元に、トレーシーとチビが駆けつける。 どうやら彼女達も、なにかを感じ取ったらしい。 トレーシーは母に抱きつきつつ、彼女に素直な自分のおもいを吐露した。

 

「……お兄ちゃん、帰ってくるよね? またみんなで一緒に、ハンバーグ……食べて、遊んで、学校に行って……家族みんなで、また毎日を過ごせるよね……?」

「当たり前じゃない。 ネスが今までみんなとの約束を破ったことなんてないでしょ?」

「……うん……」

「わんわんっ!」

「だからネスは絶対に大丈夫。 あの子は、誰よりも思いやりのある強い子だもの。 ネスを困らせるようないけない子は、ママが許さないもの。 みんなで思いやって、支え合って……それが出来るように、強く育てて育てられる。 それが、家族というもの……信じあえる……かけがえのない大切なもの……」

 

 そう母は家族のあり方をトレーシーに説きつつ、ネスを信じて待つように言う。 信じるからこそ、強く祈って願おうといって。

 

「……ネス……あなたのおうちはここよ。 ママもみんなも、あなたを待ってる。 だから、また元気な顔を見せて、一緒に暮らしましょう」

「お兄ちゃん……みんな、ここにいるからね……」

「クゥーン……」

 

 ネスの家族は、突然大きな胸騒ぎを感じて、ネス達の無事を強く祈ったのだった。

 その祈りの力は、今までのどの攻撃よりも強く、ギーグに響きわたった。

 

「とても強い祈りの力だ、これは……誰よりも強い、彼らの無事を祈る力の強い人のものだ……」

 

 

 

「イタイ……ネスサン……イタイ……キ モ チ イ イ 」

「うわぁぁあっ!!」

「くっ……!!」

 

 あと一歩のところ、というところで、ギーグの攻撃は激しさを増した。 それにネス達はなんとか踏ん張っているところだ。 相手の攻撃に統一性がなく手当たり次第なところから、ギーグは本当の意味で正気を失い自分を保てなくなっているのだろう。 今までの祈りの力が確実に効いている証拠だ。 今も、謎の衝撃波を受けて、ポーラの代わりに攻撃を受けたネス達が吹っ飛んでしまったものの、再び立ち上がって前に出てきたところである。

 

「……」

 

 ギーグが完全に消滅するまで、戦う意欲でるネス達。 そんなネス達に応えるべく、今の戦いの要になっているポーラはもっと祈りを捧げてテレパシーを送り、助けを求めようとする。 後少しで倒せる、というのをポーラも、感じ取っているのだ。

 

「……ダ、メ……?」

 

 だがそこで、ある危機的状況に気付いて、ポーラは目を開けて、首を横に振りつつ顔を上げる。

 

「もう……誰の名前も……思い浮かばない……」

「なんだって!?」

「……っ……」

 

 誰に祈って助けを求めればいいのかわからず、ポーラはここまでなのかと困惑する。 そんなとき、ポーラをねらってギーグの攻撃が飛んできた。 これを受けたらマズイとポーラがきつく目をつぶると、そんなポーラを守るためにネスが彼女の前にたつ。

 

「ネスッ!!」

「ポーラ、とにかく何でもいいから祈って!」

「え、でも……」

 

 もうあてがないと戸惑うポーラ。 このままではネスが何度でも自分の縦になろうとしてしまうと思い、焦りを覚えてしまうのだ。 そんなポーラに、ネスは語りかける。

 

「そんな焦らなくていいんだ。 ボクのことは、気にしなくたっていいんだよ。 これはボクが決めたことでもあるんだから。 ボクは絶対に、キミを守る……なにがあっても、ボクが絶対にポーラを守るんだ! 限界がこようとしったことかっ! 何度でも立ち上がって、戦って……そしてかってみせる!! 絶対に諦めない!!」

「……ネス……」

 

 そうポーラにたいしハッキリと言い切ると、ネスはギーグに向かってPKキアイを放つ。 それで足止めをするためだ。 だがギーグはそれにたいし、反撃で謎のエネルギーを放ってネス達を攻撃しようとしたが、それはペンシルロケットで阻止された。

 

「君達にだけ、出番は与えないよ!」

「ジェフッ!」

「可能性の高低差なんてどうでもいいね、それをいかに覆すのかを考えるのが僕達人間と言うものだろ? そして、僕達は不可能を可能にしていきながら、ここまできたんだ……それを、忘れるな!」

 

 そう言ってのけたジェフは、次の攻撃からもネス達を守るために前にでた。 するとすぐに癒しの力がネス達をつつみこんで、彼らが負っていたダメージを消す。

 

「もうなにもないなんて、それこそないだろう?」

「プー……」

「おれ達の旅は……そんな狭い世界で行われたものじゃないはずだ。 誰であろうとも、かまわない……今まで旅してきた、この世界のすべてを信じろ。 たとえやけっぱちでもいい……信じて、祈るといい!」

 

 ネスもジェフもプーも、今までどおりにポーラを守る体制に戻ってギーグとにらみ合う。 ギーグは本当に狂ってきていて、それが背負うダメージの大きさを示しているのだ。

 

「……みんな……」

「さぁて、こうなったらヤケクソでもいいから……とことんあがいて、あのギーグをとことん不愉快にしちゃおっか!」

「そうだな!」

「ああ!」

「……」

 

 そう、こんな状況下でも笑って見せている彼ら。 引き続きギーグに攻撃を加えて弱らせては、反撃を相殺したり踏ん張って耐えたりしていく。 どこまでも戦う姿勢をいっさい崩さない、そんな彼らをみて、ポーラも顔を引き締めて、頷く。

 

「私も、諦めない……!」

 

 彼らに感化されたポーラは、今まで以上に強く祈って願った。 助けを求めることや祈ることはなにも、おかしいことなんかじゃない。 そう気を持ち直したのかもしれない。 ポーラは祈る。

 

「誰か、誰か……私を助けて……」

 

 ポーラの呼びかけは闇の中に吸い込まれていった。 だがそれでも、ポーラは強く祈り続ける。

 

「誰か……いますか? 誰か、私達に力を貸して……」

 

 暗やみに消えていったはずの声。

 その声は、…の胸に届いた。

 

「必死で、誰かのための祈りが聞こえる。 力になりたいって、そう思わせられる」

 

 …は、見知らぬ少年達のために祈った。

 

「どうか、この少年達が、無事でありますように」

 

 …は、祈り続けた。

 

「ギーグに異変が起きたぞ!」

「誰かが、聞いてくれたんだ!」

「お願いだ、ボク達の助けになって。 キミの力をボク達に貸して。 キミが、世界を……みんなを……ボク達を助けるんだ!!」

 

 …は祈り続けた。

 

「あなたの願いが、一つの世界を救うのよ! 頑張って!」

「ボク達の……そして、自分のために、祈るんだ!! いけぇぇぇえ!!!」

 

 …はいのりつづけた。

 

 

 

 誰の祈りかはわからないままだったが、突如ギーグは動きを止め、形を崩していく。 顔のように浮かんでいた赤い部分も、黒いところに溶けていく。 揺らぎ、うごめきながらも、その姿はなくなってきている。

 

「これはっ!」

 

 ギーグが徐々に消滅していくのを、ネス達は感じ取っていた。 これはもう時間の問題であり、それがなにを示しているのかも、ネス達にはわかっていた。

 

「これで……もうじきに、ギーグはいなくなるだろう……やつはもう、なにもできない……あとは消えてくのみ……」

「……じゃあ……」

「ああ……おれ達は、勝ったんだ……」

「そう、なのかな……」

「絶対にそうよ……」

「うん、そうだね……ボク達の、勝ちで……間違いない……」

 

 もう4人とも、ギーグの猛攻に耐えていたせいで満身創痍だ。 自分たちの魂が入ったロボットは崩壊していっているのだろう。 そんなとき、ポーキーは慌てながらネス達の前に現れた。

 

「ネス! ぼくは、今は、つまりその、敢えて逃げるような行動をとる! どこかの時代に潜り込んで、ひとまず次のプランを練るつもりさ。 縁があったら、また会うさ」

 

 狼狽えつつポーキーはネスにそう告げていく。 そんなポーキーに対し、ネスはなにかを言いたがっていたが、言葉を発する機能は既に崩壊しているのか、言葉がでない。 それどころか、ここにポーキーがいて自分達になにを言っているのかすら、わからないような状態にもなっているようだった。

 

「シーユーアゲイン! ホントにかっこいいのは、どっちかな!?」

 

 そういい残してポーキーは、この空間から消えたのだった。 その直後、目の前の光景にノイズがかかり、次第に視界が崩壊していき、やがてなにも見えなくなってきた。 そのとき、誰かがぽつりと、つぶやいた。

 

「さようなら」

 

 最後に見えたのは、消滅していくギーグ。 ネス達が最後にみたのは、ギーグの最期だったのだ。 そうして、ネスとポーラとジェフとプーの、視界も意識も、完全に闇の中に落ちていった。

 

「……」

 

 ネス達の戦いは、終わった。

 




ようやくギーグ戦が終わった…次回が、最終回です。
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