彼らの冒険がどのように終わっていくのか、じっくりと見ていってくださいませ。
朦朧とした意識の中。 光か闇かわからない世界。 そこにネスの精神は存在していた。
「……ス……」
そんな世界の中で、誰かがネスの名前を呼んでいることに、ネスは気付いた。 遠いようで近い、知らないようで知っているその声にネスは導かれていき、意識をそちらに向けていく。
「……ネ……」
また聞こえてきたその声。ネスはゆっくり、ゆっくりとその声のする方に意識を動かしていき、自分自身を覚醒させていく。
「ネス……ネス……!」
そして、ようやくネスは周りの景色をしっかりとその目にうつし、感触を肌で、においを鼻で、声を耳で確認していった。 そのときネスは息を吐きながら、ポツリとつぶやく。
「あ」
「ネスッ!!」
その一文字の言葉に反応した3人の少年少女は、とても強くネスの名前を呼んで抱きつき、もみくちゃにしていく。 ネスは自分にくっついている彼らの名前を呼びながら、記憶を巡っていく。
「ポーラ、ジェフ、プー……ボク、達は……」
「それは、君自身もよくわかっていることだろう? ここ……サターンバレーに僕達がこの姿でいて、会話をしているのが、なによりもの証拠さ!」
「……はっ!」
それを聞いてネスは思い出した。 自分達はギーグに最後の戦いを挑むため、ロボットに精神を移植させて過去にタイムスリップをした。 そして、過去の最低国でギーグとポーキーを相手に戦い、最後は自分達が築き上げていた世界の人々の祈りの力で、ギーグを打ち破ったのだ。
その最期はハッキリと目視して感じていたので、間違いない。 その戦いの記憶をしっかりと持ったまま、今このサターンバレーに自分達がいるのも、立派な証拠の一つだ。
「ボク達、本当にやったんだね!」
「そうよ、私達が勝ったのよ……! 私達みんなと、多くの人の力が、願いが……ギーグを打ち破って、世界に平和を取り戻したのよ!」
「そっか、やったーっ!!」
そう言葉を交わしあい、ネス達はこの戦いの勝利を実感し喜びを分かち合った。 そうして戦いを乗り越えた4人を、アンドーナッツ博士やアップルキッドが見つめていた。
「まさに奇跡だ……ギーグを倒したのみならず、こうして元の世界に君達が戻ってくるなんて……」
「……帰ってくる確率は、非常に低い……ほぼ皆無といってもよかったのに……でも、そちらの可能性をぼく達は信じてみたかった……。 そして、その低い確率を……引き当てて、ここに全員帰ってきたことが……その、奇跡が……」
ぼろぼろと、アップルキッドの目からは涙がこぼれていた。 そして、涙でぐしゃぐしゃになりつつ、アップルキッドはこの状況に対し感じたことを正直に打ち明ける。
「たまらなく……たまらなく、うれしいん、ですっ……!」
「うむ……うむ……そうじゃな……」
そう言って大泣きするアップルキッドをみて、アンドーナッツ博士も頷いた。 そんな2人を見て、ネス達は語る。
「博士もアップルキッドも……私達を見送って改造をした分、つらいものを抱えていたのよね……」
「ああ……たとえどんなにやむを得ない理由だったとしても、自分のやったことが正しいのかどうかがわからなかったから……その苦しみを、抱えながら……わずかな可能性を信じていたかったのだろうな」
「ボク達は……無事に帰ってきたことで、博士やアップルキッドがやったことが間違いじゃなかったって証明させることができたんだね」
「ああ。 おれ達は、彼らを後悔させずに済んだんだ」
そうポーラとプーとネスが語り合っている横で、ジェフは博士とアップルキッドを見つめて考え込むように黙り込んでいた。
「……」
その目には、なにか強い決意のようなものが宿っていたようであった。 そんな彼らに、サターンバレーのどせいさん達が集まってきて、みんなにいった。
「おいわい、するよん」
「みんなで、たのしむ。 ぷー」
どせいさん達が言うには、ネス達の勝利と生還を祝うパーティーを開催するというものだった。 どせいさん達の言葉を聞いたネス達は満面の笑顔を浮かべて頷く。
「よーし、じゃあ思い切りもりあがろー!」
「おー!!!」
そうして、ネス達の勝利と生還を祝うパーティーがここ、サターンバレーで執り行われた。
パーティーは夜遅くまで行われ、ネス達は改めて、世界を平和にしたのだと実感し、そのパーティーを眠る瞬間まで楽しんだ。
そうして翌朝、彼らは別れることになった。 もう戦いの旅が終わったから、それぞれで元の生活に戻っていく。
「おれとお前達との旅は、ここまでのようだな」
「うん」
まず最初に立ち去るのは、プーだ。 プーは3人と握手を交わし、静かにほほえみつつ彼らに告げる。
「ランマに帰って、この経験を役に立てるよ」
「プーならきっと……いや、絶対に出来るよ!」
「ありがとう」
ネスの素直な言葉にプーも同じように返しつつ、あることを思いつき彼らにそれを披露することを決める。
「ネス、ポーラ、ジェフ。 今から、おれがもっと小さいときに覚えた面白い技を最後に見せるよ」
「なになに?」
早速興味津々なネス達にたいし、プーは笑いつつそれを実行する。
「PKサヨナラ! だ! またいつか会おう!!」
そういい残すとプーは白い煙を上げながら回転しながら消えていき、あとには三つの堤が現れた。 いつも違うテレポートと違うのは、ちょっと演出が入っていることぐらい。 それを見せながらプーは帰って行ったのだ。 最後に粋なことが出来るプーに対し、ネス達は各で思ったことをそのまま口に出す。
「プー……今までよりもずっと、強くていい王子になるよね……」
「ええ、そしていつかは……」
「強くていい王様だ……彼なら、必ずなれるだろう……」
そうしてプーを見送った後、今度はジェフが離れていった。次に別れることになるのは、ジェフなのだ。
「ポーラ、ネス……君達といられて本当に楽しかったよ。 僕が今まで勉強してきたことがあんなにも役に立ったなんて……本当に夢のようだ」
「うん、ジェフにはいつも助けられたよ」
「私達も、貴方といて楽しかったわ」
そうジェフもまた、ネスとポーラと握手をかわす。 ネス達は、ジェフの今後についてたずねる。
「ジェフはこれから、どうするの?」
「……トニーのこともあるし、ウィンターズには帰るつもりだけど。 でもまずは……僕はしばらくここに残って、もう少しアンドーナッツ博士から……いや、父さんから色々なことを教えてもらうことにするよ……」
「そっか、それもいいと思うよ!」
「応援してるわ!」
「うん」
昨晩ジェフは決めていたのだ。 ここまでできたからこそ、自分はもっと勉強を積むべきなのだと。 今よりレベルアップするには、最も身近で優秀な存在…実父であるアンドーナッツ博士に習っていったほうがいい。 今回の最終決戦を通して、ジェフはそう強く思ったのだ。
ネスもポーラも、そんなジェフの意志を尊重する。
そんなとき、ジェフは目の前に並んでいるネスとポーラをみて、2人に告げる。
「……もし……もしだけどね……」
「ん?」
「君達が将来……結婚するようなことがあったら、電気製品の修理は僕に任せてくれ」
「「!!!???」」
ジェフの爆弾発言に対しネスとポーラは赤面し、慌ててジェフに怒る。
「ジェフなにいってんの!!」
「そうだよ、突然なんでそんなことをっ!!」
「ははははは、誰もネスとポーラが結婚するなんて言ってないよ」
「このやろっ……!」
屁理屈をこね出したジェフにネスは拳でぐりぐりをし、ポーラはただただ赤面していた。 そんなじゃれあいの後、本当に別れる時がくる。
「……ははは……とりあえず、さよなら……親友達」
「あ、うん」
「バイバイッ」
なにはともあれ、ここでジェフとはお別れだというのを再確認し、残るはネスとポーラのみとなった。 そんなとき、ポーラはネスにあることをお願いする。
「ねぇ、ネス……私を送っていってくれる?」
「もちろん」
「ありがとう」
ネスはポーラを家まで送り届けると約束し、頷いた。 そしてネスと向かいながらポーラは寂しげに、ぽつりとつぶやく。
「みんなとお別れをするのは寂しいけれど、元のただの子どもに……戻らなきゃね……」
「うん」
「行きましょう……」
そうして、2人はツーソンまで帰って行ったのだった。
ネスはポーラをツーソンまで送り届けることになったが、そのときにふとあることを思い出し、彼女に頼んで寄り道をさせてもらっていた。
「ここは……」
「うん、ハッピーハッピー村だ」
ネスが寄り道をしたかった場所…それは、ハッピーハッピー村だった。 なんでネスはここに寄り道したかったのだろうか、とポーラは疑問を抱きつつ、ネスと一緒に村の中を歩いていく。
「カーペインターさん、ホントに改心してよかった。 これからは、私達も仲良くなれそうだわ」
「そうだね」
その途中では、かつて敵対していたものの今は改心してともにハッピーハッピー村を支えていこうと誓い行動していたカーペインターと再会した。 彼は、自分の行いを許してくれた村人のために尽くすと誓っており、ネス達も彼のかつての行いを許し、彼の新たな夢を応援すると約束した。
「ここ……」
「ここだよ」
そうして2人は、ネスが立ち寄りたかった場所にたどりついた。 それは、村の奥にある小さな小屋。 まだ鉄格子の残っている牢屋だったその場所を、2人ははっきりと覚えていた。
「ここに、きたかったの?」
「うん。 ポーラにはいやな思い出があるかもしれないけど……だけど、ここでもう一度、ボクとキミが出会ったことも思い出したかったんだ……ボクには、大事な思い出でもあるから……」
「……そう……」
2人はここで出会った。 ここに囚われていたポーラを、ネスが助けにきたのが出会いのきっかけだったのだ。2人の旅が始まった場所ともいえる。 だが、そんなところに実際にここで幽閉されていた彼女をつれてきていいものかとネスは内心悩んでいた。
「ネス、何度でも言うわ」
「ん?」
そんなネスの手を取って、ポーラはネスと向かい合いながら自分の気持ちを伝える。
「あのとき……そして、今までも。 何度も、私を助けてくれてありがとう。 何度も、守ってくれてありがとう。 私がここにいるのは……貴方のおかげよ。 ここにきたおかげで、それを改めて感じられたわ」
「……」
「貴方にここで出会うことが出来てよかった」
そう、ポーラはネスに笑顔で言った。 そんなポーラの表情と言葉を受けたネスは、ここにきてよかったと本心から思えて、笑顔になる。
「さて、行こうか」
「うん」
そうして小屋を訪れて満足したネスはポーラにそう呼びかけて、改めてツーソンに向かって歩き出す。 するとあっという間にツーソンの、ポーラの実家でもある幼稚園に到着した。
「ネス、送ってくれてありがとう」
「いいんだよ、ボクもキミと歩けて楽しかった」
「……」
そのとき、ポーラは何か言いたげにしていたものの、それは声に出せなかった。 その気持ちはネスも同じようであり、2人の間に不思議な空気が生まれる。 そんな中でポーラは、なんとか言葉を出す。
「……言いたいことがあったけど、忘れちゃった」
「うん、実はボクも……」
「……今度会うときまでに、思い出しておくわ」
「うん、ボクもそうするよ」
「ええ」
互いに本当の気持ちは確かにあるものの、いざとなると言葉というものは出てきてくれないものである。 それが、どこかもどかしい。 そんなもどかしい時間の終わりは、お別れの時間とともに訪れてしまった。
「……じゃあ、さよなら……」
「あ……さよなら……」
「……またね……」
そう最後に言葉をかわし、名残惜しげに振り返りつつも背を向けるポーラ。 その姿を見たネスは、ポーラに大きな声で言う。
「ポーラ、ボク何度でもキミに会いに行くから! またジェフとも、プーとも、会えるから! また会ってみせるから! だから……今はさよならでも、また会えるから、大丈夫だ!!」
ネスの言葉に対し、ポーラは背中を向けつつも頷いて、家の中に入っていった。 その姿が見えなくなるまで、ネスはずっとポーラを見つめていた。
「……ありがとう……ネス……」
扉の奥でポーラは、ネスに感謝の言葉を口にしながら涙こぼしていた。
「……さぁ、ボクも……帰らなくちゃ……!」
そして、ネスもまた少しだけ涙目になりつつも、幼稚園に背を向けて、故郷のオネットに帰って行ったのだった。
そうしてツーソンから歩いていって、ネスはオネットの町に帰還した。 オネットは今、にぎやかで穏やかで、心地いい空気と天気につつまれた明るい町になっている。 それは、ネスのよく知るオネットの町だった。
「帰ってきたんだ、オネットに……」
決戦前に一度戻ってきたこともあったが、そのときはギーグの派遣した宇宙人が屯していて空も暗く、空気も重かった。 だから、あのときは帰還したとは正直思えなかった。 だから、この平和なオネットを見て、自分はようやく帰ってくることができたのだと実感する。
その道中でネスは、フランクとも再会をした。
「ネス、久しぶりに顔を見られてよかったぜ!」
「フランクも元気そうだね!」
「ああ……せっかくだしバイトした金を使ってお前と再会を喜びあいたいが……お前にも待っている家族がいるだろうから、そっちを優先しな」
「うん、今度また、一緒にゴハンでもたべようね!」
「ああ!」
そうフランクとも友情を感じたネスは、まっすぐに家に帰っていった。 ドアをノックして家にはいると、ネスは大きな声で家族に挨拶をした。
「ただいま!」
「お兄ちゃん、お帰りなさい!」
「まぁネス、すっかりたくましくなって……おかえりなさい」
ネスとママとトレーシーは、ネスの帰還を喜び合うように強く抱きしめあった。 そのまわりをチビが、しっぽを振りながら走り回る。 そして、ママはネスに、家族の変化を話し聞かせる。
「あなたが冒険の旅にでてから、色々変化があったわ。 一つはあなたの洗濯物が減ったこと。 もうひとつはあなたがいないので、ハンバーグを食べる回数が減ったことよ」
「うん……」
「ところで、グーギという悪の取り締まりを退治したんですってね」
「グーギ」
「突然空が晴れて、バケモノも一瞬で全部いなくなったから……ビックリもしたけど、あなたがお友達と一緒にすっごくガンバったんだってすぐにわかって……わたしも、安心したわ」
突然平和が戻ってきたオネットを見た感想を、彼女はそのままに伝えた。 自分の働きで故郷とそこに住まう人々や家族を守れたこと、そして、自分が帰ってくることで誰も悲しまずに済んだことをネスは感じ取り、頷く。
「そうだね、ボク……ううん、ボクだけじゃない。 ポーラと、ジェフと、プー。 大事な友達と一緒に戦ってきたから……ボク、どんなことも乗り越えられたんだよ!! みんな、ボクの大事な友達だよ……ずっと!」
「そうね、でも……」
「なんだよ、トレーシー?」
「ポーラさんとは、ただの大事な友達じゃないんじゃない?」
「な、なにをいってるんだよ!?」
妹が自分以上にしっかり者であることはネスもよく熟知していたが、まさかここまでませてもいただなんて。 トレーシーの爆弾発言にネスは恥ずかしがりながら狼狽える。
「まぁまぁ、いいじゃない。 今回の冒険、いろんなことあったんでしょう? それに、ネスには大事な人なのも変わらないなら、なんの問題もないわ」
「ママってば……」
「うふふっ」
ママにいわれて、ネスは脱力する。 そんなネスに対しトレーシーは笑う。 きっとこれからもトレーシーは、自分とポーラの関係をとことんイジってくるのだろうと、ネスは予感する。
そんな子ども達を見てママは楽しそうに笑いつつ、つい今朝かかってきたばかりの、2人の父親からの電話の内容を伝える。
「そうそう、パパも来週のネスの誕生日に間に合うように帰ってくるって言ってたわ!」
「え、ほんと? 楽しみだなぁ!」
「それとね」
ママはそのままどこからともなく荷物の箱を取り出すと、そこに入っていたアルバムをネスに見せてきた。
「え、なにこれ」
「さっき旅の写真家さんが、ネス達の冒険を記録した写真をアルバムにして届けてくれたの。」
「旅の写真家……そういえばそんな人がいたな……」
そんな記憶の片隅に追いやっていたことを思い出しながら、このあとは家族みんなでその写真を見ることにした。 今日の夕食のメニューが、帰ってきたネスの大好物であることを伝えながら。
「そうそう、夕食はママお手製のハンバーグよ」
「やった!」
「じゃ、はやく! みんなでアルバムをみよう!」
「ママ達も、ネスの思い出を、いっぱいわけてもらうわね」
「うん……ボクの思い出、みんなにもわけてあげるよ!」
ネスは話したいことが多すぎた。 それほどまでに、ネスの冒険はいろんなことがあったのだ。
一緒に旅をした仲間達のこと、旅先で出会った人達のこと。
経験したこと、見てきたこと、聞いてきたこと、感じたこと。
楽しいこと、つらいこと、難しいこと、珍しいこと、面白いこと。
そのすべての思い出は、わずかな時間では語り尽くせないし、一生忘れることの出来ない、ネスにとって大事な宝物なのである。
それを分かち合っていくことを、ネスは喜びとして、これからの楽しみにしていきたいと思っているのである。
「このワクワクがいっぱいの冒険の思い出を!!」
これは、4人の少年少女の、決して代用品など存在しない、勇気にあふれた冒険の思い出から作られた物語なのである。
MOTHER2 MemoryStamp
完
というわけで、この長編はおしまいです。
この長編は本当に思いつきではじめて、色々あって、更新が遅くなる事態にも遭遇してしまいましたが、こうして完結させることが出来て一安心です。
では、ここまでお読みくださった方々、ありがとうございました。