MemoryStamp   作:彩波風衣

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今回はハッピーハッピー村編です。
そして、最初の仲間ができます。
まだ6話だというのに、かなりかかった気がする…。


06.青の町と少女と雷

 

 険しい道と崖、そして流れのはやい川の存在する、グレードフルデッドの谷。 その中にある小さな小屋の中には鉄格子がありカギがかれられている。 そして、そこに備え付けられていた牢屋の中には、赤いリボンがトレードマークの、金髪碧眼の少女が一人。

 

「……誰……」

 

 そんな彼女が一人捕らえられている小屋に、彼女以外の人物が足を踏み入れてきた。 自分をさらった連中か、と警戒したポーラだったが、小屋に入ってきた人物の姿を見て、すぐに違うと気付いた。

 

「……っ!」

「君が……ポーラ……だね?」

「……ネス、ネスじゃない?」

 

 小屋に入ってきたのは、少女と同じ年頃の少年。 黒い髪に深い藍色の瞳、赤い帽子の少年…。 少女が待ち望んでいた少年・ネスだった。 ネスは少女がポーラだというのを確信し、彼女の言葉に力強くうなずいて見せた。

 

「ネスね、ああ……よかった……! わたしが、ポーラよ……!」

「一目で、ボクだってわかってくれたんだね」

「ええ……ネスという名の人が、わたしと運命を共にするって……そんな夢を、確かにみたの。 やっぱり助けにきてくれたのね……ありがとう……」

 

 ポーラはネスに会えた喜びを、瞳を潤ませながら感じて言葉に出してあらわしていく。

 

「あなたが来てくれなかったら、わたし……きっと独りで、泣いていた……」

「独りじゃないよ」

 

 そういいながら、ネスは檻越しに彼女の手にそっと自分の手を重ねながら、笑いかける。

 

「もう、独りじゃないから……泣かなくてもいいよ」

「……うん……」

 

 ネスの微笑みと言葉に励まされ、ポーラは潤んでいた瞳からこぼれかけていたものを拭う。 そんなポーラの表情の顔を見たネスは、彼女を助けるために、彼女をとらえている牢のカギを開けようとする。 それを、ポーラは首を横に振りながら鍵のことをネスに伝える。

 

「ダメ……ここのカギは、今のわたし達じゃ開けられないわ。 カーペインターが隠し持っているカギを、とってこないと……」

「うーん、やっぱりそういうパターンだったんだ。 よし、早速いってくる!」

「ダメよ!」

 

 すぐに敵のところに飛び込もうとしていたネスを、ポーラは呼び止める。 どうして、と慌てるネスに、ポーラは自分が知る限りのことをネスに伝えた。

 

「カーペインターは、雷を操るらしいの。 そのせいで、誰も彼に逆らえない。 だから、このフランクリンバッジをつけていくといいわ」

 

 そういって、ポーラは牢越しにネスに丸いバッジを手渡した。

 

「このバッジは……」

「そのバッジは、雷の力をはじき返す力があるの。 それがあれば、敵の電撃におびえる必要はなくなるわ」

 

そのバッジとポーラを交互に、ネスは見つめる。 そんな彼を励ますかのように、ポーラは笑顔を見せる。

 

「……わたし、ここで待っているから……きっとあいつを倒して、迎えにきてね。 わたし、いつまでだって、待っていられるわ。 あなたの力、信じているもの!」

「……ポーラ……」

「心配しないで、がんばってね……!」

 

 その笑顔を見たネスは、一瞬でも感じたカーペンターへの恐怖心を一瞬で捨て、ポーラに対し力強くうなずきながら、約束の言葉をかける。

 

「必ず、キミを迎えに行くよ」

 

 ネスのその言葉に対しポーラは頷き、ネスはすぐに彼女を助けるために小屋を出ていった。

 

「神様、ネスをお守りください。 わたしと彼を、運命を共にさせてください。 そのためにわたし、この空間に……この独りの時間に、もう少し耐えます……彼を信じてみせます……だから、お願いします……彼に、力を与えてください……」

 

 彼との出会いで気持ちが強くなったポーラは、ネスの無事を、静かに祈った。

 

 

 帽子をしっかりと直して、フランクリンバッジが自分の服についているのを確認して、ネスは小屋を出てカーペインターのもとへ向かおうとしていた。

 

「ネス!」

「ぽ、ポーキー!」

 

 そんなとき、ネスの前に想像もできない人物が現れた。 金髪で太ったネスと同年代と思しき少年…ポーキーだった。 ポーキーは青い服を身に包んでおり、戸惑いを隠せずにいるネスに向かって、怒鳴り散らす。

 

「やい、ネス! どうしてこのポーキー様のジャマをしにきたんだよー!」

「なにをいってるんだ! ボクはあの子を助けたいだけだ! 第一、なんでキミがここにいるんだよ! まさか、ポーラをさらってここに閉じこめたのは、やっぱりキミなのか!?」

「トーゼン、あの子はぼくの計画に必要だったからな!」

「計画だって……」

 

 ポーキーの言葉に対し、ネスは眉を強くピクリと動かした。 トンチキの情報によれば、ポーラはいけにえにされるという話があったからだろう。 そんなネスを横目に、ポーキーはあきれたような声を出して自分の目的を話し出してきた。

 

「あーあ! カーペインター様のおかげで、ハッピーハッピー教の偉い人になれそうなのに……」

「そんな……そんなことのために、ポーラを!? ポーラの無事を、彼女のパパとママは望んでるんだ! 今も、ポーラの帰りを待っているんだぞ! そんな他の家族を引き裂いてまで、キミは偉くならなきゃいけないのかよっ!?」

「うるさい、うるさいぞ!!」

 

 やや怒りがこもったネスの言葉にたいし、逆上でもしたかのように、ポーキーは怒鳴りかえした。 そして、自分と彼は相いれないのだと感じたらしい、あーあと再び口にした後、言葉を続けていった。

 

「お前を仲間に誘いたかったのに……お前はきっと、ならないんだろうなぁ」

「当たり前だ、誰があんなヤツの仲間になるもんか! 絶対に誰の言いなりにもならないぞ、ボクは!」

 

 そう反発をしてくるネスにたいし、ポーキーは完全に怒りを覚えたのか、背後にいた信者や数匹のカラスを前に出して、命令をする。

 

「お前達、やっちまえぇぇ!」

「うわぁ!?」

 

 最初はとびかかってきたカラスや信者に驚いたネスだが、そのリアクションは本当に一瞬だった。 すぐに口角をあげると、PKキアイを放ってカラスを吹き飛ばし信者にダメージを与え、相手がその攻撃にひるんだ隙にバットで追撃し、信者たちをあっという間に倒してしまった。

 

「なーんちゃってね……もうお前達は、ボクの敵じゃないんだよ!」

「っ」

「ポーキー、キミはっ」

 

 茶化すように余裕を持って言った後、ネスはポーキーに向かって言いたいことがあったらしく彼の名前を呼ぼうとしたが、顔を上げたときにはすでにポーキーの姿はなかった。 自分があの信者とカラスと戦っている間に逃げ去ってしまったのか、と気付く。

 

「どこにいっちゃたんだ!?」

 

 一応小屋の周りを探しては見たものの、すでにポーキーの姿はなかった。 ポーキーの行方は気になるところではあるものの、振り返って小屋を見て改めて自分がすべきことを確認した。

 

「……今は、カーペインターをなんとかしなくちゃ!」

 

 そのために、とネスは倒れた信者を見てあることを思いつき、彼の衣服をひっぺかした。 そして、それを自分の体に身にまとう。

 

「よし! ダサいけど、ここはしょうがないよね!」

 

 そうしてネスはほかの信者と同じ格好になり、それで信者になりすまして信者達の集う施設に入っていった。 受付の人に会っても、ほかの信者にみられても、誰もネスを疑ったりせずすんなりと施設の中に通していった。

 

「グリーングリーン……じゃなかった、ブルーブルー」

「ブルーブルー」

「ブルーブルー」

 

 明らかに適当すぎるであろう挨拶を交わしつつ、ネスは他の信者に隠れながら奥の部屋に進んでいった。 まったく襲われないことから変装作戦が成功しているとネスは確信し、カーペインターが待っているであろう扉の前に立つ。

 

 

 

 そうして扉を開けたネスは、奥に一人の男が立っていることに気付いた。 青く染めたスーツに髭とわずかな頭髪の男、その背後には金色の像が立っている。

 

「あの」

「よくきてくれたね、ネス!」

「ボクの正体が、バレてるのか! じゃあこれいらないや!」

 

 変装がバレてることを知ったネスは、あっさりと信者の服を脱ぎ捨ててカーペインターと向かい合い、彼にむかって人差し指を突き出しながら、構える。

 

「お前が、カーペインターだな!」

「そう警戒しないでくれたまえ、私は君を待っていたんだよ」

「なんだって?」

 

 どういうことだ、とネスはカーペインターをにらみつけると、カーペインターは自分の目的を語る。

 

「世界のすべてをブルーにして、幸せな社会を築くために、君の力を借りたいんだ。 ポーラとともに、私の右腕になってくれないかね? ああ、右腕がいやなら左腕でもいいんだよ?」

「……」

「ああ冗談だ冗談!」

 

 ジョークが受けなかったと思ったカーペインターは撤回しようとしたが、ネスは彼を一刀両断するかのように怒号をとばす。

 

「そんなバカバカしい誘い、くそくらえだ! お前みたいな一方的に自分のことだけを押しつけるヤツが、人を幸せになんかできるわけないだろ!!」

 

 そう堂々と言い切るネスに、カーペインターはその頭とつながってるくらいに広い額に青筋を立てると、その手を放電させる。

 

「お前が生きていることは、私と、私の神にとって非常に困るのだ。 死ね! 死んでこのゲームをここで終わりにしてくれ!」

 

 そう叫びながらカーペインターは雷をネスに落とした。 だがネスの前に雷ははじかれ、逆にカーペインターに襲い掛かってきた。 信じられない、と言わんばかりに目を丸くするカーペインター。

 

「なにっ!?」

「効かないよ!!」

 

 そうハッキリ言い切り、ネスはPKキアイを放ちカーペインターに攻撃を仕掛けた。 それを受けたカーペインターは怒りで我を忘れているようだ、再び雷を放った。 だがそれは、再びネスのフランクリンバッジによってはじき返され、それによりカーペインターは感電、それでもペンキ付きのハケを振り回し、ネスに攻撃を仕掛けてこようとしたが、ネスはそれを軽々回避し、カーペインターの腕を強くたたきハケを叩き落した。

 

「うぐっ!」

「それ!」

 

 さらにネスは距離を置き、スリングショットでカーペインターに攻撃、それを頭に受けたカーペインターは頭を押さえる。 ネスはバットを突き付け、今にもたたこうとしたところで、カーペインターは土下座で命乞いをし始めた。

 

「ひ、ひぃ! 命ばかりはお助けを……」

「だったらカギをボクに渡せ! ポーラを解放させて、みんなの洗脳をとけ!!」

「わかった! もう村人に声をかけない……あの小屋の、牢屋のカギはこれだ、これを受け取ってくれ……!」

 

 このままネスに逆らったらやられる、そう感じたカーペインターは素直にネスの言うことに従い、ネスにカギを大人しく差し出した。 ネスはそれを受け取り、すぐに距離を置く。

 

「私の持っている金色の像……これを手にしてからと言うものの、自分でもわからないような行動をとるようになっていた……」

「……この、像が?」

 

 背後にある金色の像は、確かにまがまがしい形をしており、疑わしい。 そして、カーペインターは涙を流しながら自分の本当の願いを呟く。

 

「私はただ……ただ、平凡な生活を望んでいたのに……ホントに、すまなかった……。 許して、ほしい……」

 

 そうカーペインターは許しを請うと、ネスはあくまで自分はまだ被害に遭っていないことと、謝る相手を伝える。 彼の罪は簡単に消えないことも、踏まえながら。

 

「……許すかどうか決めるのは、ボクじゃない。 被害にあった人達と、ポーラだ。 それに、あなたのしたことが簡単に許されていいことじゃないことも、忘れないで。 謝ればラクに許されるなんて、思い込まないでほしい」

「……」

「ちゃんと、償えば……自分が悪いことを認めて、反省して償えば、みんな許してくれるよ。 絶対に、大丈夫だよ」

 

 そう笑って言うと、ネスはカーペインターにじゃあねと別れを告げ、カギを手にその部屋を出ていった。 あの金色の像に、旅立ち前の記憶を重ねながら。

 

「そういえば……あの像……前にライヤーさんが見せてきたっけ」

 

 知り合いの男があの金色の像を見つけたことを自慢していたことを、思い出したネスだったが、まさかねと呟いて立ち去って行った。

 

 

 そうして宗教施設をでたネスは、真っ先にあの少年と遭遇した。

 

「!」

「すごかったなぁ、ネス!」

 

 その少年の名前を、ネスは戸惑いや怒りを含ませつつ口に出した。

 

「……ポーキー……!」

「おれもなんだか、目が覚めたよ。 また友達になろうぜ」

「……」

「返事をしてくれよぉ、いいやつになるからさぁ」

 

 そうすがるようにネスに言ってくるポーキー。 そんなポーキーに対しネスは黙って少し眉を吊り上げ続けていたと思いきや、率直に思ったことをそのままポーキーに伝える。

 

「それよりも、キミは家に帰った方がいいよ」

「……」

 

 ネスはあくまでも、ピッキーに頼まれたことをそのまま伝えた。 あの家の両親はともかく、弟は少なくとも兄の帰りを待っているのだから。 だから、今は権力や自分のことよりも、家に帰ったほうがいいことを伝える。

 

「あっかんべー! うっそだよー! いつかみてろよーー!」

「なっ」

 

 だがそれが、ポーキーのカンにさわったらしい。 ポーキーはネスから距離を置いて明らかに子供っぽい態度でネスに反発し、そこから足早に立ち去ってしまった。 その姿を見たネスは、自分は間違ったことをしてしまったのかと密かに反省する。

 

「……ボク、変なことを言っちゃったのかな……?」

 

 次に会えたら、ちゃんと話をするべきかもしれない。 そう思いつつネスは、約束を果たすために小屋へと向かった。 扉を開け、そこにとらわれたポーラに向かって声をかける。

 

「おまたせ、ポーラ! カギをとってきたよ!」

「……ネス……!」

 

 ネスの姿を見たポーラは、すぐに顔を上げて彼のほうへむかいながら彼の安否を気にし、声をかけてきた。

 

「けがはしてない? わたしのために……ごめんなさい」

「なんで謝るの? ボクはこの通り、ピンピンしてるのに」

「……」

「それに、ボクはキミとの約束のために戦ったんだ……今、ちゃんと果たされたんだよ! だから、大丈夫なんだよ……キミも、ボクもねっ!!」

 

 そう笑って言うネスに対し、ポーラは彼の無事を実感したようであり、今は謝るより感謝を告げたいと思い、その気持ちを彼に伝える。

 

「ありがとう、ネス! わたしの思った通りの人だったわ! 本当に、ありがとう」

「キミが無事で、よかったよ。 たすけられて、よかったよ」

 

 ポーラに対しそうこたえながらネスは、牢屋のカギを開け扉もあけると、笑ってポーラに手を差し出す。

 

「さぁ、一緒に帰ろう、ポーラ。 ツーソンの人達……なによりも、キミのパパとママが、キミを心配して待ってる!」

「ええ、ネス! 2人で力を合わせて……一緒にがんばりましょう!」

「うん!」

 

 ネスの伸ばした手をポーラがとる感じで、2人は一緒に冒険をするという誓いを立てたのだった。

 

 

 




というわけで、ネスとポーラの冒険がスタートです。
本当に4人が集う時が待ち遠しいです…。
この調子で、長編を進めていきたいな。
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