MemoryStamp   作:彩波風衣

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ジェフ登場。
彼の活躍をとくとご覧あれ。


09.雪国からきた天才少年

 

 ここは冷たい空気が包み雪が降り積もる北の国・ウィンターズ。 そしてこの施設は、大学の寄宿舎…そのなも、スノーウッド寄宿舎。

 

「わたしの名前はポーラ、そしてもうひとり、ネス……あなたに、呼びかけています。 この呼びかけが聞こえたら、目を開けて! そして、南に向かって出発してください。 遠くにいるあなただけが、わたし達を救えるのよ。 ジェフ! この声を信じて、起きあがってあるきだして! 南に向かって……すぐに! ジェフ、お願い! まだ会ったことのない……かけがえのない、仲間!」

 

 ある少女の呼び声が、寄宿舎にいる一人の少年の頭に強く響きわたった。 その少年は、今ベッドに眠っている、金髪にそばかすの少年だ。

 

「……っ!」

 

 その声をすべて聞いたその少年は、起き上がり周囲をみた。 あの声について、少年は戸惑いを隠せず独り言を口にする。

 

「今の声、夢? にしては、鮮明に聞こえてきた……」

 

 少年、ジェフは体をふるわせる。 彼は根本的に非科学的なものは信じない質だ。 だが、この夢とおもしき言葉には、そんな質などどうでもいいと言わせるものがあった。 だから、ジェフはこの声に、応えたいと強く思った。

 

「なんだろう、信じなくちゃ、その言葉の通りに動かなくちゃ行けない気がする……! いかなきゃ!」

 

 そういいながら、ベッドサイドテーブルに置いていためがねを手に取りそれをかけ、ベッドから離れてパジャマから制服に着替え、部屋を一人で出て行こうとする。

 

「ジェフ! こんな夜中にどこに行くんだい!?」

「と、トニー……!」

 

 そのとき、自分と同じ部屋に寝泊まりしている同級生・トニーがジェフに気付いて起きあがったのだ。 トニーはジェフを心配し、彼に注意をしてくる。

 

「この寄宿舎のルールは知っているはずだろう? 見つかったら尻たたきだよ!?」

「……」

「どうしたのさ、ジェフ!」

「……」

 

 自分を心配するトニーにたいし、どう事情をはなせばいいものか、戸惑ったジェフは言葉が出てこず困惑する。 だがやがて、トニーはなにかを悟ったらしい、それ以上は聞かないことにした。

 

「わかったよ」

「えっ」

「ぼくにはわからない理由があるんだろうね。 止めないことにするよ」

「いいのか?」

「うん」

 

 そうジェフに告げつつ、トニーは彼を止めないにしろ、あるアドバイスを送る。

 

「でもなんにせよ、真夜中に無防備で出かけるのはキケンだよ。 身を守る道具を持って行く方がいい。 ぼくも一緒に行くから、とりにいこう」

「……わかった」

 

 確かにいまの自分は丸腰だ。 このままでは、自分に助けを求めたあの声の主を助けることはできないだろう。 トニーのアドバイスに従い、ジェフは便利そうな道具がある予感のする、ロッカールームに向かう。

 

「ロッカールームのカギは」

「ガウス先輩が持ってるんじゃないかな?」

 

 トニーがそういうので、ガウスのところへいってみると、ガウスは今研究に息詰まっており、ジェフの父親の話をしはじめた。 そんな彼にジェフは、父よりもロッカーの話が大事だといって、カギを借りたいと言ったところ、ガウスはジェフに自分の作ったアイテムをプレゼントしてくれた。

 

「あらゆるカギの形に変化するアイテム、そのなもちょっとカギマシンだ」

「ちょっとカギマシン?」

「今ロッカールームのカギは曲がっちゃって使えないからな。 それを使ってくれ」

「ありがとうございます、ガウス先輩」

 

 そのアイテムを受け取ったジェフは、早速そのマシンを使ってロッカーのカギを開ける。 そこには、静電気を放つおもちゃの銃みたいなもの…バンバンガンがあった。

 

「これがあれば、自分の身を守ることぐらいはできるかな」

「ジェフならできるよ!」

 

 バンバンガンという道具を手に入れ、ジェフは外に出て行くための大きな自信を手に入れた。 あとは、外にでるだけだ。 その意気込みでジェフは寄宿舎の扉を開けて建物の施設にでる。

 

「さぁ、ぼくを踏み台にしてこのフェンスをよじのぼるんだ」

「えっ!?」

 

 あとはフェンスを越えるだけというところで、トニーはその前で四つん這いになった。 トニーのその行動に一瞬戸惑ったジェフだったが、彼の思いを受け止めるために、トニーの言うとおり彼を踏み台にしてフェンスを越えた。

 

「とりあえず……さよなら。 きみがドコに行くのか知らないけど、ぼくらずっと親友だぜ!」

「……うん……今は、さよならだな」

 

 そうフェンス越しに別れの言葉をつげあい、ふたりは別々の道を歩いていった。

 

「さすがにトニーには、わるいことをしたな……」

 

 彼に報いるには、自分のやるべきことをやり遂げてここに無事に帰ってくるのがいいのだろう。 そうおもい、ジェフは寄宿舎に背を向けて歩き出した。

 

 

 途中でよったお店で旅の合間に疲れをとるためのドリンクや食べ物を購入したジェフは、サービスとしてフーセンガムを受け取った。

 

「あまりこういうの食べないんだけどなぁ」

 

 そういいつつ、そのフーセンガムを見つめているジェフの元に、一匹のサルが駆け寄ってきた。

 

「うっきー」

「サル? まさか、このガムがほしいのか?」

「うっきー!」

 

 サルがじっとジェフの手にあったガムをみてきたので、これを欲しているのだと悟ったジェフは、一枚取り出してサルに与えてみた。 するとサルはジェフの手からフーセンガムを奪い取り、それを口に入れてクチャクチャかみ始めた。 本当は動物にガムを与えては行けないはずなのに、とジェフが思いこんでいると、目のまで不思議なことが起きた。

 

「おぉ!?」

 

 なんとそのサルは、フーセンガムで風船を作り、宙にぷわぷわと浮き出したのだ。 そんな特技を持っているということは、このサルはただのサルではない。 驚くジェフに、サルはガムが目当てなのかそれともジェフを気に入ったのか、ついてくるようになった。

 

「ききっ」

「なんか変な仲間ができたな……まぁ、いっか……」

 

 とりあえず今は一秒でも早く、あの声の主と合流しなければならない。 そう自分に言い聞かせ、ジェフはサルをつれたまま南の方角へ進んでいった。 途中で凶暴な野生動物におそわれることもあったが、宿舎で手に入れたバンバンガンが役に立ったし、サルも飛びかかってひっかき攻撃を繰り出したりと、勇敢に戦ってくれた。

 そうして歩き続けていたジェフの前に、風が強く吹いている大きな湖が現れる。

 

「ここは、タス湖だな……タッシーがいるってウワサの……」

 

 幻の生物・タッシー。 ジェフはその存在をウワサや僅かな写真のみで知る。 今ここにはそのタッシーを探しているというウォッチング隊がキャンプを張っており、数名の調査員が湖を観察している。

 

「僕はあまり信じてなかったんだけど……でもさっきの野生動物達は……」

 

 ジェフはタッシーの存在に対し、半信半疑だった。 だが自分に助けを求めるテレパシーのことや、ウワサにもなってた野生動物の凶暴化。 これらが現実に起きているとすれば、もしかしたらタッシーも実在するのではないか。 そう考えていると、湖のほとりでサルが突然、ジェフのポケットをたたいてきた。

 

「うききっ」

「ん、もしかして今使いたいとか?」

「うき!」

 

 じゃあ、とジェフはポケットからフーセンガムを取り出すと、サルはそれを素早く受け取り口に入れてかんでいくと、風船を作りだしぷわぷわと浮かび始めた。 やがてサルは風船と風に乗って湖の上に浮かびあがると、それに呼応するかのように湖面は大きく揺れ、そこから紫色の肌を持つ首の長い、恐竜のようなものが姿をあらわした。

 

「た、タッシー!?」

 

 それこそが、このタス湖にいるといわれる、タッシーだったのだ。 あとから聞いた話によれば、タッシーには仲良しのサルがいるという。 まさかこのフーセンガム好きなサルがそのサルだったとは、誰も思わなかっただろう。 タッシーは頭の上にそのサルを乗せながら、ジェフをじっと見つめている。

 

「タッシー、僕を……助けてくれるのか?」

 

 ジェフは思い切ってそう問いかけてみると、タッシーはジェフの言葉を肯定するかのようにゆるりと目を細めた。 それをみたジェフは、この湖を越えて対岸に行けば南側に行けると思い、タッシーにお願いをする。

 

「じゃあ僕を、あの南の対岸まで連れて行ってくれ!」

 

 タッシーはジェフの願いを聞いてくれるようだ。 ジェフに背を向けると、首を動かしてジェフに自分の背に乗るよう促してきた。 ジェフはそれに笑顔を浮かべると、タッシーの背に乗って湖をわたっていった。

 

「……存在が疑問になっていた未知の生物は……とても心優しい生き物だったんだ……」

 

 見ず知らずの少年の願いを聞き助けてくれたタッシーに、ジェフはそう感想を口にしたのであった。 そうしてタッシーの助けにより南の岸にわたることができたジェフは、着陸した後でタッシーの顔をそっとなでてお礼を言った。

 

「ありがとう」

 

 ジェフの感謝の言葉を聞いたタッシーは目を細めると、そのまま泳いでいき姿を消した。

 

 

 

 そうしてタッシーの助力を得たジェフは、洞窟を発見しそこを越えることで、さらに南の方角へと進むことができた。 その洞窟は少々、変わったところであり、簡単な迷路が造られていた。

 

「あのブリックロードさん、変わった人だったな」

 

 その迷路は人工的に造られたところのようであり、ダンジョン男を自称する、ブリックロードなる人物が作ったそうだ。 彼はよくRPGに出てくるようなダンジョンを現実に作るのが夢だと語っており、自分で作ったダンジョンを難なく攻略したジェフに衝撃を受けつつ、近々誰かに相談をして、本物のダンジョン男になると宣言していた。 そんな奇妙な人物との遭遇を経験しつつもジェフは、足をとめない。

 

「……また、洞窟かぁ……」

 

 タス湖の南側にいってからは、どうも洞窟続きだ。 ここは通称・レイニーサークルと言われる洞窟であり、中はジメジメとしている。 だがそんな湿気の多い空気に包まれた洞窟でありながら、地面や壁の土は不自然なことにぬかるんでいないのが、よけいにこの洞窟の奇妙さを際立てている。 本当ならジェフの本来の立場としては、この洞窟を隅々まで調べ倒すべきところなのかもしれないが、今はその余裕はないので触れないでおくことにする。

 

「なんだ、あの光?」

 

 あるくキノコとかあるくめなど、変な植物におそわれながらもなんとか撃退しつつ洞窟を抜けるために進んでいたジェフは、その途中で不思議なものを目の当たりにした。 巨大な、光の塊のようなものである。

 

「いつか解明できたりするかな……今は先を急がないと……」

 

 その光の正体は、なんとなくながら、いつかは自分の手で解明しなければならない気がした。 今ではなく、いつか。 ジェフはこの場所のことを覚えておくことを決め、レイニーサークルと呼ばれる洞窟を越えた。

 

「あれ?」

 

 その先にある、パワースポットと名高いストーンヘンジという場所。 そこには、赤いリボンをつけたサルの姿があった。 リボンをつけているから、女の子だろうか。

 

「きききぃ~~~!」

「へ?」

 

 その女の子サルをみたサルは、目をハートにして興奮しだし、その女の子サルのほうに向かっていった。 それにビックリした女の子サルは逃げていったが、サルはそのまま追いかけていった。

 

「おいサルッ」

 

 そのサルをジェフは必死に呼び止めようとしたが、それも空しく終わった。 あっという間に2匹のサルはジェフの視界からきえ、その場にはジェフ一人だけが残された。 この状況に対し、ジェフはため息をつく。

 

「あぁ~……行っちゃったな……でも、おかげで助かったからいいか」

 

 思えばあのサルが自分のガムに気付いて、それ目当てで近づいてこなかったら、ここまでこられなかったかもしれない。 サルがタッシーと仲良しだったからこそ、タッシーは自分を助けてくれたし、湖も越えられた。

 

「また会えたらいいな」

 

 そう、ジェフはサルへの分かれを心の中で呟きつつ、声には再会を願う言葉を出していた。 後少しで、自分が今行くべき場所にたどり着けるから、ジェフはさらに歩いていった。

 

「久しぶりにきたな……アンドーナツ研究所……」

 

 そして、今、たどり着いたのであった。

 

 

 

 ジェフが今目指していた場所、それはアンドーナツ博士の研究所だった。 アンドーナツ博士というのは、ジェフの実父であるものの、長年離れて暮らしているのである。 だから、柄にもなくジェフは緊張していた。

 

「……」

 

 正直、いくら血のつながった実の親子であるとはいえ、あまり顔を合わせていないため他人のような感覚ではある。 だが今は、彼の手を借りるしかあの声の主を助ける方法がない。 だからジェフは、彼を頼ろうとしていたのだ。

 

「よし」

 

 そう意を決して、ジェフはインターホンを押す。 するとどうぞという電子的な音声が聞こえてきて扉が開く。 中にはいると、そこには白衣を着ていてめがねをかけた、白い髪と髭の老人の姿があった。

 

「おひさしぶりです。とうさ……アンドーナツ博士」

「ん、ああ……ダンジョン職人の、ブリックロードさんから紹介された方だね」

「ん?」

 

 その言葉に違和感を覚えたジェフは、まさかと思いアンドーナツ博士に改めて自己紹介をする。

 

「あの、僕ジェフですけど。 あなたの息子なんですが」

「息子? むすこって……あの……あ、そうか、ジェフか!」

「息子の顔ぐらい覚えててくださいよっ!」

 

 やっぱり忘れていたのだと気付いたジェフは、そう怒号を込めたツッコミを入れる。 そんなジェフに対しアンドーナツ博士は平常心のまま話を続けていく。

 

「10年ぶりくらいだな。 お互いよく生きていたもんだ。 うんうん、めがねがよく似合うようになった」

「はぁ」

「ドーナツでも食べさせてやりたいが、もう全部わしが食べてしまったわい」

 

 そう世間話をしようとしていたアンドーナツ博士だったが、急に息子が訪ねてきたことにたいし疑問を抱き、事情を尋ねてきた。

 

「ところで、急にこんなところにどうしてきたのじゃ?」

「はい、実は……」

 

 ジェフはことの顛末をアンドーナツ博士に話した。 信じてもらえるかどうかの不安はあったものの、それはすぐに杞憂に終わる。

 

「ふむふむ、なるほど……そのポーラとかいう少女は無意識のうちにわしがここにいることを宛にしていたに違いない……よし、なんとかしてみせよう!」

「順応はや」

 

 ジェフは自分の話をすべて信じたアンドーナツ博士に、そうツッコミをいれる。 その横でアンドーナツ博士は、あるものをジェフにすすめた。

 

「わしが研究しているのは、軸間の任意の2てんをつなげてしまうスペーストンネルなのだが……それはまだ未完成なのだ。 ちょっと古いけど、スカイウォーカーというマシンをきみにあげよう」

 

 そういってアンドーナツ博士がジェフに見せたのは、丸い宇宙船のようなものだった。 スカイウォーカーと名付けられたそのマシンをジェフは、凝視する。

 

「これが、スカイウォーカー」

「これに乗って相手からの呼びかけを聞いていれば、目的地に着くはずだ。 さぁ、乗りなさい」

 

 そういうのでジェフは迷わずスカイウォーカーに乗り、その中にあるモニターを見つめ、起動するためのボタンを押す。 するとスカイウォーカーは宙に浮かび上がる。

 

「ありがとう、とうさん……!」

「10年以内にまた会おう!」

 

 そう言葉を交わし、ジェフを乗せたスカイウォーカーは空高く飛び上がり移動していった。 ジェフは、これであの声の主を助けられると確信し、外の様子を眺める。 途中で海や大都会、砂漠などを通過していき、やがてあの町の上空にたどり着く。 モニターをみて、センサーが強く反応しているのはこの町であると、ジェフはすぐに認知した。

 

「ここはスリークか……ここに、あの声の主……ネスとポーラがいるんだ!」

 

 絶対に助けたい、そうジェフは強く願った。 だがその直後、スカイウォーカーは激しく振動し、急降下を始めた。 この状況に、ジェフは強い焦りを覚える。

 

「え、ちょ、ま……!!」

 

 ドガーンという激しい爆発音とともに、スカイウォーカーは着陸したのであった。

 




よく考えたら、あの夢だけで行動を起こせるジェフってすごいですよね。
でもそのおかげでネス達も助かったし…不思議なこともあるもんだ。
まー、それがマザーってゲームなんですけど。
次回は合流編です!
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