ルイージマンション ~ オバケホテルと吸血鬼   作:アヤ・ノア

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~前回までのあらすじ~

ルイージ、ミロ、ユミルの三人は、エレベーターボタンを盗んだミミーを追いかけていた。
チーズでミミーをおびき寄せたり、娯楽場でオバケと対峙したり、
ミロとユミルが行きたくない場所にグーイージを連れていかせたりと、
ルイージは心身共に摩耗していく。
そして追いかけっこの末、ようやく三人はミミーからエレベーターボタンを取り戻す。
オヤ・マー博士にそれを報告すると、彼はオバキュームに新機能を取りつけ、
テレサ探しが捗るようになるのだった。


5章「Ghost Music」

 三人が駐車場を出ると、後ろのオバキュームが揺れた。

「「「!?」」」

 それと同時に、VBの着信音が鳴り、ルイージはすぐに連絡を取った。

「はい、もしもし」

『おっと、ルイージ君。早速出くわしたようじゃな』

「出くわした? ああ、テレサにですね」

『その通り!』

 オヤ・マー博士はルイージにオバキュームの新機能について説明した。

 グーはオバケエネルギーから生まれた物質なので、

 同じオバケであるテレサを感じ取る事ができる。

 隠れているテレサに近付くとグーは振動し、テレサの居場所に近いほど振動は強くなるため、

 それを頼りにテレサを探せるのだ。

『よし、分かったらわしのコレクションのためにテレサをたくさん捕まえて来いよ?』

「テレサを捕まえたら、何か良い事はありますか?」

『もちろんある! 約束するぞ、このオヤ・マー!』

 そう言って、オヤ・マー博士は通信を切った。

 

「で、あたし達はホールフロアに行けばいいのね」

「そうなるね」

 次のエレベーターボタンを探すため、ルイージ達はエレベーターに乗った。

 東には、テレサの気配はない。

 ルイージは4階のボタンを押し、目的の階に向かうまで会話した。

「オバケって見える人のところに来るんですよ。助けてほしいな、とか、お前を許さない、とか」

「……え……」

 この三人の中で、最も霊感が強いのはルイージだ。

 だから、自然とオバケも彼に引き寄せられてくる。

 ルイージの顔が少し青くなった。

「何も悪い事は言ってませんよ? 感受性が豊かだな、っていう事なんです」

「ユミル……正直に言うなら、霊感なんて持ちたくなかったよ。

 でも、もし僕に霊感がなかったら、ずーっと影が薄いままなんだよなぁ」

 ルイージはこの世側の存在感が弱いため影が薄い。

 しかし、その分だけあの世側の存在感が強い。

 これを良いと取るか悪いと取るかは人次第だが、少なくともルイージは“悪い”と思っている。

「はぁ……僕がもうちょっと、オバケ嫌いを克服できていればなぁ……」

 ルイージが溜息をついていると、エレベーターが音を立て、4階に着いた。

「ほら、着いたわよ!」

「こ、ここが4階、だよ、ね」

「ホールフロアに着きました!」

 ルイージは怯えながらエレベーターを降りた。

 ミロとユミルはスキップしながら降りていく。

 初めての場所に来る一人と二人は、対照的な態度を見せている。

 

「もしかしてここは、音楽室?」

 4階のホールフロアには、小さなピアノと、スーザフォンがあった。

 三人が入り口に行こうとすると、VBが鳴る。

『そうじゃ、ルイージ君。

 もし、ベースラボへすぐに戻りたいと思った時は転送システムを使うとよいぞい』

「転送システム?」

『キミのためにシステムをばっちり整備しておいたから、ありがたく活用するのじゃ!』

 ちなみに、ベースラボから出る時は元いた場所に再転送される仕組みになっている。

 また、戦闘中は逃げる事ができない、というのをオヤ・マー博士が教えた。

 通信を切って三人が部屋に行こうとすると、

 向こうから音が鳴って、シンバルがごろごろと転がってきた。

「うわ、うるさっ! 誰が転がしたの?」

 三人がシンバルを見た後に西に行くと、

 ポップコーンやドリンク、キャンディなどが置いてある。

 どうやら、ここは音楽ホールのようだ。

 さらに西に行くとギターやバイオリンなどの弦楽器があり、また、絨毯がひとりでに動いた。

ひゃぁぁぁぁぁっ!?

 その異様な光景にルイージは驚いて飛び上がる。

 対照的にユミルは落ち着いて動く絨毯を見ている。

「上手くジャンプしないと傷を負いそうですね……」

「ジャンプ……そっか、オバキュームでバーストしながら進むんだね。よし……いくぞっ!」

 ルイージはオバキュームのバースト機能を使い、オバケの絨毯攻撃をかわしながら進んだ。

 何度か詰まったものの、コツを覚えて無事に奥まで進む事ができた。

 ちなみに、絨毯を動かしていたのは、やはり従業員姿のオバケだった。

 ルイージがそのオバケを吸うと、絨毯の怪奇現象は元に戻った。

 

「さて、ここには部屋が3つありますね。まずは……北の部屋に行きましょう」

「そうだね」

 三人はまず、北にある大きなドアを開けた。

 そこはメインホールであり、中央にはグランドピアノがあった。

 グランドピアノはひとりでに鳴り、音楽を演奏している。

「……」

 この光景を見た三人は、軽い不快感を覚える。

 しばらくすると、天井のランプがつき、暗くなっていた何かが見えた。

「……ぐっ!」

 すると、ミロが急に左手で頭を押さえた。

 何やら苦しそうな表情をしているミロを見たルイージは、心配で声をかける。

「ミロ! 何かあったの?」

「あれ……見て!」

 ミロが苦しみながらピアノの左側を指差す。

 ルイージがその方向を見ると、絵に閉じ込められたキノピオの姿があった。

キ、キノピオ!!

「この額縁から強いチカラを感じるわ。

 もしかしたら、こいつを助ければ、あたしのチカラも戻ってくるかもね」

 ミロは額縁から脱出する時にチカラを失っている。

 彼女のチカラを取り戻す、というのもルイージの目的の一つなのだ。

「その前に、ここにあるお金を取ってからでいい?」

「いいわよ。じゃ、あたし達は待ってるわね」

「うん」

 

「お待たせ」

 ルイージが金品を探し終えた後、ミロとユミルと合流する。

 三人は左に回り込み、キノピオの絵があるところに行こうとした。

 しかし、それを阻むように、音楽家のオバケの姿が見える。

「このオバケ、名前は何?」

「ナルシェスベンだよ」

 ルイージがオバケの名前を小声でミロとユミルに言う。

 ナルシェスベンは服の袖をまくり、激しくピアノを演奏した。

 背中からは怒りの炎が出ている。

 そして、階段が引っ込むと、ナルシェスベンとの戦闘が始まろう……としたところで、

 ルイージが急にふらふらした。

ちょっと、ルイージ! どうしたの!?

「み、見える……音符がたくさん見える……あれは……とっても……うるさくて……」

 ルイージは度重なる怪奇現象に襲われたせいで正気を失い、音の幻覚が見えていた。

 あまりに精神が疲弊すると狂気を発症する、というのは本当だったのだ。

 このままではまともに戦闘ができないため、ミロはルイージからオバキュームを借りる。

「ちょっとこれ、貸して」

「で、できるんですか……?」

「ルイージがこんな状態だと、戦えないわ。

 ……大丈夫、あたしが倒して見せる。ルイージは安全な場所で休んでて」

 ミロはルイージが攻撃を食らわないように、ユミルが守る安全な場所に待機させ、

 オバキュームをしっかりと構える。

 ナルシェスベンがピアノを演奏するごとに椅子が次々と宙に浮き、

 オバキュームを背負っているミロを狙う。

「これ、耐久攻撃? しっかりかわさないと……」

 耐久攻撃中は、こちらからの攻撃は一切効かない。

 ミロはしっかりと攻撃をかわした後、オバキュームをもう一度構える。

 

「ムムム……?」

「どうだ!」

 ナルシェスベンの全ての攻撃をかわしたミロ。

 すると、ナルシェスベンは静かにピアノを演奏し、

 仮面をつけたバレリーナ姿のオバケが踊りながら舞台の両端から姿を現す。

「そこよ!」

 何とか一体目のバレリーナ姿のオバケを倒すが、さらにバレリーナ姿のオバケが三体姿を現す。

 やられる前にやる、の精神でオバキュームを巧みに使い、

 スラムで一度にオバケに大ダメージを与える。

 このオバケの回転攻撃は全てかわしたため、ミロ自身にダメージはない。

 

「コムスメ……ヤルナ」

「あたしのチカラを返してもらうわよ!」

「ナマイキナ! フキトバシテヤル!!」

 ミロが叫ぶと、ナルシェスベンは怒り狂い、鍵盤を叩いてピアノの中に入る。

 ピアノと同化したナルシェスベンは、オバケピアノへと変化した。

 

「きゃっ!」

 ミロは素早く、オバケピアノの攻撃をかわす。

 しかし、その余波による絨毯攻撃を食らった。

「な、何よこの激しい攻撃……!」

 さらに、たくさんの爆弾が飛んできて、ミロは激しい攻撃で傷ついた。

 何とか耐えているが、このままでは倒される。

「絶対に……負けたくないわ……!」

 ミロは歯を食いしばりながら、オバケピアノが落とした爆弾を吸い込み上手く中に投げ入れる。

 すると、オバケピアノは大爆発し、動きを止めた。

こんのおおおおおおおお!!

 ミロはキューバンショットを吸い付けて思いっきりオバケピアノを叩きつける。

 すると、ピアノの中からナルシェスベンが飛び出してきた。

 ミロはすぐに彼を照らし、オバキュームで吸い込み、スラムで大ダメージを与えた。

 ナルシェスベンはすぐにピアノの中に入り、今度は鍵盤を放射状に飛ばしてきた。

「安全地帯は……あっ……!」

 ミロは鍵盤をかわし、隙を狙おうとするが、なかなかダメージを与えられない。

 そして、疲労から動きが鈍くなったミロに鍵盤が命中し、ミロは倒れてしまった。

 

「……ごめん、ね……やっぱり、あたし、未来を、変えられなかった……」

「……ワン、ワン」

 ミロがそのまま気を失おうとすると、オバ犬が彼女のところにやってきた。

 どうやら、黄金のホネが反応して、彼女を助けに行くつもりのようだ。

 本来はルイージのペットなのだが、今は彼が幻覚症状に陥っているため代わりにミロを助けた。

「……あ、オバ犬……ありがとう……ルイージが……こんなんだから……ね……」

 オバ犬は黄金のホネを飲み込むと、

 重傷を負ったミロの自然治癒力を大幅に高め、彼女の傷を全て癒した。

 

「ありがとう、オバ犬。よし! 再開よ!」

 復活したミロは、ピアノオバケともう一度戦った。

 何とか爆弾攻撃と衝撃波をかわしながら、ミロは相手の出方を伺っている。

(もう黄金のホネはない……。だとしたら、次で絶対に勝つ……!)

 幸い、次の一撃でピアノは破壊できそうだ。

 ミロはキューバンショットでピアノを破壊し、中からナルシェスベンを出した。

 こうなれば、もうピアノに悩む心配はない。

 ミロは戦場の鉄則を守りながらナルシェスベンを吸い込み、叩きつけ、

 ようやく彼にとどめを刺した。

 オバキュームに吸い込まれる間際、ナルシェスベンはお辞儀をしていた。

 

「はあ、はあ、はあ……。ぜえ、ぜえ、ぜえ……。かなり……やばい相手だったわね……。

 黄金のホネがなかったら……時の歯車を使ってたわ……」

 ナルシェスベンとの戦いを終えたミロは、激しく荒い息を立てる。

 周りに散らばった物品と、彼女の体についたたくさんの傷が、戦いの激しさを物語っている。

 しかし、大きな敵との戦いに勝利したのだ。

 これほどの喜びはないだろう。

 

「……ん?」

「もう大丈夫ですよ」

 ルイージは、ユミルのメンタルケアでようやく正気に戻った。

 幻覚から解放された彼が最初に見たのは、

 オバキュームを背負っているボロボロになったミロだった。

「ミロ! 君一人で倒したの!?

 それ、僕のオバキュームなんだけど、君も使いこなせたんだね」

「え、ええ、そうよ……。あなたの心が、弱っていたから、あたしが代わりに、やった、わ……」

 そう言うと、ミロはばたりと倒れた。

 死んだのかと思ったルイージだったが、疲労が溜まりすぎて眠っただけのようだ。

 ルイージはミロの背中からオバキュームを外すと、自分の背中に背負い直した。

「ミロ、お疲れ様。後は僕がやるよ」

 正気に戻ったルイージは、ナルシェスベンが落としたエレベーターボタンを拾う。

 どうやら、6階に繋がるボタンのようだ。

 すると、オバ犬が塞がっていた階段を蹴り飛ばし、元の階段に戻した。

 これで、絵に閉じ込められたキノピオを助けて、ミロがチカラを取り戻す事ができる。

 ルイージはミロをユミルと一緒に引っ張りながら、キノピオの絵がある場所に行く。

「それじゃ、いくよ……!」

 ルイージがキノピオの絵画にダークライトを当てると、

 額縁の中からあかキノピオと、太陽が描かれた黄色い玉が飛び出してきた。

 あかキノピオは頭上から思い切り突っ込んでいき、黄色い玉はミロのところに飛んでいく。

「わわっ、キノピオ!」

「ああ、ルイージさん……本当にありがとうございました。

 額縁の中は暗くて狭くて、本当に怖かったんですよ。でも、これで自由になりました!」

「本当に怖かったんだね……キノピオ……。もう大丈夫だよ、僕達がいるから……」

 ルイージとキノピオは、再会の印にぎゅっと抱き合った。

 額縁の中は暗く、ミロの言う通りの拷問だったが、今、そこから助ける事に成功したのだ。

 

 一方で、ミロも黄色い玉を手に入れた事で、失ったチカラを取り戻していた。

 黄色い玉のチカラで、疲労は既に治っている。

「これが、あたしの本来のチカラ……!」

 ミロが取り戻したチカラは、喜びがもたらす希望の光で勇気を与える「ひかり」だ。

 これにより、怪奇現象を見ても正気を失いにくくなるのだ。

 

『ルイージ君、どうやら無事に仲間を一人助け出したようじゃのう!

 ミロ君もチカラを取り戻したようじゃな』

「はい、ありがとうございます。ミロとユミルがいたおかげで、勝てました」

 勝利したルイージ(戦ったのはミロだが)は、VBを通してオヤ・マー博士に報告した。

 達成感は大きく、三人の心がより強くなった。

『それは何とも素晴らしい絆じゃ。感謝する。

 さてと、キミ達のお仲間はわしと一緒にベースラボで大人しくしておるのがよいじゃろう。

 ルイージ君、ミロ君、ユミル君よ、キノピオ君をエレベーターまで案内してあげるのじゃ』

「分かりました」

 

 ルイージ達は特にオバケに邪魔される事なく、キノピオを無事にエレベーターまで送り届けた。

「ありがとうございました、ルイージさん!」

「それじゃあ、ベースラボで待っててね」

「は~い! お元気で~!」

 ルイージはあかキノピオを送り届けた後、ミロとユミルと共に次の探索に備えるのだった。

 

「……」

 ――しかし、三人のその様子を監視カメラで見ていたオバケがいた。

 ホテルオーナー、パウダネス・コナーだ。

 彼女はルイージ達が仲間を救出した事で、虫の居所が悪くなっているのだ。

「……行ってきなさい」

「「ハイ! コナーサマ!」」

 コナーは低い声でオバケにそう命じると、オバケは困り顔でどこかに向かっていった。

 

「……なんと腹立たしい。

 ルイージはあの方の額縁に入るはずだったのに、あの女のせいで邪魔されてしまった。

 許さない……絶対に許さない……。

 ……必ず、ルイージを守る二人の女を、このオバケホテルから排除してみせる……!

 そして、あの方は絶望に染まるルイージを額縁の中に収めるでしょう……!」

「ニャァァァオ……」

 コナーは不快な表情をしながら、オバケネコを撫でている。

 彼女は仲間を救出したルイージと、彼を守っているミロとユミルを見て、

 非常に苛立っていた――ユミルの性別には、気付いていなかったが。




次回は休憩回です。
これくらい苦戦したんだから、少しは休まないとね?
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