ルイージマンション ~ オバケホテルと吸血鬼 作:アヤ・ノア
8階のエレベーターボタンを手に入れた後、
ルイージ、ミロ、ユミルはオヤ・マー博士に報告する。
ミロの偉そうな態度に困るルイージに、オヤ・マー博士がある提案をする。
それは、テラータワーに挑戦する事だった。
ルイージ、ミロ、ユミルはゴーゴーカメラを通してテラータワーに挑戦し、
見事クリアして戻ってくるのだった。
「次はここに行きましょう」
ルイージ達は次のエレベーターボタンを探すため、8階のスタジオフロアに向かった。
エントランスには様々なセットがあり、ビデオや白黒テレビがある。
ここは映画撮影をする場所だろう、相変わらずホテルとは思えない場所だ。
「ねえねえ、あたし達は劇をする場所に来たの?」
「ミロ、映画を知らないの……?」
「劇なら見た事あるけど……」
繰り返すが、ミロとユミルは異世界人である。
剣と魔法の世界に映画があるわけないよね、とルイージは呟いた。
東には様々な映画のポスターがある。
ボールを蹴ろうとするオバケ、踊るオバケ、掃除機を背負う男とキングテレサが対峙するもの、
豊満な女性、恐ろしい女性のポスターがあった。
しかし、現場に行くためのドアには鍵がかかっていて、鍵の気配もない。
三人がエントランスを歩き回っていると、ユミルがテレビを発見する。
「まさかとは思いますけど、ここに入れるわけ……」
「あるんだよな」
ルイージがテレビに光を当てると、電気が流れて映像が映る。
そこにルイージが手をかざすと、ルイージはテレビの中に入っていった。
「「!!!」」
ミロとユミルは絶句した。
まさか、この世界の技術がこんなに発達していたなんて……と。
「ミ、ミロさん、驚いでないで行きましょう!」
「ええ!」
ミロとユミルも、テレビの中に入っていった。
三人は行き着いた場所に、鍵を発見した。
ルイージはキューバンショットで鍵が入っていた場所を開け、鍵を手に入れた。
そして三人が鍵を開けて中に入ると、
バックステージで監督風のオバケが椅子に座って頭を掻きながら嘆いていた。
「ああ、なんたる悲劇か!
このジョーノーズ監督ともあろうものが、大切なアレを無くしてしまうとは!」
「ど、どうしたんですか?」
ジョーノーズ監督は大袈裟に嘆いている。
どうやら、ジョーノーズ監督にとって大事な何かを無くしてしまったようだ。
ルイージの声も、彼には聞こえていない。
「ちっぽけで何もできない映画監督……それが、今のワタシの姿なのだ……。
こんなワタシには、この美しいボタンの輝きさえ、今はただ、色あせて見えるばかり……。
あああっ! ワタシの真っ赤なメガホンよ! お前はどこへ行ってしまったのだ!」
ジョーノーズ監督は映画監督らしく、芝居がかった口調でボタンを持ちながら嘆いた。
ルイージは「こんなオバケもいたな」とこれまでの冒険を思い出しながら、
ジョーノーズ監督に近付いた。
「ちょっと待って、監督。メガホンをなくしたの?」
「そうだとも……あのメガホンを再び手にすることができるのならば、
代わりに何を差し出しても惜しくはないだろう!」
「う~ん……」
ジョーノーズ監督が困っているならば、放ってはおけない。
三人は頷いて、彼の頼みを聞く事にした。
「分かった。僕達がメガホンを探してくるよ」
「ありがとう」
オバケであっても、話が通じる者はいるようだ。
ジョーノーズ監督は笑みを浮かべるが、ミロはジョーノーズ監督を指して言った。
「でも、あたしからも二つ、約束してもらうわ。
一つは、あなたの悩みを解決したらルイージに吸い込んでもらう事。
そしてもう一つは、エレベーターボタンをちゃんと、あたし達に渡す事よ」
「ああ、約束しよう……」
ジョーノーズ監督はミロを信頼した。
「吸い込んでもらう」という約束には、彼は気付いていなかったが……。
「じゃあ、メガホンを探しましょうか」
三人は、ジョーノーズ監督がなくした真っ赤なメガホンを探す事にした。
ルイージがゴリラの像に近付くと、いきなりゴリラの像が動き出し、ルイージを鷲掴みにした。
「うわぁっ!?」
ルイージはすぐにオバキュームで離れる。
すると、ゴリラの像の頭が取れ、中からはオバ犬が出てきた。
「な、なんだオバ犬じゃないか……びっくりさせるなよ」
「ワン、ワン」
オバ犬が姿を消すと、ゴリラの像の中からたくさんの金品が飛び出してきた。
ルイージはそれをオバキュームで吸い取った。
「まずはここに入りましょう」
三人はまず、第1スタジオホラーセットに入った。
奥には、井戸のセット、井戸のセットの上に載ったアヒルのおもちゃ、不気味な木のセット、
クランクカメラがあった。
ここで、本格的なホラー映画を撮影できるだろう。
「ちょっと怖いですね……。ここには、手掛かりがあるんでしょうか……」
「あっ!」
ユミルが辺りを見渡していると、ミロがうっかり手を滑らせて、
アヒルのおもちゃを落としてしまった。
セットとはいえ、この井戸には水が入っている。
この部屋にメガホンの手掛かりはなかったため、テレビを作動させて中に入る。
「あら、戻って来たわ」
元の場所に戻ってきた三人は、次に、第2スタジオキャッスルセットに入る。
このスタジオにあるセットは、6階のものとほとんど同じだった。
「豪華なセットね。ここで戦争でもやるのかしら」
「……戦争はやらないよ」
あくまでここは映画のセットだよ、とルイージはミロに言った。
土には蔦が埋まってあり、水を遣ると上まで届きそうだ。
しかし、ここにも手掛かりはなく、三人は再びテレビの中に入った。
三人は第3スタジオファイヤーセットに入る。
そこは街のセットであり、金品はあったがやはり手掛かりはなかった。
「うーん、どうしよう……」
「ちょっと待ってください。何かありますよ」
ルイージが困っているとユミルが何かを発見する。
それは、映画を撮影する時に使うカメラだ。
「ジョーノーズ監督はこれを使って映画を撮影しているのかもしれません」
「というか、映画撮影といえばこれだもの」
「そうかなぁ?」
ルイージは、ミロとユミルの推測を聞いてう~ん、と頭を捻る。
その後、一通り部屋を探索してみたが、ここにもメガホンの手掛かりはなかった。
残ったフロアは、あと一つとなった。
「ここね」
三人は第4スタジオミクロセットに入る。
そこには、釘、大きなコイン、大きな紙幣、積まれた本、大きな瓶、ダンボールがあった。
「ミクロセット……という割には、色々なものが大きい気が……」
『ルイージ君!』
すると、VBでオヤ・マー博士が話しかけてきた。
「あ、オヤ・マー博士!」
『見るのじゃ! あれがメガホンに違いないわい!』
「ホントだ……!」
大きなダンボールの上には、ジョーノーズ監督が探していた赤いメガホンがあった。
しかし、高いところにあり、さらに蜘蛛の巣に引っかかっているため簡単には取れそうにない。
「蜘蛛の巣さえ消えれば、取れるんだけどねぇ」
「うーん……」
蜘蛛の巣を消すには、どうすればいいのだろうか。
ルイージはグーイージを呼び出してグーイージに瓶の中に入ってもらい緑の宝石を手に入れる。
次に、ルイージはダンボールの的にキューバンショットを当ててオバキュームを引っ張るが、
ダンボールは反応しない。
「やっぱり無理かぁ……」
仕方なく、三人はテレビを出て、中央に戻るのだった。
「う~~~ん」
「どうすれば、メガホンを取り戻せるんだろう……」
「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……」
三人が監督と同じように悩んでいると、ルイージが「バケツ……」と呟いた。
「バケツ? これを持っていけばいいの?」
「分からないけど、僕達では何もできない以上、バケツを持っていくしかないよ」
ミロはスタジオフロアにあったバケツを持って、第1スタジオに繋がるテレビに入った。
「何としてでも、メガホンを取り戻すのよ!」
「……それで、誰が役を演じるの?」
「あたしよ!」
バケツを持っていった後、第1スタジオホラーセットに入った三人。
カメラマン・ルイージ、女優・ミロ、
ナレーション・ユミルによる映画撮影をしようとしていた。
「ルイージ、準備はいい?」
「ああ」
ルイージはカメラを覗き、ミロを女優として映画撮影をした。
「ここはどこかにある不気味な森。その井戸に、バケツを持った娘が近づきました」
ユミルがぼそぼそ声でナレーションをしている。
ミロは、ゆっくり、ゆっくりと、バケツを持ちながら辺りを見渡す。
「な、なんか本格的だね」
ルイージが呟くと、ミロは口に人差し指を当てる。
「静かにして」という合図だ。
今のミロは、この映画の主演女優なのだ。
ミロが不安になる演技をして辺りを見渡していると、うっかりバケツを落としてしまう。
「きゃぁぁぁぁっ!」
「するとどうでしょう。井戸の中から、サングラスをかけた長い髪のオバケが現れました。
オバケはミロが落としたバケツを持ち上げました」
ユミルのナレーション通り、井戸の中からオバケが現れ、ミロが落としたバケツを持ち上げた。
ミロは、怖がる演技をしながら水を汲んだバケツを持っていく。
「もう大丈夫ですよ~」
「分かった」
ユミルが合図を送ると、ルイージはカメラから離れる。
すると、先程までの不気味さはぴたりと止み、水を汲んだバケツだけが残った。
「それにしても、ミロの演技は凄かったな」
「どうだ! これが女優魂ってものよ!」
ミロがルイージにガッツポーズをする。
「それじゃ、このバケツを持っていくからね」
ミロは水を汲んだバケツを持ち、テレビを通り、次のスタジオに向かっていった。
第2スタジオキャッスルセットに入った三人は、
ホラーセットと同じように、ルイージがカメラを覗く。
「ここは中世の城。攻城戦が繰り広げられています」
キャッスルセットに相応しい、厳かで落ち着いた声色で話すユミル。
ミロはバケツを持ちながら、目的の植物に向かっていく。
「岩が飛んできました。敵軍が投石器を使って攻めてきたのでしょう」
すると、どこかから岩がこちらに向かって飛び、岩が命中して木製の台車が砕け散る。
上にあった松明が左に傾き、旗に火が燃え移ると旗は一瞬にして炎の中に消えた。
さらに、梯子が現れ、そこからオバケが登ってやってくる。
矢や投石による攻撃が、演出を盛り上げているのだろう。
「そこっ!」
ミロはオバケに気づかれないように、バケツに入っていた水を植物にやる。
と、同時に剣で武装した二体のオバケが、城門からこちら側に現れた。
植物が徐々に成長する中、オバケがミロに襲い掛かってくる。
「どうやら敵軍がやって来たようです。さあ、どのように対抗するのでしょうか」
「かかってきなさい!」
ミロは持ち前の機動力を生かし、オバケの群れに突っ込んでいく。
無謀なところもあるが、決して敵からは逃げない。
その行動が、彼女を彼女らしくしているのだろう。
「衝撃波スパルタン!!」
ミロは衝撃波を放ち、無差別攻撃を示唆し、オバケ達を威圧する。
道を切り開いた彼女は、そのまま弓を構え、攻撃の範囲に収まったオバケ達を一網打尽にした。
「……ふう、終わったわ」
オバケ達を撃退すると、既に植物は成長しきり、長い長い蔦へと変わっていた。
カタン、カタンと、梯子の音が鳴る中、ミロはゆっくりと登っていく。
城の最上階には、火がついた松明があった。
「これなら、あの蜘蛛の巣を焼き払えるかも!」
ミロが松明を手に取ると、松明についた火は一瞬で消えてしまった。
「そ、そんな……」
火が消えた事で、落胆するミロ。
さらに梯子を登り、三体の武装したオバケがミロの行く手を阻む。
「松明は守らなきゃ」
ミロは一旦、松明を持って蔦から落ち、松明がオバケの手に渡らないように安全な場所に置く。
「さあ、来なさい!」
ミロは大声を上げてオバケ達を威嚇する。
これでオバケ達の盾を落とす事に成功し、ミロは弓に矢を番えて構える。
「きゃっ!」
だが、矢を撃とうとした時に、オバケが残りの剣でミロを切り裂く。
ミロは転倒して体勢を崩してしまう。
歯を食いしばってミロは立ち上がり、距離を取ってもう一度弓に矢を番える。
「もう、許さないんだから!」
ミロはオバケへの怒りを込めて、オバケ達に四本の矢を放った。
一本の矢はオバケを貫通しながら武装を落とし、もう三本の矢はオバケの身体を貫通。
これにより、オバケ達は全滅したのだった。
「……ルイージ、もういいわよ」
ミロは合図を送り、ルイージはカメラから離れる。
残されたのは火が消えた松明だけだった。
「それにしても、ミロは演技が上手いんだなぁ」
「ま、一応ね。で、この松明に火をつける方法だけど……」
「あそこに行った方がいいんじゃないかな?」
「火がある場所と言えば……あそこね」
ミロは松明を持っていき、テレビを潜った。
ルイージとユミルも彼女の後に続く。
「ここよね、ルイージ」
「うん」
次に、三人は松明に火をつけるため、第3スタジオファイヤーセットに行った。
ここはパニック映画を撮影するスタジオのようだ。
「ミロ、頼むよ」
「ええ!」
ルイージはカメラを覗き、ミロを女優とする映画の撮影を始める。
「大変です! 街が火の手に包まれています!」
ユミルのナレーションは、切羽詰まったような早口だった。
街からは火の手が上がり、空から消防車のサイレンが鳴り響く。
中央の家屋の扉が爆発し、中から炎が燃え盛る。
ランプを頭につけ、消防車に扮したアンストが、帽子を被り、
消火器を持って消防士に扮した三体のラウストを引き連れる。
アンストにしがみついていたラウストは、くるっと回ってアンストから離れる。
その後、アンストは呻きながら去っていった。
消防士に扮したラウストは消火器で火を消そうとするが、まだ火は消えていない。
「三体のオバケ消防士は火を消そうと一生懸命です。そこに立ち向かうは、銀髪の女戦士!」
「その火は、あたしが消すわ! あんた達は引っ込んでなさい! 衝撃波スパルタン!」
ミロは勢いよく衝撃波を放ち、ラウストの武装を引っぺがす。
怯んだ隙に、ミロは弓に大量の矢を番え、ラウスト達を一撃で撃退した。
「銀髪の女戦士により、オバケ消防士は倒れました。残された消防車は、どうなるのでしょうか」
残るは消防車に扮したアンストのみ。
ミロはアンストが動く方向とは逆の方向に動き、アンストの背後に回り込んだ。
そのまま背中を撃とうとしたが、アンストにギリギリでかわされた。
「ちっ……とっとと消えなさい! 衝撃波スパルタン!」
ミロは舌打ちし、怒りのままにアンストを吹っ飛ばした。
その隙を突いてミロはアンストの背後に回り込み、魔法の矢でアンストを攻撃し、倒した。
「後はこいつを火につけるだけね」
「銀髪の女戦士は、オバケ消防士とオバケ消防車をその弓矢によって撃退しました。
そして、松明だけが残されたのでした」
こうして全てのオバケを倒したミロは、
ユミルのナレーションが聞こえる中、松明を持って火に近付いた。
松明は激しく燃え盛る。
これさえあれば、蜘蛛の巣だって燃やせるだろう。
「行こう、ミロ。監督のメガホンを取り返すんだ」
「ええ、分かったわ」
ミロが松明を持った後、テレビを通じて、三人は第4スタジオミクロセットに入った。
「ミクロセットって……こっちから見てのミクロって事、ですか?」
確かに、ミロの言う通り、このスタジオには明らかに大きい小道具がたくさんある。
ユミルは思い出した、自分達が小さくなって大冒険をする映画を撮影する事を。
ミロに耳打ちした後、ユミルはナレーションの準備をする。
「準備はいい?」
「いいわよー!」
ルイージはカメラの前に立ち、ミロの様子を見る。
「銀色の髪の小人が、どこかの冒険をしています。
ここにはスパナやトンカチなど、工具がたくさんあります。
ダンボールの上には、蜘蛛の巣に引っかかった真っ赤なメガホンがあります」
ユミルがミクロセットでナレーションをする。
「それっ!」
ミロが的を思いっきり引っ張ると、中から大量の蜘蛛と巨大な蜘蛛が出てきた。
「きゃぁぁぁぁぁぁっ!!」
ミロはたくさんの蜘蛛を見て驚き、取り乱す。
「小人は取り乱しました。何をすればいいのか、彼女には分かりません」
「あああ、もう、あっち行けぇ!」
パニック状態になったミロは、松明を振り回して蜘蛛に当てる。
火は全ての蜘蛛に燃え移り、しばらくするとあっという間に消え去った。
「ああ、怖かったわ……。でも、これで終わりよ!」
そう言って、ミロは松明を蜘蛛の巣に近付ける。
蜘蛛の巣は炎の中に消え、同時に、ポトン、と真っ赤なメガホンが落ちてきた。
「やったわ! メガホン、ゲットよ!」
「銀髪の小人は、メガホンを取る事に成功しました。小人の冒険は、こうして終わりました」
ミロはメガホンをダンボールの外に出す。
こうして、4つの映画撮影は終わるのであった。
「はぁ、はぁ、大変だったな」
「それはあたしだって同じよ。あなたが閃くまでは分からなかったんだから」
ジョーノーズ監督のメガホンを探すのに、こんなに苦労するとは思わなかったようだ。
「でも、映画撮影は楽しかったですよ。劇場とは全然違いました」
それでも、目的を達成する事はできたし、映画撮影の時のミロとユミルはご機嫌だった。
三人は満足気な顔でテレビを潜り、ジョーノーズ監督のところに戻った。
ミロ達が同行している関係上、グーイージではなくミロが映画撮影に行きました。
次回はいよいよ、ジョーノーズ監督による映画撮影です。
ルイージは何故か、巨人役をやる事に……?