ルイージマンション ~ オバケホテルと吸血鬼 作:アヤ・ノア
オバケに奪われたエレベーターボタンを取り戻すため、
ルイージ、ミロ、ユミルの三人は8階・スタジオフロアに行った。
そこで困っていたジョーノーズ監督と交渉し、彼の赤いメガホンを探す依頼を受ける。
4つのスタジオを回ってミロを女優とする映画撮影を終え、
三人はジョーノーズ監督のメガホンを取り戻すのだった。
「はい、メガホンよ!」
「ああ、ありがとう、銀の娘よ……」
ミロは、ジョーノーズ監督にメガホンを渡した。
ジョーノーズ監督は、まるで自分の子供のように真っ赤なメガホンを抱いている。
ルイージは彼を見て少し震えているが、ミロとユミルは満面の笑みを浮かべている。
「さ、あたしとの約束を……」
「……キミ! ちょっと待ちたまえ! そこに止まるんだ!」
ミロが約束を言おうとすると、
ジョーノーズ監督はルイージに顔を近づけ、彼を抱き上げて言った。
「え、な、何?」
「よく見ると、キミはなかなかいい顔つきをしているではないか!」
「ま、まあ、ね」
「それに体格も……うんうん、悪くないぞ!」
「……またあたし達、無視されてるんですけど」
無視されているミロとユミルを横目に、
ジョーノーズ監督はルイージを高評価している。
ルイージは自身が撮影する俳優に相応しい、といった目をしていた。
ジョーノーズ監督はルイージを降ろすと、
指をカメラのようにして、ルイージの身体を映している。
「最高じゃないか! スターの素質を感じるぞ!!
おお! ワタシの創作意欲が掻き立てられていく!」
「……あ、あの、そろそろ……」
「ちょっと待ってください、ミロさんとボクはどうなんですか?」
無視されたユミルが呟くと、ジョーノーズ監督はこう言った。
「キミ達は残念だけど助演留まりだな。そもそも、キミ達は招かれざる客だろう?」
「確かに……」
「まあ、そんなことはどうでもいい。さあ、こっちへ来るんだ! 撮影を始めよう!
スタッフはいるか!? それぞれの配置に着くんだ!」
「え、ちょ、待って!」
ジョーノーズ監督はルイージを動かす。
すると、シャッターが音を立てて開き、街のセットが姿を現した。
「「おお~~~~~~」」
ジョーノーズ監督はそのままセットの中に入った。
ミロとユミルは、二人をそのまま見守った。
セットの中は、街のオブジェと車のオブジェがたくさんあり、大きな建物もあった。
ここで一体、どんな映画が撮影されるのだろうか。
「ほらほらほら、こっちに行くんだ」
「ちょちょちょ、ちょっと待って! 君、ミロと約束したはずでしょ!?
メガホンを受け取ったらエレベーターボタンを渡すって!」
「その前に、やりたいことがあるのだよ!」
ジョーノーズ監督はルイージの背中を押す。
ルイージはジョーノーズ監督にミロと交わした約束を話すが、
ジョーノーズ監督は話を聞かず、カメラの前に立つ。
ジョーノーズ監督はカメラのレンズを回し、ルイージの足元に向け、
カチンコを鳴らしてこう言った。
「よーい……アクション!!!」
「え、えーと……」
ルイージは、車が通っている道を、慎重に慎重に歩いていく。
どうやら、ルイージは巨人役に抜擢されたようだ。
(なんで僕がこんな役をやるのかなぁ……)
ルイージは心の中で愚痴を吐きながら、街の中をゆっくりと歩いていく。
すると、向こうから轟音が聞こえてきた。
それは――青い身体に白い角が生えた怪獣だった。
怪獣は暴れながら、周りの建物を壊している。
後ろにはちらりと尻尾が見えたが、ルイージには見えていなかった。
「ええ~~~~!? こいつを倒すの~~~!?」
ルイージの叫び声と共に、映画撮影兼、怪獣との戦いが始まった。
「ええっと……」
「キミは、この怪獣と戦うんだ。怯えるな、キミはスターになるんだ」
ルイージは攻撃を受けないように、暴れる怪獣と距離を取る。
怪獣は火を吐いて、ルイージを攻撃しようとした。
ルイージは怪獣が吐いた火をオバキュームのスチームで押し出し、怪獣にぶつける。
火がぶつかった怪獣は怯んで動けなくなった。
「いいぞ、キミ! その調子だ!」
壊れた建物からは、火が噴き出ている。
ジョーノーズ監督が応援している中で、ルイージは頷いてオバキュームを構え直す。
怪獣が吐く赤い火をかわし、ルイージは相手の隙を伺う。
すると、今度は緑の火を吐いてきた。
ルイージはもう一度スチームを使うが、緑の火はびくともしなかった。
「グーイージ、カモン!」
いつもならここで慌てるが、ルイージは二人を思い出して落ち着き、グーイージを呼び出す。
ルイージとグーイージは、二人がかりで緑の火をスチームで噴射した。
緑の火がぶつかると、怪獣は怯む。
「いいぞ、キミ達! これは名作の予感だ!!」
「あ、ありがとうございます」
ルイージはジョーノーズ監督に褒められ、ちょっとだけやる気が出た。
(監督のためにも、この映画、必ず成功させるぞ)
ルイージはゆっくりと動いている怪獣の攻撃をかわしつつ、緑の火が出るのを待つ。
怪獣は赤い火を吐いて、周りにある建物を壊していく。
この火は噴き出せないので、ルイージは何とかかわした。
そして、数分後に緑の火が出て、
ルイージとグーイージは協力して緑の火をスチームで噴射する。
怪獣も負けじと、息を吹きかけて緑の火をこちらにぶつけようとした。
「さあ、今こそスターへの階段を駆け上がるのだ!」
「よし……いくぞ!!」
ルイージとグーイージのオバキュームと、怪獣が吐いた緑の火がぶつかり合う。
手に汗握る怪獣、ルイージ、グーイージの攻防。
街が壊れるのか、街は守られるのか。
最後に勝利したのはルイージとグーイージだった。
緑の火が命中し、怪獣は後ろに吹き飛ばされる。
その衝撃で怪獣の後ろにあった建物が壊れ、怪獣セットの中からオバケが姿を現した。
オバケはセットが壊れた事で恥ずかしがり、そのままルイージに突っ込んでいく。
「アート……これこそアートだ……」
ジョーノーズ監督は映画の撮影に成功し、恍惚とした表情をしている。
ルイージは、オバケをあっさりと吸い込んだ。
「カーーーット!!」
と、ここでジョーノーズ監督の叫びにより、怪獣映画の撮影は終了した。
ジョーノーズ監督はメガホンを投げ出すと、映画を撮影したフィルムをカメラから外す。
ルイージ主演の怪獣映画は、ジョーノーズ監督にとっても、
ルイージにとっても満足な出来になっただろう。
「これが、約束のエレベーターボタンだ」
そして、ジョーノーズ監督はルイージに約束通りエレベーターボタンを渡した。
彼が持っていたのは、9階に繋がるものだった。
エレベーターボタンはぽとりと落ち、ルイージは何とかキャッチした。
「では、Good Bye!」
そう言って、ジョーノーズ監督は去っていった。
「ただいま!」
「お帰りなさい!」
ミロとユミルは、撮影を終えたルイージを迎える。
ルイージは笑顔で、エレベーターボタンをミロとユミルに見せる。
「わあ! それ、エレベーターボタン?」
「うん。ジョーノーズ監督はとてもいい奴だったよ」
「やっぱりね」
ジョーノーズ監督のように、話が通じるオバケもいる。
オバケだからといって、無理に怖がる必要はないのだ。
また、映画の撮影はアナログな手法である事もルイージは二人に話した。
つまり、映画の完成はもう少し先という事だ。
ミロが言った二つ目の約束は、その時に守られるだろう。
「さあ、戻ったぞ」
三人は意気揚々とエレベーターに戻っていく。
ミロが、ジョーノーズ監督から手に入れたエレベーターボタンを取りつけようとすると、
ルイージとユミルが何かの気配に気づく。
「「ミロ(さん)、後ろ!」」
「えっ……!?」
ミロが後ろを振り向くと、なんと、尻尾が三本あるオバケの猫、
オバケネコが現れてエレベーターボタンを咥える。
「シャーッ!」
オバケネコは凶悪な表情をして三人の方を向く。
「しまった! あたしとした事が、背後を取られるなんて……不覚!」
「ミロさん……ボクもですよ……」
「また、盗まれるとはね……」
オバケネコはエレベーターボタンを飲み込むと、猫らしく澄ました顔をして姿を消した。
「ルイージ、追いかけるわよ!」
「わ、分かった!」
次回はオバケネコ戦です。
オバ犬みたいに改心して仲間になると思ったんだけどなぁ……。