ルイージマンション ~ オバケホテルと吸血鬼 作:アヤ・ノア
パウダネス・コナーに誘われたルイージ達は、ホテル「ラストリゾート」に到着した。
楽しい休暇を満喫しようとした一行だったが、
それはキングテレサの大ファンであるパウダネス・コナーの罠だった。
美しかったホテルは不気味な様相に変わり、キングテレサによってマリオ達は絵にされ、
危うくルイージも同じ運命を辿りかけたが、ミロとユミルの手で何とか逃げ切る。
そして、ダストシュートから転落した三人は……。
「うにゅう……」
「うぐぅ……」
今、ルイージ達は洗濯物を入れる箱の中にいる。
一番下にはミロ、その上にはユミル、その上にはルイージとオバ犬……とまあ、お山状態。
「よっと」
オバ犬に舐められて意識を取り戻したルイージは、体を起こし、箱からゆっくりと降りる。
その後に、ユミルとミロが続けて降りる。
三人は五階から転落したが、
幸い、飛び込んだ箱の中には洗濯物が入っていたので致命傷には至らなかった。
「う、うーん……」
「大丈夫、二人とも?」
「はい、ボクとミロさんは頑丈なので平気ですよ」
「よかった……」
ふぅ、と落ち着きを取り戻すルイージ。
いきなりキングテレサに追いかけられて、心の余裕がなくなっていたが、
ひとまず額縁入りは免れた。
その後、ルイージ、ミロ、ユミルはこれまでの情報をまとめる。
「僕、オバ犬、兄さん、ピーチ姫、キノピオ、ミロ、ユミルは
ラストリゾートっていうホテルに招待されたけど、そこはオバケだらけのホテルだった。
そして僕、オバ犬、ミロ、ユミル以外はみんなキングテレサの罠で額縁に封じられてしまった」
「あの額縁からは魔力を感じます。やはり、魔法を使ったものですね」
「う~、くらくらするわ」
キングテレサは多くの生物を額縁に封じ込める高度な魔法を使える事から、
かなりの魔力を持っているとユミルは推測した。
ミロはあまり頭が良くないため、ルイージとユミルの話についていけなかった。
「とにかく、まずはここから出なきゃ」
「そうね」
ルイージは懐中電灯を照らしながら、洗濯室の中を探索していく。
「わっ、停電!」
電球が切れ、停電が起こり、ルイージは驚く。
歩いていくと布団がばさばさと落ちて、上からも水がぽたぽたと垂れる。
さらには、急に洗濯機のスイッチが入ったりと、洗濯室の中でも怪奇現象は起きていた。
「見て、これ宝石よ!」
「ホントだ……」
中央の洗濯機の中には、宝石が入っていた。
しかし、どうやって取るのかはまだ分からない。
仕方なく、ミロが宝石の位置をメモした後、三人は宝石を後にした。
「ううう、不気味だね……」
三人は東にあるドアを開け、洗濯室を出る。
ホテルの中には、マリオやピーチ姫以外にも絵画があり、
例えば、オバ犬の近くには、不気味な森が描かれた絵画がある。
「キングテレサって、絵が好きなのね」
「ワン、ワン!」
「あっ、オバ犬! どうしたんだい?」
「ワン!」
ゴミ箱の上にいたオバ犬が姿を消すと、中から1枚のコインが飛び出してきた。
「おお、役に立つぅ!」
「ありがとう、オバ犬」
ルイージはコインを拾った後、近くにあったドアを開け、駐車場の中に入る。
駐車場の中には客の荷物があり、既に中にいたオバ犬は東に向かって走り出す。
「どこに案内するんでしょうか?」
ルイージ、ミロ、ユミルがオバ犬の走った方向に歩くと、赤色のトレーラーを発見した。
「えっと……わわわっ!!」
ルイージがトレーラーを開けると、中からオバ犬が飛び出してきた。
どうやら、オバ犬は何かを発見したようだ。
オバ犬がいたところを調べてみると、その中には、赤い掃除機が入っていた。
「これは……オバキュームじゃないか!」
「ごまだれー」
「それ別世界のものですから」
その掃除機こそ、オバケに対抗できる唯一のルイージの武器、オバキュームなのだ。
しかも、デザインが新調されていて、ストロボ機能もついている。
ルイージはそれを装備して、改めてオバキュームの機能を試した。
ミロとユミルも、魔法の弓や杖を使って魔法の試し撃ちをした。
「ワンワン」
オバ犬が宙に浮いて天井に消えると、ルイージ達は探索を再開した。
まず、オバキュームがあった部屋に行き、西側にあるスイッチを調べた。
すると、上のシャッターがある程度上がった後、落ちた。
さらに、スイッチが壊れてしまった。
「わぁっと!」
「何やってるんですか?」
「ご、ごめんよ、余裕がなくて……」
「……ここには特に何もなさそうね。次の部屋に行きましょう」
「う、うん」
三人が駐車場を出て廊下を歩くと、
ルイージがライトで照らした場所に、宝石が描かれた絵画があった。
「あれ? これは……」
「どこかで見覚えがある額縁ですね……」
ミロ以外は、この額縁がキングテレサの魔力で生み出されたものだと分かった。
対象を封じ込める恐ろしい額縁……それは、無生物も例外ではなかった。
「えっと、ここに宝石が描かれた絵画があるのね」
今はこの封印を解く力を持っていないため、ミロがメモをした後、この絵画を後にした。
明かりがついたり消えたりと、ルイージにとっては不安定な光源だったが、
ストロボがあるので何とかなる。
そして、三人はエレベーターがある場所に辿り着いた。
「ここは……地下一階みたいだね。あんなに高いところから落ちたからね」
「あたし達は大丈夫だったけど、ルイージがねぇ」
「君達が頑丈すぎるからだよ。……ところで、オヤ・マー博士はどこに行ったのかな?」
「オヤ・マー博士?」
「オバケ退治の必需品、オバキュームや、
他にも色んな道具を発明した、オバケを研究している博士だよ。
何度も僕や兄さんをサポートしてくれたんだ」
ルイージはオヤ・マー博士についてミロとユミルに珍しく笑顔で説明した。
だが、話し終えた後、ルイージの笑顔は消える。
「でも……いつもはすぐに出会うはずなのに、どこにもいないんだ」
「休暇を取ったのかしら?」
「それはあり得ないよ。彼がいなかったら、このオバキュームも手に入らなかったんだ」
「うーん……」
オヤ・マー博士は一体どこに消えてしまったのだろうか。
三人はとりあえず、スイッチがある場所に近付く。
「これ、どうやったら動くの? 普通に動かせるようなものじゃないけど……」
「僕に任せて。このストロボを使って……」
ルイージはストロボにパワーを溜めた後、勢いよく強い光を放った。
すると、スイッチの色が緑から黄色になり、赤いランプが点滅してドアの鍵が解除された。
「Good Job! さあ行くわよ、ルイージ、ユミル!」
「OK!」
三人は廊下に出る。
「ルイージ、ミロさん、これを見てください!」
「何々……あっ!」
ユミルは壁に小さな亀裂が開いているのに気づき、それをルイージとミロに知らせる。
三人が亀裂を覗き込むと、そこにはたくさんのコインが描かれた絵画があった。
これも、魔法の額縁に封じられたコインだろうとルイージとユミルは推測した。
「うわっ、蜘蛛の巣だらけね」
「僕が掃除するよ」
三人は階段の下に潜り込む。
ミロは蜘蛛の巣の多さに不快になっていたが、
ルイージがオバキュームで全て吸い取って綺麗になった。
蜘蛛の巣が全て吸い込まれると、中から宝箱が現れた。
ルイージが宝箱を開けると、中にはたくさんの金銭が入っていた。
すぐにオバキュームで全て回収した後、ルイージ達は階段を上っていった。
「ワンワンワン!」
「コインや紙幣がたくさん! ありがと、オバ犬」
「ワン!」
その途中でオバ犬が金銭をばら撒いたため、ルイージはオバ犬に感謝した。
「あら、オバケ嫌いを克服できたのね」
「……オバ犬だけだよ」
三人は階段を上がり、奥にあったドアを開ける。
「ここが一階みたいね」
「そうですね。ほら、ダイヤがありました!」
「ホントだ」
ユミルが指差した先には、観葉植物に絡まった緑の宝石があった。
だが、それもまだ取れないため後にして、三人は西へ向かっていく。
すると、上にあったキノピオ、ルイージ、マリオ、ピーチの絵には×印が描かれ、
まるでお尋ね者のような雰囲気になった。
さらに、ホテルスタッフは誰もおらず……。
「あれは、オバケ!?」
たくさんのオバケが、工具でドアを塞いでいた。
ルイージは驚いて叫ぼうとするが、ユミルが「しー!」とルイージの口を塞ぐ。
「まずは、相手の様子を見ましょう。ルイージ、その場を動かないで」
「わ、分かったよ」
ルイージはユミルの言う通り、相手の様子を伺う。
しばらくすると、オバ犬がどこかに去り、オバケ達も工具を放り出して去っていった。
――と思いきや。
「バァーーーーー!!」
「うわあああああああああああ!!」
「きゃあああああああああああ!!」
「来ましたね……!」
いきなり、オバケが三人の目の前に現れて、ルイージ達を驚かしてきた。
唯一、ユミルだけは怯まず、オバケを真剣な表情で見ている。
さらに、光の柵が落ちてきて、ルイージ達の逃げ道を塞ぐ。
「逃げ道が塞がれたわ!」
「これは……本気のようですね」
「怖いけど……戦うよ!」
ルイージは震えながらオバキューム、ミロは魔法の弓、ユミルは魔法の杖を構えて、
オバケに戦いを挑んだ。
「せいっ!」
ミロは魔法の矢を放ち、オバケを遠距離から狙撃する。
「す、凄いね、オバキューム無しでもいけるんだね」
「曖昧な存在のオバケには、こっちも曖昧な魔法で対抗するのよ」
「でも、せっかくオバキュームを持ってきたんだ。早速、この機能を試してみなきゃ!」
ルイージはオバキュームのストロボを溜め、オバケに向けて解放する。
すると、光に弱いオバケは怯んで動きを止めた。
「今よ、吸って!」
「よし!」
ルイージはオバキュームのノズルをオバケに近付け、勢いよく吸った。
すぽん、とオバケが吸い付くと、オバケはそれから逃れようとする。
ルイージは、オバケが逃げる方向とは逆にオバキュームを引っ張り、
オバケの体力を減らしていく。
「パワーが溜まったわ!」
「いくぞっ、せいっ、やあっ、とおっ!」
ルイージはオバキュームに吸い付けたオバケを何度も叩きつける。
攻撃を食らい続けたオバケは消滅した。
「……ふう」
オバケを撃退し、一安心するルイージ。
しかし、ミロとユミルは真剣な表情のままだ。
「どうしたの? ミロ、ユミル」
「まだ、います!」
「油断大敵!」
二人がそう言うと、どこかから笑い声が聞こえてきた。
「キャハハハハハハ!」
「アハハハハハハハ!」
「!?」
ルイージが上を見上げると、怒った様子のオバケが口笛を吹き、仲間を呼び出してきた。
「援軍というわけですね」
「怯んじゃダメよ、ルイージ! 絶対に、時の歯車は使わないんだから!」
「時の歯車……?」
「話せば長くなるわ、今は倒すのよ!」
「う、うん!」
二体のオバケが三人に襲い掛かる。
ミロは魔法の矢を放ってオバケを足止めし、ユミルはルイージに助言する。
「いいですか、オバケが集まったら一緒に吸ってくださいね。もちろん、足止めは必要ですよ」
「分かったよ!」
ルイージは動き回るオバケを上手くまとめてストロボで足止めし、オバキュームで吸い付ける。
そしてある程度吸ってパワーを溜めた後、連続でスラムをしてオバケを全滅させた。
「もう、大丈夫かな?」
合計三体のオバケを撃退すると、
ようやくオバケの気配は消え去り、光の柵も綺麗さっぱりなくなった。
「光の柵も消えてるから、もうオバケはいないわ」
「よかった……」
ルイージはようやく安心した。
何度もオバケと戦ってきたものの、やはりオバケはあまり好きではない様子。
「上出来ですね! やるじゃないですか!」
ユミルは、ルイージの見事な戦いぶりにぱちぱちと拍手をする。
「今回でオバケ屋敷を探検するのは三度目だからね」
「へえー、そうだったの。あたしは二回目よ」
「二回目……?」
「正確に言うと、美術館*1だけどね」
「じゃあ、僕もこれまでの事を話そうかな。……ちょっと、怖いから思い出したくないけど」
ミロとルイージは、お互いの冒険譚を話し合った。
気軽に話せる時間は貴重なので、思う存分楽しむ。
「僕が最初にオバケ屋敷を探検したのは、兄さんが行方不明になった時の事だった。
僕は兄さんを探すために、オバキュームとゲームボーイホラーを持って屋敷を探索した。
オバケがたくさんいたから、怖かったよ。でも、兄さんを探すために僕は頑張った。
やがて、兄さんはキングテレサの罠で絵にされた事が分かった。
僕は兄さんを助けるために、
オバキュームと振り絞った勇気でキングテレサを倒して、兄さんを助けたんだ。
そして二回目は、ダークムーンという宝石がキングテレサに壊されて
オバケ達が凶暴になってしまったから、異変を解決するためにまたまた冒険した。
この時に手に入れたのが、ドコデモシャベレ~ルとか、ゴーゴーカメラとか、
ゴシゴシビートブラシとか、それから……」
「凄いわね、ルイージ!
あたしも小さな女の子や背の高い男の人と一緒に、美術館を探索したわ。
追いかけてくる彫像とか、可愛い金髪の女の子とかがいたわよ」
二人の話は大いに盛り上がっていた。
ユミルが直接ホラースポットに冒険に出かけたのはこれが初めてだが、
彼は理解できているようで何度か頷いている。
「ミロ、その腕輪は何だい?」
ふと、ルイージはミロが右手につけている腕輪が気になって、彼女に話しかける。
「さっき言った『時の歯車』っていうあなたが絵にされても100回までなら巻き戻せる魔導具よ」
ミロとユミルは、キングテレサがルイージを絵にする未来を見て、
それを変えるためにやってきた。
そこで、二人を送り出したアデルという人物が渡した魔導具が、この時の歯車である。
これさえあれば、たとえルイージが力尽きても、時を巻き戻してやり直す事ができる。
ただ、世界に多少の負担をかけるので、使える回数は最大で100回までだ。
「というわけで、あなたの未来を変えるためにボク達がサポートいたします」
「オバケと戦えるのは、あなたしかいないのよ」
「ま、待ってよ。僕はオバケが苦手なんだ。
ミロとユミルは魔法が使えるから、君達が倒してくれないかな」
「ボク達はそんなに霊感がないんです……というか、あなたの霊感が強すぎるだけです」
ルイージは生まれつき非常に強い霊感を持ち、オバケの姿をはっきり捉える事ができる。
その霊感の強さはミロとユミルも一目置いていた。
「何度もオバケと戦ってきたんでしょ? ね、ルイージ、お願いだから」
ミロとユミルは笑顔でルイージに頼んだ。
ルイージはまだオバケが苦手だが、だんだんと克服しつつあった。
それでも、いきなりの襲撃はまだ慣れていない。
事実を伝えようと思ったが、それでは二人が傷つくと思い、
ルイージは勇気を振り絞ってこう言った。
「分かった! 僕がみんなを助けるよ。オバケはもう大丈夫……だから、ね」
「うふふ、それこそがルイージよ!」
「一緒に頑張りましょうね。
「ゴーストスイーパー、か……。確かにそうだね。このオバキュームが、僕を助けてくれる。
そして、ミロとユミルも……」
奇妙で不気味なオバケホテル。
果たして、三人は脱出できるのだろうか……?
次回はルイージマンションといえば、の、彼が登場します。
楽しく怖く描写しています。