ルイージマンション ~ オバケホテルと吸血鬼 作:アヤ・ノア
オヤ・マー博士を救出したルイージは、彼をオバキュームが入っていた車へと案内する。
駐車場の中にはガトレーというオバケがいて、荷物を投げながらルイージ達に襲い掛かる。
何とかガトレーを退けると、1階と5階に繋がるエレベーターボタンを手に入れるのだった。
「オヤ・マー博士、見て!」
ガトレーを撃退したルイージは、拾ったエレベーターボタンをオヤ・マー博士に見せる。
「おお! それはまさしくエレベーターボタンじゃのう!
まさか、オバケが持ち去っておったとは! ユミル、キミは勘が鋭いのう!」
「えへへ、ありがとうございます」
ユミルの予測通り、エレベーターボタンはオバケが持っていた。
オヤ・マー博士に褒められたユミルは照れて頭を掻く。
「じゃが、2つだけしかないのう。他のボタンは別のオバケが持っておるかのう?」
「そうかもね」
「まあよい。とにかく、わしの車へ向かうとするぞ。
面白いものを見せてやるからついてくるとよい」
「……?」
ルイージ、ミロ、ユミル、そしてオバ犬はオヤ・マー博士に連れられ、
オバキュームが入っていた車がある場所に近付く。
オヤ・マー博士が車のドアを開けると、中から丸い形をした機械が出てきた。
「何これ?」
「これ、ルイージ! 触るでない!」
「ご、ごめんなさい」
オヤ・マー博士は機械を持ち運び、床に乗せる。
すると、機械が上から緑に光っていく。
「こ、これは……!?」
「これ、ちゃんと見るんじゃ」
四人が見守る中、機械は変形し、なんと大きなドーム型の建物になった。
ご丁寧に、上にはパラボラアンテナがついている。
「うわあ……」
「おおー! 流石オヤ・マー博士! ……です」
ルイージは唖然とし、ミロとユミルはぱちぱちと拍手する。
オヤ・マー博士とオバ犬は「ついてこい」というように建物の中に入っていった。
ミロとユミルも彼についていき、ルイージも遅れながら入った。
「おおー! 立派だなぁ」
建物の中には、キーボードやたくさんのモニターがあった。
オヤ・マー博士は赤い椅子に座ると、ルイージ、ミロ、ユミルに説明する。
「フェッフェッフェッ! ようこそ、わしのベースラボへ!
こいつはわしの天才的な発明品の1つでのう。
丈夫で安心、冷暖房完備の移動式研究室なのじゃ!」
「おぉー! すごーい!」
「いやー、こんな事もあろうかと、万が一に備えて持ってきておいてよかったわい!」
「この歯車もあるしね!」
そう言って、ミロは右腕につけてある時の歯車をオヤ・マー博士に見せた。
歯車の上には「100」と書かれてある。
「おお! ミロ君、その歯車は何だね?」
「これは『時の歯車』っていうの。使う事で時間を巻き戻して生死を変える事ができるわ。
ね、博士、この歯車を改造できる?」
ルイージが力尽きて絵にされても、
この時の歯車を使えば時間を巻き戻し、もう一度やり直す事ができるのだ。
オヤ・マー博士は興味津々に時の歯車を見たが、しばらくして難しい表情になる。
「うーむ……わしにはできんのう」
「なんで?」
「これは異なる世界の技術で作られたものじゃ。そっちの方はわしの専門外じゃ」
「はぁ……」
オヤ・マー博士が時の歯車を改造し、たくさんやり直せるというミロの夢は、儚く崩れ去った。
「ん? それより何故、わしがこのホテルにいるのかじゃと?
それには、深ーい訳があるのじゃが、手短に言うと、騙されたのじゃ……」
オヤ・マー博士はこれまでの事情をルイージ達に話した。
『ふう、疲れた。こんな時はルノマングリーニーコーヒーを一服するかのう。ん……?』
研究疲れで休んでいたオヤ・マー博士の元に、一通の便りが届いた。
それは、とあるホテルのオーナーから送られてきた招待状だった。
「珍しいオバケが生息している」と
兼ねてから噂される地域にある豪華ホテルへ無料招待するという。
なんでも、オーナーはルイージが二回目の冒険で捕獲したキングテレサを
どうしても見てみたいらしい。
キングテレサを連れてきてくれれば、
オーナーの持つ貴重なオバケコレクションを譲ってくれるという。
『オバケのためならそんなものお安い御用じゃ!』
オヤ・マー博士はまだ見ぬオバケコレクションに胸を躍らせつつ、
新型オバキュームなどを積み込んだ車で意気揚々とホテルに向かって出発した。
『ささ、どうぞこちらへ……』
オヤ・マー博士がホテルオーナーの女性にオバケの絵画とテレサイトを渡すと、
女性はそれらに魔法の粉をかけた。
すると、絵画の中にいたオバケは次々と外に飛び出していき、ホテル中に散らばっていった。
そして、ルイージとオヤ・マー博士が封印したキングテレサも外に飛び出した。
『グワッハッハッハッ! 引っかかったな、メガネジジイ!』
『キ、キングテレサ! オバケコレクションをプレゼントするというのは!』
『もちろん嘘だよ。オバケが好きなお前なら引っかかると思ったからな』
ホテルの招待状が罠だと知り驚くオヤ・マー博士。
しかしキングテレサはそれを意に介さず、魔法の額縁を作り出し、中に異空間を生み出す。
『な、何をする気じゃ、キングテレサ!』
『ルイージを怯えさせる餌になれよ、メガネジジイ!!』
『なっ……!!』
オヤ・マー博士は脂汗をかき、その場から逃げようとしたが、
キングテレサの魔の手はそれよりも早く迫ってきた。
「そして、キミ達に助けられた、という訳じゃ」
「あわわわわわわわ」
ルイージはそこまで聞いた途端、震え出した。
ミロとユミルは落ち着いてオヤ・マー博士の話を聞いている。
オヤ・マー博士もまた、罠にかかってしまったらしい。
つまり、部外者のミロとユミルを除き、全員がオバケどもに騙されてしまったのだ。
「要するに、あなた達は汚い手に弱いんですね」
ユミルはルイージとオヤ・マー博士を見た後、真顔で二人に毒舌を吐く。
オヤ・マー博士はユミルの毒舌が響いたのか、さらに悔しがりながら膝を叩く。
「くーっ! せっかくルイージ君が苦労して捕まえたオバケがいたのにのう!」
「僕も罠だって事は知らなくて……」
「特にキングテレサはわしのお気に入りのコレクションだったのじゃが……」
「そいつが逃げ出したせいで、兄さん達が絵に閉じ込められた……」
キングテレサの封印が解けたのも、マリオが絵に閉じ込められたのもこれで三回目。
ルイージとオヤ・マー博士はお互いに落胆した。
「ぬー、あのホテルオーナーの奴め! なんて事をしてくれるのじゃ!!」
オヤ・マー博士の怒りは頂点に達した。
そして、ルイージ、ミロ、ユミルを真っ直ぐ見てこう言った。
「ルイージ君、ミロ君、ユミル君! こうなったらもう、キミ達の活躍に期待するしかないわい!
なんとしてでも、わしのオバケコレクションを取り戻すのじゃ!!」
「……分かりました」
「分かったわ!」
「もちろんです!」
ルイージは穏やかに、ミロとユミルは元気にそう言った。
彼らの表情を確認したオヤ・マー博士は頷いた。
「よし! そうと決まればルイージ君、ミロ君、ユミル君、
早速これまでに捕まえたオバケをわしによこすんじゃ!」
「うん」
ルイージはオバキュームのノズルを機械に繋げ、モニターに映ったメーターを満タンにした。
これで、オバケのデータが入った事になる。
「よしよし! この調子でオバケをどんどん捕まえてまたこのベースラボに帰ってくるんじゃ!」
「分かりました、オヤ・マー博士。それと、博士……みんなを助けたいんですけど」
「ああ、そうじゃった。
キミ達の仲間を助けるのが目的じゃったのう……すっかり忘れておったわい。
ゴホン、まあとにかく、キミ達はこの怪しいホテルを探索せねばならん事に変わりはない」
探索はまだまだ続くのか……とルイージは溜息をつく。
逆に、ミロとユミルは未知の世界にわくわくしていた。
「そんなに怖がらないでくださいよ」
「あたし達がついてるんだからね!」
ミロがルイージの肩に手を置くと、ルイージはぎゃっと驚き声を出す。
「あららー。あたしはあなたの味方なのに」
「うぅ……だって怖いんだもん……」
「……よし。そんなキミに、まずはわしの偉大な発明品を1つ授けるとしよう」
そう言って、オヤ・マー博士は某ゲーム機*1のような機械をルイージの前に出した。
「これは?」
「名付けてバーチャルブー! 略してVBじゃ!
真っ赤な画面がとてもオシャレな最新式のバーチャル・リアリティー装備じゃ!」
「ばーちゃんありてぃー?」
「Virtual Reality、仮想現実という意味じゃ」
異世界出身のミロとユミルは、訳が分からず?マークを浮かべる。
オヤ・マー博士は二人に分かりやすいように説明した。
「これが商品化されたら大ヒット間違いなしじゃぞ? フェッフェッフェッ!」
「ありがとう、貰っていくね」
ルイージはオヤ・マー博士からバーチャルブー(以下、VB)を受け取った。
VBを使えば、いつでもオヤ・マー博士と通信する事ができる。
流石に、時の歯車を直す事はできないようだが。
「そしてもう一つ、キミに渡す物がある。これじゃ」
「?」
オヤ・マー博士は、ルイージにモニターデバイスを渡した。
「ルイージ君、ミロ君、ユミル君、これをまずエレベーターの中に取り付けてきてくれんかね?
そいつが何なのか、詳しい説明はその後でしてやるからのう。
よし! では早速エレベーターへ向かうんじゃ!
よろしくな、ルイージ君、ミロ君、ユミル君!」
「博士、本当にありがとうございました。それじゃ、行ってきます!」
「朗報を楽しみにしてくださいね!」
「……VBですぐに報告できるんじゃがな……」
ルイージ、ミロ、ユミルはベースラボを後にした。
「じゃ、ホテルを探索して、みんなを助けよう」
「ルイージ! あなたの活躍、期待してるわよ!」
「あ、ありがとう、ミロ……」
明朗快活なミロを見たルイージは、招待されなかったある姫*2を思い出す。
しかし、彼女が絵にされるのを想像したルイージは、
「招待されなくてよかった」と思うのであった……。
回想シーンはそれなりに気合を入れました。
次回は2章、オヤ・マー博士の鞄探し編です。