盲目の提督と艦娘の物語   作:Hetzer愛好家

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書いてたら長くなった(白目)
え、テスト中? 知ったこたねえ! 休憩してたら筆が乗ったんだ仕方ないよ!()
……はい、すみません。お騒がせしました。今回は戦闘回です。が、思った以上に長くなったので次回にも続きます。半分ぐらいは提督についての説明にもなります。


第二話

「よし、集まったか」

 

一足先にやって来ていた提督が後ろを振り向けば、そこにはズラリと大湊鎮守府の精鋭たちが勢揃いしている。

 

皆が皆、提督の戦闘服状態を見て見惚れていることは露知らず、彼は作戦の内容を簡単に伝え始めた。

 

「先ほど憲兵からの伝令があったはずだから大ざっぱに説明する。三十分後に航空隊は威力偵察のために半数発進。偵察が終わったら帰還させ、空母たちはアウトレンジから爆雷撃を叩き込め」

「……クソ提督。私たちは?」

「君たちは鎮守府の高角砲が届くギリギリの距離まで敵を引き寄せたら出撃だ。陣形や戦法は問わない。各個目の前の敵を撃滅しろ。もちろん私も出撃して援護する」

「総力戦と聞いたけど備蓄は?」

「最近は出撃が少なかったと言えば君なら大方は理解できるだろう?」

「むっ……それは、そうだけど」

 

なら大丈夫と締め括った提督は事細かに装備の指示を始める。何故か不満顔の曙を置いて発進機体はなるべく航続距離の長い物を優先、だとか強力な機体は温存しておけなどと指示をしているとあっという間に航空隊発進の時間がやって来た。

 

空母たちに後は任せた提督は一度場を去ると、出撃用のモーターボートを整備している工作艦“明石”の元へ向かう。

 

普段提督が出撃するときは、彼専用のクルーザーに搭載して戦闘区域に近づいたら発進させるという段取りを取っている。しかし、今回は近海での戦いのためクルーザーは出さず、最初からモーターボートで出撃するため明石に予め運んで欲しい旨を伝えに来たのだ。

 

「明石、少し頼まれてくれないか?」

「あ、提督! 何か御用ですか?」

「モーターボートを予め運んで出撃ドックに浮かべて欲しい。近海での戦闘だからな」

「えー……出撃するんですか?」

 

かく言う明石も提督LOVE勢の一人である。例外なく彼女も提督には出撃して欲しくないのだ。だが、付き合いがそれなりに長い明石は既に提督が一度言い出したら止まらないことは知っている。

 

非常に気乗りしない顔を毎度しながらも、何だかんだで明石は提督のお願いであるなら聞いてやると心得ていた。

 

「まあ近海なら最悪撃沈されても助けに行けますから良いですけどね。提督自身も非常に強いですから何とかなるでしょう」

「何時もすまないな」

「いーえ。提督のことはよく知ってますから言っても無駄ですし。その代わり、必ず帰ってきてくださいね?」

「無論だ」

「本当に無茶は止めてくださいね? いくら提督のステータスが人並外れていても何だかんだで軽巡の方が回避能力は高いですし索敵だって水偵積んだ艦娘の方が高いんですから。それに一撃貰っただけで間違いなく即死ですし」

 

彼のステータスは人間という括りで見ればどうかしているレベルに高い。しかし、それでも素の能力はどうしても艦娘には勝つことが出来ない。ずば抜けて高い回避と索敵も艦娘からすれば一段劣る。

 

それなら尚更、どうしてこれまで戦えたのかが謎になってくるのだが……それはまた後述。

 

「まあ、ここまで言ってもどうせ行くんでしょうし。調整段階ですけどこれを装着してみてください」

 

ため息をつきながら明石が提督に黒い靴を手渡した。見た目はその辺にも販売していそうな運動靴である。しかし提督が靴を手に持つと、彼の手に感じた鉄的な硬さとそれにしては不釣り合いな軽さに「ほう?」と声を漏らす。

 

彼は靴がどんな見た目なのか分かっていないが、それでも手触りでこの靴は非常に特殊なものだと察する。そしてそれを見越し、明石が靴について説明を始めた。

 

「それは艦娘が使用している水上ブーツを人間用に調整したものです。艦娘と違って滑って移動ではなくその足で歩かないといけないので艦娘より速力は劣りますが、貴方の技量なら小回りを利かせられるはずです」

「ふむ。これがあればボートが沈んでもすぐには死なずに済みそうだな。だが、調整段階なら何かしら問題があるはずだ」

「水上歩行機能の連続使用時間は二時間な事ぐらいですね。太陽光での充電も出来ますけど、提督が使うならあまり意味がないので二時間以内には陸上に立ってくださいよ」

 

鎮守府のドラ〇もんである明石が制作したブーツは提督ならばきっと深海棲艦とも戦えると信じて制作されている。本来は少しでもボートが撃沈されてからも生きられるように作り始めたものなのだが、提督なら大丈夫だろうと明石が思い調整した。

 

提督はそんな明石の思いを確かに感じ取ると、黙って靴を履き替える。彼の足に怖い程ジャストフィットしたブーツを身に着けた彼は、軽く足踏みしたりジャンプをして問題がないことを確認すると、目の前でしかめっ面をしている明石の頭を優しく撫でた。

 

「て、ててて提督!?」

「何時もありがとう、明石。君の御蔭で今回も生き残れそうだ」

「そ、そんなに褒めても何も出ませんけど……貴方が無事なら私はそれで良いです。だから、絶対に返ってきてくださいね」

「当たり前だ」

 

手を退けると表情筋を引き締め、力強い声で短い宣言を行った提督はそのまま背を向けてその場を立ち去った。

 

後に残された明石は彼の背中が見えなくなるまで見送ると、誰にも聞こえない声で零す。

 

「これじゃあもっと惚れちゃうじゃないですか、バカぁ……」

 

と。

 

───────────────────

 

航空隊が発進してからおよそ一時間。随分と早い時間で全航空隊が鎮守府に帰還を完了した。それが思いの外敵は近くに来ていることを暗に示している。出撃ドックに集まった艦娘や憲兵たちは緊張の面持ちになる。唯一、提督だけは表情一つ動かさずに航空隊が一航戦の片割れである“加賀”に報告し終わるのを待つ。

 

やがて報告が終わったのか、加賀が航空機を操縦していた妖精さんから目を離して提督の肩を叩く。この妖精さんは艤装を操る艦娘の補助や鎮守府の修理など多岐に渡って仕事をしてくれる有能な存在だが、生憎提督には見えない。

 

「提督、報告です」

「頼む」

「はい。まず敵の総数は軽く百を超えるとのことです。艦種は駆逐艦と軽巡が半数を占め、もう半分を大型艦で構成しているようです。そして、姫級や鬼級の確認もしたとのことです」

「姫に鬼か。随分と本気だな。それで、他にはあるか?」

「……一隻、少々変わった空母を発見したとのことです。どうも片目が傷ついているのか眼帯をしており、身に纏うオーラも段違いだったと」

「……そうか」

「見た目はヲ級みたいです。どうやら姫や鬼もそのヲ級が指揮しているようで、操る航空機の練度も強さも異常だったと……」

 

提督の失明の理由は爆撃によって引き起こされた爆風が目を焼き、水分を蒸発させてしまったからだ。その爆撃によって家族も同時に失っている。深海棲艦は基本的に憎んでいる提督だが、その中でも特に空母のヲ級を憎悪しており、戦場に出たら真っ先に殺しに行くほどだ。

 

そこまで憎んでいるのは当然家族や友を殺したからであるが、それ以上に襲撃を受けた際に提督が死に物狂いで反撃した時にヲ級の片目に刀を突き立てて撃退している。その時に自分の家や友人の家を襲ったのがヲ級であると知り、それ以降仇を自らの手で殺すために戦場に出て来た。

 

そして今、自分の両目や家族を奪った存在かもしれない者がやってきた。提督はほんの僅かだが歯軋りをしてから静かな声で命令を下す。

 

「……敵は近い。空母は全員防波堤から敵を狙うように。他は全員出撃準備だ。憲兵隊長の高角砲の発射を合図に出撃する。隊長、任せたぞ」

「は、ハッ! お任せを!」

 

とんでもない提督の殺気に顔面を蒼白にしつつも答えた隊長は足早に高角砲の元へと向かった。そしてそれを合図に空母たちも移動する。

 

最後に提督は残った者に「蹂躙してやれ」と告げると、一足早くボートをドックから出して海に出た。

 

彼の頬を潮風が撫でる。空は爽やかな風とは裏腹に曇り模様。提督の心中もまた曇り模様。腰に提げた長刀の鞘を握り締め、彼は昔を思い出す。

 

あの日もまた、空は心が暗くなるぐらいの曇り模様だった。外に出て空を見上げた彼は、前日に許嫁が突如姿を消した事もあって胸騒ぎを覚えたが頭を振って疑念を振り払い、家に入って父親から先祖代々受け継いだと言われる“名刀時雨”の手入れを始めようとした。

 

しかし彼の手は突如鳴り響いた何かが落ちてくる音によって止められた。

 

咄嗟に耳を塞いだ提督。その次の瞬間には轟音と爆風が彼を襲った。余りにも強力な爆風で家ごと宙に浮いた彼が見た光景は自分と同じように焼かれる両親の姿。それを最後に彼の目は永遠に光を宿すことがなくなった。

 

地面に叩きつけられて肋骨を折り、痛みに悲鳴を上げる彼に再度爆撃機が迫った。

 

 

その時、彼の聴覚と第六感が“人間”という小さな枠組みを破った。

 

遥かにクリアになった聴覚が捉えた音がしない方向へ飛びのいて爆撃を回避した提督は偶然にも近くにあった長刀を掴み、第六感が指し示す方向へ彼は駆け出した。

 

そして鞘から刀を抜き、放たれた対空砲を勘で躱して一番近くに居たヲ級の左目に長刀を突き立て、暴れ狂うヲ級をただの蹴りで吹き飛ばして引き離すと、今度は戦艦や巡洋艦といった大型艦にも迷わず襲い掛かり、何かしら手傷を負わせて撤退させたところで彼の意識は一度途切れた。

 

次に意識が戻った時、彼は海軍が運営する病院に運び込まれていた。そこで彼は故郷や住んでいた人間はどうなってしまったかを聞いて絶望し、流されるままに提督へなった。

 

「……父さんも、母さんもあの世で元気にやっているだろうか」

 

誰も見たことのない提督の弱々しい声。しかし同じ口調で二の句は紡がれなかった。

 

ドガアン!!!

 

「……出撃だな」

 

鎮守府の高角砲が火を噴き、後ろから艦娘がやいのやいのとやってくる。提督はスラリと刀を抜くと、モーターボートの自動操縦機能をオンにした。

 

一気に加速して並みの駆逐艦ぐらいの速度を出したモーターボートは、真っ直ぐに敵の大軍団に突撃していく。慌てて追従する艦娘には気を配ることもなく、彼は自分の直感が指し示す方向へ真っ直ぐ向かっていった。

 

当然、いきなり現れた提督のボートに反応して深海棲艦は砲撃を開始する。一斉に爆音が鳴り響き、提督目掛けて死の雨が降り注ぐ……ことはなかった。

 

命中するギリギリのところで自動操縦のボートが旋回してその殆どを回避していく。それでも数発は提督の身に直撃しそうになるが、彼が刀を振り上げて手首を返せば勢いを完全に失った砲弾が無造作に海中へ没していく。落下速度など関係なく砲弾を無効化する提督の姿は深海棲艦からしたら悪夢以外の何でもない。

 

続いて雷撃で提督を沈めようとするも、それは叶わなかった。

 

「イィギ!?」

 

まずは提督の一番近くに居た駆逐艦イ級が手榴弾によって目を潰される。視界がゼロでも提督の第六感にかかれば精密投擲は造作もない。

 

これが提督のステータスが艦娘より劣っていても戦えた理由だ。彼の異常聴覚と第六感によってステータス以上の回避能力と索敵能力、そして命中精度を誇っており、多少は幸運体質なこともあって攻撃が命中することはない。

 

そして彼の卓越した剣技は聴覚で捉えた弱点部に必ず突き刺さる。いくら装甲が硬くても全身を覆った深海棲艦など存在しない。そこまで重装甲化すると動きが鈍くなりとてもではないが戦力にはならない。故に深海棲艦も艦娘も装甲で覆ってない箇所が必ずある。

 

それは大概が顔面部だ。更に艦娘の砲撃によって中破大破すれば心臓部も露わになる。それだけ弱点があれば提督からすれば難なく殺せる、と言うことである。

 

目を潰されてパニックに陥ったイ級に提督は刀を振り下ろして息の根を止め、そのまま敵中へ突撃。爆発魔の如く手榴弾をばら撒いては目を潰し、混乱する敵の首を次々と切り落として密集陣形だった深海棲艦たちの間に穴を作った。

 

手榴弾が切れた頃には既に後方から砲撃しようとしていた大型艦が集まる場所まで辿り着き、それでも変わることなくただの斬撃で強力なレ級やタ級、挙げ句の果てには姫や鬼ですらも薙ぎ倒していく。

 

「沈め! 海の底へ……深海へ還れ!」

「グウアッ! イタイジャナイ、カッ!」

「貴様らの痛みなど分からんし分かろうとも思えんね! 私が出来ることは痛みのないうちにあの世へ送ってやることだ!」

「ナゼダ! ナゼニンゲンデアルキサマニココマデ!?」

「知るかあ!!」

 

強いて言うならその原因を作ったのは視力を奪ったヲ級である。超人的な聴覚と第六感を与えたのは他でもないヲ級だ。恨むならそいつを恨め。と、心中では思いながらも彼はそれを口にすることはない。

 

「提督……」

「時雨、アンタ何ボケっとしてるのよ! すぐ次が来るわよ!」

 

一方、少し離れた場所で時雨と曙は目の前に次々と現れる深海棲艦に砲弾と魚雷を叩き込んでいた。沈めても沈めても深海棲艦は現れるため、曙はかなりイライラしている。対照的に時雨はずっと風に乗って届く提督の雄叫びに耳を傾けては憂げな表情を作っている。

 

最初の提督の突貫で既に四分の一ぐらいの深海棲艦が戦闘不脳になるか撃沈されており、幾分か楽ではあるのだが如何せん数が多い。本来ならこのように話す時間すら惜しいのだが……二人の練度は既に99と現状の限界値であり、かつ戦闘経験も豊富なので練度という数値以上の能力を発揮している御蔭で傷一つ付いていない。

 

「てかクソ提督、もうあんなとこじゃない! これじゃあ援護できないわよっ」

「追いつくことは出来てもあんな数の敵を相手取るのは勘弁かな……」

「ほんっとクソね! 誰にも助けを求めないなんて! てか航空機硬すぎない!?」

「多分、硬いのは眼帯をしたヲ級の物だよ。墜とせないなら躱すしかない」

「主砲を命中させて墜ちないとかどんな航空機よ! ああもうイライラするわね!」

 

主砲で射撃して航空機に命中させるという神業をやっても傷付かない航空機に呆れ半分怒り半分の声を上げる曙だが、その片手間で魚雷を発射して戦艦を中破させ、その後を追うように発射された時雨の魚雷で撃沈する。鎮守府トップの実力は伊達ではない。

 

と、その時である。

 

「目当ては貴様らじゃない、退けえ! 三刀一閃!」

「ギャッ!?」

「ビイヤガッ!」

「あ……始まったわね」

「うん、始まったね」

 

他人が聞けば謎の言葉が戦場に響き渡る。しかし謎の言葉に対して考える時間は生憎なことに存在しない。

 

先ほどまでは撃破まで数回刀を振っていたはずが、今ではたった一振りで深海棲艦の身体を斬り刻んでは首を飛ばして海に還していくのだ。その光景をこうして「いつも通り」と眺められるのはこの二人ぐらいである。

 

提督の剣術は超絶技巧と言っても差し支えないほどだ。それがこの結果に繋がる。もっとも、彼からすれば八雲流剣術の奥義を使って殲滅しているに過ぎないが。

 

「クソ提督って一閃で何刀まで行けたかしら?」

「十じゃない? 一閃は0.1秒だし」

「実戦では五までしか見たことないけどね。きっと、クソ提督からしたらそれで十分なんでしょうけど」

 

八雲流剣術奥義「刀閃」。刀は何回刀を振るのか、そして閃は何秒攻撃するかを示す。閃光の閃を使うだけあって一閃は0.1秒だ。つまり前述の「三刀一閃」は0.1秒に三回刀を振るということである。つまり提督は0.1秒で一体の深海棲艦を沈めている。それを繰り返していけば十秒もあれば周りに群がる深海棲艦を全滅させられるということだ。

 

「相変わらず凄いよね。でも、僕は心配だよ」

「クソが深海棲艦に殺られるかってこと? それなら心配はないと思うけど」

「そこじゃないよ曙。僕は提督があのまま何処か遠い場所に行ってしまうことが心配なんだ」

「遠くへ……?」

「このまま提督の家族の仇を殺したら、燃え尽き症候群になるんじゃないかと思ってね」

 

時雨は知っている。提督が深海のような深く、暗く、そして冷たい闇を抱えているのを。それを普段は隠して皆に接していることを。仇を見つけたら如何したいのかを。そしてそれに対する異常なほどの執着心を。

 

口にせずとも時雨が何を知っているのかを察し、また彼女がどう思っているのかも察した曙は大急ぎで提督方面に向けて舵を切った。

 

愛する人が復讐を果たしてそのまま死んでしまう。それを時雨は心から危惧していたのである。

 

全速力で突撃を開始した曙に呆気を取られる艦娘が殆どの中、時雨だけは「ありがとう」と呟いて彼女の後を追うのだった。

 

───────────────────

 

「見つけた……ぞ!」

「……」

 

無理な機動を連続で使用したためか、モーターボートは動きを完全に止めてしまった。まるで主人を仇敵の前にまで送る片道切符のタクシーの様である。

 

左目に眼帯を装着したヲ級の周りには、あの日提督が一太刀浴びせて撤退させた深海棲艦が群がっている。誰しもが提督の事を憎しみの籠った眼……では見ていなかった。しかしそれに提督が気がつくことはない。

 

唯一、ヲ級だけは大部分が感情の宿らない表情だ。時折、まるで何かを我慢しているかのように苦しそうな表情を浮かべるも、それはすぐに消えてしまう。

 

もっとも、提督が見えていなければ無意味だ。彼の耳が捉えているのは“敵”の心音と呼吸音のみ。それ以外は何もない。

 

「漸くだ。何年越しだか忘れてしまったが……そんなのは如何でも良い。漸く見つけたぞ!」

「ヨウヤクミツケタ。ソレハ、ワタシタチモオナジナノヨ」

「アナタトハナシタカッタノ」

「貴様らに話す口は生憎付いていない。付いていても話す気にはならない。何故なら俺は、今とても嬉しいからだ。俺はこの日のためだけにこれまで生きてきた。家族や友人を殺し、私の両目の視力を奪った貴様らをこの手で殺せるこの日を、ずっと待っていたんだ!」

 

サングラスを海中に投げ捨て、二度と光を宿さない目を露わにする。形だけ残った彼の醜い眼球は収縮することも見開かれることもない。ただ、あの日から変わらない真正面を見つめるのみ。

 

脳が震えるほどの物理的な衝撃を受けて理性を手にした深海棲艦の言葉も彼には届かない。憎しみに支配された提督の耳には何の言葉も入らない。

 

モーターボートを乗り捨て、明石特性のブーツの機能で提督は海に立つ。首には母の形見である懐中時計をぶら下げ、手には父の形見の長刀を握り締めた。

 

憎しみに囚われた提督の、意味の持たない戦いが幕を開けようとしていた。




上記の通り、次回も戦闘回です。
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