外はすっかり日が昇る時間が早くなった
蝉の鳴き声を聞くと夏になったように思ってしまう。私自身あまり夏は好きじゃないけどね
あの現象が起きた事を先生に話すと“ゾーン”って言う現象に似たものらしい
本来はスポーツ選手が集中したときに起こる現象みたい
私にスポーツ経験はあまり無いのにどうしてそんな現象が起きたのだろう?
そんなことより今日は私の手術日…
まずはお腹を切って穴が開いている部分を塞ぐ。
術後状態が良かったら直ぐに退院出来るみたい…
「お腹切られるのか…すこし怖いなぁ」
コンコン
「どうぞー」
先生と看護婦さんがタンカーを運んできた。時間みたい
「白夜ちゃん。そろそろ…」
「はい、行きましょう先生」
タンカーに乗せられ手術室に向かう途中に紗夜と日菜の姿が見えた
二人は不安な顔をしていた。もう、日菜には難しい手術じゃないって言ったのになんでそんな顔をしているのかな
そんな顔されたら私も不安に感じちゃうじゃん
パタン!
手術室に入り、麻酔をかけられる。次第に瞼が重たくなってきた
□□□□□□□□□□□□
「お前達にはすまないと思っている」
「言い訳はそれだけ!?まさか私だけじゃなく――」
もう何年も見ていなかったお父さんとお母さんが喧嘩をしている
これは昔の記憶…
たしかこの時は、三人で遊園地に行く約束をしてたっけ?
もちろん、その約束は果たされることはなかった
「お前を含めてアイツの事も俺は…」
「あの子達はどうするつもりなの⁉」
「白夜の事は勿論!□□も□□の分も含めて養育費を払う」
あの時、私は扉の隙間から二人の様子を見ていた
そして逃げた
二人の怒鳴り声が聞こえない公園に···
「どうしておとうさんもおかあさんもいつもケンカしてるんだろう?」
一人ブランコに乗りながらそう呟いていた
「ねぇ、あなた」
顔を上げると二人の女の子がいた。でも、二人はただの女の子じゃなかった
二人は双子だった。
顔も髪も手の大きさもほぼ全てが同じだった。
「ねぇねぇ、きみ なまえは?」
明るい女の子が食い気味に聞いてきた
「ひなちゃん!この子こまってるでしょ」
「えへへ…うれしくて」
「はくや」
「え?」
「たちばな はくや。きみたちは?」
「わたしはひかわさよ。こっちはひな」
「よろしくねーハクちゃん!」
「ハクちゃん?わたしのこと?」
「うん!ハクちゃんはどうして一人なの?」
「ちょっとひなちゃん…」
「おとうさんもおかあさんもいつもケンカしてるから…いつもわたし…ひとりなの」
「それなら!わたしたちといっしょにあそぼうよ」
紗夜が左手を指し伸ばす
「いいの?」
「ひとりよりみんなであそんだほうがたのしいよ」
日菜も紗夜と同じように右手を指し伸ばしてきた。
私は二人の手を両手で掴んだ。これは…私達の出会い、一番大切な思い出…
場面が切り替わり、中学の頃の記憶に遡る
廊下にテストの結果を見ていた
「流石、日菜ちゃんだね!」
「今回のテスト難しかったのに満点って凄いね!」
「どれだけ勉強したの?」
日菜の周りに生徒が集まっていた
「特に勉強してないよ~」
そんな日菜を尻目に私と紗夜は茫然と結果を見ていた
日菜が1位、私が25位そして紗夜が5位だった
「また、負けた…」
「本当に日菜は凄いね。何でも出来ちゃうし、テストも満点取っちゃうし···」
「······」
「で、でも、今回のテスト難しかったし仕方ないよ!」
「···」
紗夜は黙って踵を返してどこかに行こうとしていた
「ちょ、ちょっと紗夜!?」
「ついてこないで!あなたとは違うクラスでしょう」
「でも···」
「先生の話を聞いてるだけだよ~勉強しても点が取れない人って可笑しいね〜」
「ッー!」
「おやおや~頼れる学級委員長さんじゃないか~」
「本当だ!妹より格下の委員長さんだ」
二人の生徒が嫌味を言いながら紗夜に近付いた
「失礼ですが、通してくれますか?」
「何々?今から勉強~?アハハ···無駄なことなのに」
「そうそう!ムダムダ。どうせまた妹に負けるのに」
「ちょっと!あんた達!」
私が一人に掴み掛かろうとするが、紗夜に止められる
「紗夜・・・」
「貴方達には関係ないことです。失礼します」
紗夜は二人の間を通り抜けていった
「ひどいな~私達は折角アンタの心配してるのに~」
「やっぱり日菜ちゃんの方が何でもできて委員長より愛想があるし~」
――ッ!!
一人がそう言うと紗夜は何処かに走り去っていった
私は急いで紗夜を探しに向かった
彼此1時間ぐらい探し、彼女は屋上で雨に打たれていた
「ここにいたんだね」
「白夜・・・どうしてここに?」
紗夜の目元は赤く腫れていた。雨の所為で流した涙と見分けがつかなかった
「最後にここを探してなかったからね」
「そう・・・貴女も私を笑いに来たの?」
「そんなことしないよ。どうしてみんなは二人を比べるんだろうね?」
「そんなの決まってるでしょう!
「それがどうしたの?人には得意不得意があって当たり前じゃない!」
私は紗夜に手を指し伸ばす
「私は何があっても二人の味方だよ」
「どうして・・・あなたは私達を・・・」
「そんなの決まってるよ。私は二人の大切な友達だから!」
「――――――っ!!」
紗夜は私の胸の中で泣き続けた。
冷たい雨の中で二人で抱き合った。
彼女は妹に比べられる事にコンプレックス・・・劣等感を抱いていた
それなら私が出来ることは二人を比べない事・・・平等に二人と接する事が最善だと思っていた
そしていつか彼女たちが笑い合えるように・・・
その突如、身の毛もすくむような音と同時に場面が切り替わる
「氷川さん、あなたには失望しました」
「待ってください!私はやってません!」
これは同じく中学の頃、ある日の出来事
「他の生徒が貴女が二人に暴行をした所を見ているのよ」
「言いがかりです!その時間帯私は――」
「言い訳はもういいわ。あなたには来月からここから退学してもらうわ」
「そんな…」
「あの静かな紗夜さんがあんなことするなんて…」
「以外だよね」
「日菜さんを守ったって聞いたけど…金属バットで滅多打ちって…」
「おねーちゃん…」
「日菜…ごめん…こんなことになるなんて思ってなかった…」
「ハクちゃん、どうして!あんなことをしたの!」
日菜が私の胸ぐらを掴む。
私は謝ることしか出来なかった
「ごめんなさい…ごめん…なさい…」
「ハクちゃんには感謝してるけど…どうして!あの姿で!ハクちゃんの所為で!おねーちゃんは…」
わかってる…わかってる
「私は日菜を救いたかった!でも、あの時はああするしか…せめて償いとして私は!」
私は二人に目に見えない大きな傷を付けてしまった。
何が親友よ!二人の事を傷つけないようにした行動が、より深く二人の関係を悪化させてしまった
カッターナイフを取り出し首元に近づけた。
「待って!ハクちゃん!」
日菜が腕を掴んで来たせいで狙いが逸れて目の下を深く切った
そして後日、私は大切な親友の一人を捨て、もう一人についていく事を選んだ
□□□□□□□□□□□□
目を覚ますといつもと同じ病室にいることに気がついた。
「私…生きてる?」
身体がだる重い…両腕を上げようとするが上がらない
「ようやく起きましたね」
「先生…手術は…」
「えぇ、無事に終わりましたよ。よく頑張りましたね」
「よかった…あの、身体が動かないのは…」
「麻酔の副作用だね。明日には収まるから心配しなくていいよ」
「そうですか。あの二人は?」
「あの双子なら病室の外で待ってるよ。会うかい?」
「いいえ…こんな情けない姿は二人に見せたくないから今日は帰るように言ってくれますか」
「わかりました」
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ハクちゃんの手術が終わって二時間…あたしとおねーちゃんは病室の前で待っている
「ハクちゃん…大丈夫かな?」
「日菜…少しは落ち着きなさい。さっきも言ったけど今は信じて待つしか···」
そういうおねーちゃんもチラチラ時計を見て、落ち着かない様子だった
ガラガラ――
「先生!ハクちゃんは!ハクちゃんは生きてますか!」
「落ち着きなさい。先生白夜の様子は?」
「無事に目を覚ましましたよ」
「よかった…おねーちゃん!」
「本当に…よかった…」
「本人も疲れているみたいだし、それに君達も手術中ずっと待っていたのでしょう?今日は帰って休みなさい」
「わかりました。日菜」
「う、うん…」
-帰宅中-
「ハクちゃんの手術無事に終わってよかったね!おねーちゃん」
「えぇ、そうね…日菜、さっきの話本当だと思う?」
「さっきの?」
「白夜のお母さまの話…あの子が…」
「あたしは信じるよ!だってその方が るんっ♪ってくるし」
「…私はまだ信じられないわ。まずはお母さんに真相を聞かないと…」