Enger Freund   作:hirag

8 / 12
8話

~音楽店~

 

「うぅ…本当にやらないとダメなの?というか私、音符すら読めないんだけど…」

 

「その内、読めるようになりますよ」

 

拒否権はないみたいです…

 

「まずは…どれからやりますか?」

 

「じゃあ、ドラムから…」

 

それから私は一通り試しにやってみたけど、どの楽器も私に合わなかった

 

ドラムは手足が動かすのに混乱するし、ベースもギターも弦を抑える力がない

 

キーボードもどの指でキーを押せばいいのかもわからない。改めて自分に音楽の才能がないことを痛感した。

 

「ほ、本当にできないのですね」

 

「だから言ったじゃん!出来ないって…」

 

「これは…どうにもできないですね~」

 

「はぁ~少し休んでくる」

 

練習部屋を出て、Pastel*Palettesのポスターに目が入る

 

彩ちゃん大丈夫かな

 

「白夜?」

 

後ろを振り向くと紗夜が弦を持って立っていた

 

「紗夜…」

 

「こんなところで何をしているの?」

 

「友達に付き合ってここに来ただけだよ。それよりあっちに行こうよ」

 

私の後ろにはポスターにはギターを持った日菜が映っている。これは紗夜には見せられない

 

「え、ちょっと…」

 

「いいからいいから…」

 

「レジは向こうなんだけど…」

 

「じゃあ、これは私が買うから!もう少しあっちを見てきたら…」

 

「そう言うわけには、それに早く帰って練習を…」

 

紗夜が私の隣を通り過ぎようとした瞬間、動きを止めた

 

「白夜…このあと少しいいかしら…」

 

「うん…」

 

私が恐れていたことが起こってしまった

 

_______________

 

~紗夜部屋~

 

モカちゃん達に先に帰ることを伝え、紗夜についていった

 

「あ、あのね…」

 

「あなた…知っていたの?」

 

「うん…」

 

「そう」

 

「で、でも日菜がギターを始めたのは紗夜に憧れて…」

 

 

「憧れ⁉そんなことを言うのはやめて!!あなたも知っているでしょ⁉私がどれだけ負担に感じているか!!」

 

 

私は知っていた。いや、正確には知っていて黙っていた

 

 

「私にはギターしかないの!!それすらも…奪われたくない!」

 

 

「紗夜、日菜は――ッ!?」

 

 

胸が熱い…胃がキリキリと痛む…時間がない。でも言わなくちゃ、私の思いを…

 

 

「日菜と比べられるのが嫌だから?それだったら私なんか二人に比べたら何もできないバカだよ!」

 

 

「あなたは私達と血の繋がりがないじゃない!」

 

 

「血のつながりがなくても···私は二人を姉と同然だと思っていた。でも!私が…二人を…」

 

 

痛みだ段々増し、それに息苦しくなってきた

 

「白夜…」

 

 

「二人と一緒に同じことが出来て楽しかった。あの日のせいで二人の関係は…ゲホッ!」

 

「あの日…」

 

 

「私は…ゲホゲホ!あの時に私が二人の事を裏切った…あの約束も私が破った」

 

 

そう。あの時、彼女達の存在を否定しないと約束したのに…

 

 

「でも、私は…ゲホゲホ…もう一度···ゴフッ!!」

 

 

口を押えていた手を見ると血がべっとりついていた

 

気分も悪くなってきてその場に倒れる

 

「白夜! 白夜――!」

 

「お姉ちゃん?どうしたのって…ハクちゃん!」

 

「日菜!早く救急車を!」

「う、うん!」

 

「白夜!しっかりして――!」

 

 

 

ああ…これは罰なのかな…

 

 

叶わない願いを願ってしまった私に神様が罰を下したのかな?

 

 

 

_______________

 

~病院~

 

「検査の結果ですが完全に胃に穴が開いています」

 

「穴ですか…」

 

「はい。立花さんは以前に胃潰瘍で検査を受けに来ておりますね」

 

「胃潰瘍…」

 

「取り敢えず、いまは薬を投与して様子見をするしかありません。後お母さんに少し話が…」

 

「分かりました。紗夜ちゃんは白夜の所に行ってあげて」

 

「わかりました」

 

白夜のお母さまと別れ、白夜の病室に入ると――

 

「おねーちゃん…」

 

「日菜…」

 

ベットの上で横になっている白夜の傍に日菜が座っていた

 

「ハクちゃん、何の病気だったの?」

 

「胃潰瘍らしい」

 

「そう…だったんだね…だから最近ハクちゃんは様子がおかしかったんだね」

 

「情けないわね。彼女が病気なのに自分の事しか見えてなかったなんて…」

 

「そんなことないよ。ゲホゲホ…」

 

目を覚ました白夜が上体を起こしながらそう言った

 

「ハクちゃん!」

 

「今は横になっていないと…」

 

「大丈夫…ッ!!」

 

白夜は上体を起こすが出来たが腹部を押さえてる

 

「いままで無茶し過ぎた結果かな?」

 

「白夜…」

 

 

「私はね昔の二人に戻ってほしかった。仲良く私と遊んでくれたあの時みたいにね。私は紗夜が傷つかないように日菜の事は黙っていた。日菜には紗夜とよりを戻すために色々アドバイスをしてきた」

 

 

「······」

 

「でも、どれもこれも空回りで終わった」

 

 

「空回りじゃないよ!ハクちゃんのおかげでお姉ちゃんと同じギターを出来た。それにちょっとだけどお姉ちゃんとお話しできたし…」

 

 

「話って言っていもあなたが一方的に部屋にやってきただけでしょ?」

 

「えへへ…」

 

「あ、そうさせたのは私の所為だと思う」

 

「え⁉」

 

「積極的に話かけたらいいってアドバイスしたのだけど…」

 

「そうそう!」

 

「本当は違う形でこうして話したかったけど…これはこれで良かったかも。紗夜」

 

「なに?」

 

「自分が追い越される悔しさはよくわかる。でも、それでも努力して追い越せばいいじゃない」

 

「……」

 

「日菜。人の気持ちを理解するのは難しい。でも、理解しようと努力した方がいいよ」

 

「分かった!」

 

「白夜ちゃんすこしいいかな?」

 

「はい」

 

「お母さんと話した結果、手術する必要があることになったから」

 

「手術ですか」

 

「はい。いまの白夜ちゃんの胃は小さい穴が開いているからそれを塞がないとダメだからね」

 

「どれぐらい掛かりそうですか?」

 

「早かったら一ヶ月後を目途に考えてるよ。遅くても二ヶ月ぐらい掛かりますね」

 

 

「そうですか…」

 

「では、わたしはこれで」

 

 

そう言い残し、医師は病室から出て行った

 

 

「二ヶ月か…退院するときはもう夏だね」

 

「そうね…」

 

「ねぇ!退院したら海に行こうよ!」

 

「いいね!何人か誘って行こうか。ねぇ紗夜」

 

「私も⁉私には遊んでいる暇は…」

 

「息抜きしないと私みたいに身体を壊すよ」

 

 

本人は冗談のつもりで言っているけど。私には楔を打ち込まれたような気がした

 

 

「お姉ちゃん?大丈夫?」

 

「え、えぇ…」

 

「あと、おじいちゃんの牧場も一緒に行こうよ」

 

「あ~あのバターのおじいさんの所だね!」

 

「あの人…少し苦手だけど…」

 

「おじいちゃん。紗夜の事好きだからね~」

 

おじいさまに好かれているのは別にいいけど…毎回牛乳を薦められるのは…ちょっと…

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。