【にじさんじ二次創作】太陽が沈み切った後【夜王国】 作:匿名取引
そこで、遅刻した他メンバーを待ちつつ、組織のトップにいる叶と出会った時を思い出す。
そこに現われた叶は、とうとう組織の待ち望んだ、「ある日」が近いと告げる。
私たち三人は、殆ど集まらない。これは仕事だからだ。
どうしようもなく昼の世界に嫌われて、堕ちていった。
その末に、何かすがるものを求めた。大事なものを守るために、たったひとつ見つけた「仕事」。
そしてここは「仕事場」だ。それ以上でも、それ以下でもない。
叶殿から「夜王国控室」として用意された部屋には、それぞれ端に個人のスペースが設けられている。
一角にはゲーミング機器の整ったデスク。不破殿は自分の部屋にもゲーム機器はあると言っていたのに。とうとう組織の部屋にも用意した。
そして、もう一方の角には化粧台。壁には鞭や首輪やしめ縄が引っ掛けてある。化粧台の端には写真たてが置いてあり、看護師のような風貌の女性の写真が飾られている。今日も白雪殿は彼女の家から出勤だろうか。
私、グウェル・オス・ガールは腕時計に視線を移した。集合時間から、既に15分は経過している。
「また、私が最初ですか…」
夜王国(私は「ナイトキングダム」と呼びたい)の私以外のメンバーは、基本的に時間にルーズだ。前回の幹部会に呼ばれた時は、白雪殿が30分遅れ、不破殿は幹部会が始まってから到着した。私はもう慣れてしまったし、叶殿も溜息しか出さない。葛葉殿は「またかよぉ」という顔をして、早瀬殿は大笑いしていた。
しかし、冷酷な幹部たちだ。いつ気に障って、消されるか分からない。
あの日、叶殿に言われた言葉が忘れられない。
「大丈夫、あなたは面白い」
夜に沈んだ中に、一筋刺した光。
「僕たちの世界を作らない?」
何でもよかった。私たちに、何か生の実感をくれるもの。
叶殿は、冷酷だ。そして、実現される世界は、決して許されるべきものではない。
しかし、あの日の叶殿の一言がなければ、自分は家族も守れなかったし、確実にくすぶっていた。
今一度、部屋を見渡した。それぞれのスペースがあるなか、真ん中には少し大きめな円卓。不破殿が使っていたスペースには、空の酒瓶が置いてある。私が座っていた位置には、一冊のノート。
そうだ。昨日は、昔の自分を思い出していた。夜の街で、暇を持て余した輩の集まるイベント会場。そこで司会をしていた時、企画の台本を頭に入れるためノートに面白い言い回しを書きなぐっていた。
今じゃ、どうしたものか。あんなノート、ゴミ同然なのに。手放せずに持っている自分が、嫌になりそうだ。
「面白くねぇんだよ!」
ビクッとした。最も恐れて仕方かった、あの言葉。
後ろから、ナイフのように自分に突き刺さる。
「…ってね、あはははは」
中性的な笑い声が後ろから聞こえてくる。
振り向くと、そこには叶殿がいた。
「昔のトラウマが蘇る?あはは、ごめんね」
悪趣味な人だ。銀色の髪がゆらゆらと揺れ、目を細めた表情は、この世の何よりも不気味だ。
「ガタイもいいし、エルフなんだからさ。もう少し、貫禄があってもいいのにね。グウェルさん」
「…」
「まぁ、いっか…あれ、やっぱり夜王国は集合が遅いねぇ」
「…申し訳ありません」
「まー、それぞれ癖が強いし、私生活あるもんね。ワークライフバランス整った職場です、ってね」
叶殿は、夜王国に怒ったことはない。呆れるか、ふわりと笑っているか。どちらかの表情しか見た事がない。しかし、しばらく叶殿を見てきている。確実に言える。
今日は、機嫌がいい。
「…叶殿、何か御用件ですか」
「ん?なんで?」
「少し…ご機嫌がよいように見えます」
「あ、ばれちゃう?ははは、気味悪がられて、心が読めないって言われるけど、今日くらい素直になっちゃうよねぇ」
叶殿は、軽い足取りで私の横を通り過ぎる。そして、中央のテーブルに飛び乗った。
テーブルの真ん中で胡坐をかき、口角を上げたまま、私の目を見る。
「僕らの夢が、近いよ」
ゾッとした。とうとう、とうとうやってしまうのか。
「美大生復活の日が、近いよ」
遅筆ですが、これからも書いていきたいと思います。