負け犬ヒロインの育て方 7(ラス前)   作:きりぼー

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プロローグ

【表世界】

 

 満月の下。サンシャインビル屋上の縁に倫也と恵が並んで座っている。

 

「ねぇ・・・倫也くん・・・安芸くんのほうがいいかな・・・、ちょっと手を握っていい?」

「ん、どうした加藤?」

「英梨々ルートの安芸くんなんだよね?」

 

恵が倫也の手を握る。ほんわかした気持ちも、ドキドキした気持ちも伝わってこない。

 

「すごいなぁ・・・、これがハーレム型主人公の力なんだ?フラグさえ集まれば、英梨々のことが好きになるんだね」

「ん?だって、そうじゃないとサブヒロインルートが本気で面白くなるようなゲームは作れないだろ?」

「倫也くんには心がないの?」

「心はあるよ。サブヒロインとのエピソードの一つ一つが重なって、今の俺がいる」

「それは負け犬5でわたしを好きといってくれた倫也くんとは別なの?」

「だって、あいつはあいつの物語だよ。お前だって今は『ダークヒロイン』の加藤恵を演じているつもりの同人加藤恵だろ?」

「わたしはそうは思ってないよ。わたしは負け犬シリーズの中で成長したヒロインの一人で、それが『ダークヒロイン』になったのだと思ってる」

「それはそれでいいと思うよ。そろそろ時間だ」

「・・・わたしの悲しい気持ちはわからないんだね?」

「今は英梨々の成功を期待する気持ちでいっぱいだよ」

 

恵が上を向いて涙を浮かべる。

物語を通してわたしも倫也くんもみんなも成長してきたんだと思った。だんだん心を手に入れたのだと・・・なのに、今はみんなが『プロット』に従うことだけを考えている。

 

「そうだ恵。俺の能力を今使うよ。開始前だけどさ」

「好きにすれば?」

「能力『大団円(オールハッピー)』発動!」

倫也を中心に円環が広がる。表世界も裏世界も倫也の力で満たされた。

「何が変わったの?」

「何も変わらないさ・・・祈りのようなものだから」

 

※※※

 

「時間でーす。いきますよ?サン・ニ・イチ!スタートです!」

出海の声が、無線イヤホンを通して伝えられた。

 

※※※

 

【裏世界】

 

「さてっと・・・はじめますか」

英梨々が坂の上のはるか上空に浮かんでいる。

指をバチリッと鳴らすと巨大なミサイルが現われる。

「まずは、N2爆弾を拝借してっと・・・いけ!」

ミサイルが坂の上の@メインヒロイン型目掛けて飛んでいく。

 

着弾。爆発音。地響き。巨大な煙。

そして、当たりが平らな荒野になる。

 

そこに降り立つ英梨々。煙が晴れて現われる@メインヒロイン型。

 

「伊織、いいわよ!」

 

※※※

 

【表世界】

 

 こちら名古屋の波島邸の地下室。美智留が待機している。

モニターに映っている伊織が告げる。

 

「氷堂さん、はじまったけど、準備はいいかな?」

「うん。ねぇ、波島兄ちゃん・・・この物語はハッピーエンドを迎えるの?」

「氷堂さんがそう望むならそうなるんじゃないかな?」

「わかった、いってくるよ。いつもいろいろありがとうね」

「がんばって。それでは転送!ポチッとな」

「はははっ」

「シリアスすぎはよくないからね」

 

美智留が『裏世界』へ転送される。

 

「加藤さん一人の想いと、みんなの想い。どちらが勝つのかな、まっ、今回はみんなに勝って欲しいと思うけど」

 

美智留はそんなことを思っていた。そのためには失敗しないようにしないと。

 

※※※

 

 恵と倫也が立ち上がる。

 

「はじまったな・・・」

「ねぇ、安芸くん?」

「ん・・・?」

 

次の瞬間、倫也の首が落ち、倫也がドサッと倒れる。

 

「英梨々の倫也って何?フラグが立ったら好きになる?そんな倫也くん・・・わたしはいらない」

 

恵が黒目で倫也の死体を見下ろす。

 

黒い翼をバサッーと広げ、ビルから飛び立った。

倫也の死体に黒い羽が落ちる。

 

(つづく)

 

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