伏黒甚爾は冒険者ではない   作:続かない

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二話

伏黒甚爾は競馬場を出た後、直ぐにガネーシャファミリアへ向かおうとする。主神の護衛としてくる冒険者は確かに驚異ではあるが、ガネーシャファミリアでは神会の最中であり、神会が終わるまでは鉢合わせることは無いだろう。そして、警備としてガネーシャファミリアの団員が駆り出される。依頼はガネーシャファミリアに打撃を与えることのため、警備員に怪我を負わせる。他にもガネーシャファミリアがやる怪物祭用の道具を壊して回っておけば良い妨害工作になるだろう。

歩きながら計画を立てているとガネーシャファミリアのホームが見えてきた。この程度の依頼ならば呪具を使うほどでも無いと考えた伏黒は気配を極限まで減らす。このレベルまで気配を減らせば、例え目の前を通ったとしても気づかれないだろう。それでもレベルが高い奴にはどうしても勘づかれるので長居は出来ない。とりあえずは怪物祭の道具がしまってあるだろう倉庫に向かう。そこには対モンスター用の檻や怪物祭の予定表など置かれていた。丁度、倉庫に向かうまでに巡回していた警備員達らを骨を数箇所折って気絶させ、檻に閉じ込めておいた。

 

予定表なんかはビリビリに破き、屋台に使うであろうガネーシャの顔が書かれた布は、ペンキをぶちまけといた。他にもモンスター拘束用の鎖に亀裂を入れておいた。流石にこれだけでは嫌がらせの領域だと思ったので、警備をしていたガネーシャファミリアの団員を殺し、頭だけになったそれを天井から吊らしておいた。これでイタズラとは思えなくなっただろう。後は意味深なメッセージを血で書いて終わり。

 

 

依頼を終えた伏黒は歓楽街にいた。既に日が傾いて夕方になっていた。依頼主から報酬は既に貰っており、久しぶりに女で遊ぼうかと思ったからだった。とりあえずそこら辺の娼館を物色しようと考え、近くの娼館に入る。

ひとまず、店の一番と二番を金にものを言わせて両隣に座らせた。比較的楽な依頼で大金を得たため上機嫌だった伏黒は何瓶か度数の強い酒を飲んだあと、個室に行き本番にいこうとしていた。両隣に座らせた娼婦はアマゾネスであり、強い男の気配がする伏黒に対して悪感情を抱いておらず、寧ろいつしてくれるのかソワソワしていたほどだった。寝かせた娼婦の上から覆いかぶさった瞬間。

突然ドアが開き、待ったをかけられた。出てきたのはヒキガエルのような見た目をした娼婦。彼女は強い風格のいい男が来たと話を聞き、自分が独占しようとこの個室まで来たのだった。

 

「ゲヒヒ!話に聞いた通りのいい男じゃないか!」

本番を邪魔された伏黒は強い苛立ちを覚えるが始める前だったから苛立つ程度済んだ。もし途中に入ってきたら今にも無惨に殺していたところだろう。伏黒の相手をしていた娼婦らは伏黒を奪われたくないが、乱入してきた相手がLv5のフリュネだと知り、仕方ないと思い諦めつつあった。アマゾネスにとって強さのみが従うルールであり、絶対であった。故に弱者である自分らは、強者であるフリュネに搾取されるのだろうと思っていた。

 

「邪魔だ。さっさと消えな」

「ゲヒヒ!気の強い男は好きなんだ!今晩は付き合ってもらうよ!」

その巨体からでは信じられない程のスピードで伏黒を奪おうと飛びかかってくる。対する伏黒は今だ娼婦に跨っており、少なくとも直ぐに動ける体制ではない。伏黒は近くにいたもう一人の娼婦の頭を鷲掴み、フリュネへ投げた。Lv2出会ったおかげか、頭が体別れることはなくフリュネと激突した。恐ろしいのはその投げた速度だ。女だとしても40kg以上はあったそれをボールの様に投げ、更にはフリュネを吹き飛ばした。激突した娼婦は顔からぶつかったことにより血塗れで痙攣していた。フリュネはまさかこのような反撃がくるとは思ってもなかった為、モロにくらってしまう。吹き飛ばされて少し呆然としていたフリュネだったが、直ぐに伏黒を驚異と見なし、伏黒を敵と見なす。

フリュネが顔上げると、先程まで伏黒が飲んでいた酒瓶の飲み口で突かれる。突かれたのはフリュネの右眼だった。突かれた傷口に刺さった酒瓶を傾かせ、眼に酒を注がれる。想像を絶する痛みがフリュネを襲う。余りの痛みに絶叫しようとしたが、声がでなかった。嫌に耳に響いた音が腹から聞こえる。フリュネの鳩尾に伏黒の足が刺さっている。余りの蹴りの速さにLv5の防御を突き破り、体内にまでつま先が侵入していた。個室の壁を突き破り、一般客もいる店内へと駆り出されたフリュネはやっと呼吸が出来たのか、絶叫することができた。

 

「あ''あ''あ''あ''あ''あ''!!!!!」

店内にいた人々はさぞ驚いたことだろう。楽しく酒を飲んでいたはずが眼に酒瓶を突っ込まれ、息も絶え絶えなヒキガエルが飛んできたのだから。もちろん店内は一瞬で阿鼻叫喚となり一斉に逃げ始めた。騒ぎを聞きつけたのか戦闘娼婦が駆けつけくる。

 

「貴様!」

「フリュネ様!!」

10人程が即に集まって来ており、誰もが敵意を剥き出しに伏黒を睨んでいる。だが、その眼には怯えが映っていた。団長であるLv5がこんな有様なのにそれよりも弱い自分達が勝てるのかという不安、恐怖、怯えがあった。アマゾネスは本来誰しもが戦闘狂であり、そのような感情を持つことなどなかったのだ。しかし、ここで相対するのは天与の暴君、暴力の具現化のようなものであり、迂闊に攻撃を仕掛ければフリュネの二の舞となるだろう。誰もが二の足を踏んでいたとこに声をかけるものがいた。

 

「カカ!見事、見事!」

ドクロの様なネックレスを首にかけ仮面を被ったり体型は幼児の様に小さいが発する気配が人間ではなく、威厳溢れる神だった。

 

「良い戦闘だった。敵対者に対し無慈悲で残忍。私が求めた最高の戦士に近い」

神は満面の笑みで捲し立て、心底嬉しそうに話を続ける。

 

「お主が相手となればアルガナですら勝てないだろう」

眷属達もまさか団長であるアルガナよりも強いと言われ驚きを隠せない。それも、アルガナはテラスキュラで最も強い戦士でLv6という他のアマゾネスとは一線を画した強さとなっており、カーリーが最高の戦士だと言う程なのだ。それに何より、その強さを自分達が身にしみてわかっていた。故に、信じ難い話ではあったが床に蹲っているフリュネを見ると信憑性が高く、否定できなかった。

今主神が例の男と話をしているが、主神の反応からして良くなかったのだろう。数分間話すと男の方が先に煩わしくなったのかカーリーを無視して店を出ていってしまった。

 

 

そして、しばらくするとこの歓楽街の主であるイシュタルがやって来た。その間カーリーの眷属達に店の掃除をさせていた。カーリーはやたら上機嫌でイシュタルと対面する。

 

「それで、この惨状はなに?もちろん説明してくれるのでしょうね?」

「最高の戦士が荒らして行っただけさ」

「だとするとアルガナがやったのか?」

「違う男だ。あれはアルガナよりも強い。断れちまったが是非とも欲しかった」

「へえ。あんたがそこまで言うほどの男か是非とも会ってみたいものだね。うちのフリュネの借りを返してもらうためにもね」

実際フリュネはイシュタルの計画にて重要な役割を担っていたのだ。そ

の計画が遠ざかった。それこそ、カーリーにフリュネの代わりとなるアルガナかパーチェをかしてもらえなければ割に合わない。

 

「なあカーリーわかってんだろ?あんたは私んとこの団長をボコしたんだぞ?私の計画知ってんならあんたんとこのアルガナかパーチェ貸してもらうよ」

「分かってるさ。イシュタルには最高の戦士を送ってやろう。私が今まで見たことのない程冷酷で残忍な最高の戦士をな」

カーリーは隠しきれない喜悦を見せ、そう告げた。

 

 

 

神会では苛立ちや疑心に包まれていた。事の発端は神会も終わりが近づいた頃、周辺の警備をしていたガネーシャファミリアの団員が主神であるガネーシャに慌てて伝えてきたのだ。警備にあたっていた団員が殺害もしくは檻に閉じ込められていたと。このことを聞いたガネーシャは自分の眷属が殺されたことに怒り、絶対に犯人を見つけると意気込み、ここにいる神一柱ずつ問答しているのだ。そのおかげで神もとい護衛に来た眷属すら帰れない。

 

それはファミリアが出来たばかりのヘスティアも例外ではなく。帰れない苛立ちをやけ食いで間際らしていたとき、ヘスティアにとっては仇敵であるロキがやってきた。

 

「なんや、どチビここにいたんか」

「何の用だいロキ。男装なんかしてきて?遂に乳が無いことを認めたのかい?」

「なんやてー!?」

二柱はこの雰囲気に毒されず、取っ組み合いの喧嘩にまで発展した。その周りを他の神が見て野次をとばすというロキとヘスティアが会えば殆どの場合起こる現象を遠目で見ていた。

 

 

 

 

 

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