オーバーロード 死の支配者と不死鳥物語   作:リュウさん

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第03話

ナザリック地下大墳墓第九階層ロイヤルスイートの一室。

 

室内には豪華な装飾が施された調度品が数多く置かれており、床には柔らかそうな緋色の絨毯が敷き詰められている。部屋の中央にはテーブルと、それを挟むように五人掛け用の巨大な黒革のレザーソファーが二つ置かれていた。

 

その豪華な室内には複数の人影があった。

食器類を乗せたワゴンを引く給仕のメイド。ソファーの近くに静かに控える二名のメイド、しかしその二人のメイドは少し毛色が違った。

艶のある黒髪を結い上げて夜会巻きにした美女。眼鏡を掛けた表情は見るものに知的な印象を与える。首には青いチョーカーを巻き、胸元には同じ色の蝶ネクタイ。その下には、異姓が見れば釘付けに、同姓が見れば誰もが羨むほどの豊満な胸。そして腰には十字架を付けたコルセットのような鎧と、腕には凶悪そうなトゲ付きのガントレットで武装されていた。

もう一人は赤金(ストロベリーブロンド)の髪を腿まで届きそうなほど伸ばした少女。翠玉(エメラルド)の瞳には照準器のような模様が浮んでおり冷たそうな輝きを放っている。もう片方の眼はアイパッチで隠されていて、首には迷彩柄のマフラーが巻かれている。整った顔立ちをしているがその無機質そうな表情からは感情を窺い知れない。こちらは突撃銃(アサルトライフル)をモデルにしたような近未来的な銃を携帯している。

 

彼女たちは他のメイド達と違い、戦うことを主目的とした六人いる戦闘メイド「六連星(プレアデス)」その長女と妹、ユリ・アルファとシズ・デルタの二名である。

 

彼女たちは今、願ってもやまない主人への奉仕に従事できることに、胸一杯に広がる幸福感で心震わせていた。

ユグドラシルの頃は、九階層をぐるぐる歩き回ってギルドメンバーと鉢合わせたら頭を下げる、というプログラムされたAIで決まった行動しか設定されてなかった。プレアデスに至っては防衛のためとはいえ動いたことすらなかったが、現実となった今では自らの意思で動けるようになったことでメイドとして本来の仕事が出来るようになった。

 

主人の身の回りのお世話と有事の際には、盾になって守れるようにということで、一般メイドとプレアデス二名が供回り兼護衛として仕えていた。

 

そしてその主人は、反対側のソファーに座った妙齢の女性。背中まで伸びた炎のような赤い髪は綺麗に流され、瞳も髪の色と同様の赤、少しつり上がった眼は髪と瞳の色が合わさり勝ち気そうな顔付きをしている。

背中が大胆に開いたXラインの白のドレスを身に纏い、背中からは太陽を思わせる色合いの翼が四枚見え、後姿はまるで天使のようにも見える。

 

彼女がメイド達の仕える主人、ナザリック地下大墳墓の絶対的支配者の一人、エール・F・フィアーである。

 

 

「どうしよう………どうすればいいんです………こんなに悩んだのは初めてです………いったい何から手をつければいいんですか………」

 

 

顎に手を当て真剣な表情でぶつぶつと一人言を呟きながら何か悩んでいた。その呟くような声は給仕のメイドには聞こえないようだが、近くに控えていた二人には微かに聞こえていた。

シズは変わらず無表情だが、ユリは努めて無表情を貫いていた。だが二人の心境は、無表情ではいられないほどの動揺で埋め尽くされていた。

主人がそんなに思い詰めることとはなんだろうか、まさか知らぬ間に自分たちが不快なことをしてしまったのではないだろうか、それが原因でまたお隠れになられでもしたら………。

 

ユリは表情を崩さないようにしていたが、うっすらと顔色が青白くなっていた。

何か気に障ることをしてしまったのならすぐ謝罪すべきだ、許してもらえるかわからないが、自分の命で妹だけでも許してもらえないだろうか。そう思ったユリは即座に行動に移す。

 

 

「お許しください!エール・F・フィアー様!私たちに対して何かご不快に思うことがあるのですね!?」

 

 

いつまでもウンウン悩んでいたエールは、突然跪いて許しを請うユリの行動に驚いて、そのままの姿勢でビクッと一瞬跳ねる。

 

 

「………うぇ!?」

 

「ですが妹だけは!ボクの命で妹だけはお許しください!!」

 

「えぇ!?い、命!?、ちょっと、何を言って…」

 

「どうかお許しください………」

 

 

訳が分からない。ただ悩んでいただけで、なぜ命を差し出すから許してくださいと言われているのだろう。シズは無表情で静か控えてるだけだし、給仕のメイドはワタワタとどうしていいのわからず狼狽えていた。

 

 

「ユリ姉」

 

「止めないでシズ!これはナザリックの今後を左右する大事な……」

 

「まだ至高の御方のお言葉、終わってない」

 

「ハッ!?重ね重ね不敬をお許しください!やはりこの命をもって!」

 

「ちょっと落ち着いてくださーい!!」

 

 

室内は軽い混乱状態になっていた。なんとかユリを落ち着かせ、何に悩んでいたのか説明をする。エールの話を聞いて安心したのか、先ほどの青白かった顔はもう元に戻っていた。

 

 

「――ということで悩んでたんです。わかってくれました?」

 

「申し訳ありませんでした。ボ……私のせいとはいえ、早とちりで大変お見苦しい所をお見せしてしまいました」

 

 

跪くのをやめて今度は深々と謝罪をするユリ、エールは小市民のような悩みを言って恥かしくなったのか頬を染めてもう一度テーブルに目を向ける。

そこには置かれていたのは、テーブル面積の半分以上を占めるように並べられてる多種多様なスイーツ群。ケーキに始まり、ジェラート・パイ・クレープ・ワッフル・クッキー・等々、数えるのが馬鹿らしくなるほどの数が取り揃えられていた。

 

最初はケーキが出てきたのだが、すぐに別のスイーツ、また別のスイーツとその数はどんどん増えていき、後半からはワゴンのどこにこの量が収納されているのだろう…とそちらの方ばかり見ていた。テーブルには所狭しと並べられた数々のスイーツ、エールはこれだけの種類があるとどれから食べればいいのかで迷っていたのだ。現実(リアル)では実物を見たことも食べたこともないので、ケーキ一つでも食べられることを喜んだが、ここまでの数が目の前にあると逆に何を食べていいのかわからなくなった。いっそメニューでもあればそれを見て頼んだ方がよかったのだが、すでに目の前にある。どうしたものかと悩んでいた。

 

そして妙案を思い浮かぶ。わからないなら聞けばいいじゃないか、と

 

 

「ねぇ、ユリ。あなたならどれが美味しいと思う?」

 

「ナザリックの料理はどれもが絶品の品々でございます」

 

「そ、そう………じゃ、じゃあ!オススメは!?この中でユリのオススメを教えて!!」

 

「オススメ、でございますか………では、スイーツと言えば王道のイチゴショート!私はこちらをオススメいたします」

 

 

眼鏡をクイッと指で上げて、もう片方の手でエールの前にケーキを持ってくるユリ。

うっすらと香るクリームの甘い匂いと上に乗った真っ赤な苺が合わさってとても美味しそうに見える。

 

 

「おぉ…!本物を見たの初めてです!じゃあユリオススメのこちらから頂きましょう!」

 

 

フォークを持つ手が僅かに震える。先程までは何を食べるか迷っていたが、いざ食べるとなると本当に食べていいのか迷ってしまう。チラリとユリの方を伺うが、何か言ってくる様子はない。

覚悟を決めてケーキを一口食べる。

 

 

「ん~~~~~!?」

 

「え、エール・F・フィアー様………?」

 

「美味しい!ふわふわして、甘くとろけてとっても美味しいですぅ………ケーキってこんなに美味しかったんですねぇ、ユリの言った通りです」

 

 

まさに絶品だった。現実(リアル)では上流階級の人間じゃなければ食べられない高級なケーキを食べてることに感動して涙が出そうだった。

 

気付けばあっという間にケーキを完食してしまった。もっと食べていたかったが、なくなったのならしょうがない。

次はユリの隣にいるシズに聞いてみることにする。

 

 

「ご馳走さまです。次はシズ!シズは何がオススメですか?」

 

「………こちらがオススメ、です」

 

「こ、これは?」

 

 

シズが持ってきたものは、半球状の黒っぽい色の固形物が少し溶け掛けた状態で入ったよくわからない料理だった。

さすがに食べれるものだとは思うが、顔を近づけて見ると

 

 

「あ、チョコ?」

 

「………はい、チョコレートアイス、です。冷却材替わりにたまに食べます………」

 

「これがアイスク………冷却?」

 

 

よくわからないことを言われたが、今度はスプーンを手に取る。ほどよく溶けたアイスは抵抗も少なく簡単に掬えた。一口食べてみると、口の中に入れた瞬間トロリと溶け出しチョコの甘さが口一杯に広がり幸せな気分にしてくれる

 

 

「冷たくて、こっちも美味しいですねぇ。アイスってこういう食感なんですね。なんか感動しちゃいます」

 

 

一人で騒ぎながらアイスを食べるているエール。それを静かに見守るメイド達は主人の嬉しそうな姿に心が満たされていた。

至高の四十一人は神のごとき方々、そのご尊顔を仰ぎ見るだけでも誉れなことなのに、身の回りのお世話をするだけでなく、このような尊い御姿まで拝見させていただけるなんて………。

三人はこのことをあとで自慢しようと心に誓った。

 

 

 

 

 

「はぁ~、とても美味しかったです。ご馳走様でした。三人ともありがとうございました」

 

「ご満足いただけたようで何よりでございます」

 

「作ってくれた方にもお礼を言わないと」

 

「至高の御方からそう言っていただけるだけで彼も喜びましょう」

 

 

手を合わせ軽くお辞儀をして、メイド達に礼を伝える。

テーブルの上にあった料理を一人で全部食べつくして満足したエール、さすがに一人では食べきれないと思いユリやシズ、給仕のメイドに一緒に食べないかと誘ってみたのだが

 

 

「私たちは至高の御方々から飲食不要になるマジックアイテムを下賜されておりますので、私たちのことは気にせずお食事なさってください」

 

 

と言われてしまった。無理強いするのもよくないと思い、一人で食べることになったのだが、先程ユリが言った通り、どの料理も絶品で食べる手が止まらなかった。まさか本当に一人で全部食べ切れてしまうとは思わなかった。

エールは自分のお腹の辺りを摩りながら、あの量を食べたらさすがに太るかな?というかこの体のどこにあの量が入ってるのだろう?なんてことを考えていた。

 

 

「食事でこんなに満足したの初めてだからか。ふぁ~、なんだか眠くなってきちゃいました………」

 

「では、お休みになられますか?」

 

「そうしようかな………じゃあ少しだけお休みします。片付けよろしくお願いしますね」

 

 

はしたなくないよう口に手を当て小さく欠伸をして、寝室に向かう。

キングサイズの天蓋付きベットにいそいそと潜り込むエール。

 

 

「はぁ~、あんなに美味しい料理が食べれるなんて幸せ~、モモンガさんとも一緒にご飯食べれないかなぁ………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ナザリック地下大墳墓第九階層 執務室

 

縦長の作りになっている室内には両脇に等間隔で四角い柱が並び、その一本一本には〈永続光〉(コンティニュアルライト)の魔法が付与されたアイテムが付けられ、五メートル以上の高さにある天井から吊るされた豪華なシャンデリアが共に室内を明るく照らしていた。

 

部屋の中央にはクルミの木で作ったような高級感ある縦長のダイニングテーブル、青を基調にした背と肘掛の高い三人掛け用のソファーが挟むように配置されている。

奥には五段ほどの階段があり、少し高くなったところには黒檀の執務机と総黒革でできたイスが置かれ、壁際にはアインズ・ウール・ゴウンのギルドサインが入った旗が掲げられていた。

 

その部屋の主人、ギルド:アインズ・ウール・ゴウンのギルドマスターモモンガは、守護者統括アルベドにナザリック内に関する報告を受けている最中だった。

机には数冊の紙の束が置かれており、モモンガはその紙にチェックマークを書き足していた。

 

 

「今チェックしたトラップは止めておいてもいいだろう、侵入者が来たら起動するようにしてくれ。それと五階層と七階層のフィールドエフェクトも止めておけ、少しでもナザリックの維持費は軽くしたいからな」

 

「畏まりました」

 

 

アルベドから受け取った報告書には、ナザリックの各階層に設置された対侵入者用のトラップ稼働状況とそれらを稼働することに伴う維持費の増減が記載されていた。

 

外の状況がわからない今、ユグドラシルの時と同じように金貨を稼ぐ手段があるかもわからない、もしかすればモンスターどころか知的生命体すらいないかもしれない。

宝物殿にはギルドメンバー達が残してくれた金貨が大量にあるからしばらくは大丈夫だろうが無限にある訳じゃない、侵入者がいない今は切れるものは切って少しでも掛かるコストを軽くしなければならない。

 

 

「では、後程防衛責任者のデミウルゴスと共に新たな防衛機構を検討いたします。コストの最低ラインはどういたしましょう?」

 

「そうだな………最低でも―」

 

 

執務室の扉が数度ノックされる音が室内に木霊する。

アルベドが応対するため、一礼してから扉に向かい来客の確認をし、モモンガに告げる。

 

 

「ユリ・アルファが報告に参りました」

 

「報告?何の報告かはわからんが……構わん、入れろ」

 

 

手を腹部の辺りで重ね、頭を揺らさずメイドらしい歩き方で入ってきたユリは執務机の前まで来てモモンガに一礼する。

 

 

「どうした?ユリよ。今日はエールさんの護衛ではなかったのか?」

 

「はっ!エール・F・フィアー様は先程お休みになられましたので、護衛を八肢刀の暗殺蟲(エイトエッジ・アサシン)たちと交代したことをご報告に参りました」

 

「そうか、ご苦労。もうそんな時間か………」

 

 

モモンガの取得している種族のアンデッドは、飲食と睡眠が不要、疲労もしない種族特性を持っており、そのせいで集中すると疲労を感じない身体も相まって時間を忘れて作業をぶっ通し続けていられた。

 

時刻は20時、モモンガが執務室に入ってから六時間が経過していた。そんなに長時間何をしていたかというと…執務室に隣接する寝室で支配者ロールに磨きをかけようと密かに演技の練習をしていたのだ。

NPC達はモモンガのことを、自分たちを最後まで見捨てなかった慈悲深き最高支配者だと思い込んでいるらしく、本当は無能な一般人だということが知られたら、失望されて逆に見捨てられるんじゃないかとモモンガは思っていた。

頼みの綱のエールはロールプレイが苦手で早々にリタイア、なら自分が頑張るしかないと考え、自分がカッコイイと思った支配者らしいセリフ、ポーズ等々をかれこれ五時間ぶっ続けで練習していたのだ。

残りの一時間がアルベドと共にナザリックに関する事務仕事だった。

 

 

「長々と付き合わせてしまったな、アルベド」

 

「至高の御方の役に立つ事は、ナザリックの僕として当然のことでございます。そ・れ・に、モモンガ様と二人っきりでの共同作業ならこのアルベド!いつまででもお供いたします!!」

 

「そ、そうか、お前の忠義、嬉しく思うぞ……」

 

「くふー!」

 

 

ユグドラシル終了の直前にアルベドの設定を変えてしまったとはいえこんな性格設定だったか?と少し引いてしまうモモンガ。

 

 

「と、とはいえ、お前たちに頼りっぱなしというわけにもいくまい。そこで、近々私とエールさんとで色々と実験と検証を兼ねた鍛錬をしようと思ってな。二人とも後衛だが何もしないよりはマシだろう」

 

 

その言葉を聞いた瞬間、アルベドとユリは時間が止まったかのように硬直してしまった。

 

 

「そ、それは、モモンガ様とエール・F・フィアー様が、前線にお立ちになられる、ということでしょうか………?」

 

「ん?そのつもりだが?」

 

「恐れながら申し上げます。至高の存在であらせられます御二方がわざわざ前線に赴かれずとも、ナザリックの為、至高の御方々の為に戦うことは僕の本懐。どうか我々にお任せください」

 

「し、しかしな………」

 

「い、いけません!御身にもしものことがあっては!私の愛する御二方に万が一の事があってはなりません!!」

 

 

モモンガ達が戦うことをよしとしないアルベドは目に涙を溜めて懇願してくる。

ユリも無言で首を縦に振って同意していた。

 

身の安全を心配してくれるのは嬉しいが、少々過保護過ぎではないだろうか?とモモンガ思い、出そうになったため息を飲み込む。このままでは話が平行線で終わらないだろうから、なんとか落とし所を決めなければと思考を巡らせる。

 

 

「落ち着くのだ、アルベドよ。先程も言った通り、私とエールさんは後衛職だ、剣をもって直接戦うわけではない。それに、ナザリックの防衛に関しては、アルベドとデミウルゴスの知恵者二人に任せれば大丈夫だと確信している」

 

「もちろん各階層守護者、プレアデス、ナザリックの皆を信頼しているとも。だがアルベドの言う通り、もしも……万が一の状況があるかもしれない、その可能性が一%でもあるなら、私たちはその可能性に備えなければならない、その為の鍛錬でもあるのだ。何もせず座して待つのは愚か者のすること」

 

「それとも………ここ、ナザリック地下大墳墓に土足で入ってきた者を私達の前に立たせるほど、お前達は優しいのか?」

 

 

信頼されている。ナザリックの者ならば誰もが羨む言葉を直接掛けられ、喜びが込み上げてくる。が、それも束の間、モモンガからの問いに戦慄が走る。

 

 

「も、申し訳ありません………そこまでお考えとは知らず出過ぎたことを申しました………」

 

 

臣下の礼を取り、深々と頭を下げるアルベドとユリの表情は恐怖で凍りついていた。ナザリックと至高の存在を護るために創造され、存在意義を与えられたのに、お前達は防衛(そんなこと)もできないのか、と言われている。

もし万が一のことになっては、最後まで残ってくれた慈悲深き主も我々を見捨てお隠れになってしまうかもれない。

そうならないため、完璧に遂行しなければと気を引き締める。

 

 

「………少し意地の悪い言い方だったな、許せ」

 

「謝罪などお止めください!全ては我々僕の力不足が「よい、アルベド」………!?はっ!失礼しました」

 

 

手を上げてアルベドを制する。色々やるための理由付けを述べて、抜けのない防衛網を作るんだよね?とややこしい言い回しでしてしまったため、変にアルベド達を怯えさせてしまったことを申し訳ないと思い軽く謝罪する。

 

 

「では、先程の件は任せたぞアルベド。ユリもご苦労だった、私は部屋に戻って休むとしよう。何かあれば明日、報告書にまとめておけ」

 

「畏まりました。急を要する場合は<伝言(メッセージ)>でご連絡いたします」

 

 

指輪の力で自室の前に転移したモモンガ、周りに誰もいないことを確認してから大きくため息を吐く。

 

 

「はぁ~………一般人に支配者ロールはきついなぁ………アルベド達には悪いことしちゃったな………もう少しカッコいい言い方とか考えないと………はぁ、疲れた………」

 

 

先程のやり取りを思い出して、少し罪悪感が込み上げる。まだまだ支配者としての演技が足りないと自覚しているので更なる練習が必要だと思うが、モモンガは原因不明の転移からずっと支配者ロールを続けてきて疲弊していた。アンデッドの身体は肉体的な疲労などしないが、精神的な疲れは感じる。

今は一人になって精神の回復に努めようと自室の扉を開ける。

 

 

「お帰りなさいませ、モモンガ様。本日の護衛を勤めさせていただきます。ナーベラル・ガンマ、御身の前に」

 

「………ご苦労」

 

 

そこにはプレアデスの一人、ナーベラルが供回り兼護衛の為にモモンガの私室に訪れていた。

 

自分の部屋に戻ってもまだ支配者ロールが続くことに今度は心の中で大きなため息を吐く。

 

 

(………一人になりたい)

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