オーバーロード 死の支配者と不死鳥物語   作:リュウさん

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第05話

ピーピー、ピーピー

 

テーブルの上に置かれたランタンだけが灯った薄暗い部屋に突然電子音が鳴り渡る。しばらく規則的に鳴り響くが、まるで止まる気配がない。異常事態知らせる警戒音なのか次第に音は大きくなっていき、騒音と呼べるほどの大音量で室内に響き渡る。

 

しばらく電子音が鳴り響いていると、影の方から鋭い爪を携え赤毛の羽根に覆われた腕が伸びてくる。

伸びてきた腕は、電子音を発している箱状のものを確かめるように触り、一段高くなった突起を見つけると、迷わず押し込む。

すると先程までやかましいほど鳴っていた電子音がピタリと鳴り止む、それを確認した腕はまた引っ込んでいき、代わりに鷲のような頭部をした全身が赤毛の羽根で覆われた、炎を纏う翼と太陽の光を思わせる色をした翼を持つ異形の者が現れた。

 

異形の者は微動だにせず、しばらくしたら嘴を大きく開けて目を擦ったり、身体を延ばすように腕を広げたりしていた。

 

 

「ふぁ~~~~~。目覚ましに起こされましたけど、よく眠れた気がするぅ」

 

 

その異形からは鳥のような鳴き声でも恐ろしい咆哮でもなく、女性のような可愛い声で言葉を発した。先ほどまで寝ていたベッドから降りてもう一度、身体と翼を同時に延ばしたその者は、鳥人(バードマン)の姿をしたエール・F・フィアーであった。

 

エールは身体をほぐすように翼をパタパタと動かしながら昨晩の事を思い返す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

異世界で初めて見た星空を十分に満喫し、地表から戻ったモモンガとエール。

先程見た夜空を話題に談笑しながら九階層の廊下を自分達の部屋に向かって歩いていた。

 

 

現実(リアル)の星空と同じか分かりませんけど、ブルー・プラネットさんが見たら大喜びしそうですね」

 

「ですね!あの普段は低い声が高くなって熱く語りだしそうですね!!」

 

「はは、そうですね………ん?セバス?」

 

「あれ?どうしたん………ヒャ!?」

 

 

進行方向の先には、手を後ろで組み背筋をピンと伸ばした姿勢で迷いなくこちらを見据えている執事のセバスがいた。

その顔は彫りの深い顔立ちに皴が目立ち、温厚そうなお爺ちゃんのようだが、今目の前にいる老人は口を固く閉ざし、獲物を狙う鷹のような鋭い眼には温厚という言葉とは程遠い、宝を奪われ怒り狂った竜を思わせるような強い感情が宿っていた。

 

そんな怒れる老執事を前にモモンガは小さく一歩後退し、エールに至っては恐怖のあまりモモンガを盾に背後に隠れてしまう。

こちらの心情を知ってか知らずか、一歩一歩距離を縮めてくるセバス、両者の距離が二メートルほどになると歩みを止め固く閉ざしていた口が開かれる。

 

 

「これはモモンガ様にエール・F・フィアー様。御二方がこのような時間にどうなされました?」

 

「な、なんでもないとも、セバス。ただ少し気になることがあってな」

 

「そ、そうです!それでモモンガさんとちょっと………」

 

 

怒っているであろうセバスに少したじろぎ、曖昧な答えで返すモモンガとそれに同意するエール。

 

 

「左様でございましたか。ところで………先程メイドからエール・F・フィアー様の寝室でこのような物を見つけたと報告を受けたのでございますが………」

 

「な!?」

「あ!?」

 

 

後ろに組んでいた手に持っていたであろうそれをモモンガとエールに見えるように目の高さまで持ってくるセバス。それを見たモモンガは驚愕で固まってしまい、エールはそれの存在を思い出し驚きの声を上げる。

セバスが持っていた物は、メイドを心配させないためにエールが部屋に残しておいた書置きだった。

 

 

「まさかとは思いますが………供を連れずに御二方だけでお出になられたのですか?」

 

(なんて物書いてるんですか!?しかもご丁寧に俺の名前まで書いて!あんなのあったら一発でバレるじゃないですか!!)

 

(ごめんなさ~い!メイドさんを心配させないように良かれと思って書いただけなんです~!!)

 

 

背後に隠れているエールに小声で非難するモモンガ。こんなに怒ることだと思わなかったと反論するエール。

 

 

「至高の御方々のお話を遮る不敬、あまつさえ意見する無礼をお許しください………僭越ながら申し上げさせていただきます。至高の御方と我ら僕の間には隔絶した力の差があるのは十二分に承知しております。しかし、万が一、億が一のことがないよう私を含めプレアデス一同、ナザリックの全ての僕が、至高の御方の盾となり命を賭して御守りするために存在するのです。それを供に連れずお出になられたというのであれば見過ごせるものではありません。もし御二方の盾にもなれず生き恥を晒したとなれば悔やんでも悔やみきれるものではございません。それほど至高の四十一人とは────」

 

 

二人のやり取りを静観していたセバスだが、モモンガとエールが話しているのを遮り、饒舌に話し出す。

自分たちに非があると思い黙って聞いていたが、二人は内心で同じことを思っていた。

 

 

似ている、と。

 

 

彼の創造主、アインズ・ウール・ゴウン最強の騎士たっち・みーに似ている。怒るとものすごく怖いところや口数が多くになるところなどそっくりだった。

お互いどちらからともなく目を合わせ、苦笑いを浮かべる。

 

 

「なんか、ホントにたっちさんに怒られてるみたいですね」

 

「そうですね。怒ると怖いとこまで似なくても………」

 

「セバス様、それくらいにしてはいかがでしょうか?………わん」

 

 

背後から聞こえてきた女性の声に振り向く二人。そこにはメイド服を着た身体付きは人間の女性だが頭部が犬のようになっており、顔の中央に縦一本の傷跡とそれを縫合わせたような跡が服で隠れた胸元まで続いて走っていた。腰まで届く艶やかな黒髪の上には他のメイド達と色の違うブリムを着け、目元は黒い布で覆われている。

 

彼女の名前はペストーニャ・S(ショートケーキ)・ワンコ、四十一人いるメイド達の管理を行っているメイド長だ。

 

 

家令(ハウス・スチュワード)とはいえ至高の御方々に申し出るのは些か不敬かと存じますが………何もここでなさる必要はないのではないでしょうか?それに、至高の御方々にはなにか御考えがあり、プレアデスではなく階層守護者の方々をお供にしたのではないでしょうか?………あ、わん」

 

「そ、その通りだ!………とはいえ、私たちが軽はずみな行動を取ったのは事実。すまなかったな、セバス」

 

「謝罪などおやめくださいモモンガ様!私ごときの意見をお聞きいただき、ご理解いただけたようで何よりです。よろしければ次は一言お声をかけてくだされば幸いでございます」

 

 

ペストーニャの乱入によりいつまでも続くと思われたセバスの苦言が終わり二人は安堵の息を吐く。

 

 

「お出掛けになられたのであればお疲れでしょう。今日はお休みになられてはどうでしょうか?セバス様はモモンガ様の御供をお願いします。私はエール・F・フィアー様をお部屋までご案内いたします。では、参りましょう………わん」

 

「は、はい、お、お願いします。じゃあ、あの、モモンガさん、お休みなさい」

 

「え………ちょ………」

 

 

ペストーニャの後ろをついて行き、振り向いたエールはモモンガとセバスに軽く手を振る。

胸に手を当て深々と頭を下げるセバスの後ろでは、広げた手をこちらに向け置いていかないでくれとでも言うような格好になっているモモンガ。さすがに申し訳ないと思い、心の中で謝罪をして先を行くペストーニャに続き自室を目指す。

 

 

「ありがとう、ペストーニャ。ずーっと続くと思ったから助かりました」

 

「恐縮でございます。ですが、セバス様のお言葉通り、僕一同みな同じ思いでございます。どうかそのことはお心にお留めください。………さぁ、お着きになりました。本日はお休みくださいませ………わん」

 

「はい、案内ありがとう、お休みなさ~い」

 

 

扉を開けてもらったペストーニャに別れを告げ室内に入ると、御付きのメイドが迎えてくれたので、勝手にいなくなったことを謝罪し、また寝直すと寝室に向かう。

外に行ってる間にメイドが整えてくれたふかふかのベッドにまた潜り込む。今度は朝までぐっすり寝れるようにと目を閉じる。

 

 

 

 

 

 

 

 

そして目覚ましが鳴る先程まで安眠していたわけだ。

 

 

「ふふ、ペストーニャが言い出したとはいえ、モモンガさんには悪いことしちゃったかな?あとで謝りに………ん?は~い」

 

 

扉をノックする音が聞こえ、翼をパタパタするのをやめて返事をするエール。返事を聞いてから少し間を空けて開かれた扉からは昨日とは違うメイドが現れた。

 

 

「失礼します。おはようございます!エール・F・フィアー様!本日は御側でお仕えさせていただきます!」

 

「お、おはようございます。今日はよろしくお願いしますね」

 

 

静かに入ってきたと思いきや、元気一杯に挨拶をしてくるメイドに少したじろぐ。何か良いことでもあったのか、その顔には喜びの表情を浮かべ、目をキラキラと輝かせていた。

 

 

「朝からずいぶんご機嫌ですけど、何か良いことでもあったんですか?」

 

 

メイドの上機嫌っぷりに思わず質問を投げ掛ける。

 

 

「はい!至高の御方々のお役に立つだけでも幸福なことなのに、今日は至高の御方に直接お仕えるできるという名誉ある仕事を賜れた日です!嬉しくないわけがありません!!」

 

「そ、そうですか………張り切りすぎて無理しないでくださいね」

 

「お気遣いありがとうございます!全身全霊を持ってお仕えさせていただきます!!」

 

 

眩しかった表情がさらに輝きを増したような気がした。

 

昨日一日御付きのメイドとプレアデスを側に置いていたからなんとなくわかったが、NPC達は本当に自分たちの役に立ちたいようで、ほんの些細なことでもお願いをすると、嬉しそうな表情を浮かべ全力で事に当たろうとするのだ。

だが昨日やってもらったことと言えば、自身のインベントリ内にあるアイテムや部屋の中に仕舞ったアイテムの整理、ついでに室内の掃除や食事の用意、浴槽の準備など、自分でできることしか頼んでない。

 

こんな些細なことしか頼まない自分の側にいて嬉しいものなのだろうかと疑問に思うが、彼女たちのあの笑顔を間近で何度も見ていたエールは、あまりやってもらうこともないから御付きのメイドはいりませんとは口が裂けても言えなかった。

 

 

「じゃあ今着替えるので待っててくださいね」

 

「お待ちください!主人のお着替えをお手伝いするのも御付きのメイドとして当然のことです!!」

 

「(着替えくらい一人で………いやいや、手伝うって言うんだからここは素直に………)そうですね。じゃあドレスルームに行きましょう」

 

「はい!畏まりました!」

 

 

扉を開けたメイドの横を通り過ぎリビングに入ると、廊下に続く扉の前には二人のメイドが待機していた。

 

一人は綺麗な金色の髪を長い縦ロールにした美女。白いフリルを縁に飾り付けた黒いヘッドドレスを頭に被り、首には黒いベルトを巻き付け、ボンテージをイメージしたようなメイド服は胸元部分が大きく開き豊満な胸を露にしていた。

大事なところが見えるか見えないかのギリギリまで短く調整されたスカートから見える足には黒の網タイツと膝まで覆い隠す銀色の脚甲を装備していた。その格好と彼女から漂う雰囲気が合わさり、男を誘うような色っぽい印象を受ける。

 

もう一人は先のメイドの胸元当たりまでの身長のしかない和服風なメイド服を着た可憐な少女。

紫色の髪をお団子にして両サイドに二つ作ったシニョンと呼ばれる髪型にした頭部にはホワイトブリムを被り、蟲のような触覚が二つ生えている。

六角形の三つ合わせたような瞳をしており、うっすらと浮かべた微笑みはあまり暖かみを感じない無機質な印象を受ける。

ピンクの小さなリボンを両肩に着け、膝まで隠れるスカートの腰には黒い帯と赤い縄で服がズレないようしっかり締められていた。

 

 

「おはようございます、エール・F・フィアー様。本日の供回り兼護衛を務めさせていただきます。プレアデス、ソリュシャン・イプシロン」

 

「おはようございます、エール・F・フィアー様。同じく、エントマ・ヴァシリッサ・ゼータ」

 

「「御身の前に」」

 

 

挨拶と共に深々と臣下の礼を取るプレアデスの二人。

エールも挨拶を返し、着替えてくることを伝えると、二人も当然の如くお供いたしますとドレスルームに付いてくることになった。

メイドに先導されドレスルームにたどり着く、ドレスルームというにはあまりにも広い………現実(リアル)の自分の部屋の数倍広い室内には、服・ローブなど分けて収納した大き目のクローゼット、二メートル以上はある巨大な姿見、指輪、ネックレス、イヤリングなど小物を収納したタンスが配置されていた。

 

四人はドレスルームに入ると、御付きのメイドがクローゼットの扉を開け、キラキラしていた目を一層輝かせてエールに問いかけてくる。

 

 

「本日のお召し物はいかがなさいましょう!?」

 

 

まるでご褒美を目の前にした犬のように、尻尾があればブンブン勢いよく振っているだろう。

そこまで嬉しがられても着替えるだけなんだけど………と、ふと思い出す。

ギルドの女性メンバーだけで集まり、着せ替え人形にされたとき、あの時もこの部屋じゃなかっただろうか?

 

あの時は確か、ぶくぶく茶釜さんが一番張り切っていたのではなかっただろうか。それに釣られるように、やまいこさんや餡ころもっちもちさんも勢いだして丸一日着せ替えショーをさせられた記憶がある。

 

懐かしい思い出にクスクス笑っていると、不思議そうに首をかしげるメイド達。

 

 

「あ、ごめんなさいね。ちょっと、女性メンバーでここに集まって似たようなことやったな~って」

 

「至高の御方々がですか?」

 

「そうそう………ちょうどあの時と同じ人数だから、三人にやってもらおうかな?衣装選び」

 

「………よ、よろしいのでしょうか?私たちごとき僕が至高の御方のお召し物を選ぶなど………」

 

「い、嫌ですか………?」

 

「と、とんでもございません!!全身全霊を掛けてお選びさせていただきます!」

 

「じゃあ楽しみにしてますね」

 

「畏まりました!!」

 

 

許可を得た三人のメイドは目の色を変えクローゼットやタンスを開き、服を選び始める。時折、神聖さやら力強さなど、自分には合わないような単語が飛び交っているが、楽しそうに衣装選びをする彼女達を見て、頼んでよかったと内心満足する。

 

しばらくその光景を眺めていると、服が決まったのか一斉に振り向くメイド達、各自選んだ服を広げて見せてくる。

 

 

「エール・F・フィアー様にはやはり燃えるような赤がお似合いです!より美しく、激しく燃える炎をイメージするような物を選ばせていただきました!!」

 

「私はエール・F・フィアー様のその美しい清純さをイメージしたものをお選びいたしましたわ」

 

「私は慈愛に満ちたお心をお持ちのエール・F・フィアー様にピッタリなお召し物を選ばせていただきました」

 

「………」

 

 

顔から身体から全身が熱くなっていくのがわかった。羽根で隠れているが、今のも火が吹き出しそうなほど真っ赤になってる。

今日ほど異形種の身体でよかったと思う日はないだろう。

 

 

(は、恥ずかしい………激しく燃える炎って………落ち着きない子って思われてるのかな………清純って、素直とかそんな意味だと思ったけど………よく騙されてるの覚えてたの?………NPC達に接する態度を見て慈愛に満ちたって思ってるのかな?拠点を守ってくれてるNPC達にはありがとうって気持ちもあるけど………何より皆の思いが詰まった子達だもん、無下にはできないよ………)

 

 

ぷるぷる恥ずかしがっていると、急に黙りこんでしまったエールに、何か気に障ることでも言ってしまったのかと顔を青ざめさせるメイド達。エントマなど触覚をカタカタ震えさせて怯えていた。

ハッと気付いたエールは慌てて口を開く。

 

 

「皆よく見てくれてるのね。嬉しいなぁ、あははは………」

 

「当然でございます!至高の御方々の一挙手一投足!一言一句!すべて記憶しております!!」

 

 

うんうん、と他の二人も当たり前のように頷く。

僕達からすれば当然のことらしいが、こちらからすれば観察されるのは恥ずかしいからやめてくれ、とはとても言える雰囲気ではなかった。

 

 

「そ、そうなんだ………すごいですね。さ、さぁ!早く着替えちゃいましょう!」

 

「畏まりました。では、失礼します」

 

 

さっさと着替えてしまおうと巨大な姿見の前に立つエール。メイドが手に持っている時に思っていたが、いつ間にそんなの持っていたんだろうと疑問に思っていた。

 

 

御付きのメイドが選んだのは、背中の翼が当たる部分と何故か胸元を大きく開いた、一五禁のギリギリを責めたような真っ赤なワンピースドレス、金糸で幾何学模様が描かれており、着用すると全体の模様から火の粉が舞う綺麗なエフェクトが展開するが何の効果も無い服だ。

 

ソリュシャンが持っていたのは、空色のデニムパンツだ。服とは違い着用すると、青い炎が揺らめくエフェクトが発生し、炎ダメージに対する耐性と素早さにステータスアップが掛かるが、レベル一〇〇のプレイヤーが装備するにはあまりにもお粗末な装備だ。

 

エントマが選んだものは、野球ボールより一回り小さい、白い金属板に小さなサファイアのような宝石を埋め込んだ一対のイヤリング。

重そうな見た目だが羽根のように軽く、着用してもエフェクトなどは出てこないが、物理攻撃力と防御力がダウンする代わりに魔法攻撃力と防御力にステータスアップが掛かる。

 

どれもこれも見たことがあるような気はするが、どういった経緯で入手したか覚えがない。たぶんユグドラシルで他のプレイヤーが開いている露店を見たとき、安かったとか見た目が気に入ったとかの理由で衝動買いでもしたのだろう。

 

どこで買ったかいつまでも思い出せないままメイド達の手伝いもあり、着替え終わったエールは姿見に写る自分をもう一度見る。

 

 

「へ、変じゃないですか?」

 

 

そうメイド達に聞く。ぶっちゃけ自分ではちょっと変だと思っているのだが客観的に見てどうなのだろう。

人間種ならそれなりに見れるのだが、鳥人(バードマン)の姿だとリアル等身のマスコットキャラのコスプレでもしてるんじゃないかと思ってしまう。

 

 

「そんなことはありません!エール・F・フィアー様の良さをより引き出せたと自負しております!!」

 

「そ、そうかな?」

 

 

三人とも、自分達のコーディネートは間違っていませんでしたと満足げな表情で褒め称えてくる。

あまりにも自信たっぷりに褒められるので、この服装もなかなか様になってるのでは?と思えてきた。

 

 

「じゃ、着替えも済んだし、モモンガさんに挨拶しに行きましょうか」

 

「朝食はいかがなさいましょう?」

 

「あ!じゃあご飯も一緒に誘いましょう!!一人より二人で食べた方がおいしいですし!」

 

「畏まりました」

 

 

朝食の準備を頼み、どんな料理が来るのかワクワクしながらプレアデス二人の案内でモモンガの部屋に向かうエールであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

モモンガの部屋に着き、扉の前でソリュシャンが応対を求める。

扉が開き迎えてくれたのは、昨晩モモンガの供回りを任された執事のセバスであった。

 

 

「おはようございます、エール・F・フィアー様。本日もお召し物がよくお似合いでございます」

 

「お、おはよう、セバス。モモンガさんはいますか?」

 

「在室しております。どうぞ、御入りください」

 

 

室内に招き入れられると、テーブルの上に浮遊する大きい丸鏡とそれの前に座り、腕を上下左右に動かしてパントマイムをする漆黒のガウンを纏う骸骨が目に写る。

その光景を見たエールは、ハロウィンで子供を脅かす練習でもしてる近所のおじさんか、と失礼なことを思いながら笑いが込み上げてくるのをなんとか我慢する。

 

こちらに気付いた骸骨ーモモンガは、鏡に向かってやっていたパントマイムをやめて、こちらに向き直る。

 

 

「おはようございます、エールさん。その様子だとぐっすり眠れたみたいですね」

 

「おはようございます。とってもよく寝れました!ところで………ふふ、なんで鏡の前でパントマイムなんてしてたんですか?」

 

「え?………あぁ、違いますよ。鏡は鏡でもこれは<遠隔視の鏡(ミラー・オブ・リモートビューイング)>ですよ。

ユグドラシルの時と操作方法が違うのでさっきまで四苦八苦してたんです」

 

 

指定したポイントを鏡に写し出せるアイテムなのだが、ユグドラシルではプレイヤーが簡単な対策をするだけで鏡に写らなくなり、攻性防壁による反撃を受けやすいため、あまり使われることのなかった微妙系アイテムだ。

 

だが、拠点周りの状況がわからない今、多少のリスクがあるとはいえ外の様子を見れるのは大きなメリットを持つ。

鏡をこちらに向け、写し出される風景を見せてもらう。

 

 

「暗くてわかりませんでしたけど、周りはこういう風になってたんですねぇ」

 

「えぇ、操作方法もわかりましたし、遠目にですけど村っぽいのも見つけたんですよ。ここから南西に一〇キロくらいのところです。ほら」

 

 

モモンガの骨の指が鏡の一角を指す。よく見ると木造の建物がちらほら見え、周りには作物のような黄金色のものも見えた。

 

 

「おぉ!?異世界人発見かもですね!………じゃあキリ良さそうなので休憩ついでに朝御飯にしません?一緒に食べようと思って来たんですよ」

 

「アンデッドの身体になったせいで、食欲が全然無いんですよね。それに骨の身体だから口にいれても顎から落ちちゃいますよ………でも、誘ってくれてありがとうございます。その気持ちだけでお腹一杯ですよ」

 

「そうですか………残念です………」

 

「俺はさっきの村を見てみるのでエールさんはご飯食べてていいですよ」

 

 

そう言ってモモンガは鏡に向き直り操作を再開しだした。

 

一緒に食べれないこと残念がっていると、扉が数度ノックする音が聞こえる。扉が開かれ入ってきたのは先程食事の準備を頼んだメイドがワゴンを押して現れた。

 

 

「失礼します。お食事をお持ちしました」

 

「はーい、ありがとうございます」

 

「リクエストがございませんでしたが、朝は軽めの食事がよろしいのではないかと思いまして、本日はサンドイッチをご用意しました。お飲み物は紅茶、コーヒー、ココア等をお持ちしました」

 

 

モモンガの座った席の反対側に持ってきたワゴンを押して料理や食器などをテキパキと並べていくメイド達、セバスが椅子を引いてエールが座るのを待っている。

 

席につくとメイドが一礼してから皿の上に乗った蓋を持ち上げる。

綺麗に切り分けられた断面から中身がわかるように丁寧に盛り付けられていた。

 

 

「………おいしそうですね」

 

「昨日食べたスイーツもおいしかったですよ~」

 

「くっ………なんでアンデッドは食事できないんだ………!」

 

「ふふ、じゃあいただきま~す」

 

 

手を合わせ一礼してから頭を上げると、先程までの鳥人(バードマン)の姿がいつの間にか人間の女性に変わっていた。

 

 

「………あれ?なんで姿変えたんです?」

 

「え?せっかく作ってくれた料理に羽根が抜けて落ちないようにと思って………へ、変ですか?」

 

「いや、そんなことないですよ。食べ物を大事にするのはいいことだと思います。じゃあゆっくり食べてください、俺はその間もうちょっとこれで周囲を見てみますから」

 

 

もじもじと自分の取った行動が恥ずかしかったが、モモンガの言葉を聞いて安堵の息を吐く。

再度一礼してから皿に乗ったサンドイッチに目を向ける。昨日と違い中身の統一されていたので迷うことはなく、行儀が悪いと怒られないか心配しながら手掴みで一つ取って口に運ぶ。

 

 

「ん~、お野菜シャキシャキ~、ハム?も肉厚で美味しいですぅ」

 

「至高の御方に食べていただけて料理長もさぞ喜びましょう」

 

「後でお礼言わないとですね。ところでこのお肉は何の………ん?」

 

 

メイドとお喋りしながら食べていると、対面に座るモモンガがセバスと何やら鏡を見ながら話してるのが目に写る。

鏡に写った映像が気になったエールは料理を半分ほど残し席を立つと、モモンガの後ろから鏡の映像を覗き見る。

 

そこには粗末な服を着た村人と思われる人々が、全身鎧を身に纏い剣で武装した騎士達に追い回されたり、切り捨てられている光景が写っていた。

モモンガが動かしたのか、場面は移り変わり、一軒の建物から村人と騎士が揉み合いながら出てきて、そのあとから女性とその子供と思われる少女二人が走って逃げ出していた。

 

 

「何のイベントですか、これ?」

 

「うおっ!?突然ビックリするじゃないですか!………というかイベントって………ゲームじゃなくてリアルで起こってることですよこれ」

 

「っ!?た、大変!すぐ助けに行かないと!!」

 

「ダメです。相手の情報がわからないのに下手に手を出すと返り討ちに合うかもしれない。それに、この騎士達もただ殺してる訳じゃないかもしれない、疫病の蔓延を防ぐため、村ぐるみで犯罪に荷担していたのを罰するため、何か理由があってやってるのかもしれない。下手に手を出してこの騎士たちが仕えている国と敵対するのは避けたいので、この村は見捨てます」

 

「で、でも………!」

 

 

また場面が移り変わる。先程写っていた二人の少女が森の中まで騎士達に追われていた。

小さい方の妹と思われる少女が足をとられ転んでしまい、庇うように姉が妹を抱き締める。

 

追い付いた騎士が剣を構えると、油断していた所に少女の拳が飛んできた。

無防備なところに思わぬ反撃を受け、尻餅をついて倒れる騎士。透かさずもう一人の騎士が少女に斬りかかる。

妹を庇い背中を向けて騎士の剣を受ける姉、その光景を見ているエールはモモンガから離れるように一歩下がる。

 

 

「わかりました………」

 

「すみません。ホントは助けられれば」「私が一人で行ってきます」「………え?」

 

「モモンガさんは私が囮になってる間に敵の情報収集お願いします!<転移門(ゲート)>!」

 

 

転移距離無限、転移失敗率〇%のユグドラシルではよく使われるもっとも確実な転移魔法を発動する。

目の前に円形の闇が広がる。モモンガが止めようと椅子から立ち上がるがすでにエールの姿はなかった。

 

再度鏡に目を向けると、先程少女を切りつけた騎士にエールが跳び蹴りを食らわせているのが写っていた。

 

 

「セバス!行け!!」

 

「はっ!」

 

 

エールが発動した<転移門(ゲート)>に弾丸の如き速さでセバスが勢いよく飛び込む。視界が切り替わり、傷付いた少女を翼で包み込むように守るエールと、突然の乱入者に困惑している騎士が目に写った。

 

眼前の騎士を主人に危害を加える敵と認識したセバスは、勢いそのままに自身のステータスが出せる最高速と攻撃力を持って渾身の一撃を騎士の頭に叩き込む。

反応する間もなくセバスの全力の拳を受けた騎士は、頭部が粉々に吹き飛び、その余波で身体は胸元まで抉れていた。

頭部を失った身体は、金属同士がぶつかるけたたましい音を出しながら糸が切られた人形のように崩れ、倒れた衝撃で赤黒い血と臓物が地面に撒かれる。

 

辺り一帯に生臭い血の匂いが漂い始める。セバスは自身の拳を見つめ、次に倒れた騎士の死体を見る。

弱い。あまりにも弱すぎる。最初に騎士を目にしたときは、<特殊技能(スキル)>かマジックアイテムによって強さを偽っていると思っていたが、先程の一撃は全力で放ったとはいえ反応すらされないとは思いもしなかった。

だが、これで確信した。どんなに高く見積もってもレベルにして一〇、もしくは一〇以下ではないだろうか、と。

 

セバスは自身が殺した騎士の死体を放置してエールが蹴り飛ばした騎士にまだ息があるのか確かめに足早に向かう。

生きていようが死んでいようがどちらでも構わないが、まだ危害を加える気あるなら無力化しておかなければならない。距離にして一〇メートルほど飛ばされた騎士は、頭を蹴られたのだろうか、あらぬ方向を向いて絶命していた。

 

周囲に敵がいないか確認したセバスはエールの下に戻るとちょうど声が二つ重なる。

 

 

「お怪我はございませんか?」

「怪我はないですか!?」

 

 

エールの前からセバスが、後ろからは本気装備に身を包み、スタッフ・オブ・アインズ・ウール・ゴウンまで持ち出したモモンガが現れた。

 

 

「は、はい。私は大丈夫です」

 

「はぁ………よくやった、セバス。………ふむ、騎士たちの強さはどうだった?見ている暇がなかったが、お前が全力を出して倒したのだろう?レベルは九〇か?八〇か?」

 

「はっ、レベルは一〇もしくはそれ以下かと思われます」

 

「そうか、レベル一〇か、やはり現地人は強かった………は?………待て待て!一〇!?それ以下!?嘘は言ってないだろうな!?」

 

「はっ!至高の御方々に誓って嘘偽りはございません!!」

 

「そ、そうか………いや、こいつらだけが特別弱いのかもしれないな………よし、私も出るぞ。セバスは彼女の護衛に付け、私には後程護衛が来る。っとその前に………」

 

 

あまりにも想定外の弱さに驚きはしたが、騎士たちはまだいる。

自身の戦闘力を調べるには丁度いい実験かもしれないと思うモモンガだが、その前にやることを思い出す。

振り向いたモモンガとエールの視線が交差する。怒られるとわかっているのか、少女たちを包んでいた翼がモモンガとの視線を切るように持ち上がる。

しかし、それも無駄な抵抗に終わる。

 

 

「こら鳥頭。今回は無事だからいいけど、もしものことがあったらどうするんですか?この世界で俺たちが蘇生できるかもわからない状態なのに、もし蘇生ができないなんてことになったら………」

 

「ご、ごめんなさい……………で、でも!やっぱり見捨てることなんてできませんよ!!理不尽に殺される怖さは私たちが一番わかるじゃないですか!!放っておけません!」

 

「それは………それでも、俺は大切な仲間が危ない目に合うのは見たくないですよ」

 

「私は………みんなにしてもらったように、困ってる人には手を差し伸べたいです………それが偽善や自己満足だと思われても………だから………」

 

 

かつてアインズ・ウール・ゴウンの仲間達に助けられたように、自分も誰かの助けになりたい。

エールは真っ直ぐにモモンガを見据える。

ここまで自己主張が強いエールを初めて見たモモンガは戸惑いを覚える。どうしたものかと隣に控えるセバスに何気なく目を向ける。

 

相変わらず姿勢よく立つセバス、先程のエールの言葉で思い出される彼の創造主、たっち・みーの言葉とその姿を幻視した。

 

 

「たっちさん……………」

 

 

誰かが困っていたら助けるのは当たり前。

 

 

モモンガがユグドラシルを開始した頃、異形種のプレイヤーだけを狙った異形種狩りという行為が流行っていた。PKに遭い続け、ユグドラシルをやめようと考えていたときに手を差し伸べ助けてくれた恩人だ。

あの時彼が助けてくれなければ今のモモンガは存在しなかっただろう。

 

懐かしい記憶が蘇り、骸骨の顔に表情はないが自然と笑みが零れる。

ユグドラシルでは仲間を助けることはあっても、赤の他人を助けることなどなかったモモンガ。

なら、この異世界ではユグドラシルでできなかったこと、やれなかったことをやってみてもいいかもしれない。それが彼と同じ人助けというのも悪くない。

そしたら、またあの人に会った時、胸を張って言える気がする。

 

 

「ふふ、俺も、困ってる人を助けたんですよ………って」

 

 

誰にも聞こえないほど小さな声でモモンガは呟く。

ふぅ、と息を吐き出し、気を取り直したモモンガは先程まで眼に強い意志を宿していたが今はなぜか俯いてしまったエールに近づく。

 

自分のことをそこまで心配してくれてると知ったエールは、モモンガに申し訳ないことをしたと思い、段々と目を合わせづらくなって俯いていた。

モモンガが近づいてくる足音が聞こえる。

 

翼の隙間から漆黒のローブが見える。怒られるのは覚悟しているが、この子達だけでも助けてもらえないだろうか。自分勝手なことをしてモモンガとNPCに迷惑をかけた罰としてあそこに放り込まれるかもしれない、色々なことが頭の中を駆け巡る。最悪な展開にならないよう祈りを捧げるエール。

 

 

「……………はぁ、もう無茶するのはこれっきりにしてくださいよ?毎回こんなことされたら心臓がいくつあっても足りませんよ………心臓ないけど………」

 

 

数秒の沈黙のあとモモンガの溜め息が聞こえ、エールの頭に骨の手が優しく置かれる。

 

 

「……………え?」

 

「ほら、あの村を助けに行くんでしょ?早くしないと助けられなくなっちゃいますよ」

 

「あ………は、はい!」

 

 

どういった心境の変化か、モモンガも村を助けるのを手伝ってくれるらしい。

予想外の言葉に少し呆けてしまったが、モモンガがいるなら心強い。

 

 

「その前に、さっきも言ったように何か理由があって騎士達が村人を殺して回ってるのかもしれない。まずその娘達から話を聞いてください。その間俺は壁役を一、二体作っておきます。セバス、周辺の警戒は怠るな」

 

「はっ!」

 

「はい!………ねぇ、あなた達、大丈夫ですか?」

 

 

隠すように包み込んだ翼をゆっくりと広げて少女達に優しく声を掛ける。

 

栗毛色の髪を胸元まで伸ばし三つ編みにした姉は、エールの翼に遮られ薄暗くなった地面と妹を見つめながら、エールとモモンガの会話だけを聞いていた。

最初はなんとか妹だけでも助けてもらえないか懇願しようと思ったが話を聞いているとどうやら助けてくれるようだが、どうしていいのかわからず、妹を胸に抱き締めたまま固まってしまう。

 

優しい声と共に翼が広がり、太陽の暖かな光が降り注ぎ、翼が動いて生じた風が頬を撫でる。

頭上から聞こえてきた声に反応するように見上げると、火の粉のようなキラキラした光が舞い、炎を連想するような髪と上質そうな衣装を纏った、まるで作り物のような美しさを持った美女が目の前にいた。

 

今まで周囲を覆っていた翼を背中に戻した姿は、まるでお伽噺や吟遊詩人の唄に出てくるような神聖な存在を少女に想起させた。

 

 

「言葉が通じないのかな?どうしたらいいんでしょう………」

 

「天使様………綺麗………」

 

「………え?」

 

「あ!すみません!!あまりにも綺麗だったのでつい………言葉わかります!」

 

 

異世界人との初の会話が誉め言葉とは思わず、一瞬呆けてしまうエール。

しかし、すぐ気を取り直し襲われていた理由を訪ねる。

 

 

「あ、ありがとう?じゃなくて、ちょっと話を聞いてもいいですか?なんであの騎士達に襲われてたんです?何か悪いことでもしたんですか?」

 

「し、してません!突然たくさんの騎士が襲ってきて村のみんなを………何もない貧しい村で毎年の税を納めるだけで精一杯ですけど、私たちは毎日をただ平穏に暮らしていただけです!!」

 

 

静かに聞いていたエールは、胸の内に怒りの火が灯り始める。

平和に過ごしていた日々が何者かに突如壊される。それはエールが現実(リアル)で自分の身に起こったことと似ている。

許せない。それと同時に間に合ってよかった、と思うエール。騎士たちに対してなぜこんなことをするんだという怒りと、自分たちが見つけなければこの幼い子たちにあんな辛い思いをさせなくて済むかもしれないと。

 

話を聞き終えたエールは気を落ち着かせるために一息吐いて、次に微笑みを携える。

 

 

「ふぅ………わかりました。大丈夫、私達はあなた達の味方です。もう安心し──「オオオォォァァァァァアアア!!」てぇ!?」

 

「「ひっ!?」」

 

 

空気がビリビリと震え、底冷えするような咆哮が聞こえてきた。

突然の事に驚き二人の少女は互いに抱きしめ合い、エールはその少女達を抱くように縋り付いてしまう。

 

声の方向に目を向ければ、角を生やした兜を被り、ボロボロに朽ちたマントをたなびかせ、片手には身体の大部分を覆い隠せそうなタワーシールド、もう片方には所々刃が欠けた刃渡り一・三メートルほどの波打つ剣フランベルジェを持った巨大な人型がドスッドスッと足音を立てながら、巨体に似合わぬ速さで走り去っていくところだった。

 

その後姿を困惑した雰囲気で見つめていたモモンガは、ブツブツと独り言を呟きながらエールたちの下に近づいてきた。

 

 

「話は終わりましたか?」

 

「は、はい。あの、な、何をしていたんですか?」

 

「いや、死の騎士(デス・ナイト)を作ったんですけど、どうやらユグドラシルと違って死体に乗り移るみたいですね。なんかウネウネしてて気持ち悪かったですけど………で、壁役のつもりで命令したら走って行っちゃいました………」

 

「………ふふ、守る対象を放ってくなんて壁役は不合格ですね」

 

「ははっ、まったくです」

 

 

どういった命令を出したかわからないが、壁役をほったらかして走って行った間抜けな死の騎士(デス・ナイト)に対して笑いが込み上げてくる。

二人で笑っていると、エールの開いた転移門(ゲート)から人影が現れる。同時に転移門(ゲート)の持続時間が終了し徐々に小さくなり始めた。

 

現れたのは全身を黒い甲冑で覆われた人物。

角がこめかみから前方に向かって生えた面頬付き兜(クローズド・ヘルム)、漆黒の鎧で全身を完全に覆われ、棘が付いたガントレットの手には病んだような緑色の微光を宿したバルディッシュを軽々と片手で所持していた。

 

 

「準備に時間がかかり申し訳ありませんでした」

 

 

黒い甲冑の騎士は不気味な見た目に合わない綺麗な声で謝罪する。聞き覚えのある声に騎士の中身がアルベドであることに気付く。

 

 

「いや、実によいタイミングだ」

 

「ありがとうございます………それで、その下等生物の処分はどういたしましょう?よろしければ私が行いますか?」

 

「その必要はない。とりあえずの敵は………そこに転がっている鎧を着た者達だ」

 

「了解しました」

 

 

アルベドから視線を動かしエール達に向ける。

 

 

「さて………まだ傷を直してないじゃないですか。出血のスリップダメージで死んじゃいますよ?………娘よ、これを飲むのだ」

 

 

死の騎士(デス・ナイト)の咆哮を聞いてか、アルベドの処分という言葉に反応してか、エールにしがみついて震える少女にインベントリから下級治癒薬(マイナー・ヒーリング・ポーション)という治癒の薬を取り出し、少しロールプレイを意識した声を出しながら薬を差し出す。

 

 

「これ以上何かいただくなんて──ひっ!?」

 

 

モモンガが声をかけたことでようやくエールから離れ振り向いた少女は、目の前に差し出された血のように赤い薬とそれを骨の手で持った骸骨顔のモモンガを見て、顔を青ざめさせるとまたエールにしがみついてしまう。

 

天使、骸骨、執事、悪魔のような騎士に囲まれた自分達は本当に助けてもらえるのだろうかと困惑し動けずにいると、エールの後ろにいたアルベドから優しそうな声が掛かる。

 

 

「………温情によって薬を下賜されようとしたにも関わらず、受け取らない………あまつさえ下等生物風情が至高の玉体に触れるなど………その罪万死に値する」

 

 

アルベドが片手で持っていたバルディッシュを両手で持ち直し、高々と振り上げる。

その振り下ろす先はもちろん少女達だ。

 

 

「ま、待て!武器を下ろすのだ!」

「ま、待ってください!ダメです!」

 

「はっ、畏まりました」

 

 

命を刈り取るべく振りかぶったバルディッシュを目にした二人は、慌ててアルベドに制止の声をかける。

二人の言葉に従い振り上げたバルディッシュを下ろし、また片手に持ち直したアルベドだが、チクチクと肌を刺すような濃厚な殺意はまだ少女たちに向けたままだった。

 

歯をカタカタ鳴らして完全に怯えきってしまった少女達に優しく言い聞かせる。

 

 

「これは治癒の薬だ。早く飲むんだ」

 

「怖がらなくて大丈夫ですよ。あなたの怪我を心配して薬を出してくれたんです。ほら、飲んでください」

 

 

モモンガからポーションを受け取り、未だに恐怖の抜けない少女にゆっくりと手渡す。

何度かエールとポーションを交互に見てから、意を決して呷るように飲み干すと淡い光に包まれ始める。

 

 

「嘘………」

 

 

背中に受けた傷が映像を逆再生したように塞がり始め、焼けるような痛みが数秒と経たず消え去る。

まさかと思い背中を触ってみると、完全に治っていることに驚愕の表情を浮かべる。

 

 

「もう痛くないですか?」

 

「は、はい………」

 

 

あまりの出来事に開いた口が塞がらず、呆けた顔で返事をする少女。

 

 

「もう大丈夫なようだな。ふむ………」

 

 

問題ないことを確認したモモンガは顎に手を当て思考を巡らせる。

あの程度の切り傷程度なら下級治癒薬(マイナー・ヒーリング・ポーション)一つで十分ということがわかった。

では、もっとひどい外傷ならどうなのだろう。腕、足が失くなっても再生されるのだろうか。

 

この世界に転移してから今まで、誰も怪我を負うことがなかったからポーションの効果や回復魔法の検証は後回しにしてしまっていた。

果たしてユグドラシルと同じくHPを回復するだけなのか、それともHPだけでなく失った部位も再生されるのかまだわからない。

ナザリックの者達でそんな実験はしたくないので、この世界の住人で確かめてみるのも手だろう。

 

それに、自分はアンデッドなのでポーションは不要だがエールは違う、もしエールがそのような重症を負ってしまった場合、回復魔法が意味をなさないならポーションしか頼れる物がない。

やはり魔法の実験検証は最優先でやらなければいけないだろうと、今後のやることを頭の中にメモをする。

 

そこで気が付く。この世界の住人は魔法を知っているのだろうか。

自分達はユグドラシルのアバターそのままで来たこともあってか当たり前のように使えるが、この世界の住人も魔法が使えるのだろうか。

 

この世界の住人が魔法を知らない、使えないなら自分たちが魔法が使えることは絶対秘密にしなければならない。もし知られれば間違いなく面倒事や厄介事に巻き込まれるだろう。

また<遠隔視の鏡(ミラー・オブ・リモートビューイング)>を使ってこの世界の住人を探してもいいが、それはそれで手間が掛かる。

幸いなことに、目の前にエールが助け友好的に接している現地住人がいる。この少女が魔法を知っているか聞いてもいいだろう。

 

知らなければシラを切ればいいし、最悪は記憶を操作する魔法があるので質問自体をなかったことにできる。

モモンガは意を決し、少女に質問する。

 

 

「お前達は………魔法というものを知っているか?」

 

 

ないはずの心臓がバクバク言ってるような気がする。頼むから知っていてくれ、と内心少女に祈りを捧げる。

 

 

「は、はい。村に時々来られる薬師の………私の友人が魔法を使えます」

 

 

大勝利、まさにそんな気分だった。今すぐガッツポーズをしたい気持ちを抑え、努めて冷静に話す。

 

 

「………そうか、なら話が早い。私達は魔法詠唱者(マジック・キャスター)だ」

 

 

言葉だけでは信じてもらえないだろうと思ったモモンガは、少女たちを守る意味も込めて魔法を唱える。すると少女を中心に淡い光を放つ半球状のドームが現れ全員を包み込む。

 

 

「<生命拒否の繭(アンティライフ・コクーン)><矢守り(ウォール・オブ・プロテ)の障壁(クションフロムアローズ)>」

 

 

唱えたのは生き物に対し、範囲内への侵入を拒む守りの魔法と射撃攻撃を弱める魔法だ。これで増援の騎士たちが来てもこの中にいれば襲われる心配はないだろう。

 

 

「ここにいれば大抵は安全だ。さて………村には死の騎士(デス・ナイト)が向かったので、俺は村の周りに伏兵がいないか確認してきますけど、どうします?」

 

「私も村に向かいます!」

 

「わかりました。一応伏兵を警戒しながら途中まで一緒に行きましょう。あとこれを一つ着けててください」

 

 

モモンガがインベントリから取り出したのは、先端にビー玉くらいの大きさのドングリが付いた白と黒の色違いのネックレス。

黒い方をモモンガが持ち、白い方をエールに手渡す。言われた通り首からぶら下げ、どこかで見たことがあるが思い出せずにいると頭の中にモモンガの声が聞こえてきた。

 

 

(アウラとマーレが持ってたやつの、まぁ、内緒話バーションですね。伝言(メッセージ)の魔法だと声を出さないといけないので敵に気付かれますから、これを使って情報共有しましょう)

 

(わかりました)

 

「では………娘よ。念のためにこれをやろう」

 

 

続いてモモンガは、みすぼらしい角笛を二つ取り出し少女に渡す。

 

 

「それは小鬼(ゴブリン)将軍の角笛というアイテム。吹けば小鬼(ゴブリン)の群れが現れお前に従うだろう、それを使って身を守るといい………じゃあ行きますか」

 

「はい!すぐ戻ってきますけど、何かあったらすぐそれを吹いてくださいね。………あ!」

 

「ん?どうしたんです?」

 

 

立ち上がり、モモンガの横に並んでから思い出したように足を止める。

 

 

「心配なので、私も魔法を掛けてあげてもいいですか?」

 

 

エールの言葉に小さく溜め息を吐き、どうぞと言うように骨の手を少女たちに向ける。

 

 

「ありがとうございます。ちょっと変な感じするかもしれませんけど安心してくださいね。<上位加速(グレーター・ヘイスト)>」

 

 

エールが唱えた魔法は、移動速度を早くする補助魔法。モモンガはなぜその魔法なのか疑問に思うもすぐに理解する。

もし、モモンガの守りの魔法も、呼び出した小鬼(ゴブリン)達も突破されれば、戦う術がない少女たちには逃げるという選択肢しか残されていない。万が一そうなってしまった場合に少しでも生存率を上げるための補助魔法かと納得するモモンガ。

 

 

「<上位硬化(グレーター・ハードニング)>」

 

 

続いて唱えられたのは防御力を上げる魔法。これにもモモンガは納得して骸骨の顔を小さく振る。

移動速度が速くなっても追い付かれては意味がない、防御力を上げておけば一撃で死ぬかもしれない攻撃が二回もしくは三回は耐えられるようになる。自分たちが戻って来るまで少しでも時間を稼いでもらうつもりなのだろう。

 

 

「<上位抵抗力強化(グレーター・レジスタンス)>」

 

 

次は抵抗力を上げる魔法を唱える。これは毒、麻痺、睡眠などの各種状態異常に対して抵抗(レジスト)しやすくなる補助魔法。

モモンガはこれにも納得するが、なんだか少しおかしく感じる。戦う術のないか弱い少女達とはいえ、レベル一桁の村人に対していくらなんでも掛けすぎじゃないか。

 

そんなことを思っている間もエールは補助魔法を次々と掛けていく。

何個目かわからない補助魔法を唱えたあたりでやっと理解したモモンガは止めに入る

 

「おい、ちょっと止まりなさい焼鳥。心配なのはわかりますけど、そんなに魔法掛けてこの娘にPvPでもさせる気ですか?」

 

「で、でも………備えあればうれしいなって言うじゃないですか………」

 

「はぁ………キリがないからその辺にして行きますよ」

 

「は~い………」

 

 

モモンガに止められて諦めたのか、補助魔法を唱えるのやめて少女達に背を向けて歩き出すと、アルベドと今まで空気に徹していたセバスが少し後ろを黙って付いてくる。すると数歩も歩かないうちに背後から声を掛けられ歩みを止める。

 

 

「あ、あの!………助けてくださって、ありがとうございます!」

 

「ありがとうございます!」

 

 

涙を溜めて感謝の言葉を紡ぐ少女達に振り返ったエールが笑顔を携え短く返答する。

 

 

「気にしないでください」

 

「あ、あと………図々しいとは思っています!で、でも!あなた様方しか頼れる方がいないんです!どうか、どうか村の皆を!お父さんとお母さんを助けてください!!」

 

「任せてください!」

 

「あ、ありがとうございます!本当にありがとうございます!」

 

 

ニコッと笑いサムズアップをしたエールの言葉に、地面に額が付くほど頭を下げて礼を述べる少女。それを見た妹も真似をして頭を下げる。

 

 

(簡単にそんな約束して………)

 

(大丈夫です!皆助けてハッピーエンドですよ!!さぁ、行きましょう!)

 

 

アイテムの効果で脳内会話をしていると、まだ終わりじゃないのか続けて少女から言葉が紡がれる。

 

 

「そ、それと、あの、お、お名前はなんと仰るのですか?」

 

「………我が名を知るが良い。我こそがナザリック地下大墳墓の支配者、アインズ・ウール・ゴウンの──」

 

 

ロールプレイを意識したノリノリの口上で名乗ろうとしたモモンガが途中で止める。

どうしたのだろうと思ったエールだが、ふとアインズ・ウール・ゴウンの諸葛孔明と呼ばれた男、ぷにっと萌えの言葉が思い出される。

 

 

「いいですかエールさん。情報というのはと~っても大事なんです。私たちの持っている装備品や戦闘スタイルだって相手からすれば有益な情報です。極端なことを言えば名前一つでも立派な情報になります。だから絶対するなと無理なこと言いませんけど、あんまり情報は漏らさないことをお勧めしますよ。………まぁ、エールさんのことだから三日経てば忘れてるんでしょうけどね」

 

 

最後にすごく失礼なことを言ってたが、たしかこんなことを言われた気がする。

モモンガもぷにっと萌えに色々教えてもらっていたから、彼の言葉を思い出して名乗りをやめたのだろう。

 

だが助けたあの少女達から少ないながらも情報を教えてもらったのだ、情報交換ということにして名前くらい教えてあげてもいいのではないだろうか思ったエールはモモンガに脳内会話で相談を持ち掛ける。

 

 

(モモンガさん。この子達にはちょぴっとですけどいろいろ教えてもらったんです。そのお礼として私の名前だけでも教えていいでしょうか?)

 

(え?………あぁ、いいですよ。ちょっとあることを思い出して名乗るのを戸惑ってしまっただけです)

 

(やっぱりモモンガさんも………任せてください!私がカッコ良く名乗りますよ!!)

 

 

そう言うと、少女達に向き直り、折り畳んでいた翼を勢いよく広げ、地面から少しだけ浮き上がると羽根が舞い散るエフェクトが周りに発生する。

少女達がこちらをちゃんと見ていることを確認してカッコイイ声を意識して名乗り上げる。

 

 

「我が名はエール。ナザリック地下大墳墓の支配者が一人、不死鳥エール・F・フィアー!しかと覚えておきなさい!」

 

 

ドヤ顔で名乗り終えたエールは地面に降り、踵を返し村の住人を助けるべく歩みを進める。

少女達が見えなくなった辺りで先程モモンガが思い出したことにエールが問い掛ける。

 

 

「モモンガさんもやっぱり、ぷにっと萌えさんのこと思い出して名前を教えるのを躊躇ったんですか?」

 

「いや、実は………この世界にいるかわかりませんけど、モモンガがいたらそれと同じ名前ってのが………あの目がクリクリしてる可愛らしい動物と一緒の名前ですよ?ちょっと恥ずかしいなと思って………」

 

「ぷふ、クリクリお目目の可愛らしい骸骨さんですね」

 

 

骸骨の顔に大きい目玉を想像してクスクスと笑うエールに溜め息を吐くモモンガ。

 

 

「はぁ………それにしても、せっかく助けに来たのになんであそこまで怯えられたんでしょうね?ポーション渡す時なんてもっと喜んでもいいと思うんだけどなぁ。漫画やアニメなんかじゃ命の恩人にはもっと好意的に接してくるのに、やっぱあぁいうのはイケメンに限るってやつなんですかね?」

 

「………」

 

「エールさん?」

 

「あ、あの………私はユグドラシルの時から見慣れてるし、モモンガさんは悪くないですよ?悪くないんですけど………ただ、骸骨に話しかけられて怯えない人って………います?」

 

「……………え?」

 

 

そう言われたモモンガは時が止まったように固まってしまった。

この世界にアンデッドがいるかわからないが、人間はいた。ということは、人間の死体もあるわけだ。

ユグドラシルではプレイヤーにもモンスターにもアンデッドは普通に存在していたし、骸骨の姿を恐ろしいと思ったことなど一度もない。

 

だが、この世界の住人からすれば、白骨死体が動き、話しかけてくるなど有り得ないのだろう。

あの少女達がモモンガの外見に恐れ怯えるのも仕方のないことだ。

 

 

「人間ごときが………モモンガ様のご尊顔を仰ぎ見るだけでも身に余る光栄なのに………やはり今からでも殺しておいた方が宜しかったのではないでしょうか?」

 

「だ、ダメですよ!あの子達に悪気はないんですから!」

 

 

モモンガの後ろで話を聞いていたアルベドからまた肌を刺すような殺意が溢れるのを感じたエールは慌てて止めに入る。

固まっていたモモンガがそれに気付くと、なぜそこまで人間が嫌いなのだろうと、ないはずの胃がキリキリ痛む気がした。

 

 

「待つのだアルベドよ。エールさんが助けに入ったことでこの世界の住人と友好関係を築く切っ掛けができたのだ。右も左もわからない我々がこの世界のことを知るには僕達の調査だけではわからない、現地の人間から直接話を聞いてわかることもあるかもしれないのだ。気に入らないからと殺していては有益な情報を得られなくなるではないか。私達のために怒ってくれるのは嬉しく思うが、今は情報収集に務めてその怒りを収めよ。それに、怒っていてはお前の美しさが台無しではないか」

 

「く、くふー!畏まりました!!」

 

 

最後の言葉しか聞いていないのか、黒い甲冑を着てクネクネして喜びを表現するアルベドの姿は不気味の一言に尽きた。

後ろにいるためアルベドの動きに気付かないモモンガは止まっていた歩みを進める。

 

伏兵に警戒しながら村へと続く林道をしばらく進むが、敵はおろか小動物の姿すらない、周りの森を観賞するだけの平和な道のりだった。

そろそろ目的地に着きそうなのか、遠目に開けた場所が見えてきた。

 

 

「じゃあここら辺で別行動しましょうか。セバス、エールさんのこと、頼むぞ」

 

「はっ!エール・F・フィアー様のことは身命を賭して護り抜く所存でございます!」

 

「………いいですか?くれぐれも油断しないでくださいよ?いくら相手が弱くてもユグドラシルにはない、この世界特有の魔法があるかもしれないのでいつでも逃げれるようにしてくださいよ?逃げるときも、時間の掛かる転移じゃなく即時発動のやつを使うんですよ?もし転移が阻害されたらセバスに時間を稼いでもらって範囲外まで移動して逃げてくるんですよ?セバスのことが心配かもしれませんが、NPCは金貨で復活できますから、エールさんは絶対生き延びることだけを考えてください。もし逃げれないと判断したらアイテムで連絡してくださいよ?すぐ駆けつけますから。あ、それと──」

 

 

次から次へと心配事を口にするモモンガ。

苦笑いを浮かべながら聞いているエールは、まるで初めてお使いにいく子供を心配しすぎる母親のようだと思っていた。

 

先程、心配しすぎと言われたが、モモンガも案外人のことは言えないじゃないかと笑いが込み上げてくる。

 

 

「ふふ、モモンガさんも心配性ですねぇ。大丈夫ですよ、逃げるのは得意ですから!」

 

「はぁ………そう言って逃げ切れたこと何回あるんですか………だから心配するんですよ………」

 

「うぐ………それは一人だったから………」

 

 

過去、幾度となく異形種狩りに遭い、追い回されて逃げてきたエール。

だが、ほとんどがPKされて拠点リスポーンばかり、成功したのは片手で数えるほどしかない。それを知っているから、ここまで心配するのだ。

 

今はプレイヤーの蘇生が可能かわからない、過保護になるのも当たり前というものだ。

 

 

「わかりました。危ないと思ったらすぐ逃げます!」

 

「ホントに頼みますよ?………不安しかないけどいつまでもこうしてるわけにはいかないか………では行くかアルベド。<飛行(フライ)>」

 

 

空を飛べるようになる魔法を唱え、アルベドと共に森の上空を飛んでいくモモンガ。

 

それに手を振って見送るエール。モモンガが飛んでいくのを礼持って見送るセバス。

顔を上げたセバスにエールがニッコリ微笑む。

 

 

「じゃあ私達も行きましょうか!異世界初の人助けです!!」




長々と御観覧ありがとうございました。

今回捏造した部分を下記に記しておきます。

<上位加速グレーター・ヘイスト>
普通の加速があるなら上位があってもいいだろう



また時間が掛かるかもしれないですが、気長に待っててください。
次回!陽光聖典戦!ニグンどうなる!?(どうしよう………
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