「うごご…………頭が痛い…………」
自室で唸る隆彦。本来ならば小学校から少しずつ進めていくISの基礎中の基礎からやっているのだから無理もない。女性がISという特権を持っている以上この世界は基本的に共学の学校はない。それ故男性は物作りの道に進まない限り死ぬまでISに関わることはほとんど無いのだ。しかも物作りは作る側なので動かす側の知識は一切無い。
「覚えること多すぎだろ。やべぇ」
動かし方だけではない。ISに関わる法律等も履修内容に含まれている。受験時期に適性が見つかったため準備期間は2ヶ月程度。その僅かな期間である程度の知識を叩き込まないといけない。あれから一週間が経過したが参考書は半分も終わっていない。
「ええと…………アラスカ条約が……………イメージインターフェースが…………」
連日頭を抱えながら急ピッチで学ぶ隆彦。すると突然
「すまない。ちょっといいか?」
父である隆文に呼び出された。
「勉強中にすまない。企業連代表ということでコアを一つ融通してもらってな。お前の専用機を現在組んでいるところなんだ」
「ふむ…………で?」
「勉強は入学してからでも出来るが専用機の構築は今のうちに済ませておかないといけないんだ。何ざっくりとしたアセンが組めたなら後はこっちの領分だ。お前は機体コンセプトを考えてくれるだけでいい。条件はただ一つ。企業連のパーツのみで構築することだ。いいな?」
「分かった」
有澤重工工場
「忙しい中呼び出してすまない」
「いえいえ、構いません」
隆彦が向かったのは有澤重工で作業を行う工場の一画。そこには企業連を構築する全ての企業の担当者が集合していた。
「では今から隆彦君の専用機の構築を始めます。といってもざっくりとした方針が分かれば良いので緊張しないでくださいね?」
「はい」
「ではまず機体からです。企業連はISのボディを頭部、胸部、腕部、脚部に分けて設計します。それぞれ自由に組み合わせて無限に近いバリエーションから選べるのが強みです。ですが隆彦君の適性は最低のE。色々妥協しないといけないことをご了承下さい」
「具体的には?」
「処理が追い付かないので腕部を武器と一体型の武器腕タイプ、若しくは脚部を動かさなくて良いタンクあるいはフロートタイプにしていただくことになります。これにより処理が軽くなり低い適性でもある程度動くことができます」
「タンクで」
「即答ですか。まあでしょうね」
というもの当然実家である有澤重工を贔屓してしまう。有澤重工は数少ないタンク脚を製造している企業だ。というかISのボディはタンク脚以外作っていない。さらに武器と一体型の武器腕にした場合、脚をタンクにする以上に選択肢が狭まってしまう。それもあっての即答だった。
「では脚部は有澤のKIRITUMIと。では他のパーツなんですが、脚を有澤にした影響で実弾防御が桁外れに高くてですね、その代わり光学系に脆くなっています。実弾防御を伸ばすかある程度の実弾と光学系の防御を取るか。どうします?」
「どうせなんです。実弾防御に全振りしましょうか」
「ではそのように。であれば他は全てGAフレーム一択ですね。それと脚をタンクにしたお陰で積載量……………バススロットに相当の余裕が生じます。正直こちらが用意する全ての武器弾薬を詰め込んで余裕があるくらいです。宣伝も兼ねて全て載せておきましょう。いくら載せても機動性は無いに等しいので」
「それは有り難いです。選択肢が多いに越したことはない」
「ではこれで終わりです。後は組上がった専用機を持ってきますので楽しみにしててください。恐らく数日で完成します。パーツを組むだけなので。あっ!一番大事なことを忘れてました」
「?」
「待機状態のデザインですよ!ISは待機時に小物に変化させておけるんです。専用機は常時身に付けておくものなのでどんなのがいいでしょうか?」
「例えばどんなのが?」
「ブレスレットやイヤリングといったアクセサリーが多いです」
「でも俺はアクセサリーを身に付け無いし………………腕時計は!?あれなら付けてても違和感がない」
「可能です。ではそのように」
それを聞いた企業連の人間はさっさとその場を立ち去る。時間が無いのは彼らも同じなのだ。
数日後
「完成しましたよ!これが隆彦君の専用機です!」
「ありがとうございます!」
手渡されたのは無骨な腕時計。象が踏んでも壊れなさそうなグレーの外観には小さく地球を象った企業連のロゴが入っている。
「ではフィッティングやらを済ませましょう。初期設定だけでも終わらせておかないといけません。場所を変えましょう」
企業連本部
「すげえ。ここが………」
「ええ、企業連の本部です。ISは日本が中心なので本部も日本に移設しました。ISが登場する以前はアメリカだったのですが………」
有澤重工から程近い近所に企業連本部はあった。ISは日本人が開発したこともあり日本が中心だ。
「そしてここが企業連の誇るアリーナです。壁や天井は装甲で覆われておりパイルバンカー程度では穴も空きません。好きなように暴れてください」
だだっ広い空間。体育館を大きくしたようなそこは多少の起伏がある大地。無骨な壁と天井がここが室内であることを思い出させる。
「取り敢えず今日は展開と軽い移動だけです。訓練は後日シミュレーションで行います。いわば不具合の洗い出しですね」
「分かりました。ええっと展開はイメージでしたっけ。ふんっ!」
キィィン
隆彦を光が包んだ。光が収まるとそこには
「「「おお!」」」
人より少し大きいくらいのロボットがいた。頭まで覆っており露出が無いためパワードスーツというよりはロボットである。
「成功だ!」
隆彦を含むその場の全員が歓喜した。
企業連の製造するボディは全てフルスキンです。なので企業連所属のパイロット以外企業連のボディを使用する人間は皆無です。