…暇だ。退屈だ。お手本のような座敷牢。固く閉ざされた鉄扉に封術が施された襖、そしてこの体をこの場に縛り続ける憎き幻鎖。
丸窓から見える空、それだけがこの地獄のような退屈さを紛らわすただひとつの暇つぶし。いや、現にこうして死ぬほどの時間をもてあましている時点で暇つぶしにもなりはしない。
ここが城だということ以外はなんの情報も得ることは出来ない。城下を見ることもこの幻鎖のせいでままならない。
ここのところ、「何故」ということばかり考える。何故我はこんな思いをしなくてはならないのか。何故母と姉は…死ななければならなかったのか。何故…誰も助けてはくれないのか…。
〜〜〜〜
思えば我らはいつも煮え湯を飲まされてばかりだった。
物心ついた時から我らはこの世にいるべきでは無いのだと悟るほど、世は我らに厳しかった。
この世には《幻神》という常ならざるものがいる。たった一柱で国を簡単に破壊し、又は創れるもの。我らの祖先はこの内の一柱である《九尾》というものと交わった。
その子孫たちは半幻神でありながらもそれをかくし、人として人と交わり血を継いできた。ただ、幻神の血は人の血などよりも強く濃く、何代経とうが薄くなることはなく、むしろ人の血の方が侵され始めるほどであった。
当然ながら、半幻神というのは一般のものからすれば畏怖の対象でしかない。なぜなら《幻術》という、幻神たちしか使えない神術を扱うことができるからである。そして我らが代にはとうとう人としての姿すら保てなくなりつつある。
隠そうと思っても簡単には行かず、人里離れた山奥で静かに暮らすことを余儀なくされた。
そんななか、我の村はさらなる災難に襲われた。「人売り商人」といわれる、簡単に言えばこの世ならざるものをあらゆる手を使って捕まえ、物好きな者共に売り飛ばすという奴らが来たのである。
…詳しいことは今は思い出したくもない。村でも特に《九尾》の血が濃かった我が狙われ、それを阻止しようとした同胞たちはみな殺された。そしてこの城へと連れてこられ、永久とも思える時間をここで過ごしている。
〜〜〜〜
我らが何をしたという。ただこの世に産まれただけで罪となる、そのような不条理に対する怒りも愚痴も、この何年かの内に消え失せた。
我の同胞は死に絶え、我だけがここで生きている。死にたくても死ねず、ただ、過ごしている。
嗚呼、誰でもいい
誰かここから、我を連れ出してくれ
そしてその手で、我を、殺してくれ
「その願い、この《鴉》が聞き届けましょう」