※胸糞表現アリ
あのドンパチの後、気絶した明石を抱きかかえ、とりあえず奥の部屋に勝手に上がらせてもらい、布団を敷くとその上に寝かせ、様子を見る。
「う~ん・・・」
現状明石がK.Oしているため、とりあえず色々と疑問や考えをまとめてみよう。
まずは先ほどの銃撃戦。KAN-SEN達が艤装ではなく、俺達人間の銃火器を使っていたことに対しての疑問。
と言ってもこれについては艤装の使用許可などの権限を指揮官が持っているため、使えないから仕方なく使ったとも言えるのでそこまでの疑問にならない。
疑問なのは店内をハチの巣にできるほどの武器、弾薬をどこから調達したのかの方が大きな疑問だ。
一発目の時もそうだ。愛宕達の中にも銃火器を持っていたKAN-SEN達がいた。
だが元帥からは本部からの支援も含め関係の一切をこの基地から一方的に切っており、独自の運営をしていると聞いている。今回の俺の件もかなり無理矢理ねじ込んだと言ってたし。
「まあ、ツテっての意外と作りやすいからなぁ」
特に今目の前でどっぷり意識が飛んでしまっている明石は、陣営問わず手広くやってるそうだし、そういった何かを持っていても不思議ではないわな。
まあそこは気が向いたらでいいか。
むしろ・・・
「こっちの方がよっぽど疑問なんだよなぁ」
全く落ちないタールのようなねっとりとした嫌な何か。言葉にし難いこれはなんだ?
てっきりこの明石の原因かとも思ったが、そんなことは無く、むしろ蓋が外れたのか先ほどよりもより一層感じる。
部屋を見渡す。一見普通の部屋。布団に机、積み上げられた段ボールに解放された窓。
特に意識するほどの何かは無さそうだが。
「あ~、気持ち悪いぜ全く」
はっきりしないそれに内心小さく苛立つも、とりあえず今は明石が起きるまで待つことにした。
「ん…にゃぁ・・・」
「お?」
小さく声を上げ、ゆっくりと瞼を開け始めた明石。良かった。そこまで大きなダメージは無さそうだ。
「・・・ここは・・・明石の・・・にゃっ!!?」
しかし目を覚ましてすぐ、ハッとすると明石は俺の方を向き、一瞬で部屋の隅に飛ぶ退く。
「・・・・・・・・・」
「あ~、悪い明石、勝手にへ、やに・・・おい?」
謝罪をしようと明石に声を掛けようとした。しかしその言葉は出ることが無く、俺の喉元で引っ掛かり、消えてしまった。
「おい、明石? しっかりしろ! おい!」
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい!!!!」
頭を抱え、両膝を立て、体を震わせ懺悔の言葉を小説でよく言う壊れたレコーダーのように永遠と吐き続ける。
尋常じゃねぇな。
このビビり方、俺の経験則で見ると間違ってなければ確実に『色々』とされたり、『色々』見てしまった奴のビビり方だ。
虐待、暴力・・・ありとあらゆる何かをされてきたんだろう。見てきたのだろう。
「人間も千差万別様々なやつがいるが・・・」
この基地の元指揮官は相当ぶっ飛んでたみたいだ。
「参ったな・・・」
こういう時、ドラマやアニメなら親友、家族など、縁のある誰かが抱きしめて落ち着かせるといったやり方もあるが、運が悪いことに俺は『男』だ。明石の兄弟でもなけれ何でもない。しかもここの前指揮官は『男』。抱きしめるなんてすれば逆効果なのは目に見えている。現状癒す術は無い。
だがこのまま放置というわけにもいかない。万が一極限までパニック状態になってしまったら何をするか分からない。
キツイことだらけじゃないか・・・
紛争地域でも大概キツイこと尽くめだったけど、ここでもとはな・・・
「心理学とかでもカジッとくべきだったぜっ・・・!」
これだから戦闘しか能がなかった兵は・・・!
自分の無能さにいら立ちを感じながらも無い知恵を絞って考える。
「明石・・・明石、大丈夫ですか・・・」
そんな時、後ろから声がする。静かなやる気のないような声。
俺は咄嗟に後ろに振り向き、構える。そして小さく息をのむ。
「おや・・・貴方様は・・・」
顔の右目を覆うように包帯でぐるぐる巻きにされ、杖を突く小さな少女。
明らかに負傷している着物らしきものを着たその子がそこにいた。
「あぁ、貴方様が例の・・・初めまして、妾は不知火と申します。以後、お見知りおきを」
「あ、あぁ、俺はここに着任した指揮官だ。名前は――」
「名前など不要」
自己紹介をしようとするも鋭く遮られる。
力の無いような眼を意思ははっきりとしているようだ・・・悪い方向に。
「あ、あぁ、分かった。その、いきなりで悪いんだが明石のケアを手伝ってくれないか?」
「・・・」
俺は明石を指さす。
不知火はゆっくりと明石の方に顔を向けると、危なっかしくもゆっくりと明石に近づいていく。
「明石、大丈夫ですよ・・・ここにはあのうつけ者はいません。安心してください」
「あ、ぬいぬい・・・ぬいぬいぃ!!」
不知火に頭を撫でられ、優しく――たぶん――声を掛けられた明石は不知火の顔を見て安心したのか、不知火に抱きつくと先ほどとは打って変わってまるで親を見つけた子供のように大泣きする。
不知火はそれを受け止め、優しく頭を撫で続ける。
「・・・貴方様には分かるのですね?」
「あ?」
不知火の突然の言葉に俺は間抜けな声を出す。だが瞬時にその言葉の意味を理解し、俺はゆっくりと首を縦に振る。
「そう・・・」
「・・・どのくらい酷いものを?」
「・・・・・・」
俺の質問に不知火は答えない。今なお泣き続ける明石を優しく抱きしめ、頭を撫で続けるのみ。
「そこを・・・」
「ん?」
不知火は片腕を挙げ、ある方向を指さす。
段ボール?
「あれがどうかしたのか?」
「その下にある畳を・・・」
俺は不思議に思いながらも、言われた通り、段ボールをどかし、畳を持ち上げる。すると・・・
「なんだこれ・・・パス付の扉?」
畳の底から出てきたのはパスロック式の扉だった。この部屋に似合わない近代的なそれ。
俺は察した。
「ここに?」
不知火は静かに頷く。そしてどけておいた段ボールに手を入れると黒色の手帳を取り出し、俺に渡してくる。
「見ても?」
確認のために聞くと不知火は再度首を縦に振る。
俺は手帳を開く。そして中に目を通していく。
「・・・見るもんじゃないな」
出るわ出るわ、胸糞悪い情報。知ってる上層幹部の名前に金額、『そういった事』を担当するKAN-SEN達の名前。不正の数々、賄賂・・・唯一出てないのはKAN-SEN達の売買情報くらい。果たしてそれは救いなのかそれとも・・・。
俺はその胸糞悪い手帳を即座に閉じると胸ポケットにしまう。
「これでさらに重くなるな、前任者の罪状が」
俺はその証拠を元帥に送ると固く誓うと視線を件の扉に向ける。
「さて、こいつのパスは・・・分かるわけないわな」
当然ながら、ヒントもないそれに成す術はない。無理矢理全部調べていきたいがこういったものは指定回数以上ミスるとロックがさらに厳重になったりすることがあるから下手に触れない。
「手帳を・・・」
不知火が小さく喋る。
「さっきのか?」
不知火は頷く。
俺は胸ポケットからそれを取り出すと再び開く。しかし出てくるのは先ほどのクソみたいな情報のみ。再度全ページを見てもそれらしきものは無い。
「閉じて上を」
「上?」
俺は不知火の言葉通り、手帳を閉じ上を見る。するとうっすらと数字みたいなものが見えた。
随分と手の込んだことを・・・その悪知恵をもっと違うところに回せなかったのか。
俺は無駄に変な悪知恵を働いた前指揮官に悪態をつくと、不知火に軽く礼を言い、その数字を認証機に入力する。
すると認証機は認証と文字を表示し、ガチャッという音と共に扉のロックが外れる。
俺はロックの外れた扉を開けるべく、取っ手を掴み、ゆっくりと開ける。
「っ・・・嫌な臭いだ」
開けた瞬間俺の鼻を襲うむせ返るような色々と『混ざった』凄まじい臭い。最悪だ。
一瞬その悪臭に顔をしかめるが、我慢し視線を階段の先を見る。
奥は電気が点いてないせいで全く見えず、まるで化け物でも居そうな雰囲気を感じる。
「一つ、お聞かせください」
「ん?」
まさに足を入れようとした時、不知火から声が掛かり足を止める。
不知火は落ち着き、静かに眠っている明石をゆっくりと布団に寝かしつけると、俺に顔を向ける。
「大うつけ者は今どうしておりますか?」
「・・・・・・」
大うつけ者。ここの前指揮官の事だろう。そいつについての事は現状元帥から緘口令は出されていないが・・・。
不知火の目を見る。
何も考えていなさそうな目。どれだけ見ても何を考えているのか皆目見当もつかない。
「あいつは――」
だが俺は話せる範囲をすべて話すことにした。彼女達には知る権利がある。被害者だから。
俺は話せることをすべて不知火に話した。
前指揮官は現在余罪の追及を受けており、刑の最終決定を待っていること。そして関与した様々な役職の者も同様に最終決定を待っていること。たったそれだけだが、話しておいた。
それを聞いた不知火は特に何とも思ってなさそうに静かに、そうですか、と告げると、眠る明石の枕元に座ると再びその頭を撫で始める。どうやら俺への用は済んだらしい。
俺は不知火から視線を階段へ戻すと、携帯用の小さな懐中電灯を点け、ゆっくりと歩み始めた。この先に待つ、地獄へと・・・
「貴方様は・・・どうしてくれるのでしょうか・・・ふふっ」
書くなら出来る限り最悪なものを書かねば胸糞にならぬよね・・・?