美濃颯Side。
こちらは、美濃の竹中半兵衛に拾われていました。
そこからのお話。
では、どうぞ!!
「颯、といったかなボウズ」
「そうですよ」
このジジイ、何度言ったらわかるのか。
オレはあの光の後、美濃にて竹中半兵衛(女の子)に拾われて暮らしていたが、この半兵衛ちゃんの叔父の安藤守就なる人物はどうも気に食わない。一族繁栄のため半兵衛には出世してもらわねばとか、半兵衛は日の本一の陰陽道遣いだとかぬかす。
「半兵衛の補佐をよろしく頼むぞい」
「もちろん。助けてもらった恩はちゃんと返さないとな」
このおっさんのためではなく、半兵衛ちゃんのためだ。
「颯さん、行きましょう!」
「そうだな。尾張が攻め込んできたんだったな」
尾張の織田信奈なる者が美濃に攻めてきたらしい。美濃の先国主斎藤道三も味方に付いているから勢いに乗っているとか。現国主斎藤義龍が半兵衛を召し抱え、美濃のマムシに勝るとも劣らない頭脳を手に入れ美濃を守り抜こうとしていたのだ。
「わっちは留守番か……」
「留守は頼んだぞオッサン」
「口が悪いの」
頭が悪いよりかはマシ。
☆
「半兵衛、此度も頼んだぞ」
「はっ」
オレは何をしているのか。竹中半兵衛の身代わりとなって義龍のもとへ来ている。半兵衛ちゃん曰く、美濃の国のほとんどの人は竹中半兵衛の実態を知らないらしい。いつも、前鬼なるオレたちの世界でいう召喚獣みたいなやつが代わりを務めていたらしいが、それにもエネルギーを使うということで、何のエネルギーも消費しないオレが名乗りを上げた。
案の定、誰も不審だとは思っていないようだ。竹中半兵衛を頼りにすると言いながらも、顔も覚えてないほど軽い扱いってわけか。半兵衛ちゃん、もったいないぜ。
「けほけほ……おかえりなさい」
「ただいま」
この陣中では誰かが見てるとも限らないために、仮の主従関係を演技でしている。
オレが竹中半兵衛、半兵衛ちゃんが『小紫』、久作ちゃんが『日和』という名前にしている。
「小紫、策は先ほど伝えたね」
「はい。織田方がどう出てくるでしょう」
「策など使わぬとも日和が一人でひねりつぶしてやるのだ!」
実を言うと一番日和こと久作ちゃんが演技にノリノリだ。
「霧が出てきた」
日和がそうつぶやく。なるほど確かに霧が出てきた。これは、小紫こと本物の半兵衛ちゃんの策 ー いや陰陽道の術だ。これが我らが竹中半兵衛の策その1。
「もうそろそろだな」
「もっと織田こっちに来い~こっちに来い!」
「今です!」
本物の半兵衛ちゃんの合図とともに、オレは大きく声を上げる。
「皆の者掛かれ~!!」
斎藤軍はオレの指示に従い、敵方に向かっていった。
現在の戦況、霧で回りが見えなくなった織田軍は、止まるわけにもいかず構わず前進を続けていた。それが林に囲まれていることも知らずに。深いところまで来たところ、林に隠れ潜んでいた斎藤軍が一気に攻めかかる。
「ふふ。いい感じ」
「逃げ惑う織田軍よ。もう一手打ってある」
「さあ!」
竹中の陣にある銅鑼を思いっきり鳴らす。これはまだ隠れている伏兵の出撃の合図だ。二重にも三重にも兵が出てきてビックリするだろうな織田は。
「これで我が軍の勝利ですね!」
「これぞかの諸葛亮孔明も得意とした『十面埋伏の計』だ」
「半兵衛様、油断は禁物です」
本物の竹中半兵衛に説教を食らった……正論だし。
『稲葉山城に火がついたぞ~』
『織田のこの軍勢は陽動作戦だったのか!!』
『すでに尾張の軍勢が稲葉山に入ってしまったのか!!』
『全軍退却~!!』
まずい……勝ち戦だったはずなのに。
「半兵衛様!! これは相手方の罠です! 流言を広め、我が軍に追撃の手を緩めさせるつもりかと!」
「ちいっ! 斎藤の軍は揃いも揃って臆病者が。織田の手に踊らされおって。我が軍は、しんがりを務める。皆の者、よいな!!」
こうなってしまった軍勢を再び留まらせるのは不可能だ。今考えるだけの最善の策を告げる。小紫(半兵衛ちゃん)を見てみるとうなずいていた。その策でいいというわけだ。
「小紫、追手は?」
「逃げるのに精一杯で来ないでしょう……けほけほ」
「そうか。日和、他の斎藤軍は全部逃げ出したか?」
「すでに撤退完了。逃げ足だけは早い様子」
思いっきり皮肉じみた答えが返ってきた。勝ち戦だったはずなのに、こんなに負け戦の気分で終わることもない。
「日和、最後尾を任せていいか。何かあったら大声を出すんだぞ」
「承知!」
「小紫は馬を寄せてきて」
竹中軍の主力は久作ちゃんに任せ、オレと半兵衛ちゃんは一足先に帰りながら会話をすることに。
「半兵衛ちゃん……」
「颯さん。これは予想外でした……くすん」
周りに聞こえないくらいの小声で素に戻って会話をする。
「次もこりなく攻めてくるだろうから」
「はい……くすん」
「おそらく次は伏兵に気を付けて平原を進んでくるだろう」
「そうですね。そこに計を仕掛けます……くすんくすん」
今孔明と呼ばれるだけある。既に次の策まで考え付いているようだ。
☆
「これが『石兵八陣』だな」
「すげー! こんなとこわかるわけもねーよ!!」
「日和、これはかの諸葛孔明も使ったことがあるんです……くすん」
再び、織田が美濃へ攻めてきた。予想通り、林がない平地を進軍してきたが、スピードが遅い。その隙を狙って、半兵衛ちゃんの陰陽の術を使って『石兵八陣』を敷いた。
「はっはっは……予想通り、織田は迷子になってる模様」
「手筈通りに」
ここまで来れば何もすることはない。後は終戦を待つか。
そうのんびりしていた矢先、血迷ったのか織田軍が暴挙に走った。
「は、半兵衛様、石の塔を織田軍が倒しておりまする!!」
なんてことをしやがる。将棋で負けそうになると盤をひっくり返すようなことだ。
「すごい……こんな破り方があるなんて……くすん」
「相手が一枚上手だったな。普通あんな考え思いつかないよ」
なぎ倒される石の塔を見ながら、オレたちはしみじみと思った。
『うおぉぉぉぉぉーーーー!!!!!』
そんな中、突如一騎でこちらに駆けてくる武者が。
「織田方にこの人ありと言われた柴田勝家、見参!!」
げっ……あの包囲網を破ってきやがった。こっちは破れた時の対応何もしてなかったから一つ後手を踏んでしまった。
「半兵衛様、ここは一つお任せを!!」
「日和っ!!」
「半兵衛様、日和が時間稼いでいる間、わたしたちは陣の再構築を図りましょう」
そうは言っても! 勝家って女ものすごく強そうだぞ。久作ちゃん一人にさせるわけには。
「姉上たち危ない!!」
「お前らが、あの術の使い手か~!! ここでたたっきる!!」
「半兵衛ちゃん!!!!」
久作ちゃんの声で反応したオレはとっさに半兵衛ちゃんを抱きかかえ転がった。
「ちいっ!! 逃したか」
『半兵衛殿大丈夫でござるか~!!』
『織田方の武者とお見受けする!』
『あの紋は柴田勝家!!』
『いざ、覚悟!!』
ほんの一瞬の間に竹中軍の武者が駆けつけてくれた。斎藤とは大違いだ。
「これまでか。また会おう!」
そういうと勝家は織田方へ去っていった。竹中軍の追撃はやめておいた。下手に傷を負わせたくないからな。
「姉上!! 大丈夫なのか!!」
「大丈夫か半兵衛ちゃん」
「けほけほ……ありがとう…ございます颯さん。くすんくすん」
「よかった~!!」
何とか無事だった。これで何かあったらあのおっさんにも顔合わせられないからな。
「戦場はあのような想定外があるから油断してはいけません。くすん」
「だな。みんな無事でよかったよ」
「本当によかった~!!」
この後、義龍に呼び出されて叱責を受けた。
二度もチャンスがあったのに織田信奈を討ち果たせないのはいかなる理由かと。かの智謀高い竹中半兵衛もそのようなものだったか。と。悔しいな。半兵衛ちゃんが悪く言われているのは。義龍め…自分が使いこなせないからって調子に乗ってやがる。
織田は性懲りもなく美濃にやってくるだろう。次は……墨俣か。
☆
「半兵衛ちゃん……」
「けほけほ…おかえりなさい。ありがとうございます」
菩提山の城に帰ると半兵衛ちゃんが遅いのに起きて待っててくれた。もちろん、久作ちゃんは武働きで疲れているため寝ている。
「どうして義龍なんかに仕えてるの?」
「叔父さんが言った通りです。この一族を盛り上げるため……くすん」
「そこに半兵衛ちゃんの意思はないの?」
「わたしより、叔父さんが大事です」
真剣な眼差しをしているのが月明かりに照らされてわかる。
「それもわかるけど、まずは自分の身を大切にね」
「そういう颯さんはどうなんですか?」
「オレ? オレは……半兵衛ちゃんが笑顔だったらいいかな」
「そう、ですか。でも、さっきの颯さんの言葉をそっくりお返しいたします。わたしをかばってくれてありがとうございます。でも、お体を大切になさってください。けほけほけほ」
優しいな。こういう女の子が戦場に出る世の中も考え物だな。どうにかして平和な世の中に。でも、このままでは無理だ。竹中半兵衛が斎藤義龍の下につく限り。織田についたほうがいいとはオレの口から到底言えない。だから、半兵衛ちゃんの考える通りにオレは動くまでだ。影武者とはそういうものだろ。
「颯さんはなくてはならない存在です。このままわたしの元にいてくれますか?」
「もちろんだよ」
そういうと笑顔を浮かべ、そのままオレに体を預けてきた。疲れたんだな。すぐに寝ちゃったよ。寝顔もかわいいな。この笑顔をなくしてはならない。オレはそう心に誓った。
翌朝、久作ちゃんが激怒していたことは言うまでもない。
あの後、オレも疲れが出てきてそのまま眠ってしまったからだ。
怒り狂う久作ちゃんをなだめるのには疲れたが、半兵衛ちゃんとの絆が一層深まった気がした。
ちょっと長めになったかもしれないが……
書きたいとこまで書いたらこうなった。
読者の皆様方、この1話毎に人が変わっていくシステム大丈夫ですかね?
アニメとかだと簡単に切り替えれるのに小説だとこの難易度の高さ!
でも、まだまだ未登場キャラもいるのに……
増えたらどうなるんだよって話だよな。
偽名の件、一応ネタは仕込んでます。
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