美濃颯Side。
良晴と雄二が織田にいると分かり、仕官を勧められるも、主半兵衛がかたくなに拒んでいたため、それに従っている颯。
では、どうぞ♪
近江と美濃の国境にある松尾山。
眼前に広がるは関ヶ原。
そう、史実では1600年に起こった有名な戦い関ヶ原の戦いとして有名だ。
そんなこととはいざしらず、その松尾山にある長亭軒城に隠居している高名な人物、その名も竹中半兵衛。美濃の稲葉山城をわずかな手勢で落としたというのに諫言をしたということですぐに持ち主の斎藤義龍に返し、自分自身は隠居をするという義の武将。
『竹中半兵衛が斎藤家を出て隠居している』と聞いた周辺大名はここぞとばかりに味方にしようと様々な遣いを出すものの全てお断り。近江の浅井長政をはじめ新興勢力の尾張の織田信奈といった人物からのお誘いもお断りしているのだ。
美濃が織田の手に落ちて数日後の夜のことだった。
いつものようにまた仕官のお話が来た ー と思っていたんだが……
今回ばかりはどうも違うようだった。それに夜になって訪れるのも深い訳があるのかもしれない。
客人の名前は明智十兵衛光秀。美濃の前国主斎藤道三の愛弟子である。道三が尾張に逃げる際、道三から旅をせよとの命を受け姿を消していた人物だった。
「どうするの半兵衛ちゃん」
オレはその話を聞いて半兵衛ちゃんがどう答えるのか楽しみだった。
「面識はないのですけれど……」
光秀は道三の家臣、半兵衛ちゃんはそのあとに義龍に仕えていたため直接的な面識はないらしい。でも、半兵衛ちゃんが光秀のことに関してそこまで詳しいということはやはり美濃では名が高いということだ。
「口上に主の名前を言わないということは仕官の話じゃなさそうだね」
「はい……お会いしてみたいですね」
オレたちは客人明智光秀に会う準備をし、終わると呼んできてもらった。
☆
「失礼するです。お初にお目にかかるです。明智十兵衛光秀です」
驚いたことにやってきたのはこれまた女の子だった。これはもう名のある武将がほとんど女の子だということを頭に入れておいたほうがよさそうだ。土岐源氏の由緒正しい家の流れということもあって顔立ちが端正で美しい。剣をやらせたらものすごく強い感じだ。それにきんかんの髪飾りがとても目立つ。
「こほん…竹中半兵衛重治です。お会いできて光栄です」
こちらも深々と頭を下げながら自己紹介をする。その自己紹介にいささか十兵衛ちゃんも驚いた様子だった。
「まさかあの竹中半兵衛殿がこのような小娘とは!」
それはあなたにも同じことを言いたい。いささか失礼ですぞ。
「今日はどういったご用件で?」
微妙な空気になったのでオレが間に入って(物理的にでなく会話の)話を進める。
「あ、失礼。オレは側近の佐々木颯だ。以後お見知りおきを」
一応、こちらも自己紹介をしておかないとまずい気がするので。
「織田信奈様に会うために京より美濃に向かっている次第ですが、日も暮れてしまいましたので、近くのこちらの城にお邪魔させてもらうことにしたのです。そこで隠居されたわたしが尊敬する半兵衛殿がこちらにおられるとお聞きし、やってきたのです。まさか女子とは思いもしなかったのですが」
相当女の子だったってのが頭にきているのかな……あれだけの智謀をもつのに男性ではなく自分と同じ女の子だったてのはプライドが傷つくのか。
「そうでしたか。けほけほ……わたしも十兵衛様にお会いできて嬉しいです。知だけでなく、剣技や鉄砲は達人の腕前、それに和歌やお茶までたしなむことが出来るというのはうらやましい限りです」
何でも出来る才女だな。文武両道の最たるもの。桁違いに。
お互いが目を合わせまた会話が止まったので、オレがなにかしらの話題をふる。
「夜ご飯がまだでしたので、一緒にいかがでしょう」
「いろいろ半兵衛殿から教えを ー 」
「それならば用意させますね」
強引に話をぶち切り、親睦の場を設ける。同じ美濃出身で才がある2人がせっかく揃っているんだ。ご飯でも一緒に食べて楽しく話そうよ。
「十兵衛様、これからは半兵衛、とお呼びください。他人行儀はやめましょう」
「半兵衛、でよろしいですね。それならばわたしも十兵衛と呼んでください」
「いえ……それはやめておきます。十兵衛さん、でよろしいですか」
「わかりました。半兵衛」
姉と妹みたいだな。全く顔とかは似てないんだけど。
その後も話は続く。もちろんご飯を食べながらも、食べ終わった後も。
会話が終わるのはお互いが眠くなるのを待たねばならなかった。オレにとっても有意義な会話だったのは確実だが……
「今までどこを旅していたのですか?」
「京にて足利義輝公にお仕えしてましたです」
この発言には半兵衛ちゃんも驚いていた。まあ、オレは史実でのことを知っているからさほど驚かなかったんだけど(十兵衛が史実で仕えていたのは義昭)。
それにしても……
「何故、将軍様のご家臣が織田信奈のもとへ?」
「それは信奈様の元でないと言いかねます」
「そんなに大事な要件なんだ」
「はい。それにしてもなぜ竹中半兵衛という逸材は誰にも仕えないのです? 道三様のいろはを教わっている信奈様ならものすごく高く買ってくれるですよ」
いかにも信じられないといった表情で十兵衛ちゃんが半兵衛ちゃんに問うものの、半兵衛ちゃんはいつものようにこう答えた。
「わたしの主は斎藤家ただひとつですから」
その答えを聞いた十兵衛ちゃんは少し考えて返した。
「その斎藤家も美濃の地からは消え去り、それを受け継いだ織田信奈という存在はお仕えするに値すると思うですよ。半兵衛はその才をどうして生かそうとしないのです?」
ポイントをついてきたな。オレもそれはずっと思っているんだが、意思は固くて。
「わたしはこのように体が強くありません。ですからお仕えしても迷惑をかけるだけです」
「この乱世を見て何も思わないのですか」
「わたしだって出来るものならしたいです!! ですが……」
久しぶり大声を聞いた、意思がはっきりこもった声だったんだが……半兵衛ちゃんの心の中が分かってしまったために悲しくなる。
才能があるのに、体が思い通りに行かない。健康も才能の一種と言われればそうかもしれない。だが…………
「わたしは織田信奈様にお仕えするつもりで美濃に参りました。彼女は天下を治めるにまたとない器のご仁。この乱世をいち早く治めてくれる存在。他の大名はそんなこと出来ません。その彼女をお支え出来るというのならば本望。是非とも半兵衛にもその一翼を担ってもらいたいです」
確固たる自分自身の考えを半兵衛ちゃんに伝える十兵衛ちゃん。その瞳はゆるぎないものだった。
「オレからもお願いする。竹中半兵衛は野に埋もれていていい存在ではない。体が無理しそうなときはまた休めばいい。出来る限り天下を治める補佐をしてもらいたい!」
この機を逃せば一生、半兵衛ちゃんは後悔しそうだと直感的にオレは思ったのか、言葉を発していた。
「………わたしは疲れたので床につきます。明日の朝、またお話ししましょう」
「そ、そうだね。十兵衛ちゃん、明日朝織田信奈の元へ向かう前にまた3人で話をしよう」
「わかりました。おやすみなさい」
オレも十兵衛ちゃんも、この決断には時間がかかってもおかしくないと考え、半兵衛ちゃんの言うとおりにしておいた。
いい結果が出ますように。
そう思いながらオレは夢の世界へと入っていった。
明智十兵衛光秀。
また、信奈のほうからのキャラクター登場。
さてさて……
十兵衛に説得されて半兵衛はどうでるのか……
とある方にご指導していただき、少し文の作り方を変えています。
どうでしょうか。
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