吉井明久の野望R   作:いくや

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 京:颯Side
 
 最凶の女、松永久秀が目の前に立ちふさがった織田軍京留守居隊。
 物量の差で徐々に押し切られていく。覚悟を決めた颯は大将自ら奮戦し、敵の流れを食い止めようとしているんだが………。

 では、どうぞ♪



第31話 式神と召喚獣と命懸け

 オレが気合を入れ、久秀からの攻撃に備えていたその時だった。

 目の前には懐かしい魔方陣があらわれ、その後にはまた懐かしいやつが。

 

 「召喚獣!?」

 そう、何故か召喚獣が現れた。しかもオレの。

 何で突然現れた!? 物理干渉能力がないオレがこの戦場で役に立つとは思えねえ。まあいい。そんなこと構ってる暇はねえ。久秀がすぐにでもオレを殺しに来る!

 

 「ぐっ……」

 足腰が疲れで弱まってきたのか、思った通りに足が動かねえ。そろそろ槍が致命傷になる。一か八か。召喚獣を動かすか。

 

 「な、あれは!? 式神?」

 そんなたいそうなものじゃねえ。とあるババアのおもちゃだ。

 

 「いけーっ!!!」

 「な、あのような小さな体で!!」

 「ひとまず逃げる。敵1人なら後からどうにでもなる!」

 「待ちなさいあなたたち」

 ハッタリ大成功。この召喚獣要するに幽霊みたいなもの。実は当たるとすり抜ける。だから、反撃をされたらおしまいだったんだが…相手がまごついているときにちゃっかり逃走を試みる。久秀はさすがに落ち着いて召喚獣と相手をしようとしていた。まあ、その召喚獣もいざ武器が当たりそうになったら避けさせている。実はどこぞの観察処分者みたいにフィードバックが備わっていたら大変だからな。逃げる逃げる。本陣までともかく戻る。久秀をあしらいながら。久秀もそろそろおかしいと気づいたのか、大声をあげてこう言った。

 

 「みなさん、戻ってくるのです。あれは式神なのではない。ただの虚勢。そうとわかれば怖くないです。さあ、攻めかかるのです」

 この声が聞こえるや否や、三好の連中は再び上がってきた。オレは追いつかれる前に早めに逃げる。思ったより前に進まないのは登りだということも含め、オレ自身が傷を負っていることに他ならないだろう。想像以上の深手だな。おい。

 

 「颯!! 大丈夫か!!」

 オレのいいつけをしっかり守り、本陣で備えていた良晴の声が聞こえてきた。ようやくオレも本陣に戻って来れたんだな。

 

 「颯さん、その傷……急いで手当を!!」

 「半兵衛ちゃんその前に敵に当たって。もうそこまで来てる」

 「そういうわけにはいきません。颯さん気づいてないのでしょうが深手です。良晴さん、敵をお頼みします。私は颯さんの手当を」 

 「任せておけ。颯を頼むぞ!!」

 おいおい、本人がいないところで勝手に話を進めるなよ。

 

 「とても長く時間稼ぎをしてくださいました。想像以上です。後は私たちに任せてくださいね。颯さん、止血はしました。後は義元様のお相手を」

 「お、おい」

 「この十兵衛。もはや傷は回復しました。相良軍に加勢します!」

 「この藤孝も参る」

 「私だって相良軍団の一員。明智様達が向かうのならば!」

 「わかりました。お願いします。颯さん、絶対に動いてはいけませんからね」

 そういうと、半兵衛ちゃんは十兵衛ちゃんと藤孝ちゃんと堀尾吉晴を連れて先ほどの戦地へと戻って行った。

 

 「おーっほっほっほ。よくやりましたねあなたは」

 残されたはこの将軍様と。

 

 「流石ですぞ颯どの」

 良晴のこちらの世界での妹ねねだとオレだけだ。

 

 「いてててて……」

 少し落ち着くと体のいたるところから激痛が。これがいわゆるアドレナリンの力というものだろう。死ななくてよかった。

 

 「それにしても遅いですわね信奈さん」

 「もうすぐ来るですぞ! 姫様は神速のお方!」

 「おそらく後少し持てば、姿を現すかと。それまでのご辛抱を」

 そうしゃべりながらも、あまりの痛さに座ることもつらい。

 

 「わたしに気兼ねせずに寝転がりなさい。許可いたします」

 「そうはいっても ー 」

 「これは将軍様の命です。傷を負った人が目の前にいるのですよ」

 「はあ……」

 お飾りのただの将軍とばかり思っていたが、人格だけはちゃんとあるらしかった。

 お言葉に甘えて寝転がる。やべえ、何日分のエネルギーを使ったんだろう。それはそうと、あの召喚獣は一体……あの時の状況を思い出してみるか。

 

 

   ☆

 

 

 「戦場に出てるならいくら女とはいえ容赦はしねえぞ」

 「当然ですわ。そのようなこと」

 「良晴はバカに優しいから女の子だったら見境なく助けるだろうがな~」

 「戦地は命のやりとり。そのような甘いこと」

 「同感さ。問題はそこじゃねえ!!」

 

 

   ☆

 

 

 ふむ。分かったような気がする。

 召喚獣を呼び出す言葉は「試獣召喚(サモン)」だ。

 『サ・モ・ン』

 この言葉が発せられれば、召喚獣は出てくるしくみとなっていた。

 オレは「試獣召喚(サモン)」などとは言っていないが、運よくその言葉に当たるような言葉を言っている。

 

 「同感()()()だいはそこじゃねえ」

 ババアもこういうところは正確に言ってなかったが……まさかあのようなタイミングで出るなんてこっちもビックリした。

 でも、前に試してみた時には召喚獣なんて出なかったが、何故今回に限って?

 

 

 

   ☆

 

 「颯ばかりにカッコつけさせていられるかよ!!」

 「体を張って颯さんは時間稼ぎをしてくれました。私たちも」

 「傷は癒えました。私たちもいくですよ!!」

 戦場では颯の活躍ぶりに感化された相良軍団や明智軍団がこれまで以上の勢いで攻めかかる三好に反撃を加える。

 

 「前鬼さんも援軍を!!」

 竹中半兵衛は式神を召喚する。そこに出てきたのは颯が現れる前影武者となっていた青年であった。

 

 「へえ。陰陽師ですか。今孔明はそういったことも使えると、負けられませんわね」

 松永久秀が竹中半兵衛の式神を見ると対抗して、傀儡を投入してきた。

 

 「く、傀儡ですね」

 「どちらが上か勝負いたしましょう」

 「……」

 「織田信奈は旧きを破壊し、新しいものを作り上げている。陰陽師は旧きもの。なぜそのような織田信奈に仕えるのです」

 「もう陰陽師が京を治める世の中ではありません。旧きものは新しきものに飲み込まれるだけです。わたしは……」

 竹中半兵衛は悲壮な覚悟を胸の内に秘め、松永久秀と当たる。

 周りでは明智軍団も相良軍団も肉弾戦をやっていた。

 

 「そのようなことまで……でも手加減するわけにはいきませんわ」

 「望むところです」

 「おーっほっほっほ。私をないがしろにしてるんじゃなくて?」

 カオスとなった戦場に現れたのは最後尾でのんびりくつろいでいるはずの今川義元だった。何故か戦場に現れている。

 

 「義元ちゃん、ここは君が出てくる場所ではない!!」

 「そうです。早く戻ってください!!」

 必死に良晴や十兵衛は戦いながらもなだめようとするが、義元は無視。

 

 「見捨てるわけにはいきませんものね!!」

 と、義元は何をするかと思いきや突然取り出した蹴鞠を使って相手に攻撃をする。ものすごい威力のシュートだった。

 

 「蹴鞠で私に勝とうだなんて思わないことですわ!」 

 次々と取り出しては相手の顔面めがけてける。百発百中。武器も持てない彼女の最強の武器である。

 

 「あら、お飾り将軍がすごいですわね」

 「よそ見するとは!」 

 「前鬼さんだけじゃ足りないです。後鬼さん、他のみなさんも!!」

 竹中半兵衛はありったけのドーマンセーマンのお札を取り出し、式神を召喚する。彼女が最初からそうしなかったのにはわけがあった。

 総力戦で三好の侵入を防いでいた彼女らに、吉報がもたらされた。

 

 

 「織田信奈、同盟国の浅井長政を引き連れ援軍に参りました!!」

 五右衛門が大声で叫ぶ。デマなどではない。相手を困惑させるわけではない。本当にやってきたのだ。ものすごい勢いでこの清水寺に来ている。

 

 「まずい、このままでは挟み撃ちだ!!」

 「どうするんだ?」

 ちょっとした隙が生まれるも、久秀は何もしない。

 

 「良晴~!! 十兵衛~!! 助けに来たわよ!!!!」 

 そんなこんなしていると、神速の武将、織田信奈が少数の手勢を連れてやってきていた。

 

 「…良晴をいじめるやつは許さない!」

 歌舞伎者前田犬千代や朱槍を振り回し。

 

 「おらおらおらおら!」 

 猛将柴田勝家が戦場を暴れまくり。

 

 「京を戦場にするのは申し訳ないですが。20点」

 冷静沈着丹羽長秀が個性豊かな織田をまとめて。

 

 「義姉上のために参戦仕った」

 浅井長政もやってくる。

 

 「まさかこんなに早く戻ってくるとは……流石は稀代の名将。降参いたしますわ」

 「その言葉に偽りはないわね?」

 「ええ。心から感服いたしました。信奈様にはよい家臣たちがおられる様子」

 「そうね。松永弾正久秀、これからはわたしに尽くしなさい」

 劣勢を悟った久秀、流石は三大梟雄と言われるだけある、機を見るに敏。降参をするのであった。

 

 「十兵衛、よくやったわね。よく守り切ったわ!」

 「ありがたきしあわせ!」 

 「その隣にいるのは?」

 「わたしの知己の細川藤孝です。勝竜寺城の城主で、前将軍公の側近にございます」

 前将軍というのは足利義輝公。三好三人衆の襲撃で命からがら妹共に中国(明)まで逃げて行っている剣豪将軍である。

 

 「細川藤孝と申します」

 「十兵衛と共にわたしに仕えなさい」

 「御意」

 十兵衛の与力となり、活躍を誓う細川藤孝であった。

 

 「おい、半兵衛ちゃん大丈夫か?」

 「けほけほ……だいじょう…ぶです」

 式神を大量に召喚するデメリットが出てくる。それは異常に体力を消耗し弱らせるということだ。ただでさえ体が弱い半兵衛が使ったらどうなるか。

 

 「良晴、半兵衛ちゃんがどうしたというのだ」

 「颯、お前まで無理して出てこなくていい」

 「まで?」

 奥で療養していた颯が表に顔を出す。良晴の大声が聞こえたのだろう。

 

 「おい、半兵衛ちゃん。そこまで無理したのか!!」

 「は、やて、さん。無事に守り……まし…た」

 「そこまでするのならオレがまた戦場に立っていたというのに!」

 「それだけは…けほけほ……避けたかったです…から。よかったです」

 半兵衛はそれだけ言うと力尽きて颯の腕の中で意識を失った。その顔は見ているほうが爽やかになれるくらいすっきりとしていた。

 

 「ちょ、あんたその傷大丈夫なわけ?」

 「オレはどうってことねえよ。それより半兵衛だ!」

 「名医の曲直瀬道三(まなせどうさん)を呼ぶわ。その際あんたも治療を受けるように」

 「わかった分かった。ともかく半兵衛を復活させるのが先だ」

 自分の痛みをおしてまで主半兵衛のことを気遣う颯に、良晴はある覚悟を決めたのであった。

 

  ー 今までみたいに颯や半兵衛ちゃんに頼り切ってはダメだ。 ー

  - 俺が……相良軍団が何とかしないと。 ー

 

 「信奈。この2人に正式に療養を命じてくれ」

 「どういうこと?」

 「この2人はまた織田軍に危機が訪れると自分の体を張ってまで出てくる」

 「…………わかったわ。良晴、あんたがその2人分も働きなさい」

 颯はこの2人の決定に異論をなしているが、そもそもここにいる全員がその意見に賛成なので、颯の意見など聞けるわけもない。

 

 「義姉上、わたしはこれにて」

 「長政、助かったわ」

 「はっ」

 織田信奈の同盟軍、北近江の浅井長政は織田方の武将に挨拶をして帰って行った。

 

 「おーっほっほっほ。信奈さん、遅かったですわね」

 「……なんであんたまで戦場で戦ってたのよ」

 「蹴鞠を久しぶりしたかったに決まっていますわ」

 「あ、そう………みんな、戦争は終わりよ。ゆっくり休みなさい」

 今まで戦場となっていた清水寺を、臨時の療養所として活用することになった織田軍。両軍ともに半端な犠牲じゃ済まなかったほどの激戦だった。

 

 

 





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