吉井明久の野望R   作:いくや

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 明久Side。

 姉弟という間柄について会話を交わしていた明久と優子。ずっと話していると時間というものを忘れるようで、気づいたときには……

 では、どうぞ♪


 


第33話 織田と武田と板挟み

 赤く染まった頬の優子さんを見ていると心が癒されるよね。

 今まで死の恐怖しかなかったのが遠い過去のようだ。

 

 「なんだお前らこんなところで…」

 いつの間にか今話題に上っていた赤ゴリラこと雄二がいた。

 

 「さ、坂本君!?」

 「ゆゆゆ雄二とと突然出てきてビックリするじゃないか!!」

 せっかくの心の癒しが台無しだ。

 

 「まあ、なんだ……そういうのはだな人目につかないところでな」

 「なななななな何を誤解しているか分からないけれども坂本君!! あなたが思っているようなことでは断じてないわ!」

 「明久、元の世界に帰ったら覚えていろ。俺の口癖を知っているな」

 お前の幸せが大嫌いだ、だっけ? 他人の不幸は蜜の味だっけ? つくづくひどい奴だ。こんなやつが僕に何を求めているんだろうね。

 

 「ねえ雄二」

 「なんだ」

 「僕が持っているもので雄二が欲しいものとかある?」

 たった今優子さんから聞いた話を本人に聞いてみる。こういうのは本人から聞くのがいいと思うんだよね。

 

 「はあ? 何バカなこと言ってんだ?」

 「だよね。僕もそう思うんだ」

 「意味わかんね」

 優子さん、どういうこと? 本人に確認はとっていないと思っていたけど、さっぱり雄二にはその気がないような気がするんだよね。

 

 「明久くん、本人に聞いても無駄よ。絶対に口を割らないでしょうから」

 「何の話をしてたんだよ」

 「それは秘密」

 「まあいい。俺に害がない範囲でなら許す」

 最後の最後を教えないっていうのは、僕が自分で気づかなくてはいけないところなんだろうけどな~

 あ、そういえば雄二が何でこんなところにいるんだろう。支城のほうに行っていたはずなんだけど。何か用事でも出来たのかな。

 

 「ところでお前らはうまくいっている様子か?」

 「まあボチボチだね。雄二は?」

 「一段落ついたからこっちに来てみた」

 数日しか経っていないのに雄二の処理能力は早いものだ。

 何をしたかは僕が聞くまでもないだろう。雄二はしっかりとやり遂げているはずだ。

 

 「………どうやら、アタシたちの平和な時間も終わりのようね」

 「どういうこと?」

 優子さんのほうを見てみると、優子さんは遠くに視線をやり誰かがこちらへ来るのを見ていた。はあ……あの人影が戦争を知らせる使いだというのだろうなあ。

 

 『吉井様、軍議でございます。急ぎ登城されたし』

 「わかった。今から行く」

 軍議……今は松平家としては内政を固める時期だというのにそれを行うということは、何らかの外敵が迫ってきているということなのだろう。外敵というのは松平家の領土からしたらただ一つ。甲斐の武田家。

 

 「武田が動き出したな」

 「織田の上洛に焦っているのでしょう」

 僕たちは急ぎ井伊谷の城に戻ったのはいいが、既に陽は落ち月が昇ってくるころだった。夜道は危ないが、急ぎということなので家臣に事情を伝えたのちは馬で浜松へと向かった。

 

 

   ☆

 

 

 「全員そろいましたね~軍議を始めるです~」

 メガネたぬきさんがいつものように締まりのない声で仕切る。軍議の座にはのちの世で徳川四天王と言われるだろう(僕も含めてるよ←自信過剰)酒井忠次・本多忠勝・榊原康政・井伊直政(=吉井明久これ僕ね)と、鳥居元忠と何故か雄二と優子さん。まあ、僕だけじゃ軍議の内容を理解できなかったときに心配だからだけどね。

 

 「信奈様から援軍の要請が来ました~」

 「武田が押し寄せたのですか!?」

 「いえ、朝倉討伐だそうです~」

 朝倉、というと……越前朝倉氏のことだと思うんだよね。

 

 「ですが、いつ武田が攻め入るか……?」

 「信奈様にはお世話になってるですから断るわけにはいきません~」

 「では、いかがなさいますか?」

 「わたし自ら行かねばなりません。半蔵、お供を」

 「はっ」

 またどこからか現れたか分からないこの男。どこかムッツリーニと通ずるものがあるんだよね~

 そんなことはともかく、現実問題大将が本国離れたら武田が狙うんじゃないのかな。

 

 「ですから、皆様には武田の抑えとして任せます。本隊のみ信奈様の援軍に向かい、その他遠江の5軍を置いておきます」

 「姫様、ご無事で。半蔵、頼みました」

 「承知」

 「攻めてきたときは一致団結してくださいね。今まで以上に忍びを放ち警戒しましょう」

 普段のほほんとしてるのに、こういう切羽詰まった状況になるとしっかりするんだよな~

 それに流されるかのように僕たちの表情も自然と強張っていく。その後、軍議は終わってから姫は早速三河にいきそこから信奈の元へ向かった。

 残された僕たちは、それぞれ各々自分の居城に帰って防備を固めた。

 

 井伊谷に帰ってくると、そこにはムッツリーニと秀吉がいた。

 

 「お前らどうしてこっちに?」

 雄二が2人に問う。あの言い方だとあと1つのほうの城で仕事をさせてたのだろう。

 

 「………重大報告」

 「ほう。秀吉は誰にも見つかっていないのか」

 「大丈夫じゃ。わしは変装してきたのでな」

 「アンタちゃんとアタシになってたんでしょうね」 

 「心配するでない。姉上のことは長く見ておるからな。なりきるなどたやすいものよ」

 秀吉に関しては、優子さんじゃなくても見分けつかないくらいうまいのに。そんなに心配しなくてもいいんじゃないかな。

 

 「で、重大報告とはなんだ」 

 「どうやらのう。武田がものすごい人数を使って松平を丸裸にしようと偵察を出しているみたいなのじゃ」

 「そんなの当たり前じゃない。相手を知らないと戦争も出来ないわよ」

 「それはそうじゃ。わしが言いたいのはその次。ここらでも武田の忍びがいたのでな、ムッツリーニが捕まえたのじゃ。流石は風魔とやらで腕を磨いただけあるのじゃ。さらにムッツリーニが隠密行動に長けておった。複数いたんじゃが一網打尽じゃ」

 やはり、というべきか。流石、というべきなのだろうか。ムッツリーニ信頼できるね。

 

 「でかした。で、その忍びはどこにいるんだ」

 「………下っ端は脅したうえで武田に返した。統領だけ捕えてある」

 「よかろう。そいつに会いに行く」

 「その必要はないのじゃ。既に隣の部屋におる」

 隣の部屋? 相手は忍びだよ。護衛とかなくていいわけ? 全くそういうところは抜けているんだから←人のこと言えない。

 

 「呼んでくれ」

 「………承知」 

 僕らは本来ここで気づくべきだった。つかの間の平和がなくなることを。

 

 





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