吉井明久の野望R   作:いくや

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 明久Side。

 つかの間の休日が武田の脅威にさらされているという一報でつぶされた彼ら。
 いつになったら平和な時が訪れるのだろうか……

 では、どうぞ♪




第34話 甲斐と信濃とライバル関係

 隣の部屋に武田方の忍びがいる。ということで、早速面会することになった僕たち。

 おそらく隣の部屋から脱出できないようにものすごい護衛兵がいるのだろうと想像していたのだが、秀吉が立ってそこのふすまを開けると……

 

 人は2人しかいなかった。

 

 

   しかも ー 。

 

 

 「ヤッホー! お久しぶり♪」

 「……雄二、会いたかった」

 

 見慣れた光景が。

 間違えるわけもない。Aクラスの霧島さんと工藤さんだ。忍びの大将がこの2人だったのか。この2人なら逃げるわけもないと2人は隣の部屋で護衛もなしに待機させていたのか。

 

 

 「……っ。ムッツリーニ。どういうことだ!敵方の忍びを捕まえたのはいいが、どうして自由にさせている。いつ逃げ出すか分からないぞ」

 「まあまあそういうこと言わずに坂本君。現にボクたちここにいるからさ~」

 「……雄二。私を縛ってほしかったの?」

 「お前はそういうことを言うなあああぁぁ!!!」

 そう。一瞬にして平穏な日々は過ぎ去っていたのだった。

 

 「久しぶりね、代表、愛子」

 「……優子も元気そうでなにより」

 「なになに? 坂本君と吉井君と3人きりでどこ行ってたの?」

 「……雄二、優子と何をするつもりだったの」

 「だー待て待て、いちいち話をするのにそのオーラをだすな! 工藤! お前がいらんことを言うからこう面倒くさいことに!!」

 「あはは、ごめんごめん~つい気になっちゃって~」

 そう。やはり何度確認してもあの文月学園の雰囲気に戻ってしまっている。

 戻ってくるのだ僕の平和な時間。

 

 「お主らは少々落ち着くのじゃ」

 「………話も出来ない」

 「なになにムッツリーニ君。ボクがそんなに他の男の子としゃべってちゃ嫌かな~」

 「………お前は何を言っている」

 「この恰好みてどうも思わないの~?」

 いわゆる忍びの服、ではなく普通の着物というかこういう時代に着る服。

 こんな恰好だと、忍びというより旅人、という感じだ。

 

 「………特に」

 「またまた~照れちゃって~いいんだよムッツリーニ君。素直に言って」

 「工藤よ、お主はしゃぎすぎじゃ」

 「弟君、なにかな~お姉ちゃんのフリをしてボク達をだましていたくせに~」

 優子さんと特別仲がいいはずのこの2人の目をも欺ける秀吉、すごすぎる。

 ちょっと待って。一ついいかな。僕って主役だよね。どうみても影になってますよね。

 こんな主役あっていいの? この騒がしさ何? 僕ってこんな中で生活していたんだ。文月学園のころの僕を尊敬するよ。今は平和ボケしていたから慣れるのに時間が。

 

 「愛子、そろそろ落ち着こう。そういう話は後でも出来る。アタシたちは忙しいの」

 「そんなこと言わずに~」

 「そう。じゃ武田の忍びとして処分を検討する方向で ー 」

 「ゴメンゴメン。わかったよ~黙っておけばいいんでしょ~」

 完全に今のは優子さんがうまかったよ。これでようやく話が出来る。ちなみに今の会話中ずっと夫婦ケンカがあっていたのはお約束。

 

 「さて、土屋君」

 「………なにか」

 「この2人を武田方の忍びとして捕えたということで間違いないわね」

 「………そうだ」

 ようやく始まる取り調べ。相手が手の内を知り尽くしている人だとやりにくいね。

 

 「普通はこの2人を処分しなくてはいけないんだけど ー 」

 「どのような災いが起きるかわからん。俺たちの監視下に置くのがよかろう」

 「つまりこれから行動を共にするというわけじゃな」

 「拡大解釈にもほどがある。俺が言いたかったのは ー 」 

 「坂本君、あなたのために先に言っておいてあげるわ。それ以上言うと5秒後のあなたの命に保障はないわ」

 「なんでもねえ。しっかりと安全性を確認したうえでそうするべきだろう」

 優子さん、霧島さんのことをよく知っているからこそのフォロー。別にそんなことしなくても霧島さんに殺さ ー いじめられる雄二も見てみたかったのにな。今はごたごたを避けるのが一番と考えたんだろうね。

 

 「まずは、2人がこちらの世界にきて何があったか1から説明してもらおうかしら」

 「ボクは信濃の戸隠ってとこに気づいたらいて、忍びの村だったからそこで特訓してたよ。ムッツリーニ君に負けるわけにはいかないからね。まさか、ムッツリーニ君も忍びの腕を鍛えていたとは思いもよらなかったけどね……またリベンジする」

 この2人、いい好敵手(ライバル)だよね。ホントに。息もピッタシだし。

 

 「戸隠っていうと武田の忍者の里、ムッツリーニがいた風魔は北条の忍びの里。何かの因果か?」

 「……わたしはあの光の後、甲斐にいた。甲斐で武田信玄の人質となっていた武藤喜兵衛っていう人にお世話になった」

 武藤喜兵衛? 聞き覚えがないなあ。モブキャラまでは網羅してないよ。ただのそこらへんの農民?

 

 「……武田が今川を滅ぼして西に目を向けるチャンスという時に、武藤喜兵衛から信濃の親父の元へ行ってくれと言われてそこに行ったら」

 「ボクがいたってことだね♪」

 「ということは?」

 「……武藤喜兵衛の父親は真田幸隆。三男みたい」

 戦国の世って大変だよね。人質に送るってさ。しかも名字まで変わってるし。

 まさかの真田家のお子さんだったとは。

 

 「そこで幸隆のおじいさんからボクと代表が中心となって、遠江の探索隊を結成して今に至るってわけ」

 「ほう。2人はその真田やら武藤やらに恩はないのか? 戻ったほうがいいとかは」

 「そうしたいのはやまやまなんだけどね。ムッツリーニ君が弟君と図って、ボクたちを死んだことにしているだよ」

 「……私たちを捕まえた後、わたしたち2人と他の人と隔離し、残りのほうにはわたしたちを殺した。武田におとなしく帰るように、と言ったらしい」

 ムッツリーニ。貴様はいつからそのような知恵が働くようになったというのだ!?

 

 「わしもムッツリーニの考えに賛成じゃったからの。簡単にことは進んだのじゃ」

 「よーく分かった。で、2人は俺たちが松平にいるって知らなかったのか?」

 「全く。代表と会ったことでもとってもビックリしてたんだから」

 「……わたしたちだけ変な世界にきたかと」

 「ということは他のメンツは見てないのか。えーっと後俺たちが把握できていないのは、姫路・島田・久保・清水……この4人か」

 集まってきたほうだよね。最初の絶望と考えるとさ。最初に優子さんと出会い、雄二と合流し、そっから怒涛の再会ラッシュ。今は別々にいるけど、戦国語らせたら最強タッグの颯と良晴は織田にいるし。

 

 「ホントに全員いるのかな?」

 「おそらく間違いねえ。この場にこんなに集まっていることからして断言してもいい」

 「今後、どうしようかしらね」

 「変わらんだろ。この2人は死んだことになってるんだから表立って活動できない。ムッツリーニや秀吉と同じような仕事についてもらうさ」

 Aクラス並みの頭脳ってのがこっちの世界ではどこまですごいのかはわからないけど、確実に戦力になるよね。味方になってよかった。

 ふと見まわしてみると、文月一色。もはやあの頃の安定した生活に戻れるとは思えない。少しの望みがあるとすれば、霧島さんが雄二にべったりで工藤さんがムッツリーニと言い争い、秀吉がなだめるというのをあっちの城でしてもらうってこと。そしたら、また今まで通り僕と優子さんは2人して平和な ー って変な意味じゃないよ!!

 

 「そうだ。これも聞いておこう。武田は今何をしている」

 「ボクたちも知らないよ」

 「……正式に武田の家臣だったというわけではない。武田の詳しい事情までは」

 「そうか。ということは、ただ遠江の内情を探れと言われただけか」

 「そういうこと♪ もし知っていたとしても言わない。義理が立たないからね」

 仕方なく……? 敵方に投降している形(一応殺されたていだけど)だからそういうところは流石だな。しっかりとこっちの世界に来て鍛えられただけあるよ。

 

 さっきからみんなのいいところばっかり褒めている気がする。

 僕が褒められるってあるかな……優子さんは自信を持てと言ってたけど……

 あーやめやめ。こんなこと考えてたら嫌になる。忘れよう。

 

 「さて、こんな悠長なことやってられる暇はない。いつ武田が押し寄せてくるかわからないからな。明久。お前は今まで通り木下と。俺はこの2人にあちらのことを教えたらまた帰ってくる」

 「わかった」

 雄二、お前を一瞬だけ見直した。僕の望む形をとってくれるとは。そのまま帰って来なくていいよ。向こうで霧島さんと夫婦喧嘩でもしてなよ。

 

 「……雄二、ずっと一緒」

 「そんなこと出来るか。ここは学校じゃないんだ。人には役割というものがあって ー 」

 「私は雄二のお手伝い」

 「俺とお前が一緒にいたらもったいない」

 霧島さん、頑張って!! そのまま雄二を放さないんだ。

 

 「ふ~ん優子。吉井君と2人きりだって~」

 「な、なによ!! 別に明久くんがどうこう ー 」

 「へ~明久くんね~♪(ニヤニヤ)」

 「……私たちがいない間に進展してる(ニヤニヤ)」

 何やら工藤さんと霧島さんが僕と優子さんを交互に見てはニヤニヤしてるのが気になるけど……今はそこはどうでもいい。僕が平和な時を取り返せるかが大事なんだ。

 

 「うし。俺らは行くか」

 「……どこへ?」

 「もう一つの城。そちらで詳しく説明する」

 「……わかった」

 「ムッツリーニ君、負けないから」

 「………勝負を挑む? やめておいたほうがいい」

 「見てなさい。絶対に勝つから」

 「………本気で倒しに行く」

 「お主ら変わらぬのう。わしが出る幕もないかの」

 秀吉が健気だよ。5人いるのに、2人と2人がずっとしゃべっているから一人ぼっち。僕がいたら僕がずっとしゃべるのに。向こうでも元気でね! 後姿から哀愁漂わせている秀吉を最後尾にして5人はこの井伊谷を出ていった。

 

 「やっと静かになったわね」

 「疲れたよ」

 「休んでいる暇はないわ。防備を固めないとね」

 「もちろん」

 神様。僕幸せです。こんなかわいい子と2人きり。この時間がいつまでも続くといいと思います。耐えられないでしょうが。

 

 





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