吉井明久の野望R   作:いくや

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 明久Side。

 武田の脅威が今しばらく収まっている間に、松平軍に織田からの凶報が届く。
 絶対的な大将がいない今、決断やいかに!?

 では、どうぞ♪




第36話 援軍と合議と決死隊

 

   - 盟約違反 ー

 

 織田と浅井の同盟には、朝倉を攻める際は浅井に伝えてから。という条件があった。今回、織田信奈は浅井が朝倉と裏で通じるのを恐れ、何も伝えずに破竹の勢いで朝倉を攻めていた。その事実を知った浅井の前当主久政は憤慨し、反織田として立ち上がった。

 

 

 当初、子の長政はそれに反対の声を上げていたが、父の決意に心を動かされ反織田の統領として旗を上げた。妻となっていたお市の方はこの事実を知るや否や、姉の信奈にこの事実を伝えようと越前に向かおうとしたが、それを察知した久政の命を受けた家臣がこれを捕えた。

 

 相良良晴はお市を助けることに失敗するが、浅井が反旗を翻したのが事実と知った今、それを伝えるのは自分しかいないと浅井の追手から逃れ、織田信奈の元へたどり着く。

 

 

 浅井謀反を告げられた織田軍は動揺するものの、すぐさま退却を開始する。しんがりには大事な情報をもたらした相良良晴が務めることに。

 

 

 

    ☆

 

 

 急遽浜松城に集められた松平四天王と鳥居元忠。何やら織田方から書状が届いたらしい。

 

 「差出人は佐々木颯。織田方の武将のようだ」

 姫様が織田の援軍に行っているため、この松平は合議制によって話を進めることとなっている。それは使者に対しても同じなんだよ。使者の話は全員で聞くことになっていた。 

 

 「颯か~なら信頼できるね」

 僕は隣に座っている雄二や優子さんとアイコンタクトをするとそういった。Aクラスの頭脳を持ち、しかも戦国に関しては誰も突っ込みようがないほどの知識量。味方にしておくと安心なことこの上ないよ。

 

 「明久の知り合いか?」

 ハチちゃんが尋ねてきた。そっか、みんな颯とは会ったことないんだっけ。彼はホントに頼りになるよ。

 

 「書状を開けてみる」

 忠次さんが代表して書状を開け、全員の前に広げておく。

 そこに書いてあった内容は僕たちの想像を絶する内容だった。

 

 

   『浅井謀反。金ヶ崎。松平殿の安否も分からず』

 

 

 「ひ、姫様が亡くなられていると申されるか!?」

 一番血気立つのが早い、康政さんが大声を上げた。

 まさか…………そんなことがあって……

 

 「金ヶ崎って確か」

 僕は記憶の限り颯がよこした文面から情報を取り出してみる。

 僕のゲーム脳をなめるな。覚えてるさ。無双で出てきた。今回の状況と瓜二つじゃないか……僕が朝倉討伐といったときに気づいていれば!!

 

 「姫様あっての松平家だ。助けにいかずしてなんとする!」

 「それではこの駿河はどうするおつもりか?」

 「姫様いなくして駿河がどうとかはない!!」

 まずいまずいまずいまずいまずい!! どうすればいいんだよこれ。

 

 

 『皆の者うろたえるな!!』

 その声と同時に突然締め切っていたはずのふすまが開き、2人の人がこの部屋に入ってきた。密談に近い形の軍議のはずだけど見張りはなにやってんの ー 。

 

 「信康様! それに数正殿まで!!」

 そこにいたのは三河にいるはずの、たぬき姫の妹君とその後見人の石川数正だった。

 

 「これはわたしの意見だが」

 そう前置きを言うと立ったまま僕たちにこう言い放った。

 

 「わたしはここに残る。三河と駿河はわたしに任せよ。後はお主ら次第じゃ。姉上を助けに行くもよし。三河は岡崎・駿河は浜松に残って武田に備えるもよし。どちらを選んだとしても咎めはせぬ。さあ、決断!!」

 「私は、信康様の後見人としてこちらに残ります。皆様方、お気になさらず」

 妹さんと数正さんのこの発言に座はざわめきだった。でも、僕はもう結論を出した。雄二や優子さんに反対されようが……

 

 「僕は助けに行く!!」 

 この決断は間違っていないと信じている。僕は恐る恐る2人のほうを見てみる。そこには驚いた顔ではなく安心した、というような感じの顔だった。どうやらこの2人は僕がこっちに賭けると分かっていたらしい。

 

 「………忠次・ハチ・康政、行くのじゃ。お主らが行くと安心する。私はここに残り、武田が攻めてこようが何人たりとも通しはしない。それが私の役目だ」

 めったに口を開かない元忠さんが口を開けると、その発言はとてつもなく重い。誰も逆らえない雰囲気を、有無を言わせない感じだ。

 

 「元忠。頼んだぞ」

 「姫様を必ずやこの地へ」

 「行って参る!!」

 僕たちはそうと決まればすぐに自分の領地へ戻り、近江若狭越前方面へと進軍する準備にはいる。

 

 「ご無事で、姉上。今助けに参ります」

 妹さんのこの願いはここにいるみんなの共通の願いであった。留守居役を引き受けた妹さんと数正さんと元忠さんの分まで、僕たちがなんとしてでも!!

 

 

 

    ☆

 

 

 「僕がこっちを決断して驚いたでしょう」

 井伊谷に向かって馬を走らせながら2人と会話をする。

 

 「別に。お前がそうしなかったら俺がぶん殴るところだった」

 「そうね。アタシもそうしていたかもしれないわ」

 地味にサラッと危ない発言をした2人だったが、気持ちは一緒らしい。

 

 「どうする? 僕たちだけで行く?」

 「あいつらを残してても井伊谷で何も出来ないだろ」

 「秀吉も連れていくつもり?」

 「あいつにはまた違う人間に変装してもらって、全員で向かおう」

 秀吉の負担が大きいのは仕方のないことだが、全員で向かうというのに異論はない。井伊谷に来たばっかりのみんなを置いて行ってもかわいそうなだけだから。僕たちと一緒に行動したほうが絶対いい。

 

 「しかし……まさかこんな展開になるとはな」

 「颯がいる織田軍ですら察知することは出来なかったというのは意外だよ」

 「そう判断できなかった状況にあったということも考えられなくはないわね」

 というと……その軍議に参加していなかったとか? 織田での地位は低いんだ。ホントの力知ったら恐ろしいのに。

 

 「ともかく急ごう。僕たちはまず颯と合流したほうがいいかも」

 「あちらのほうは地理に暗いからな、それがいいだろう」

 「となると、彼女ら3軍より早めに向こうに行かないと」 

 先に情報を仕入れなければ姫がどこにいるかも分からない。探しようがない。あちらにコネクトを持っているのは僕たちだけだから……

 

 「ついてこれるやつだけついてこいの姿勢だな」

 「遅れる人はハチちゃんとかに任せよう」

 「決まりね」

 間もなく井伊谷に着き、領内に触れ回ると同時に僕と雄二と優子さんは、秀吉・ムッツリーニ・霧島さん・工藤さんを回収(言い方悪いけど)し、すぐに西へと旅立った。

 用意が出来たものからついてきてね。

 待ってろたぬきの姫様よ。絶対に死なせやしねえさ。僕たちが助ける。

 

 





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