「どんな女がタイプだ?」「体と尻とお腹のデカい子がタイプです」 作:ふとし
どうやら僕は呪術高専への入学が許されたらしい、僕の夢は正直、多くの人達には理解されないとは思うけど、先生方は認めてくれた。
一日も経っていないがここに来れてよかった。僕はそう思えている。
「はいここが部屋ね、同じ1年が2人いるから、彼らと明日は一緒に原宿前で集合してもらうよ」
「分かりました」
文化遺産もかくや、という建物ばかりで気後れしていたが、案内された学生寮は近代的な建物で安心した。
「で、隣二つにその1年が入ってるから」
先生は呼び鈴ではなくなぜかドアを叩いて隣の住人を紹介する。
「おーい悠仁」
「先生? なんか用」
顔を出したのはツーブロックをきめた活発な印象を受ける少年だった。
きっと彼はこれから体が大きくなるのだろう、そういうポテンシャルを秘めた肉体であることを僕は感じ取った。
「じゃじゃじゃーん、新入生の二穴孔二君でーす」
「あっ、よ、よろしくお願いします」
「おー! よろしく! 俺、虎杖悠仁」
まじまじと見過ぎて五条先生に話を振られた瞬間、少しどもってしまった。
しかし彼の可能性に満ち溢れた肉体……
それを考えれば僕はいつの間にか持ってきたカバンに手を突っ込んでいた。
「これ、良かったらつまらないものですが……」
「いや、これはご丁寧に……って、そんなかしこまらなくていいよ、だって俺ここに来たの昨日だぜ」
「まぁ、ここに迷惑をかけるだろうと思ってね」
「そんなこと……って、こんなにもらっていいのか!? 油に缶詰、おっコシヒカリもあるじゃん!」
「いやーもっとみんなに配ろうと思ったら、この学校の生徒、10人もいないんだってね、余っちゃったからもらってよ!」
嘘ではない、だが彼は若いうちに是非体を作って欲しい、部屋の隙間から見えたキッチンには調味料や調理器具がそれなりに置かれていた。
ならば自炊もするだろうと思い、炭水化物・タンパク質・脂質で攻めていったのだ。
「いやーでも悪いなぁ……」
「悠仁、気にすること無いよ、コイツ実家がボンボンだから」
「えー、先生に言われたくないですよ、生まれで言ったらボンボン界でもトップクラスのボンボンじゃないですか」
そういえば面接のゴタゴタで先生方にも渡すのを忘れていた。後で届けよう。
「あれ? でも新入生って明日来るんじゃなかったの先生?」
「あぁコイツ、飛び込みで来たから、別枠ね」
「え! マジ? まぁ、なんにせよ人数少ないからうれしい!」
「ちなみに彼の目的は僕と君の監視ね、上から言われて来てんのよ」
「あんまり変なことは書きませんけど、なんなら上に出す前に提出しましょうか?」
「なんだよ、そんなこと気にすんなって。おお! このお土産美味しそー、……ん?」
「まっ僕ほどになれば注目を集めてしまうのも有名税で慣れてるからね」
「なんか先生、今変なこと言ってなかった?」
「あっ五条先生、もしかしてこの後に学長の所に戻ります?」
「戻るけどなんかあった?」
「ちょっと?」
「もしよかったらお二人にもお土産を……、先生、甘いものとかもいけますか?」
「ふーん、僕甘い物には目がないけど、採点は厳し目だぞー」
「……あんたら何してんすか」
突然横から声をかけられる。
彼は虎杖君の隣部屋の前に立っていた。
背が高く、かなりのイケメンだ。
僕は軽い自己紹介をしながらとりあえずのジャブとして油を渡した。
「伏黒恵」
ぶっきらぼうにそういう彼は塩対応だ。もっと油対応をして欲しい
「……上からきたって本当ですか?」
「そうそう、まっ、思ったほど染まってなかったから一応入学は認めたんだ」
「それ! なんか俺のこと監視にきたって言ってなかった?」
あっ、こっちを見る伏黒君の目が怖くなった……。
「そ、その、たしかにそういう仕事を頼まれて来てますが、悪いことはするつもりはありません! 報告だってプライバシーを侵害するつもりはありませんから! 何だったら送る前に本人に見せます!!」
「……」
あっ、ダメそう……、すっごく信じていない顔だ
「うーん、まぁそれならいいや、あんまり恥ずかしいのは書かないでくれよな!!」
こっちは信じてくれた……、えっなんで?
「まぁまぁ、とりあえず仲良くね、じゃあ明日もよろしく」
僕らを残してさっさと帰ってしまう先生、残された僕たちはひとまず分かれる。
伏黒君はそのまま合わなかったけど、なんと虎杖君は荷ほどきも手伝ってくれたので少し打ち解けた。
すごくいい人で感激だ。
お礼に夕食を振舞った。
すっごくいい、すごくいいよ虎杖君♡。
若さに任せた良い食べっぷりだ。
聞けばかなりの運動神経らしく食べた料理は端からカロリーに換算されるのだろう。
今はまだ太れないだろう、なら今はただ体を成長させ大きくさせて欲しい。
フフフ、運動で釣り合っていたカロリー消費が加齢によってつり合いが取れなくなる時、抑えられない食欲と相まって激太ってくれるのを楽しみにしてるよ……
あぁ! でも今すぐふとってもいい! 今すぐ太ってもいいんだよ虎杖君!!
「二穴めっちゃ笑顔じゃん」
「いやー、僕将来、料理人になって店を持ちたくてさ、そんなに美味しそうに食べてるのを見てるとつい……」
「えーめっちゃいいじゃん! いつか食べに行きたいわ!!」
「虎杖君なら無料でいいよ!!」
「いやいや、流石に払うって、でも値引きは頼んだぜ店長」
やはり高専に来たのは間違いではなかった。
僕はそう確信した。
「釘崎 野薔薇、喜べ男子、紅一点よ」
「俺、虎杖悠仁! 仙台から」
「伏黒恵」
「二穴孔二です。よろしくお願いします釘崎さん!」
釘崎野薔薇は目の前の雁首並べている男子共を一瞥すると品評する。
(このツーブロ男、見るからにイモ臭い、絶対小学生の時に鼻くそ食ってたタイプね)
(このツンツン頭、名前だけって、偉そうな男無理、きっと重油にまみれたカモメに火をつけるような奴だわ)
(このチビ、制服に着られてる感がハンパない、お母さんに服を買ってもらってる奴よ、見るからにボンボン、こういう奴が歪んだ性癖持ってるのよねぇ……)
「はぁ……、私、環境に恵まれないのよね」
彼女のため息に男子達はほんの少し憤りを感じたが、その正解率は6割を超えているため、ここでは彼女の勘は優れていると評そう。
「フッフッフ、1年生が4人、その内3人がお上りさんと来てる」
これからどうするかと言う話題に対して担任である五条はためにためて宣言した。
「行くでしょ、東京観光」
その瞬間、かっぺ3人のテンションは最高潮に達する。
「TDL! TDL行きたい!」
「ばっかTDLは千葉だろ! 中華街にしよう先生!」
「両国! 両国でお相撲さんを見に行きましょう先生!」
「中華街は横浜だろ! 相撲なんてジジイしか興味ねーんだよ!!」
「それでは行き先を発表します」
その瞬間恭しく先生のもとに跪くかっぺ達を伏黒のみが悲しそうに見ていた。
「六本木」
「イエーイ!六本木!」
「ギロッポン!? ザギンでシースー!?」
「いや六本木だって言ってるだろ」
天井を知らないテンションのまま彼らは移動する。
「はーいこちら、1年前に従業員が何人も自殺して潰れた会社が入ってた廃ビルね、裏手は霊園のダブルコンソメで呪いがかなり濃いですねー」
「嘘つきーーー!!!!」
「地方民を弄びやがって!」
「田舎者を馬鹿にしてッ!! 都会の喧騒は地方民が作ってるんですよォ!!!」
しばらくして彼らが落ち着いてから、五条は改めて今回の目的を説明する。
「はー、やっぱ呪霊ってお墓とかに集まるんだ」
1番切り替えの早い虎杖は素直に話を聞くと質問を返した。
「墓地そのものじゃなくて、墓地を恐れる人間の感情から呪いが発生するんだよ」
「あっ、確か学校も同じ理由だろ、サンキュ伏黒、なんとなく分かった!」
「ちょっと待って、あんたなんでそんなことも知らないのよ」
「あぁ、俺この前まで呪いとか知らなくてさ」
「……任務で見つけた特級呪物を飲み込んだんだ。元々呪いも見えてたし才能はあったんだろうが、それでもピンピンしてるから特例で術師になったって経緯だ」
「きっしょ!! あり得ない! 衛生観念キモすぎ!」
「そこまでいう?」
「それは俺も同感」
「虎杖君は何でも食べるんだね♡」
「二穴のそれはどういう感情?」
騒ぎ出す生徒達を五条はやめさせ注目を集める。
「君たちがどれだけできるか知りたいんだ。まっ実地試験みたいなものだね、野薔薇、悠仁、二穴、君たち3人で建物の呪霊を払ってきてくれ、中にいるのは3から4級の呪いね」
試験と言われれば生徒である3人は一応は真面目に聞く、しかし呪いの等級を聞いてから釘崎と二穴は明らかに油断を隠さなくなった。
「早くしろよ」
「今行くって、いこーぜ二穴」
「うん、3人がかりなら……、どうでもなりますかね?」
建物に入っていく生徒達を五条悟は見守る。
「……やっぱ俺も行きますよ」
「無理、病み上がりが無理しないの」
「でも虎杖は要監視でしょ」
「まぁね、……でも今回試されてるのは野薔薇と……、まぁ二穴かな」
「なるほど、ですが虎杖だって呪術師としてズブの素人です」
「悠仁は大丈夫だよ、あの子イカれてるから」
五条の一言に、心当たりがあるのか伏黒は黙り込む
「呪いとはいえ生物の見た目したヤツをさ、自分を殺そうとするなら一切の躊躇なく殺すんだよ? 今までただの学生やってる奴がだぜ? これは才能だね、これが出来ないで呪術師をやめた奴を恵だって沢山知ってるでしょ?」
「ですが……」
「いやー、恵が悠仁を心配する気持ちはよく伝わったよ、でもあの中なら悠仁が一番心配しないでいいよ!」
「そんなんじゃないですよ」
五条のからかいに、伏黒は反論するがそこでぱったりと会話が途切れる。
ここで止めたら自分が本当に心配しているようではないかと気づいた伏黒は、言い訳のように二穴を引き合いに出した。
「……そういえば二穴も心配なんですか? 御三家の推薦ならそこまで心配すること無いと思いますが」
「あー、恵は二穴の噂聞いたことある?」
「まぁ一応、強力な呪い返しを扱う家系だと、たしか御三家に降り注ぐ呪詛の護りに携わっているとか」
「まぁ大体そんな話だよね」
「それがどうかしたんですか?」
「うーん、あの子ね、イカレ具合なら全く心配してないんだけど、術式を見た時、ちょっとピーキーで心配だなぁってさ」
「はぁ……、まぁそういうのはそれぞれの家でうまいことやってるのでは?」
「うーんでもなぁ……」
うんうんと唸るのを鬱陶しく感じた伏黒はしびれを切らして問いかけた。
「何がそんなに心配なんですか?」
「彼の術式を見る限り、多分、呪霊を殺ったら死ぬんだよね」
「は?」