池波作品のあれこれ   作:ぴちかー党

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食卓の情景という作品の一文をもとに調理開始


パンカツ

食パンの両面へ、メリケン粉をぬって焼き、ソースをつけて食べる。

以上の値は二銭。

 

しかし、たとえば食パンの上へ挽肉とキャベツをのせて焼き上げたものは、五銭になる。

 

五銭というと、われわれ1日の小づかいであったから「パンカツ」の上を食べると、それだけで、煎餅や大福餅をあきらめなければならなかったが、なんといっても、つくりたて焼きたてのうまさは、子供ごころにもこたえられない。

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 これは彼の「鬼平」作者が記した「パンカツ」の1文である。読んでいるだけで実物のイメージは勿論、匂いまで伝わって来そうで何ともヨダレが出てきそうなほどに美味しそうだ。

 

この文を見る限り「食パン」、「メリケン粉」、「キャベツ」、「挽肉」があればさっと作れそうである。冷蔵庫を確認すると幸運にも全て揃っていた。早速この1文を元に「パンカツ」調理に取りかかる。

 

 

 その前に今回の主役となる食パン。厚さとしては何枚切りが適切であろうか?

幸か不幸か冷蔵庫には4枚切りと8枚切りのパン袋が一つづつ。「カツ」というくらいだからやはり4枚切りの分厚い「パンカツ」にすべきか?

 

 

 はたまた、8枚切りを使った薄い薄い「パンカツ」にすべきか?悩ましい・・・悩ましいが個人的にやはり「カツ」といえば、かりかりとした食感が引き立つ薄い肉に限る。ということで、主役は8枚切りできまりだ。

 

 

 主役が決まったところで下準備に取りかかる。あの1文からは「メリケン粉=小麦粉」をパンの両面に塗りたくるとしか、記されていなかったが、粉のままパンに塗るのは恐らく違う。

 揚げ物の要領と同じなら水と小麦粉を混ぜ合わせるのでは無かろうか?(正直それぞれの比率はわからない。水1:小麦粉2くらいにしておこう)

*完成品があまりにもサラサラしていたので更に小麦粉を追加した

 

 いよいよ、「パンカツ」の種を油をひいたフライパンに投入する。

ここでふと(先にフライパンを温めた方が良かったかもしれない?)と思ったが後の祭り、ひとまずは「ジュー」といううまそうな音をたててるのでまあいいだろう。

 

 

 あとは焼き上がるまでの間フライ返しでひっくり返しながら両面のやき加減を見ていけば完成であった。

 

 

 しかしここでアクシデントが発生する。せっかくパンに着けた衣が無惨にもポロポロと剥がれてしまったのである。

 何とか衣が剥がれないように慎重にひっくり返そうと試みるもその努力を嘲笑うように剥がれていく。完成した頃には「パンカツ」は「パンの素焼き」へと成り果てていた。

 

 

 作ったからには食べなければ勿体ない。その「素焼き」を一口、折角なのでウスターソース垂らしかけてかじってみる。

 

 言わずもがな、「トースト」のそれである。いやフライパンを使ったのでソース味の「フレンチトーストモドキ」といった方が正確かもしれない。

とにかくお世辞にも、「パンカツ」には程遠かった。

 

 

 「フレンチトーストモドキ」を完食し、正しい作り方をインターネットで調べたところ失敗の原因は2つあった。

 

 

 

1つ目;水と小麦粉の分量 水1:粉6が正しい分量らしい。

 なるほど、1:2では全然たりなかったようだ。焼いているときに全部剥がれたのも納得だ。

 

2つ目;油は「ラード」を使うこと。

ただラードなど、正直どこで買えばいいのかわからない。牛脂で代用出来るだろうか?

 

さらに、仕上げにパン粉を混ぜれば焼きあがりの「かりかり」感が増し、より「カツ」らしくなるようだ。

 

・・・やはり、文章の1節だけを頼りに料理を造るのは難しい。しかし、初めからネットで「答え」を調べて造るのは面白味がない。小説の文章だけを頼りに試行錯誤しそこで失敗したとき初めて「答え」をみて原因を追求し、改めてチャレンジする。こういう料理の作り方もありだと私は思う

 

 

そして私はこの料理法を「小説ご飯」と勝手に命名している。

今日の小説ご飯はこれにておしまい。

 

次はどんな「小説ご飯」を作ろうか




1銭を現代の価値に換算すると200円らしい

なので「パンカツ」は400円
「パンカツの上」が1000円
こう換算すると昔の物価は中々お高い?

「パンカツ」を冷静に考えると、食パンという「炭水化物」の両面んに「炭水化物」を塗りたくり、さらにそこに「パン粉」を振りかけ仕上げに油であげる。まさに「カロリーの暴力」。美味しいものは「脂肪」と「糖」でできているをここまで忠実に再現した食べ物は他にないのではなかろうか?

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