よく出るはなしだが・・・
江戸っ子は見栄を張って、[つゆ]にちょいと[蕎麦]をつけて手ぐりこむ。ところが本音は、一度でいいから、どっぷり[つゆ]をつけて[蕎麦]を食いたい。
死ぬ間ぎわに江戸っ子が、
「せめて、死ぬ前に、蕎麦をどっぷりつゆにつけて食いてえものだ」
といったそうな。このたとえばなしはいろいろに流用されているがふざけてはいけない。
東京の[蕎麦]のつゆへ、どっぷりと[蕎麦]をつけこんでしまっては、とてもとても、
「食べれたものではない」
のである。
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この文章から察するに、本場東京の[蕎麦つゆ]はそれほどまでに[濃い]ということなのであろう。 [蕎麦]をどっぷりつけると塩辛すぎて「食べられたものではない」本場江戸っ子の「ざる蕎麦」今回はこれできまりだ。
・・・と決めてみたはいいもの、さすがに「蕎麦打ち」をしてそば粉から造るのは素人には厳しいし、道具もない。ここは、市販の「流水麺」、そしてこれまた市販の「蕎麦つゆ」で代用してしまおう。
まずは、スーパーで今回のメイン「蕎麦つゆ」の選定に取りかかる。
どっぷりとつけたら「食べられたものではない」ほどの「蕎麦つゆ」ならば希釈濃度の倍率が一番多いものを選べば「それ」っぽくなるだろう。
ということで、蕎麦つゆのなかで一番濃度の濃い「4倍濃縮」を購入。
麺は一番安い「流水麺」、そして忘れてはならない「のり」と「ワサビ」(勿論チューブである)を購入し帰宅。早速調理にとりかかる
いや、調理と大袈裟に言ってみたものの、やることと言えば流水麺をちょうどいいサイズのざるにいれ「流水」であらい、そのまま氷水の張ったボールにだいぶさせ最後に水切りをするだけ。
あとは、買ってきた海苔をガスコンロで「さっ」と焙り、トッピング。そして素麺用の透明なつゆ容器に「蕎麦つゆ」をいれる。ただそれだけである
しいて工夫したといえば本場東京の「蕎麦つゆ」を自分なりに再現するため、「蕎麦つゆ」は希釈なしのストレートにしたことくらいだろう。
こうして完全に手抜きな「本場江戸っ子蕎麦」が完成したところでいざ実食。
まずは、箸ですくった蕎麦を「蕎麦つゆに」どっぷりとつけて食べてみる・・・なるほど、これは「食べれたものではない」口にいれた瞬間カツオの芳醇な薫りが口に広がると同時に、「つゆ」独特のしょっぱさがいつまでも残る。
恐らくこの一口を食べる間にコップ3杯ほどの水が必要になるだろう。
そういえば、あの本には蕎麦の食べ方も載っていた。たしか・・
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あの濃いつゆへ、蕎麦の先をつけてすすりこめば、蕎麦の香りが生きて、つゆの味にとけ合い、うまく食べられるのである。
つゆがうすければ、どんな江戸っ子だって、じゅうぶんにつけてすすりこめばいいのだ。
だからといって、つゆの中へ蕎麦をつけこみ、ちぎったり、くちゃくちゃとかきまわしたあげく口へいれて、むしゃむしゃとあごがくたびれるほどに噛んでしまっては仕様がない。
それを、
「蕎麦の食い方を知らぬ」
と、軽蔑するよりも、
「あれでは、蕎麦の味も香りもわからない」
と、見たほうがよいのである。
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成る程、「蕎麦」を最大限に楽しむには、「蕎麦」の先っぽだけを「つゆ」につけてすすりこむ。
そしてあまり噛まずに飲み込むのがいいらしい。早速実践してみよう。
「流水麺」なので「蕎麦」の香りはよくわからない。がしかし、一口目に比べれば格段に「塩っ辛さ」がなくなりいい案配に「つゆ」と「蕎麦」が混ざりあっている。
「つゆ」があまりにも「濃い」時には水を継ぎ足して希釈する以外にも、「蕎麦」先のつけ具合で調整する。これは新発見である。今度はザル「うどん」や「ひやむぎ」でもやってみることにしよう。
これで一つ夏に向けての楽しみがふえた。
さて次回はどの「小説ご飯」にちょうせんしようか
一口に「蕎麦」といってもピンからキリまで。
ワンコインで買える「流水麺」から、有名な作家が足しげく通う1杯うん千円するものまで
一度でいいから給料を少しづつため、あの本で紹介されていた本物の「東京の蕎麦」を食べてみたいものである。