だが周りの能力者達の能力が消えはじめ、とうとう能力者は自分1人になってしまった。能力者ではあるが一般人と変わりない事に苦悩する日々が続く。しかし、そんな彼にも希望の光がさす。
新たな能力者が現れたのだ。
俺の名は黒瀬哲夫、能力者だ。
俺は16歳という若さで数多の能力者を打ち砕き、最強の能力者と呼ばれていた。おそらく今でも俺は最強の能力者なのだろう。
未だ能力者については謎が多い。
能力者は青年期の若者に多く、特定の地域で集団的に現れる。
わかっている事は、能力者は首元に三日月型の痣を持っているという事である。
ある日、知り合いの能力者の首元の痣が消えるという話を聞いた。初めのうちは気にも止めていなかったが、よくよく聞くと痣だけでなく能力も消えたらしい。その日を境に俺の周りの能力者達は次々と能力を失い、とうとう能力者は俺1人だけとなった。
俺の能力は“無効化”。
触れた相手の能力を無効にできる。
何故だ、どうしてこうなってしまったんだ。
今俺に残ったのは気味の悪い字と、あるかどうかもわからない“無効化”の能力だけだ。
知っている限りの能力者全員に確認してみたが、やはり能力者は俺だけのようだ。今では元能力者達から「最強の能力者(笑)」と揶揄されている。
「こんな世界...間違ってる!」
能力を手にしたての頃、この痣は自分が選民であると言う事を認識できる勲章のような物だった。だが、今となってはこれも邪魔でしかない。タトゥーに見えるため街ゆく人達には蔑まれ、銭湯には入れず、全くいいことがない。最近はマフラーを巻いて誤魔化してはいるが、とても過ごしづらい。
5月に入りマフラーが本格的に鬱陶しく感じ始めた頃、俺は学校から駅前の本屋に向かっていた。
「すいません、マフラーの中にカナブンが入ってますよ」
突然、ある青年に声をかけられた。
歳は同じくらいで、太いチョーカーを首に付け、黒ブーツ、パンツ、シャツの全てが黒で統一されたいわゆるビジュアル系の格好をしている。
カナブンと共に行動したくなかったが、ここでマフラーを取ることはできないので、聞こえないフリをしてそのまま歩き続ける。
すると、彼は急にマフラーを思いっきり引っ張り、俺の首から剥がした。
「何すんだよ!」
首元を押さえて叫んだ。
彼はニヤついて首元のチョーカーをずらした。彼の青白い肌にはファッションの延長であるかの様な黒い三日月の痣があった。
そして、
「俺もお前と同じ“能力者”だよ」
彼は耳元でそう囁くと、口角を片方だけ上げ再びニヤついた。
「俺の能力は“コピー”。触れた相手の能力を少しの間だけコピーできる」
「お前は?」
彼はクックックと笑った。
「俺は触れた相手の能力をある程度無効化する」
彼の笑い声が止まった。
「“無効化”」
表情が一瞬無になると彼は感情の無い声でこう言った。
「ふーん、強い能力だな」
長い沈黙が続くと、彼は気まずさに耐えかねて無理矢理口を開いた。
「でも...ねぇ?」
「なんか...ねぇ?」
「強い能力なんだけど...ねぇ?」
うーんと唸って捻り出す様に言った。
「普通に2人とも一般人じゃん...」
どうやら俺はこの男をがっかりさせた様だ。
俺達は喫茶店に入りお互いについて話し合う事にした。
「とりあえず、自己紹介しようか。俺は哲夫、高2だ」
「俺シュン、高2」
シュンは明らかにさっきより元気が無い。さっきの世界観が嘘の様だ。シュンとしてる。というかさっきは無理してたのだろう。
なんとか会話を盛り上げようと必死に喋った。
すると、徐々にシュンは元気になって、口を開く様になった。共通の悩みを抱える者同士馬が合ったからか、喋り始めて30分が経った頃には会話に間が無くなるほど仲良くなっていた。
俺達は喫茶店を出て2人で歩いていた。
「いやー、孤独じゃ無いってこうも嬉しいんだね」
シュンは嬉しそうに言った。
「たしかに浮きそうだもんね」
「え?なん....」
シュンの話を遮る様に、突然電話がかかってきた。
《もしもし哲夫か?》
「ああ、薫かどうした?」
薫は友人の元能力者だ
《手短に言うからよく聞け》
《純がガイル達に拐われた...》
純も友人の元能力者だ。対するガイルは、確か“筋肉増強”の能力を待っていたチンピラだ。
「ふーん、でも純は強いし大丈夫でしょ」
《違うんだよ!ガイルの首に痣が...残ってた》
「は?」
痣は能力者を意味し、能力無しなら純は絶対にガイルに勝てない。
俺は完全にガイルを見落としていた。
自分を落ち着けるために深呼吸をする。
「オーケー落ち着こう、純はどこだ?」
《わからない、学校の近くのコンビニの前で純が...ガイルに担ぎ上げられて...連れてかれた.....》
《駅の方に向かって歩いてて、今それを追ってる》
「わかった、すぐ行く」
心臓の鼓動が早くなりながらも、電話を切った。
「シュン、今大変な事になってて...お前の力を貸してくれないか?」
俺はシュンの方を向いて言った。
「事情は大体わかった、別にいいよ」
とある路地裏にて。
首に三日月型の痣がある、剃り込みの入った坊主の巨漢の男と眼鏡の青年が対峙していた。その周を男の手下と思われるガラの悪い男達が囲んでいる。
「やめるんだ。警察呼ぶぞ」
青年が震え声で言う。
それに反応して巨漢の男が言う。
「呼べるもんなら呼んでみろよ」
「あの時は散々やってくれたな」
男は半笑いで言った。
「あの時みてぇによぉ、俺を吹っ飛ばしてみろよ」
「カメハメ波みてぇなの出してたじゃねぇか、かっこよかったぜ、あれ」
男がジリジリと眼鏡の青年に近づいて来た。
「筋肉増強ってのはいいもんだなぁ?」
男は青年の腕を掴み、蹴りの体制に入った。
「オラッ!」
男が青年の腹部に蹴りを入れようとし、それを青年が両腕を曲げ受けようとする。だが男の足が青年の腕に当たると「メキッ」とヒビが入る音がし、青年蹴りを受けきれず後方の壁に激突した。
「ガハッ!」
「あの時は『コイツらは俺1人で片付ける』なんて言えたのになぁ?」
男の拳がコンクリートの壁に亀裂をいれた。
男は青年の髪を掴み再び蹴りの体制に入った。
「オラッ!オラッ!オラァ!!」
男は無防備な青年の腹部に何度も蹴りを入れた
。
青年は、嗚咽を漏らし涙を流しながら、意識が朦朧とするなか必死に喋ろうとした。
「やめ....て...」
男は急に蹴るのをやめた。
「よおしわかった、最後に一発殴るからよぉ、後は...お前ら、可愛がってやれよ」
男は周りの男達に向かってそう言うと体制を改め、殴るモーションに入った。
「殺しちまうかもしれねぇけどなぁ?」
男が青年を蹴ろうとした時、路地の入り口から声が聞こえてきた。
「待たんかいハゲダコ!」
そこにいた全員が声の主の方を見た。
「ああ!?誰だお前ら!」
そこには哲夫と知らない青年が立っていた。
「行くぞ、シュン」
「オッケー」
手下の男達が2人を囲み、青年への行手を阻んだ。
シュンと呼ばれた青年が後退りをし、彼が逃げると思った手下達がさらに詰め寄ってきた。
すると今度は、シュンと呼ばれた青年が、一緒にいた青年の方に向かって走り出した。
彼はシュンを待っていたかの様に中腰になると、彼の下に飛び込んできたシュンの足を両手で受け止め、勢いよく持ち上げた。
次の瞬間、シュンの体は宙を舞い、手下を飛び越え勢いよく着地した。
「誰だお前ら!」
シュンは首下のチョーカーをずらし、男に三日月型の痣を見せた。
ガイルはシュンと呼ばれる青年に話しかけた。
「ああ?お前も能力者なのか?」
ガイルは手下達に向かって言った。
「お前ら!コイツは俺1人で十分だ」
ガイルは再びシュンを見て言った。
「せいぜい楽しませてくれよ!」
ガイルが攻撃体制に入ろうとした時、突然シュンがガイルの足を蹴り、ガイルはバランスを崩した。
「な!?」
ガイルは躓き地面に手をついた。
ガイルが隙だらけになり、シュンは絶好のタイミングでガイルの顔面を殴った。だが、ガイルにはそれが全然効いてない様でニヤついている。
「ああ?痛くねえぜ?」
「もう一発殴ってみろよ。ホラ、ホ..ブフッ!!」
その刹那、ガイルはシュンの拳に殴り飛ばされた。
「良い能力持ってんじゃんか」
シュンは倒れたガイルを見て笑った。
「なんだてめえ!?」
ガイルは地面に手をついたまま叫んだ。
起き上がるとシュンに殴りかかった。
「オラッ!」
「甘い」
だがそれはシュンにかわされ、シュンは隙だらけの横腹に蹴りを入れた。
「グァッ!」
ガイルは横腹を押さえながら深呼吸をして落ち着きを取り戻した。
そしてガイルが拳を構えると、高速のジャブがシュンへと飛んだ。
「フンッ!」
「グッ!」
シュンは攻撃を避けきれず、肩に拳を喰らった。
「ああ?なんだ、俺より弱いじゃねえか」
ガイルが安堵し、言った。
そして、ガイルは動きが鈍くなったシュンに向かって連続して拳を喰らわせた。
「オラッ!オラッ!オラァァ!!!」
ガイルの連続する攻撃を腕で受けるのがやっとで、シュンは反撃できずにいた。体格差で負けてる。
「シュン、助けてぇ!」
哲夫がそう叫ぶとシュンはハッとし、ガイルから離れて、ガイルの手下達に踏んだり蹴ったりされている哲夫の方へ走った。
シュンが手下の1人を蹴ると、その人は壁まで吹っ飛んでいった。
手下達の哲夫を蹴る足は止まり、シュンから遠ざかろうとする。だがそれを気にせずシュンは手下達に詰め寄り、次々となぎ倒していく。
「おい、逃げんな!」
ガイルがシュンに近づこうとした時、ガイルの横から哲夫が飛び出し、ガイルの腕を掴んだ。
「何すんだ、この野郎!」
ガイルの拳を哲夫があっさりと方腕で防ぐ。
「!?」
ガイルが驚き、飛び退く。
「力が...出ねぇ!?」
哲夫はガイルに淡々と言う。
「これでお前も無能力者だ」
ガイルが哲夫を殴ろうとするが、かわされ横腹にカウンターのキックを貰った。
「グァッ!」
ガイルは横腹を押さえながらも反撃の右ストレートを打つも、片手で跳ね除けられてボディブローを貰った。
「ングッ!!」
ガイルは膝から崩れ落ち、とうとう地面に伏した。哲夫はガイルが反撃できない状態にある事を確認すると、シュンの方を見た。地面に倒れている手下達に背を向け、シュンはボーっと立ってガイルを見ていた。
ガイルは呼吸が荒くなりながらも口を開いた。
「なんだよ...お前ら...」
すると、哲夫が自信満々に言った。
「俺たちは、最強の能力者だ」
書き慣れない文章だったんで書いててしんどかったです