Fate/√knight  【ムラサキノウエ】   作:わが立つ杣

17 / 45
桜が聖杯戦争を知っていることを打ち明けた翌日、深山町商店街より。


第17話 ~7日目①~ 「泰山」

 R turn

 

 

 昨日発生した集団昏睡事件の影響により、今日の学校は休校となった。張本人である私としてはかなり心苦しいところだ。

 

「まあ、結果的に一日自由に行動できると考えよう」

 

 士郎達は例の黒い影の情報収集をするつもりだ。

 重要な情報を握っているのはイリヤスフィールと推測しているが、彼女の居住する城に行くためにはかなりの時間と労力が必要だ。

 

「今日は事後処理のため休めないが、明日であれば休みを取れる。城の近くまで私が車を出すことも可能だ」

 

 と葛木が提案してくれたので、イリヤスフィールに会うのは明日に回し、今日は言峰神父に話を聞くことになった。

 

「綺礼にアポの電話をしたら、深山町の中華料理店に11時に来いって指定されたわ」

 

 早速、神父に凛が約束を取り付けてくれた。

 そのため、士郎、凛、私の3人は衛宮邸を出て、指定された店に向かっている。ちなみにアーチャーは霊体化している。

 私も霊体化するつもりだったが、士郎は実体化しての行動を望んだ。

 

「ライダー、その恰好じゃあ日常生活を送るには問題があるだろう。うちに出入りするにしてもその服じゃ藤ねえに会わせられないし、一緒に買い物にも行けない」

 

 という士郎の発言により、今日は私の普段着を買うことになっていた。その時には試着が必要になるが、いきなり実体化したら大騒ぎになるだろうから、というのが理由だ。

 士郎の意向となれば無下にはできない。それに、確かに戦闘時の服で往来を歩くのは憚られる。

 

 

「まあ、食事(どき)もあの格好じゃあ、衛宮君が落ち着かないわよねえ」

 

 凛が奇妙な笑みを浮かべながらそんなことも言っていましたが、何のことやらわかりませんね。

 

「でも、実体化して行動するなら、服を買うまでは何を着てもらうのよ?」

 

 という凛の言葉どおり新たな問題が生じるわけだ。

 関係者の所持している服では、サイズの合う女物がない。

 まあ、当たり前ですよね・・・

 170㎝を超える女性はそうそういませんから。

 

「藤村組に行って、なんとか着られそうな服を借りてくる」

 

 そう言って出掛けた士郎が入手してきたのは、細身の男性向けのワイシャツとスラックスだった。

 

「これはこれでいけるわね。男装の麗人ってとこかしら。眼鏡掛けてて知的だし、有能な美人秘書って線もありか・・・かなり胸がきつそうだけど・・・」

 

 そんなわけで何とか体裁は整えられた。

 ちなみに下着は桜に借りて凌いでいる。

 こちらも買いたいところだが、服も下着もとなると士郎に申し訳がなかった。お金は士郎に出してもらうのだから。

 

 

 

 神父との対話は順調に約束を取り付けられたが、一方の臓硯については桜を通じて所在を確認したところ、

 

「お爺様は、市外の管理物件を見に行くので、今日は一日不在にするみたいです」

 

 という事だった。

 この話の真偽は定かではなかったが、あまり詮索もできなかった。

 本当に市外に出掛けるのか、単に会うつもりがないので口実を作ったのか。あの老人とすれば、士郎との会話に意義を見出すことはないだろう。

 

 

 

 深山町の商店街に入って暫く歩くと、【紅州宴歳館・泰山】というこじんまりとした店構えの中華料理店に到着した。

 ここが、神父が指定した店のようだ。

 

「すまない。ライダー。オレ自身が実体化を提案しておいてなんだが、ここでは食事をしないほうがいい」

 

 店に着くなり、士郎が謝ってきた。

 

「どういうことでしょうか?」

 

 料理店に入って、何も食べないというのはマナー違反ではないのだろうか?

 士郎の性格からすると、不可思議な発言だった。

 

「ここの飯を食えばオレ達の聖杯戦争は終わる」

 

「そうね。悪いことは言わないわ。私も結構辛い物はいける口だけど、ここのだけはムリ」

 

 凛も士郎の発言に同意する。

 どうやらこの店の料理はかなりの危険物らしい。

 

「そうなのですか?気にはなりますが、二人がそこまで言うのなら控えます」

 

 なにせ私はお金を持っていない。

 出してもらう側の私が、妙な好奇心で無駄なお金を使わせてしまうリスクは避けるべきだろう。

 

ガララ・・・

 

「イラッシャイー」

 

 店に入ると神父が食事をしていた。

 他に客はいない。

 中華料理の名前など素の知識のままでは私にはわからないが、聖杯が与えてくれた情報によると、彼の食べているのは『激辛麻婆豆腐』というものらしい。

 

「む。来たか。すまないが、少し待っていてくれ」

 

 顔中に汗を浮かべて、神父が言った。

 私としては、士郎の身を守ることを優先したのだが、本心ではこの神父には会いたくなかった。

 昨日逃げるように教会を後にしての今日だし、この神父には得体の知れない空気が纏わり付いている。

 油断ならない相手として警戒する。

 

「それとも、お前達も食うかね?」

 

「食うか!」

 

「私も無理」

 

「そ、そうか・・・そこまで否定しなくても良いのではないかね・・・」

 

 ちょっといじけたようですね。

 この場面では、あまり警戒する必要はないのかもしれません。

 

「昨日の事件の事後処理が、いたく私の精神に負荷をもたらしたものでね。せめてもの慰みに、格別美味いここの料理を味わいに来たのだ」

 

 私に視線を送りながら言ってきた。

 この人、絶対にわざと言っていますよね。

 士郎と凛の顔も強張っていた。

 

「いや、あれはライダーのせいじゃ・・・」

 

「そうよ。慎二が全部悪いのよ」

 

 ありがとうございます。二人ともいい人です。

 

「柳洞寺もこの辺りでは、歴史的建造物と言っていい。それが大きく損壊したのもこの街としてはかなりの痛手だった。ああ、私は何を言っているのだろうか・・・そろそろ心療内科にかかったほうがいいのかもしれんな」

 

 三日前の話も持ち出してきて、こちらに揺さぶりをかけてきた。

 

「・・・あ、あれはアーチャーが悪いんだ・・・」

 

「え?それって私のせいってことじゃない・・・」

 

 見事に更なる動揺と内紛の兆しが表れる。

 

「聖堂教会からは魔術師協会に対して事後処理に要した費用を請求できるのだ。そうなれば魔術師協会からは当然、直接の当事者にその補填を求めるだろうな」

 

「げ・・・・・・」

 

 凛の顔が蒼白になりました。

 警戒不要と考えたのはあまりに浅薄だったことを思い知らされた。やはりこの神父には、最大級の警戒を持って臨まなければならないのだ。

 

「あの・・・私、その料理を少しいただいてもいいでしょうか?」

 

 防戦一方になりつつあるこの流れは、サーヴァントである私が食い止めなければいけない気がした。

 

「む。食うかね?」

 

 神父が笑みを浮かべた。

 

「ええ。食べたことがないので、興味があります」

 

 嘘ではない。

 

「よかろう。好奇心は大事だ。マスター。彼女にレンゲと取り皿を」

 

「アイヨー」

 

 予想に反して若い女性の店主(?)が、間髪入れずにレンゲと取り皿を運んできた。

 

「綺礼・・・あんたまさか、ここで私たちを脱落させて、聖杯戦争をとっとと終わらせようって腹積もりなんじゃ・・・」

 

「何を言っているのだ、凛。ここの麻婆は絶品だぞ・・・いや、なるほど。あまりの美味さに至福を感じてしまえば、もはや聖杯に託す望みなどあまりに矮小になってしまう。そうすれば、この戦いを続ける必要もなくなるということだな」

 

「いや、生物学的に終わるって話なんだけど・・・」

 

「それならそれで良いのではないかね。間接的にせよ聖杯により望みが叶ったということになる」

 

 全く人の話を聞いていませんね。この人。

 とにかくこの奇天烈な会話を早々に終わらせる必要があります。

 目の前には既に取り皿に盛られた激辛麻婆豆腐が、鎮座していた。

 私はそれを無言でじっと睨みつける。

 眼鏡を外したら、石化してくれないだろうか?

 

「・・・・・・」

 

 士郎、凛、私がここで力尽きたら、桜を頼みます。

 ひょっとして、遺書を用意する必要があったでしょうか。

 

「それでは、いただきます」

 

 料理に罪はない。

 そして、おそらく料理人にも悪意はないはずだ。

 であれば、この目の前にある赤い液体が、禍々しく感じるのは私自身の内面の反映に他ならない筈だ。

 要は自分の心の中の問題なのだ。

 意を決した私は、その赤い液体をすくったレンゲをゆっくりと口元に近付け、そのまま口の中に流し込んだ。

 

「す・・・すまない。ライダー・・・お前のことは絶対に忘れない・・・」

 

「終わったわ・・・なにもかも・・・」

 

 士郎と凛は、もはや私を見ないようにしている。

 私は口の中の液体を嚥下する。

 

「・・・・・・」

 

 しばし悩んだ末、私は正直に答えることにした。

 

「確かに美味しいですね」

 

 初めて口にする味わいだった。ピリッとする辛さはなかなかのもので私の生前には味わえなかった刺激だ。

 一昨日から何度か士郎の家で食事をいただいているが、それらも凄く美味しかった。勿論、作ってくれる士郎や桜の技量の賜物なのだろうが、この国、この時代の料理は総じて美味しいようだった。

 

「ふふふ。そうだろう、そうだろう。キミにもこの刺激の素晴らしさがわかるかね」

 

 神父が満足そうに頷いて言った。

 

「「・・・・・・」」

 

 おや?士郎と凛は呆けた表情をしていますね。

 まあ、あれだけ構えていたので仕方ないことかもしれませんが、おそらく二人はこの刺激が苦手ということでしょう。

 

「もう少し食べるかね?」

 

 取り皿が空になったのを見た神父が、お替わりを勧めてきた。

 

「そうですね。ただし、申し訳ないのですが、私は持ち合わせがありませんので・・・」

 

「ふ、構うことはない。大変気分の良い時間を提供してくれたのだ。私が出そう」

 

「それでは、お言葉に甘えまして。あと、もしよろしければお酒もいただけると嬉しいですね。この料理に合うものがあればですが」

 

「勿論あるとも。私も少し付き合おう。大人の特権だな」

 

 士郎も凛も大人の筈ですが・・・

 まあ、この件は禁忌中の禁忌ですね。

 

「それでは、よろしくお願いします」

 

「ライダー・・・そこまでして、オレ達のために・・・」

 

「いいえ、衛宮君。絶対に違うわ。この似非(えせ)ミスコンクイーンはマイウェイを突っ走っているだけよ」

 

 士郎と凛の呟きが流れる中、私は出されてきた『紹興酒』なる甘いお酒を賞味させていただきました。

 ああ、これも美味しいですね。

 

 

 

「ふふふ。気分は爽快。腹は程よく満たされ、脳はアルコールにより活性化している。最高のコンディションになったところで、そろそろ本題に入るとするかね?」

 

「士郎、凛。少しお待たせしてすいませんでした」

 

 20分程だろうか、食事とお酒に没頭してしまって彼らを待たせてしまったので、謝らなくてはいけない。

 

「いや・・・いいんだ。ライダーが楽しそうだったから」

 

「そうね。会話の潤滑油は必要よね。ランチョンミーティングって形式があるのもそのためだし」

 

「聖杯戦争について詳しい話が聞きたいとのことだったな」

 

 神父が居住まいを正して、こちらの要望を確認する。

 

「そうだ。根っこの目的は、柳洞寺で遭遇した影の正体を突き止めることだ。オレ達はあれが、聖杯戦争と関連していると考えている。あれは、極めて危険なものだ。何とかしたい」

 

 気を取り直して、士郎は自身の目的をはっきりと神父に伝えた。

 

「特にあんたは前回の戦いにも参加していた。何がヒントになるかわからない。知っているだけのことを教えて欲しい」

 

「流石に全部というのは時間的にも立場的にも難しいところだが、可能な限りは答えよう」

 

「あんたは10年前、父さんのサポートのために参加していたはずだけど、どんなサーヴァントを召喚して、どんなふうに最後まで生き残ったのかしら?」

 

「ふむ。私は前回、アサシンのサーヴァントを使役していた。主に情報収集が目的だったのだが、中盤で概ね任務を達成してな。最後は、強敵と睨んだライダーの宝具によって斃されたのだ」

 

「セイバーじゃなくて、ライダーが強敵だったのね」

 

「いいやセイバーも同じくらい強敵だった。ただ、セイバーの宝具はその時点で既に分かっていたのだ」

 

「なるほどね」

 

「セイバーの宝具はどんなものだったんだ?」

 

 士郎にしてみれば、結局わからないまま消えてしまった自分のサーヴァントが何だったのか確認したいのだろう。

 

「ふむ。キミとすれば気になるところだろうな。【約束された勝利の剣(エクスカリバー)】だ」

 

「・・・やっぱりそうだったのか」

 

 士郎は既に当たりをつけていたようだ。

 

「え?じゃあセイバーは、あのアーサー王だったってこと?でも、女の子じゃない」

 

「まあ、英霊という概念は曖昧なものだからな。例えば、彼女だってこの姿を見た者からすれば、正体はあの怪物だと言われてもすぐには納得できないだろう?」

 

 私を見ながら神父は凛に問う。

 

「それは・・・そうかもね」

 

 凛もちらっと私を見て、頷いた。

 直接は伝えていないが、既に私の真名は察しがついているのだろう。

 

「ちょっと待て。あんた、何でライダーの正体まで知っているんだ?」

 

 士郎は、神父の語った言葉から聞き捨てならない部分をしっかりと問い詰めた。

 

「私がランサーのマスターだったからだ」

 

「「「は?」」」

 

 士郎、凛、私の声が完全に重なった。

 

「ランサーには基本的に情報収集をさせていた。柳洞寺での戦いもかなりの部分を把握している」

 

 また、この人はこちらを置いてきぼりにして話を進めてますね。

 

「常時目を隠しており、柳洞寺では天馬を召喚し、学校では生命力を吸収するような神殿型の結界を張った。さらに美しい髪を持っている女性となれば、推測は容易だ」

 

「・・・えっと。あんたはこの戦いにも参加していたってことだな」

 

 意外な暴露による衝撃から何とか立ち直り、士郎が確認する。

 

「そのとおりだ。とは言え、私は聖杯に望む願いなどない。この戦いを監督する以上、情報は欲しくてな。それでランサーを従えていたわけだ」

 

 神父は意味ありげな笑みを浮かべた。

 

「誰がどのくらい施設を壊しそうかとか、人に迷惑をかけそうかとかだ」

 

「な・・・なるほどな・・・」

 

 そう言われると、私達はこの話題で追及の矛先を向け辛いですね。

 

「昨日ランサーを学校に送ったのも、危険な結界が張られる兆候があったからだ。結果として彼は戦士としての本能を優先させてしまい、キミたちに斃される事態になってしまった」

 

 なんかまた、私が悪いみたいな話になっていませんか?

 

「ランサーが斃されたのは、キミたちの力によるものだが、どうやら最後はあの影が現れ、ランサーを取り込んだようだ」

 

「何だって?」

 

「もしかしたらと思ったけど、そうだったのね」

 

 士郎と凛が違う反応を示した。

 

「昨日あの後、ランサーがいた付近の生徒を少しだけ見たんだけど、何人かにあの黒い泥がついていたのよ。だからね」

 

 この話は凛の方が、推察していたようだ

 

「いずれにせよ、ランサーを失ったのは私としても痛手なのだ。結局、アサシンのマスターの正体を掴めていなかったのだからな」

 

「そう。私たちも目にしたのは、柳洞寺での1回だけだしね。まあ、アサシンなんだからそういうもんよね」

 

「あんたは前回、アサシンのマスターだったんだろう。どんな英霊だったんだ?」

 

「前回私が召喚したのは、複数人で一騎を構成する特殊なアサシンだった」

 

「それって滅茶苦茶強いんじゃないか」

 

「いや、彼ら一人一人の力は大したことがなかったからな。アサシンのサーヴァントというのは、イスラム圏の暗殺教団の長が必ず召喚される。代々彼らは【ハサン・サッバーハ】という名を襲名するので、それが真名になるが、ハサンは複数いるので、これがわかっても意味はない」

 

「てことは名前がわかるだけでは、特徴や宝具はわからないのか。結局、対峙するしかないわけだな。それから、やはりキャスターが召喚したアサシンはかなり例外だったんだな」

 

「そうだな。だが、柳洞寺の戦いにおいて、アサシンはセイバーに対して腕を伸ばすような動きをしていた。あれは、呪腕と呼ばれる能力かもしれんな」

 

「私も少しだけ見たわ。セイバーには迎撃されていたみたいけど」

 

「なるほどな。腕を警戒すべきなんだな」

 

 士郎は、少しだけ考え込む素振りを見せた。

 

「そう言えば、オレはセイバーからあんたが最後まで残ったマスターだったとも聞いているし、前回の顛末も知っていた。さっきの話では中盤で脱落したような口振りだったけど、どういうことなんだ?」

 

「確かにな。私は一度脱落し、任務からも解放されて当時監督役だった父の保護下に入った。しかしその後、マスターを失ったサーヴァントが出たのだ。その時には、元々私が支援すべき対象だった遠坂時臣氏、即ち凛の父親は残念ながら既に亡くなってしまっていた」

 

 凛の表情が少しだけ硬くなったが、神父はそのまま続けた。

 

「私はそのサーヴァントと再契約することになり、最終的に衛宮切嗣と争うことになったのだ」

 

「なるほどな・・・セイバーは、親父があんたを一番警戒していた。とも言っていた」

 

「私とあの男は殆ど接点がなかったが、お互いの周辺情報を集めるうちに酷く憎みあうようになっていた。一言で言えば、近親憎悪に近かったのかもしれないな」

 

「親父とあんたが似ている?」

 

「方向性は違えど、人間として壊れているという点がな」

 

「親父は至ってまともな人間だったぞ」

 

「いずれにせよ、私は負けた。辛うじて生き残りはしたがな。私は見たわけではないが、衛宮切嗣はセイバーに聖杯を破壊させたようだ。そのため、前回の戦争は中途半端に終わり、今回の聖杯戦争が僅か10年で始まったというわけだ」

 

 本来なら60年周期なのだがな、と続けた。

 ここまで話しておいて、神父は首を横に振った。

 

「私と衛宮切嗣の話はもういいだろう。つまらない男同士の観念的な話に過ぎない。女性には退屈な話だ」

 

「そうだな」

 

 士郎は、ちらりと凛を見やりながら頷いた。

 

「漠然としている質問だが、あの黒い影について、あんたはどう考えている」

 

「キミと同意見だ。あれは聖杯戦争に関係がある。おそらく聖杯の中にある呪いが漏れ出したものだろう」

 

「聖杯の中にある呪い?そんなものがあるのか?」

 

「どうしてあの影となって出てきているのかはわからないがな。いずれにせよ、この話を詳細に知りたければ、アインツベルンに聞くしかあるまい。彼らが一番、根本的なことを知っている。私の知る内容は監督役としての表面的なものと、私自身が見聞きしたものだけだ」

 

「わかった。元々、その予定だったしな。色々と教えてくれたことについては、礼を言う」

 

「そうね。思った以上に目ぼしい情報があったわ」

 

「それでは失礼します。料理とお酒、ご馳走様でした」

 

 士郎と凛が席を立ったので、私も続いた。

 丁度、私たち以外の客が入店してきたところだった。

 

「ふふふ。また、ご一緒したいものだ」

 

 神父が私に向けて言ってきた。

 

「構いませんよ・・・あ、いえ、状況が許せばですね」

 

 士郎と凛が少し非難の眼差しを向けてきたので、表現を改めた。

 

「最後に一つだけ。あんたは聖杯に託す望みはないと言った。それは本当か?」

 

 士郎が立ち去ろうしていた足を止めて、最後の質問を投げかけた。

 

「ない。私は私自身に還る望みを持っていないのだ。それは、お前も同じだろう。衛宮士郎」

 

「何を言っているのかわからないな」

 

 士郎はそう言って、暖簾を潜って外に出ていく。

 凛と私もそれに続いて、店を出た。

 

 

 




麻婆を食べてるだけで、一話が終わってしまいました。
恐るべし・・・
綺礼の発言ですが、ギリギリで嘘を言っていません。
「マスターを失ったサーヴァント」はギル様のことですが、綺礼自身がマスター(時臣)を殺していたとしても「失った」ことには変わりないですから。


やはり平日は殆ど投稿できませんね・・・

※タイトルつきました。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。