Fate/√knight  【ムラサキノウエ】   作:わが立つ杣

20 / 45
アインツベルンの城へと向かう車中にて。


第20話 ~8日目①~ 「アインツベルン城外の戦い」

 E turn

 

 

「ちょっとライダー。あなたなんで霊体化しないのよ?アーチャーなんてボンネットの上よ」

 

 ライダーを挟んでオレの反対側に座る遠坂がライダーを(なじ)る。

 

「士郎がせっかくだから直接乗るように提案してくれたのです」

 

「だからって、なんであなたが真ん中なのよ?普通小柄なほうがそこに座るものよ」

 

「それでは、私が士郎と密着できな・・・いえ、私はサーヴァントです。犠牲になるのは当然かと」

 

「・・・欲望がダダ漏れじゃない。この似非(えせ)パリコレモデルが・・・」

 

「うるさいわねえ。宗一郎様が運転に集中できないじゃない」

 

 助手席に座るキャスターが振り返って二人を非難する。

 

「そもそもあなたは乗る必要がなかったのではないのですか?」

 

 それに対してライダーが冷淡に反論する。

 

「何言ってるのよ。この車は宗一郎様の物よ。その助手席に私が座らないで誰が座るのよ」

 

「論点が伝わっていないようですね」

 

「あ、あの・・・オレが真ん中になれば丸く収まりそうな気がしますが・・・背丈も遠坂とそんなに変わらないし」

 

 オレはおずおずと提案する。

 

「衛宮君は黙ってて!」

 

「士郎にそんなことはさせられません」

 

「はい・・・すいません・・・」

 

「車を出すぞ。キャスター、シートベルトを忘れるな。義務ではないが、後部座席の者も可能な限りするように」

 

 葛木が女性陣の口論を意に介さず、淡々と注意事項を伝えてきた。

 

「「はい」」

 

 4人の声が重なった。

 

 

 

 一昨日の騒動について、学校では改めて現場の確認を行うことになっている。

 生徒だけでなく教師側もごく一部の教師以外は出勤しないことになった。そのため、葛木は休暇をとることができた。

 アインツベルンの城がある郊外の森は遠く広大だ。葛木に車を出してもらい、オレ達は城に近付けるギリギリまで送ってもらうことにした。

 その後、葛木とキャスターは一旦うちに戻って、体調を崩している桜の看病も引き受けてくれることになっていた。

 

「どうやら車で近付けるのはここまでのようだな」

 

 葛木が路肩に車を停車させた。

 正面には鬱蒼とした森が広がっているが、ここを抜けていくしかないらしい。 

 

「坊や、くれぐれも気をつけるのよ。危険を感じたらすぐに逃げなさいね」

 

「帰る時は、また迎えに来る。しっかりと情報を得てくるように」

 

 今回、キャスターは使い魔の鳩をオレに託していた。こちらの様子もわかるし、帰るタイミングもわかるわけだ。

 敢えて危地にまで赴きはしないが、こちらの様子は気にかけてくれているようだ。

 

 

 

「さて、ここからは自分の足を使うしかないわよ」

 

 葛木とキャスターの車が元来た道を引き返していくのを見送ったオレ達は、森へと足を踏み入れた。

 

「抱えて行こうか?凛」

 

 実体化したアーチャーが聞く。

 先程までは霊体化して車の上に乗っていたのだ。

 

「緊急事態になればね。今は時間もあるし」

 

 実は到着する(おおよ)その時刻をイリヤスフィールには伝えてある。昨日、キャスターが使い魔を使って今日訪問することを連絡しており、向こうも承諾していた。

 順調に話が進んだのは意外だったが、イリヤスフィールとしても他のマスターと会話をしてみたいという好奇心があるのかもしれない。

 

 

 

 かれこれ2時間程も歩いただろうか、鬱蒼とした森の中をオレ達4人が進んで行くと、ついに木々の向こうに目的の城が微かに見えてきた。

 正直まだ遠い。よくもまあこんなところに居を構えようと思ったものだ。

 時刻はそろそろ正午になる。  

 ふと上を見上げたオレは、奇妙なものを見た。

 なんだあれは?

 上空を奇妙な形をした小型の飛行機がオレ達を追い越すようにして飛び去って行った。

 

「この辺に飛行場なんてあったかしら?」

 

 遠坂も不思議に感じたようで、疑問を口にした。

 

「ないだろ。個人使用の小型機なら、本格的な飛行場がなくても飛べるのかな?」

 

 自家用機に関する実情なんて縁遠すぎるのでさっぱりわからない。

 

「アーチャーなんだったかわかる?」

 

「いや、ちょうど私は木陰に入っていたので見えなかったな」

 

 気にはなったが、オレ達はそのまま進むしかなかった。

 もう少しで城に着くはずなのに、先へ進めば進むほど、森を形作る木々とその葉はますます深く、濃くなっていくようだった。

 

 

 Interlude in

 

 

「ふん、久しぶりだな。この古臭い城に来るのは」

 

 金色の鎧に身を包んだ英雄王ギルガメッシュは、乗っていた自身の飛空艇(ヴィマーナ)から地上に降り立った。

 目の前にはアインツベルンの城が(そび)え立っている。

 

「どうした?人形ども。天上天下(てんじょうてんげ)にただ一人の真の王たる(オレ)がわざわざ出向いてやったのだ。丁重に出迎え、もてなすのが礼儀というものであろう」

 

 正門に向けて、轟然と言い放った。

 

「何ですか?あなたは?」

 

「ここは、イリヤの城。無礼な客は通さない」

 

「下がっていなさい。セラ。リズ。あの男は危険すぎるわ」

 

 待ち構えていたかのように、門が開き、イリヤと彼女の従者であるセラとリズが外に出て、ギルガメッシュに相対する。

 サーヴァントであるバーサーカーは3人の背後に片膝をついて控えていた。

 

「ふむ。さすがに(オレ)を待たせる無礼は(わきま)えているようだな。その点は褒めてやろう。主人(あるじ)自らの出迎えご苦労だ」

 

「ええ。あなたほどの霊基を持つ英雄が客人であるなら、賓客として遇さなければアインツベルンの名が廃るというもの」

 

 イリヤが凛とした佇まいのまま、突然の招かれざる客にも動じずに応対した。

 

「ふふ、良いぞ人形。(オレ)の目的はお前ではなく、そこにいる神代の英雄ヘラクレスだったが、その態度に免じてしばし問答に付き合ってやろう」

 

「目的は何かしら?」

 

「ふん。知れたことよ。暇潰しだ」

 

「何ですって?」

 

「10年もの間、現世で過ごし、この時代の人間どものくだらなさに飽き飽きしてたところで、聖杯戦争が始まった。さて、どう退屈しのぎをしてやろうかと久しぶりに興を覚えていたのだが・・・」

 

 

 ズズ――――――

 

 言葉を続ける英雄王の後方の空間に歪みが生じた。

 

「最も(オレ)無聊(ぶりょう)を慰めるに足る存在のセイバーが、早々に消えるという不届き極まりないことをしでかしたのだ」

 

 自分の言葉に怒りを覚えたのか、金色の王はその宝具【王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)】を展開して、空中に出現した剣をそのまま城に向けて放つ。

 

 ドンッ!!

 

 その一撃で頑丈なはずのアインツベルン城の壁には大穴が空いていた。

 

「「!?」」

 

 イリヤは身じろぎもいないが、セラとリズはその威力に息を呑んだ。

 

「あの騎士王が(オレ)の前に這いつくばり、みっともなくも許しを乞う姿ならば、(オレ)の心を満たせるものと思っていたのだがな」

 

「あなたはその腹いせにヘラクレスと戦おうと思っただけということかしら?聖杯を得るために、ここに来たわけではないの?」

 

「聖杯を得る?見識を疑うぞ人形の娘よ。聖杯は宝なのであろう。であれば、それはすなわちオレのもの。(あまね)く世界の宝は(オレ)が宝物庫に由来するのだからな」

 

「なんという妄言!聖杯は我らアインツベルンの悲願!断じてあなたのような余所者(よそもの)の物ではありません!」

 

 セラが悲鳴のような怒りを声にした瞬間だった。

 

 ゴッ!

 

「・・・え?」

 

 ギルガメッシュが王の蔵から出現させた斧が容赦なく襲いかかり、彼女の細い腰を両断していた。

 

 ドサッ・・・

 

 自分に何が起きたか知り得ない表情のまま、セラの上半身が地面に落ちた。

 巻き上がった砂埃が彼女の白い顔を汚し、彼女の胴体から流れ出る夥しい量の血液が地面を赤く染めていく。

 

「・・・セ・・・セラ・・・」

 

 イリヤが口元に手を当てながら、愕然とする。

 

「よくもセラを!」

 

 怒りに我を忘れたリズが巨大な戦斧を構えて、ギルガメッシュに向けて飛び込んでいく。

 

「ふん。人形風情になまじ感情などを持たせるから、このような醜態を晒すのだ。何も感じなければ、短い命をこのようにさらに縮めることもなかろうにな」

 

 英雄王は陶然とした笑みを浮かべた顔を、右手で覆って嘲る。

 

「よしなさい、リズッ!バーサーカー!お願い!」

 

 その声に応じて、イリヤの背後に控えていたバーサーカーが弾丸のようなスピードで、ギルガメッシュに飛びかかって行った。

 

「さあこい。大英雄!ここからは、神話の世界の戦いの幕開けといこうぞ!」

 

 英雄王ギルガメッシュは悦楽の色を顔に浮かべ、高らかに宣言した。

 

 

 Interlude out

 

 

 E turn

 

 

 先程の小型機らしきものを見てからさらに進むと、ずっと続いていた森がついに途切れた。視界が一気に開け、目指す城の全貌が明らかになる。

 とは言え、まだ、距離は少しある。

 

「とんでもない場面に到着してしまったようだな」

 

 アーチャーが呟いた。

 

「どうしたの?」

 

 遠坂が問う。

 

「サーヴァント同士が戦っているな」

 

 オレも何とか城の外に人がいることはわかるが、状況まではわからない。

 アーチャーの視力は尋常ではないということだろう。

 

「バーサーカーとアサシンってことね?」

 

「いや・・・違うな」

 

「そんな筈ないじゃない。ここにあんたとライダーがいるのよ。キャスターは衛宮君の家だし」

 

 遠坂の言うとおりだ。セイバーとランサーが消滅した今、残るはアサシンしかいない筈なのだ。

 

「私も戸惑っているところだ」

 

「ええい、まどろっこしい!もう少し近付きましょう。隠れるところはたくさんあるから、大丈夫よ」

 

 遠坂が痺れを切らして、城に近付こうとする。慎重に行くべき場面なのだが、そうとばかりも言っていられない。

 

「こちらの目的からすると、イリヤスフィールの身柄は保護したいですね」

 

 ライダーの言葉は的を射ている。

 

「そうだな。戦いで死なれるわけにはいかない」

 

「でも、バーサーカーを従えてるのよ。相手のサーヴァントがなんだか知らないけど、負けるとは思えないけど」

 

「いや、これはわからんぞ」

 

 アーチャーの言葉は依然として曖昧なままだった。

 身を隠しながら近付くと、オレ達にも状況がわかってきた。

 

「あれは・・・」

 

「なによ、あの金ぴかの奴は?」

 

「・・・バーサーカーがやられている!?」

 

 そう。信じられないことに、セイバーとアーチャーの二人がかりでも厳しい戦いを強いられたバーサーカーが、今はたった一人のサーヴァントを相手にして、明らかに劣勢を強いられていた。

 遠坂の表現したとおり、金色に輝く鎧で全身を覆ったそいつは、金髪であることと、そして、何よりその悠然とした振舞いも相俟ってまさに『金色(こんじき)の王』と呼ぶに相応しい圧倒的な存在感を放っていた。

 

 

 

「ふん!それにしてもこれだけの演目に観客が不在というのも、いささか味気ないものよ。人形の娘よ。お前もそう思うだろう?」

 

 金色の王は、戦いながらも悠然と言い放つ。

 

「・・・く!何てこと・・・バーサーカーがこんなに一方的にやられるなんて・・・」

 

 一方のイリヤスフィールには、一片の余裕もない。

 

「ふはははははははははっっ!本当に愚昧極まりないな!アインツベルンという一族は!」

 

 嘲りの言葉を浴びせながら、そいつは自身の前面の中空から30に及ぶ武具を出現させ、バーサーカーに向けて射出する。

 

「──―■■■■■■■■■■■──―!!」

 

 咆哮する巨人は、手にした斧剣を凄まじい速度で振るい、そのうちの10余りを撃ち落とす。

 そして、残りのうちの半分はその頑強な肉体によって弾き返す。

 

 ドドドドドドドドドドン!!

 

 だが、残る10の刃は彼の鋼の肉体をも喰い破り深々と突き立っていた。

 血に塗れた灰色の巨人は、膝を折る。

 

「そもそも、なぜこれほどの英雄をバーサーカーなどで顕現させたのだ?ヘラクレスは体力、技量のみならず、知力も有した万能の勇者のはず。セイバーやアーチャーなどで召喚しておれば、このような蒙昧な特攻を来る返すこともなかろうに。これでは、とんだ期待外れと言わざるを得んな!」

 

「・・・バーサーカーは強いんだから・・・・・・絶対に負けない・・・・・・負けないで!バーサーカー!!」

 

 イリヤスフィールの叫びに、命を吹き込まれるようにして、バーサーカーの全身から湯気のように黒炎が揺らめき立ち、ボロボロになった肉体が瞬く間に修復されていく。

 

「──―■■■■■■■■■■■■■■■──―!!」

 

 バーサーカーは雄々しく、声にならない声で叫ぶと、再び金色の王に向けて前進を試みる。

 イリヤスフィールの焦りや、この圧倒的な情勢から推測すると、もはやバーサーカーの蘇生回数は残り少ないのかもしれない。

 どうする?

 このまま戦い続ければ、バーサーカーが負け、あの金色の王が残るだろう。

 

「バーサーカーが消え、あの男だけが残った時にどうなるか・・・私はバーサーカーには勝てる気がしないが、あの男には勝てるかもしれない」

 

 オレと同様に戦況を見つめていたアーチャーが思わぬことを言った。

 

「は?あんた本気?」

 

「まあ、相性の問題でな。そのため、このまま戦況を見守り、バーサーカーが倒れるのを待つというのも戦略のうちだ」

 

「それは違う。オレ達の目的はイリヤスフィールと話をすることだ。その先にあるのは、影の正体の究明とその対処だ」

 

「ふん。そのとおりだな。当初の目的を忘れてはいなかったか」

 

 おそらくアーチャーは敢えて別の選択肢を提示して、考えを整理させただけだろう。

 

「あんた達いつの間にか息ぴったりになってない?」

 

「そんなわけあるか!今のだって明らかにこっちを試す為の、底意地の悪い質問だったぞ」

 

「ふん。凛ともあろう者がとんだ見識違いだな」

 

「そうかしら?一昨日あたりから、私が置いてきぼりな気がするわ」

 

「・・・・・・いずれにせよ気をつけてください」

 

 ライダーが緊迫した声で注意を促した。

 

「あの男は、既にこちらにも気付いています」 

 

「!!」

 

「どうやら、雑種どもが雁首揃えてやってきたようだが、好ましからざる(やから)も紛れているな。見物客に徹するなら、見逃してやっても良かったのだが、折角の神代の演武を邪魔されるのは興覚めというもの」

 

 目を向けると、前進しようとしたバーサーカーを再び無数の武具で串刺しにした金色の王は、その攻撃の矛先をこちらに向けようとしているところだった。

 先程までと同様に、男の背後から数十に及ぶ武具が姿を現しつつあった。

 驚くべきことにその全てが宝具だった。

 一つでも受ければ、ただでは済まない。

 

「「投影(トレース)開始(オン)」」

 

 オレと、アーチャーがほぼ同時に詠唱する。

 オレは両手に双剣を生み出す。これで、自分に向かってくる武具の一つでも迎撃できるだろうか?

 

「士郎、凛、下がってください。決して私の前に立たないように!」

 

 ライダーがバイザーに手を掛けながら、オレと遠坂の前に出て、さらにアーチャーの斜め前の位置に立った。 

 

「どうするの?」

 

 遠坂が問う。

 

「魔眼を使います。完全には効かなくても、重圧をかけることはできます」 

 

 そう答えながら、ライダーはバイザーを外して放り投げた。

 あいつがこちらを攻撃する意思を見せたのだから、一刻の猶予もならない。

 目にすることはできないが、ライダーの魔力が一気に膨れ上がり、魔眼の効力が発動したことが感じられた。

 

「ぬうう・・・!?なんだ、これは・・・?」

 

 常に余裕を見せていた金色の王の態度に、僅かながら困惑の色が混じった。

 だが、ライダーも半ば予想していたとおり、完全にはその効力を発揮できなかったようで、石化する気配はない。金色の王は、ライダーを上回る魔力を持っているということだろう。

 それでも、あいつの動きは鈍っている。

 武具の出現速度が低下しており、出現した物も少しランクが落ちているのがわかる。

 その間に、アーチャーが次々と武具を投影し、空中に制止させていた。

 それは、全て向こうにいる金色の王が出現させている武具と同じだった。

 

「小癪なっっっ!!(オレ)の行動を阻害したうえ、あまつさえ(オレ)の宝物の贋作を持ち出してくるとはっ!!」

 

 金色の王は、激怒の咆哮とともに出現させた武具を射出した。

 とてつもない圧迫感だ。もし、一人で対峙していれば、あれらが自分に到達する前に10回は心が死んでいてもおかしくないんじゃないだろうか。

 だが、実際にはそうはならない。

 なぜなら、今はヤツがいる。

 

「──―blade works! ──―」

 

 アーチャーが投影した武器を一斉に解き放つ。

 

 ──―ガガガガガンンンンン──―!!!!!

 

 それは、一つとして(あやま)たず、金色の王が射出した宝具の対になる武具を激突させ、中空で殆ど全てが相打ちになっていった。

 僅かに数本の槍や斧が押し負けて、抜けてきたものもあったが、それらはライダーが杭剣で弾くか鎖で絡めとっていた。

 

「・・・す・・・」

 

「すごいわ・・・」

 

 芸術のような迎撃方法を成功させたことに、オレも遠坂も思わず感嘆の声を漏らした。

 

「く・・・」

 

 だが、アーチャーは膝をついた。凄まじい数の宝具を投影したのだ。魔力をごっそり消費したのだろう。

 

「・・・・・・雑種どもめ・・・・・・現界してからの10年で、これほどの屈辱は初めてのことよ・・・」

 

 全身を怒りに震わせながら、金色の王はその宝物庫から何かを取り出そうとしていた。

 

「最早この世にお前らが存在した証拠、その全てを消しつくしてくれるわ!!!」

 

 もしかしたら、オレ達は獅子を本気で怒らせてしまったのではないか。

 そんな後悔がオレの頭を掠めた瞬間だった。

 

「やっちゃえ!バーサーカーッッ!!」

 

 

「──―■■■■■■■■■■■■■■■──―!!」

 

 

 バーサーカーが、猛然と襲いかかった。

 金色の王の意識が完全にオレ達に向けられている間に、復活を遂げていたのだ。

 

「なにっ!?」

 

 その顔に焦りの色を浮かべながら、あいつは僅かに後退する。

 しかし、一度は虚空から何かを取り出そうとしていたその手を戻すと、前に突き出すような姿勢で叫ぶ。

 

「天の鎖よ!」

 

 突進してきたバーサーカーが間合いを詰め、手にした巨大な斧剣を振り下ろす寸前だった。

 

 ジャリリリリッ!!

 

 僅かに早く虚空から伸びた複数の鎖がバーサーカーの全身を絡めとり、動きを封じていた。

 

 

「──―■■■■■■■■■■■■■■■──―!!」

 

 バーサーカーが咆哮して動こうとするが、その鎖は強靭で引きちぎることはできなかった。

 だが、あいつへの攻撃はまだ終わらない。

 

騎英の(ベルレ)ッ──―──―」

 

 行ってきます士郎、と彼女は言った。

 勝機はこの僅か数秒の時間にしかない。

 金色の王が体勢を立て直し、再び落ち着いて宝具を連射することが可能になってしまえば、オレ達になす術はなくなる。

 だから、ライダーは天馬(ペガサス)を喚び出していた。

 柳洞寺でアーチャーと戦った時と同様に凛々しく、黄金の手綱を握っている。

 あの時と違うのは、その双眸が今は露わになっていることと、オレという荷物を抱えていないことだ。

 

「頼む。ライダー」

 

 静かに彼女に声を掛けるしか、オレにできることはない。

 

「──―──―手綱(フォーン)ッ!!」

 

 白く輝く彼女の後ろ姿を見送る。

 

「雑種どもめ!!」

 

 バーサーカーに対処しながらも、こちらの動きに注意を払っていたのだろう。

 ライダーが宝具を発動させた一瞬の(のち)に、金色の王は自分の前方に、皮のような材質の大きな盾を出現させた。

 驚くべき対応力だった。

 

 ゴウッッッ!

 

 その大盾はアーチャーの盾の宝具のように、受け流すというよりは純粋に頑丈さで押し返すような性質のようだった。

 万全な状態で展開していれば、五分だったかもしれない。

 しかし、防御の構えに入りきる前に天馬がそこに到達していたことが趨勢を決していた。

 

「があああぁぁぁっ!?」

 

 猛烈な勢いでライダーの天馬は、その大盾に激突、突破して、金色の王を大きく弾き飛ばした。

 

「・・・お・・・おのれ・・・雑種どもの引き立て役に過ぎない怪物風情によもやここまで・・・」

 

 纏っていた鎧は既に砕けていたが、悪態をつきながらも金色の王は立ち上がろうとしていた。

 

「あぅ・・・」

 

 一方で、盾との衝突のダメージを受けたライダーも無傷とはいかない。

 傷だらけになって、その場に崩れ落ちた。

 

「ライダー!」

 

 オレは思わず叫び、彼女に駆け寄って行こうとした。

 

「ちょっと衛宮君!」

 

「待て小僧!」

 

 その時だった。

 

 ぞわッ

 

 覚えのある悪寒にオレは、思わず全身を硬直させた。

 ヤツだ・・・

 あの黒い影が近くに来ている。

 そう感じて、その感覚の発生源と思しき左前方の方角に目を向けた。

 

 




葛木の車はイメージとしては、マ●ダのアクセ●です。
でも、実際に彼が買いそうなのは軽のような気がしますね。実用性重視・・・
当時、後部座席のシートベルト着用は義務ではなかったんですね。
記憶が定かでなく、改めて確認しました。

前回までは平和ムードが漂っていましたが、ここからはハードな展開に入っていきます。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。