Fate/√knight  【ムラサキノウエ】   作:わが立つ杣

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昼食を終えた後の中央公園にて。


第7話 ~3日目②~ 「すれ違い」

 E turn

 

 

 赤いショートコートを着て、髪の両サイドをリボンで結わえた(確かツーサイドアップというのではなかっただろうか)少女が公園の入り口からやってくる。

 

「こんにちわ、衛宮君。少し待たせてしまったかしら?」

 

 アーチャーも連れてきているのだろうが、今は霊体化しているのだろう。視認することはできなかった。

 

「遠坂は時間どおりに来たんだ。気にする必要はないさ。こっちは食べ過ぎたんで腹を落ち着かせる必要があったしな」

 

「そうなの?・・・あら?セイバーもなの?」

 

 遠坂が不思議そうにオレとセイバーを見る。まあ、普通サーヴァントは食事しないみたいだから、セイバーも食事をしたという点を不思議がっているのだろう。

 

「はい。恥ずかしながら」

 

「まあ、そういうこともあるか。アーチャーも味見程度には食べたりするし。何にせよ今のコンディションは問題ないってことよね。早速、衛宮君が(しら)せたい昨日の話っていうのと、今日からの方針について話し合いましょう」

 

「ああ」

 

 そう応えて、オレは先ず昨日の夜の出来事をかいつまんで話した。

 とは言え、ライダーへの(とど)めをオレが止めたことや血を吸わせた話は伏せて、単に逃げられたという形にしておいた。

 まあ、本筋とは関係ないだろう。

 

「そう。衛宮君と慎二が戦うことになったのね」

 

 遠坂の顔が少し(かげ)る。

 

「ごめんなさいね。あ、衛宮君と手を組むことになったことについてじゃないわよ。慎二がそこまで意固地になったのは、私の突っぱね方が少しキツかったのが影響したのかもしれないってことよ」

 

 多少の自覚はあるんですね。遠坂さん。

 と、突っ込みたい気持ちをぐっと抑える。

 

「それもあるかもしれないが、それだけじゃないと思う。昨日の慎二はやけに好戦的だった。戦いたくてたまらないというか」

 

 さらに付け加えるなら、『オレと』戦いたがっているようでもあった。

 

「そうでしょうよ。簡単に言えば、いきなり凄いおもちゃを手に入れた子供みたいなもんだもの。早くそれで遊びたいし、誰かに見せびらかしたくて我慢できなくなっていたんでしょ」

 

 ええ、ええ。遠坂さん。

 昨日、学校ではその勢いで慎二をやっつけちゃったんでしょうね。

 

「一昨日話したように、あいつに魔術回路はない。だけど、間桐の血筋は魔術師の家系。きっとあいつは、魔術師になりたくて仕方なかったのよ。特別な存在である魔術師にね。サーヴァントを使役するということは、魔術師にしか成せないこと。あいつは、それを実現して有頂天になっていたってわけ」

 

「そういうものなのか」

 

 オレにはピンとこない話だが、そういうこともあるのだろうか。

 

「それで遠坂。慎二がライダーの仮のマスターだとして、本当のマスターは誰だと思う?」

 

 これ以上、遠坂に慎二をけなさせていると、言葉の暴力だけで慎二が殺されてしまいそうなので、少し話の方向性を変えることにした。  

 今、一番気になっていることだ。

 

「おそらく、間桐臓硯よ」

 

「ああ。慎二と桜の爺さんか」

 

 以前、慎二の家に遊びに行った時に、少しだけ見かけたことがある。一見したところかなりの老齢で、杖も突いていた。とても戦えるような人物ではないように思えるが・・・

 

「間桐臓硯は、間違いなく魔術師よ。でも、10年前の聖杯戦争時点でとても戦えるような状態じゃなくて、今回と同様に代理のマスターとして、出奔した息子を無理やり戦争に駆り出したみたい。まあ、慎二の場合は本人も望んだんでしょうけど」

 

「だとすると、本人が出張ってくる可能性は少ないか」

 

 その場合、この状況ではオレが最も危惧する可能性が現実になるかもしれない。

 

「慎二が戦いを放棄した場合、桜が代理のマスターにされる危険があるってことか・・・」

 

 そう。桜が聖杯戦争への参加など望むわけもないが、間桐臓硯が聖杯に固執するのであれば、十分にあり得る話ではないか。

 

「・・・桜・・・・・・ね。その子は、衛宮君にとっては大事な子なのね」

 

 遠坂は少し顔を伏せて考え込んだ。

 

「・・・どうかしら。通常、魔術師の家系は一子相伝。誰かを後継者にすると決めたら、他の子には秘奥を伝えないものよ。今回、慎二がマスターとして参加した以上、他の人物にもそれを伝えるかどうか。そもそも、慎二が一回やられたくらいで、諦めるようなヤツかしらね」

 

「確かにな」

 

 遠坂の答えは、完全に安心できるものではなかったが、そう悪いものでもなかった。引き続き慎二がマスターを続ける可能性が高いということだ。

 とは言え、オレとしては朝から考えていた一つの行動を実行する材料にもなった。

 

「遠坂。オレは、慎二と間桐臓硯のこれからの動向が気になって仕方ない。特に昨日の一件で、慎二の精神状態は不安定になっている。あいつは感情が昂りやすいし、以前も桜に暴力を振るっていた節がある」

 

 その点がオレの心配の種だった。

 

「だから、桜をオレの家に匿おうと思う」

 

 セイバーが少しだけ身じろぎした。

 これが今日の朝、セイバーにも相談した内容だった。

 朝の時点では確定までしていなかったが、遠坂と話して実行すべきだと考えたのだった。

 

「・・・そう。それは、私が何か意見する筋合いのものでもないわ。その子がそれだけ大事だって言うんなら・・・しっかりね」

 

 この件について、もう少し遠坂は異論を唱えるかと思ったが、あっさりと認めてくれた。共闘関係にあるオレが、他のマスターの親族を匿うというのは、微妙な問題を孕む。

 最悪、桜がマスターにさせられた場合、身中に敵を抱えるという構図になるのだ。勿論、オレはマスターにさせられた場合の桜を敵だとは思わないが、遠坂は違うだろう。

 遠坂の態度には少し腑に落ちないものがあるが、敢えて深入りしないことで遠坂なりにオレの私的な感情に配慮してくれたということかもしれない。

 

「それで、今日からのことなんだけど」

 

 遠坂がこの話題はお終いとばかりに話題を変える。

 

「アーチャーはほぼ回復したんだけど万全ではないから、今日は軽めの偵察に止めようと思うの。明日からが本番ってことね」

 

 そういうことなら、今日を休息に充てるつもりだったこちらとしても好都合だった。

 

「そうであれば、オレ達は非番ってことでいいか?一昨日からの連戦で疲労も溜まっているから、少しこの辺で落ち着きたいし、明日からが本番というのはオレ達も考えていたんだ」

 

「構わないわよ。昨日は衛宮君達だけが働いていたわけだしね」

 

「勿論、もし今日の偵察で危険が迫るようだったら、例の石を使って遠慮なく連絡してくれ」

 

「まあ、そんな場面にはならないよう注意するわ。ていうか、昨日のあなたたちのほうがよほど危ない目に遭ってるじゃない」

 

 と、非難の目を向けてくる。

 元々、昨日は石を使うつもりがなかったからな。

 

「まあ、セイバーとライダーの戦力差を考えれば、そんなに切羽詰まった状況にならないって計算があったんだろうけどね。そして、実際に苦も無く撃退しているわけだし」

 

 そう言いながら、今度はセイバーのほうも見る。

 

「ほんと。そういうところは、しっかりと分析できてるわよね」

 

 そう。昨日、手を組んだ遠坂達の加勢が期待できない中でも、慎二の動向を探ったのは、万一そのまま戦闘になっても、負けないという自信があったからなのだ。

 オレも遠坂も、一昨日のライダーの戦いぶりを見ていて、当然セイバーの力も分かっている。この両者がぶつかった時に、結果がどう出るかはほぼ分かっていたわけだ。

 その点、慎二はこちらの力が分からないままに、挑んできたのだから、マスターとしては思慮に欠けたということは間違いない。

 彼我の戦力がわからないままに戦うということは、それだけ危険ということだ。

 

「そんなわけだから、私たちはまだ正体がわかっていないキャスターとアサシンの居場所を探るわ」

 

「だけど、全く目星が立たない状況でどうするっていうんだ?・・・いや、遠坂に限ってそんなことはないか」

 

「ご名答。ある程度敵の拠点の見当はついているの。だから、そこを重点的に探るってわけ」

 

「どこなんだ?」

 

「柳洞寺よ。元々この街では霊的な力が一番強い場所なんだけど、最近一層魔力が集まっているの。聖杯戦争に関係する誰かが動いているんじゃないかしら。一番怪しいのはキャスターのサーヴァントだけど、もしかしたらアサシンのマスターかも」

 

「柳洞寺か」

 

 学校で一番親しい友人である柳洞一成の自宅でもある。

 彼自身がマスターである可能性は皆無に等しいが、今の遠坂の話どおりだとすれば、聖杯戦争に巻き込まれる危険もあるだろう。そういう観点では、心配だった。

 

「まあ、何にせよ今日は深入りしないわ。明日以降の本格稼働前の交通整理ってところよ」

 

「明日の具体的な行動については、今日の遠坂達の調査結果次第ってことになるな。それは、明日、学校で話せばいいか」

 

「そうね」

 

 今日、明日の指針については、これくらいだろう。

 

 

 

 この後、セイバーが前回の聖杯戦争で切嗣のサーヴァントであったことを伝えたうえで、アインツベルンや言峰綺礼のことについて、遠坂に聞いてみた。

 遠坂はかなり驚いていたが、

 

「ああ。衛宮君がセイバーを召喚できた理由は、お父さんとの縁があったからなのね」

 

 と、納得してくれた。

 そして、彼女が知る限りの話をしてくれたのだった。

 アインツベルンについては、聖杯戦争の創始者である御三家と言われる家系の中でも最も根幹を成す家系で、そもそも聖杯の作り手であることなど。

 ちなみに、その御三家の残り二つが遠坂家と間桐家なわけだ。

 言峰については、前回の参加者ではあるものの、具体的に彼がどのような立ち回りをしたかは、聞いたことがないとのことだった。

 ただし、遠坂の父親である【遠坂時臣】のサポートのような立場であったが、結局、遠坂時臣は勝ち残ることができず、命を落としてしまったと言う。

 

「別にあいつのせいだとは思っていないわ。そもそも聖杯戦争は、個々の戦い。綺礼だってマスターだったんだから、最終的には敵同士になる可能性すらあった。父さんが負けたのは父さん自身の問題よ」

 

 この話で気になったのは、セイバーが言峰は最後まで残ったと言っていた事との兼ね合いだ。これが意味する所は、サポートすべき遠坂時臣が先に脱落した後も、言峰は戦い続けたということであり、本人も何らかの目的を持って戦っていたということに他ならない。

 もう少し話そうかとも思ったが、そろそろ家に戻ることにした。

 夕飯の支度以上に、大事なミッションがある。

 桜に今日からうちに泊まるよう説得しないといけないのだ。桜は夕飯前にオレの家に来ることが多いため、そのタイミングで話そうと思っていた。

 

「遠坂。色々と聞かせてもらってありがとう。お前にとっても、あまり触れられたくない話もあっただろう。すまなかった」

 

「衛宮君、あまり私を舐めないでね。この戦いに臨む以上、そんな感傷は引き摺っていない・・・・・・って、そんなわけないか。わかったうえで、謝ってくれてるのよね。あなた」

 

 そう、わかっている。遠坂凛は親の死などで揺らぐことはないと、彼女自身がそう規定しているであろうことを。

 しかし、それはあくまでも自分の中でのルールに過ぎない。本当にそれを消化しきれているかと言えば、きっと違うだろう。

 

「買い被り過ぎだ。ところで、帰りは少し急ぎたいからバスを使う。遠坂はどうするんだ?」

 

「途中までは一緒だから、私も同じところまで乗っていくわ」

 

「そう言えば、バスという乗り物に乗るのは初めてです」

 

 遠坂との会話では、聞き手に徹していたセイバーが目を輝かせる。

 

「あんまり、期待しないでくれよ。爽快感とか欠片もないからな」

 

「そうなのですか?」

 

「セイバーが走ったほうが速いんじゃないかな」

 

「ま、体験すればわかるわよ。それじゃあ行きましょうか」

 

 と言って、遠坂が先頭に立つ恰好になり、三人でバス停に向かった。

 

「知り合いに見つかったらちょっと嫌だな・・・」

 

「何が不満なのよ?」

 

「いや・・・何でもない・・・」

 

 ただでさえ、セイバーと一緒にいると目立つのに、そのうえ学園No.1の人気を誇る美少女優等生(嘘)と休日一緒にいるところを見つかったら、学校中のやっかみの視線の餌食になることは明白だった。

 

 

 

 夕飯の食材を買い求めるため、深山町商店街付近のバス停で降り、馴染みの八百屋に向かおうとしたところで、

 

「先輩?セイバーさんも。あれ、遠坂先輩も?」

 

 桜に遭遇した。

 白いワンピースに桜色のカーディガンを羽織っていて、よく似合っている。

 それにしても、タイミングがいいというか悪いというか。

 なんとなくバツが悪い。

 

「あいや。私はたまたま同じバスになっただけよ。知り合いだし、少しくらい話をしてたけど」

 

 珍しく遠坂が狼狽(うろた)えていた。

 

「そうなんですね。先輩と遠坂先輩が仲がいいなんで知りませんでした」

 

「ま・・・まあ、同じ学年なわけだしね。一成っていう共通の知り合いもいるし・・・あ、それじゃあ私は家に帰るわ。それじゃあね」

 

 それだけを言って、そそくさと遠坂は道の向こうへと消えていった。

 

「新都のほうにお買い物だったんですか?」

 

 ちらっと、セイバーが持っているファンシーショップの袋に目をやりながら聞いてきた。そこには購入したぬいぐるみが入っている。

 後ろめたいところは全くもって微塵もないはずなのに、何故か少しヒヤッとした汗がこめかみをつたう。

 

「ああ。セイバーにこの街のことを色々と教えてあげたくてな。学校がある時には、なかなか時間を作れないから」

 

「先輩は偉いですね。それじゃあ私も今日はこれで失礼しますね」

 

「いや、桜。ちょっと待ってくれ」

 

 明らかに桜はこの商店街で食材を調達してから、うちに来ようとしていたはずだ。変な気を回させて、その厚意を無駄にさせるわけにはいかないし、例の話をする機会を逸してしまう。

 

「セイバーへの街の案内はもう終わった。この商店街だって午前中に見てもらったしな。オレも夕飯の食材を買うためにここに来たんだ。折角だから何を作るか話しながら、一緒に買い物をしよう」

 

「でも、セイバーさんもいますし」

 

「私への気遣いは無用です。桜。シロウや桜に美味しい料理を作っていただくのですから、せめて荷物持ちくらいはさせてもらいたい。それに、二人の話を聞きながら、この国の食材を鑑賞するのも新鮮です」

 

 セイバーが絶妙な言い回しでフォローしてくれた。

 もっとも、衆人環視のこの商店街で、荷物持ちを女性にさせるのは、オレの世間体にもろに関わるので断固抵抗するつもりだ。

 

「な。セイバーもこう言っているし。みんなで一緒に買い物をしよう」

 

「そういうことならわかりました。何て言うか・・・すいませんでした」

 

 桜が少し頭を下げる。

 いや、桜はセイバーに気を遣ってくれただけで、謝るところじゃないと思うんだが。

 

 

 

 そんなわけで、商店街の店を渡り歩き、3人で夕食の食材の買い出しを済ませた。

 

「昼は洋食メインだったから、今夜は鍋にしよう」

 

「いいですね。先輩」

 

「おお・・・また、初めての料理ですね。楽しみです」

 

 ビュッフェでたらふく食べたわけだが、セイバーの食欲は底が知れない。材料は多めに買っておいたつもりだ。余った場合には、明日以降に回せばいい。

 荷物持ちについては、案の定一悶着あったが、セイバーがぬいぐるみを持っているため、食材を多く持つのはオレという形になって落ち着いた。

 そうこうしているうちに、家に着く頃にはすっかり日が落ちていた。

 まあ、今日は鍋なので、準備にそう時間はかからないしご飯は予約タイマーで炊飯中だ。

 玄関を閉め、荷物を置いてからすぐに居間に3人で集合した。

 藤ねえもそろそろ現れるだろう。

 

 

 

「さてと」

 

 藤ねえが来てからにするか、その前にするか悩みどころではあったが、先ずは本人と1対1で話して了承を得てから、藤ねえを説得するべきと考え、例の話を切り出すことにした。

 

「桜。突然で悪いんだが、今夜からしばらくうちに滞在してくれ」

 

 単刀直入に伝えるべきことをはっきり言う。

 

「え?」

 

 当然、桜は戸惑う。

 

「理由は二つある。最近、街で物騒な事件が立て続けに起きているだろう」

 

 実際に殺人事件や昏睡事件が起きている。

 殆ど直感に過ぎないが、もしかしたら、聖杯戦争に関連しているかもしれないとオレは思っていた。

 

「桜の家は、お爺さんと慎二しかいないけど、慎二はたまに夜遊びが酷くて帰るのが遅い。それが心配だ」

 

 理由として苦しいのは百も承知だが、とにかくオレが心配しているというのを伝えることが大事だと考えていた。

 

「そして、もっと大きな理由が慎二のことだ。昨夜、慎二と話す機会があったんだが、情緒不安定になっているみたいだった。原因はわからないがトラブルがあったらしい」

 

 慎二が感情的になっているのも、遠坂に散々やられたことも一応事実である。

 

「あいつとは付き合いが長いから、結構よく分かっているつもりだ。こういう時に、何をしでかすか・・・いや、正直に言うと、桜に対して何か八つ当たりのようなことをするかもしれない」

 

 とにかく目的は間桐家と桜の接点を少なくしたかった。そして、桜を守りたい。

 嘘をつかない範囲で何とか説得するしかないのだ。

 

「・・・・・・先輩。とにかく先輩は私を心配してくれているということですね?」

 

 沈黙していた桜が問い掛けてきた。

 

「そうだ。頼む」

 

「わかりました。ありがとうございます。そこまで、私なんかのことを気に掛けてくれて」

 

「私なんかなんて言うな。桜はちゃんとしている。自分自身のことを卑下する必要なんかない」

 

 それはともかく、承諾してくれて良かった。

 頑なに突っぱねられたら、どうしようもなかったかもしれない。

 

「確かに、昨日から兄さんの様子がおかしいんです。何かに怯えているみたいで。今日の朝からどこかに出掛けていて、少なくとも私が家にいる間は戻ってきませんでした」

 

「そうか。桜も気付いていたんだな」

 

 それにしても慎二は、今日一日不在だったのか。

 単に休日なので遊びに繰り出したということも普段ならあるんだろうが。

 仮にも今の慎二は、サーヴァントを失ったマスターだ。

 もしかしたら、教会に保護を求めたのかもしれないな。

 と思案していたところで、

 

「シロ~!晩ごは~ん!」

 

 タイミング良く、腹ペコの飼い虎がやってきた。

 

 

 

 話の展開次第では、折角の食事が台無しになるので、桜を泊めるという話は食事中ではなく、落ち着いたところで、藤ねえに話すことにした。

 ちなみに、セイバーは昼間あれほどビュッフェを食べたにも関わらず、締めのおじやを3杯食べていた。

 

「本当に底なしだな・・・」

 

「どうかしましたか?シロウ?」

 

 そのセイバーのセリフに戦慄しつつも、桜の滞在について説明したところ、意外なほどあっさりと藤ねえは賛成してくれた。

 セイバーの時はそれなりに抵抗があったが、まあ、男女二人きりよりマシということか。あるいは、家族同然の桜であるということが影響したか。

 途中、ニヤニヤと変な笑みを浮かべながら、

 

「うふふ・・・士郎もやっとその気になってきたのかしらね~」

 

 などと言っていたのが気にはなったが。

 藤ねえは、この件について、間桐家の保護者、即ち間桐臓硯に連絡することも買って出てくれたし、桜の着替え等についても準備してくれたのだ。

 

「じゃあ、電話してくるわね」

 

 そう言って、実際に廊下に置いてある電話機へと向かっていった。

 勿論、桜の滞在の理由は、慎二が不安定などというものではなく、外国人(つまりセイバー)との異文化交流のためという名目である。

 

「先生が言うのならってことで、あっさり納得してくれたわよ」

 

 すぐに戻って来て、藤ねえは向こうの反応を伝えてくれた。

 ということは、間桐臓硯は桜を聖杯戦争に駆り出すつもりはないということだろうか?

 

「藤村先生。ありがとうございます」

 

 桜も嬉しそうに藤ねえにお礼を言った。

 

「セイバーさんもこれからよろしくお願いします」

 

「こちらこそ。桜の料理も美味ですから、私も大変嬉しいです」

 

 桜とセイバーもこの2日間で多少打ち解けている。

 若干ぎこちないものの、これからしばらく同居することになるわけで、しっかりと挨拶を交わしていた。

 それにしてもセイバー、お前、ブレないな・・・

 今後、オレが不在時の慎二の動向には気を付けないといけないが、日中は基本的に学校だし、夜になったら呼び鈴が鳴っても鍵を開けないようにすれば問題ないだろう。

 桜の部屋の準備などで少しバタついたが、今日は休息に充てる日と決めたのだ。

 土蔵での鍛錬は早めに切り上げて、しっかり寝ることにしよう。

 

 

 

 その夜。

 オレは夢を見た。

 それは、とても人には言えないくらい淫らなもので。

 そこにはオレと遠坂の二人だけしかいなかった。

 




凛との会話メインの回ですが、桜と凛を僅かに絡ませています。
普通状態の桜の会話は、常に抑制が必要なので凛とは正反対に書くのが難しいですね。
やはりはっちゃけている時のほうが楽しい・・・

※タイトルつきました。
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