廃品回収 作:恵比寿酒
何もない世界を進む。ここが何処なのか知らない。自分が誰なのかさえ分からない。上下左右の感覚も、時間の感覚もないが、変化を期待してただ進む。
そもそもここは何処なのだろう。白色のような、黒色のような。色が付いているか分からないし、自分が生きているのか死んでいるのかさえ怪しい。
自分は誰だっただろうか。何をしていたのだろうか。何かを壊してばかりだった気もするし、慈しみ育てていた気もする。ただ、いつも何かの為に動いていたのは覚えている。
「そうだ、
何かを思い出しかけた瞬間、風が吹いた。
「……また、あの夢かぁ」
ここ数日、妙な夢を見続けている。何かを思い出そうとしているのだが、目が覚めると思い出そうとしたものすら忘れてしまうのだ。夢の中の俺は、何を思い出そうとしていたのだろう?
……いや、今気にしても仕方ないか。今日も学校があるし、動かなければならない。
「……おはよう」
「おっはよー!」
「おはよう御座います」
着替えて部屋を出れば、2人の少女が朝食の準備をしていた。挨拶と共に名前を呼ぶと、こちらを振り向き挨拶を返してくれる。
俺たち3人は赤ん坊の時から付き合いのある幼馴染みで、家もすぐ隣だ。家族ぐるみで仲が良く、誰かの両親が家にいれない時に預けられたりもよくある。
短い髪の少女が、こちらに話しかけてくる。
「もしかして、今日も変な夢見た?」
「……なんでそう思ったの?」
「変な夢を見たって言ってから、いつも寝起きは眉間にシワが寄ってますよ」
「えー、俺ってそんなに顔に「出やすい(です)」」
顔に出やすいなんて言われたことは殆どないんだけどな。それとも皆言わなかっただけで、そう思っていたのだろうか?
まぁいいか。今は朝食の準備を手伝わないとな。2人に何か言われたりはしないだろうけど、任せ切るのも悪い。
「俺も手伝おう。何すればいい?」
「なら、そこの食器を取ってくれますか?」
「りょーかい」
朝食の準備をしていきながら適当に会話をする。いつもと同じ朝の光景のはずだった。その会話が始まるまでは。
「そういえばさ」
「どうした?」
「んー。今日が初めてなんだけどね。実は私たちも変な夢見たんだ。しかも2人とも、殆ど一緒の内容」
「へー。どんな夢?」
今朝の夢を思い出しながら質問する。同じ内容なわけがないという考えと、もしかしたら同じかもしれないという考えも少しだけ持ちながら。
「うーんとね。気がついたらよく分からない場所にいるんだ」
「よく分からない場所?」
「はい。上下左右も、時間感覚も曖昧な場所です」
今朝の夢を思い出す。同じ光景なのか。という考えが俺の中で大きくなる。
「わかんないからとりあえず進むんだ」
「そして思い出しかけた瞬間、目が覚めるんです」
もしかしたら、じゃない。これはきっと同じ夢なんだろう。俺が見た夢と。俺は夢の内容を彼女たちに話していないから、彼女たちが話を合わせている事もないはずだ。でもなんであの夢を?同じ夢を見る可能性なんて、そうそうないはず。特にあんなに妙な夢は。
彼女たちがこちらを見てくる。目と目が合う。問いかけてくる。
「■■が見た夢も、おんなじ夢?」
「俺が、見た夢は──」
彼女の質問に答えようとした瞬間、世界が燃えた。
突然目の前が真っ赤に染まる。思わず悲鳴をあげようとして、体が燃えていることに気がついた。熱い。空気を吸い込もうとして肺が焼けた。悲鳴が聞こえる。いや、俺の悲鳴かもしれない。誰が誰の声なのか分からない。熱い。苦しい。何が起きたんだ。誰か助けて。熱い熱い熱い熱い熱い!
あまりの苦しさに、もがいて、もがいて、もがいて。それでもダメで。
しかし意識が飛ぶ直前に、風が吹いた。
──ふと気がつくと、知らない場所にいた。塔の最上階だろうか?青空が見える。何故か懐かしい気分になると同時に、不思議な気分になった。
何か違和感を考えて、すぐに気がついた。これはあの夢の中と同じだ。そう気づくいた瞬間、何かを思い出せそうな気がしてくる。俺が思い出そうとしたもの。自分が何者で、何をしてきたのか。あの夢は一体──
「そうだ、
自分を思い出した瞬間、黄金の瞳と目が合った。
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遠い、遠いどこか。並行世界、あるいは更に遠い場所に、ソレはいた。
かつて神と、創造神と呼ばれた者。
彼は思考していた。己が創りし世界は、既に自分の手を離れた。これ以上自分が手を出すべきではないだろう。だからといってこの世界を眺め続けるつもりもない。何か、他のものを見てみたかった。
どうしようかと考え、ふと他の世界に目を向けると真っ赤に焼けた世界が見えた。星が、歴史が、人々が燃えているのが見えた。
己が手出しできる範囲ではない。遠すぎる。しかし、見捨てるのは躊躇われた。なぜなら燃えた星で未だ光が見えたから。そして何より、彼なら間違いなく手を伸ばしただろうから。
彼はしばらく考えると、かの世界に向かうことに決めた。ただし己自身ではなくその欠けらを、その世界の過去に。万が一のことがあっても大丈夫だろうと踏んで。
けれど送る前に少し考え、己だけではなく他の者の欠けらも送る事にした。1人より、何人もいた方がいいと考えたから。他の者は世界中から己に近しい者たちを選んだ。
果たして自分たちの欠けらは、遠い世界の少し過去に届いた。少々傷ついていたため記憶などが削れたかもしれないが、きっと大丈夫だろう。
成功したのを見届けた彼は満足すると、使った力を回復させる事にした。眠る前に己と心通わせた人間を見ると、彼ならどうしただろうかと考えながら眠った。
彼に1つ誤算があったとすれば、送られた欠けらたちが人間に転生したことに、気がつかなかった事だった。
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人理継続保証機関、フィニス・カルデア。その召喚部屋。そこにて、人類最後のマスターによる英霊召喚が行われようとしていた。
焼却された人理を救うには7つの特異点を復元しなければならない。しかし特異点にいくには、戦闘要員がマシュ・キリエライト1人では危険すぎる。故に、システムフェイトによる英霊召喚が行われようとしていた。
私、藤丸立香は召喚を開始しようとしていた。カルデアの余力で現在召喚できるのは一回限りらしい。だからこの召喚で戦闘ができ、なおかつこちらに友好的なサーヴァントを召喚しなければならない。Dr.ロマンたちはダメでも気にしてはいけないと言っていたけど……責任は、重大だった。
「素に銀と鉄。礎に石と契約の大公──」
周りの視線を受けながら、指示された呪文を紡ぐ。不安感で折れそうな心は、周囲からの期待と召喚する相手への希望で奮い立たせた。
大丈夫。大丈夫。私はまだ頑張ります。生きたいんです。だから誰か助けて下さい。私たちの未来を切り開いてください。どうか、希望をください。
血を吐くように、一言一言に力を込める。そして祈りを捧げ、最後の一句を紡ぐ。
「──抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ!」
マシュの盾から光輪が現れ、回転を始める。それが3つに分かれると、中心に金色のカードが現れる。描かれているのは、天秤を持った乙女だ。それを確認した瞬間風が吹き荒れ、思わず目を瞑った。マシュが私を庇おうと動いたのがわかった。台風のような、とんでもなく強い風だ。吹き飛んでしまいそう。なんとか耐えていると、徐々に弱まっていく。
風が止まると、私はゆっくりと目を開けた。召喚場所に、知らない人物がいた。この人が呼び出されたサーヴァントだろう。私が呼び出したサーヴァントは、青年の姿をしていた。見た目は私と同じくらいに見える。高校生ぐらいだろうか?学生服らしき物を着て、翡翠色の髪をしている。瞳を閉じているため目元は分からないが、それでも美しい顔つきをしているのはわかった。
一歩、彼へ歩みを進める。マシュが付いてきてくれようとしているが、制止した。信頼を築きたいなら、相手と対等にならないといけない。もし非協力的だとしても協力してもらなくちゃいけないから、とにかく信頼を築かなければ。
私が近づくと彼がゆっくりと目を開け、黄金の瞳と目が合った。
「サーヴァント、ルーラー。召喚に応じ参上した。問おう。あなたが