七星剣舞祭、それは全国の
毎年、多くの伐刀者が己の誇りと実力を胸にこの大会へと挑む。百戦錬磨、一騎当千と名高い猛者たちの闘いは見る者を魅了し、奮い立て、感動させる。その中で頂きに立った者には七星剣王の称号が得られる。
七星剣王に立てるのはその年でたった一人。
この物語はそのたった一人に選ばれた男。
────────────────────
「(紛争とか)やめてくれよ…」
そう男が嘆く場所はまさに戦争のど真ん中。戦場にいるというのに一般人かと思ってしまうほど簡素な服装。顔は優男のようで明らかに場違いだ。そんななか地獄絵図という表現が相応しい程に辺りには怪我あるいは骸と化した伐刀者の姿がある。
この景色を見れば誰だって戦いをやめて欲しいと思うだろう。尤もこの男もその戦いへ身を投じているのだが。
『いたぞ!』
「ん?」
そんな男の前に敵と思われる、こちらも伐刀者が4人。
『くらえ!』
そして敵から繰り出された攻撃はその手に持った武器や魔法、ではなく……
瞬間、目の前に広がる閃光、熱、音、それらは男の感覚器官を確かに攻撃する。
「うわっ!?」
『今だ!相手はもう何も見えないぞ!』
そして計ったように飛びかかる伐刀者達。五感のうち聴覚、視覚、加えて触覚にダメージを受けた今、その攻撃を避ける術はない。
この男を除いては・・・
「なんで視る必要があるんですか?」
刹那、男の姿がブレる。瞬間移動かと思ってしまうほどの高速移動。はたしてこの男の姿を捉えられた者がいたかどうか。
答えはコンマ数秒後の世界が物語っていた。
糸が切れたかのように崩れ落ちる男たち。立っていたのは明らかに武装した男たちではなく、一般人?の方であった。
「はぁ、はやく日本に帰りたいな」
見る人が見れば神業かと賞賛されるレベルのことを成してながら男は気だるそうに空を見上げる。
「おっ木村ぁ」
後ろから声がかかる。木村と呼ばれた男は振り返る。
「先輩、何してるんですか?」
「そりゃあテロリスト狩りでしょ。社会のゴミを狩るのも正義の仕事、はっきりわかんだね」
そして木村に先輩と呼ばれた男は、グッと背伸びをしながら自慢そうに答える。その姿は木村と同じ日本人のようだが、臭そうという言葉が似合う容姿をしており、見る人によって不快感を感じてしまいそうだ。(酷評)
「傍から見たら僕たちもテロリストのようなものですよ。ていうかこれくらいの規模なら先輩一人でよくないですか?仮にも七星剣王ですよね?」
「七星剣王、田所浩二でも仲間がいないと心細くなるんだぞ!」
その
「そういえば三浦さんはどうしたんですか?」
「ん?それなら今こっちに向かってきているはずだぞ~」
そういいながら浩二は腕を頭の後ろに組み、腰を横に振るという気持ち悪い動作でご機嫌に返す。
「・・・早く帰りたいなぁ」
先輩のそんな気持ち悪い姿を見て、気持ち悪いと思うのは必然だろう。少しでも気分を和まそうと目の前の地獄とは対照的に青い空を見上げる木村。
「そうだよ」
まるで木村の言葉に便乗するかのようなセリフに振り返る二人。
「おっ、三浦ぁ!」
「三浦さん、お疲れ様です」
「道中に敵と会わなかったゾ。さすがだゾ、二人とも」
三浦と呼ばれた坊主の男は木村と浩二に称賛を浴びせる。この男も一般人のような場違いな服装をしているが、戦場というのに傷一つ見当たらない。
「あっ、この辺にぃテロリストのアジトあるらしいんだけど、焼いてかない?」
すると、思い出したかのように話題を切り出す浩二。どうやら敵のアジトというめちゃくちゃ大事な情報をいままで忘れていたらしい。
「おっ、待てぃ。まずは、偵察ゾ。木村頼んだぞ」
「えぇ・・・」
しかし、それが当たり前という風にスルーした三浦は木村の背中をたたく。
「後輩なんだし当たり前だよなぁ?」
そして三浦に便乗する浩二。
「(上下関係使うの)やめてくれよ・・・」
そして再び、木村は青空を仰ぐ。やっぱり先輩についていかなければよかったと。
「ん?ちょっと待つゾ」
────────────────────
「やぁ〜、いい時代になったものだ」
男はそう言いながらソファに寝そべり、スマホを通して自身の口座に振り込まれる大量の金に笑みをこぼす。場所は紛争が起こってる場所から少し遠くにある屋敷。そこが件のテロリストのアジトであった。
「知ってるか?昔は
「それが今では俺たちの手から勝手に道具が出てくるんだから無駄がなくて
その言葉に周りの男たちも笑みをこぼす。
「ボス、それじゃあまるで俺たちが慈善事業してるみたいじゃないですか」
「そりゃそうよ!環境を汚染する人間たちを排除する、そしてお金も貰う。これぞwin-winの関係ないよ!」
ボスと言われた男の笑い声に周りの男たちも釣られて笑い出す。
「ボス!」
そんななか、下っ端と思われる構成員が扉を開け放ち、焦った様子で走ってくる。
「国連のヤツらが到着しました!」
「来たか・・・」
その言葉に瞬時にボス、デトロ・アケロイトは思考を巡らす。
(紛争の規模はそこまで大きくないが思った以上に対応が早かったな。こっちの戦闘員はうちの下っ端とそこら辺で雇った傭兵くずれ。どうせすぐに制圧される。ならさっさと見捨てて逃げるか)
「よし、お前ら!雑魚は見捨てて撤退だ!」
『おう!』
その言葉と共に手下達はせっせと撤退の準備を始める。
「ま、待ってください!まだ他に戦ってる人がいます!」
アケロイトに抗議するのは先程、伝令として走ってきた下っ端の男。その男に向かってアケロイトは
「ん?あぁ、じゃあそいつらに伝えといてくれ。後で必ず迎えに行くとな」
「・・・え?」
「俺が来るまで踏ん張ってくれってことだ、分かったらほら、伝令だろ!走れ!」
「は、はいぃ!」
アケロイトが伝令の男の背中を叩くと男は一目散に駆けていった。
「え、助けるんですか?」
「あ?逃げるに決まってるだろ」
当たり前だろと言う感じに自身も撤退の準備を始めるアケロイト。そもそもあの伝令の男以外には
「まったく、いい時代になったものだ」
「おっす、お願いしま〜す」
そんな気の抜けた声と共に爆発のような音を立て、扉が吹き飛ぶ。
「だ、誰だ!?」
アケロイトやその部下が一斉に自身の獲物を構える。
彼らの視線の先には3人の男。
「あの、偵察が意味を成してないんですがそれは」
呆れたと言わんばかりに肩を下げ、余裕な様子を見せる日本人の男。
「どうせこうなってたゾ、もう諦めるゾ」
ため息を零しながら白目を向く同じく日本人の坊主。
「いきますよ〜いくいく」
3人の中で1人だけやる気に満ち溢れた男、他2人と同じ日本人だが、唯一違うのはこの男だけ武器を持っていることか。その手に持った野太刀は無骨ながらも怪しい黒光りを放っており、誰が見ても業物だと思わせるオーラを纏っている。
「じゃあ先輩、任せましたよ」
「おう!見とけよ見とけよ〜」
そして男は口にする
「いきましょうか、
─────────────────
「あ〜疲れたんもおおお!」
「キツかったゾ(事後処理)」
そんな言葉と共にある場所へ帰ってきた先輩御一行。そんな彼らを待っていたのは
「よぉ、思ったよりも早く終わったな」
かなりガタイのいい日本人男性だった。スーツを着ているが、その佇まいから只者ではないのは明らかだ。
「秋吉さん、もっと歯応えのあるやつ頼むよ〜」
「お前レベルが歯応えを覚えるような奴はそうそういないんだ。我慢しろ」
肩を回しながら、ニヤニヤと余裕な表情を見せる田所。それを見て秋吉は腕を組みながら笑みを浮かべ応える。
ここは『秋吉傭兵事務所』。金さえ払えば、ではないが、金次第で危険な仕事も引き受ける傭兵派遣会社だ。田所、木村、三浦の3人はこの事務所所属の傭兵だ、というよりもこの事務所所属の傭兵はこの3人しかいない。
「ところで、田所。一ついいか?」
「お、なんすか?」
「なんで2人も連れて行ったんだ?」
秋吉の疑問は当然だった。自分は田所浩二1人にこの仕事を委託した。だが、まさか事務所総員でかかるとは思ってなかったのだ。
「あ〜、ほら俺だけだと何かあったらマズイじゃん。だから保険として2人を連れて行ったんだぞ〜」
歯切れ悪く答える田所。実のところ、特に理由は無いのだがそれを言ってしまえば怒られるのは避けられない。ゆえにその場しのぎの理由を話す。
「ほぅ・・・」
田所の考えを見抜いているのか、じっと睨む秋吉。田所は蛇に睨まれて潰れたカエルのような気持ちになる。
「あ、そうだ。秋吉さん。今回のテロリスト、やっぱりトカゲのしっぽだったゾ」
「やはりそうか」
「依頼人を聞いても、知らない、そもそも顔も見た事ないと言ってたけど口座を辿っても何も出てこなかったからマジだゾ」
「いったい何がしたいんだ・・・」
三浦の言葉に思案した様子を見せる。田所は自分を解放してくれた三浦に手を合わせ、感謝のサインを送る。気づいた三浦も口端をやや釣り上げて応える。
「そうだ、田所。お前依頼金はどうした?」
「ん?三浦、依頼料持ってる?」
「え、事務所に振り込まれてるんじゃないのかゾ?」
「・・・」
「ファ!?三浦、お前事後処理は俺がしとくって言ったじゃねえか!」
「まさか直接受け取る方式なんて思ってなかったゾ」
慌てる田所に頭を抱える三浦。2人が慌てるのは何も仕事をしっかりこなせなかったからではない(それはそれで問題だが)。この2人が慌てている理由はただ一つ。
「そうか、つまりアレか」
「「あ・・・」」
「
すさまじいオーラを放つ秋吉。この2人が恐れたのは他ならぬ激怒した秋吉だった。
「ちょ、俺は悪くねえ!(某親善大使)」
「俺、田所についていっただけだゾ」
「ファ!?それはないっすよ。木村!お前からも・・・!」
木村に助けを求めようとする田所。しかしすでに木村は危険を察知したのかこの部屋にはいなかった。
「オラァ!」
「「ああああああああああああ!!!!」」
秋吉の折檻が終わるころには、既に日が暮れていた。
野獣先輩って地の文だと何て呼べば良かったんだ?
三人称視点ムズスギ。