KHK、神浜放送協会は神浜限定の色々な意味で悪名高い放送局だ。
ヴォルカはそんな放送局の集金係のバイトをこなしてきたのだ。
しかし、今回のワルプルギスの夜のせいでテレビ局のあった中央区は壊滅。
重役はたまたま市外に行っていた社長を除いて全滅。
そして今日、KHK最後の会議が行われることになった。
「集金係も生き残ったのは君だけか」
「そうみたいだな、社長。これ以上悪事は働けないってわけだ」
「ADもプロデューサーも何もかもが全滅だよ。
でもまあ、君はいつも通りにすればいい」
「いつも通りって・・・集金かよ、こんな大変なのに」
会議室は風が吹き込むほどボロボロであった。
ボロボロどころか、骨組みしか残っていないのだ。
中央区はどこもかしこも廃墟であった。
「大変だからこそだよ。集金という点では悪名高いが、
私たちは迅速で楽しい番組を常に提供してきた。
そんな私たちの復活を神浜市民たちは心待ちにしている。
そこに付け込むんだよ。復活の名目で集金した金は君の好きにしてくれ。
どうせ復活しないつもりだから」
「それって詐欺じゃねえか」
「仕方ないって言い訳すればいいんだよ」
そして、社長は溜息をついた。
「本当は金なんてどうでもよかったんだ。
君も神浜市が歪んだ街だって知ってるだろ?東西の対立とか。
私はね、そんな街が嫌だった。だから、こんなクソ放送局を創り上げたんだ。
東西関係なく嫌がらせをするためにね。でも、もう必要なさそうだ」
「・・・今だけは泣いていいぞ、社長」
「・・・うん。さようなら、ヴォルカくん。また天国で会おう」
「てめえが天国に行けるならな」
なにはともあれ、集金係ヴォルカの最後の集金が始まった。
最後の最後まで、KHKは神浜に嫌がらせをするのだ。
「おら、集金だ。とっとと金出せや」
「ちゃんとバイト選びなさいよ。あなた、ルックスとかいいんだし・・・」
「モデルは体型維持とかめんどくせえ、以上」
「はいはい・・・ほら」
やちよはお金を渡した。どうせ戻ってこないのだが。
「それにしても、どこもかしこも酷いザマだな」
「だからこそ、KHKに皆期待しているのよ。明るい番組作ってちょうだい」
その番組を作るスタッフは全員が今頃は地獄に落ちているだろう。
ヴォルカはあちこちの世帯から金をむしり取っていく。
そして、西側からむしり取り終わると、次は東に向かう。
「十七夜の家・・・ここだったはずなんだが・・・」
貧乏な家からもっとむしり取ろうとしたら、その家がなかった。
家があった場所には、十七夜が一人立っていた。
「・・・十七夜、集金に来たぞ」
「ほう、家も家族も失った私からこれ以上何を奪い取るつもりなんだ?」
「じゃあ、やめとくよ。ここだけの話、KHKも社長と俺以外は全滅だ」
「あの社長、やはり悪運は強いな。はっきり言って、嫌いな人間ではなかった」
「お前も色々な意味で悪運が強いよ。詐欺被害に遭わずに済んだからな。
復活資金という名目で集金した金は好きにしろと社長に言われたからな」
「いかにもKHKらしいな。あれは東西に喧嘩を売った唯一の存在だった」
「まあ、今日で終わりだけどな。ところで、金いる?」
「さすがにそんな金に手を出すほど落ちぶれちゃいない」
次はみたまの家に向かった。
「あっ、兄ちゃ!ほら、お金!」
「ありがとな・・・と言いたいとこだが、今日はいいよ」
「えっ、いいの?」
「いいよー」
彼はその後も一通り東側を回ってお金をむしり取っていく。
そして、その足でフラワーショップ・ブロッサムに向かった。
「菊しか置いてねえのかよ。別にいいけどさ」
「需要の問題よ・・・このみがいなくてごめんね」
「別にババアが謝ることじゃねえよ」
「何か行ったかしら?」
「別にお姉さんが謝ることじゃありませんから、そのはさみをしまってください」
そして、北養区の山中にどこでもドアで移動する。彼の転生特典はひみつ道具だ。
向かった先には、転生者たちの墓があった。
「ほれ、菊置いとくぞ・・・今日でKHKはおしまいだ。
お前らの次の転生先に民放がないことを祈るぜ、じゃあな」
菊を買っても、まだ集金した金は有り余っていた。
有り余り過ぎて、困るほどだった。
「はあ・・・何か食べに行くか」
翌日、ベンチで冷たくなっている社長が発見された。
その傍には睡眠薬の瓶が転がっていた。自殺だった。