ワルプルギスの夜は倒したけれど・・・   作:ryanzi

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ののかは混沌の生存を見る

治療は失敗に終わった。

 

「・・・今の薬は何だったんですか?」

 

「いえ、気にしなくていいのよ」

 

どういうわけかSCP-500を用いてもかこの失明は治せなかった。

もう一錠服用させるのは危険すぎる。何が起こるかわかったものではない。

いくら便利でも、SCPはSCPなのだ。

 

「・・・ごめんね、幽くん」

 

「・・・気に病まないでほしいでやんす」

 

文山ののかは前世では数学とSCPが好きだった。

だからこそ、転生特典を選ぶのに”方程式”を選んだのは自然だった。

それはマン博士の提言に登場する異常物を創造する数式。

彼女が戦闘時に使うスクラトン現実錨もその数式を用いて製造したものだ。

 

「私ったら・・・肝心な時に役に立たないわね」

 

病院から帰った彼女はベッドに寝転んだ。

SCPは万能ではないことはわかっている。

それでも、無力感に苛まされた。

 

「・・・転生者って、なんでもできると思ってたけどね」

 

彼女はカーテンを開けて、水名区を眺める。

未だにあちこちで煙が上がっていた。

水名女学園も窓ガラスが全て割れたり、体育館が崩壊したり・・・。

生徒にも死者が出たり、行方不明になっていたりと散々であった。

 

「原作より酷くなったわね・・・これも原作介入の結果かもしれないわ」

 

もし第二部になったら、この街の魔法少女は対抗できるのか?

わからない。何も、わからなかった。

 

(それも人生の醍醐味と受け入れるしかないわね)

 

その時、インターホンが鳴る。玄関まで降りて行き、ドアを開ける。

訪れてきたのは更紗帆奈だった。もう一度言おう、更紗帆奈だった。

 

「あの世がパンクして溢れ返ったのかしら?」

 

「今まで何億人も受け入れてきたのに、今更パンクするわけないじゃん。

とりあえずさ、家に入れてくれない?お菓子も持ってきたから」

 

はっきり言って、帆奈は信用できない人間だ。

今のように、死んでいるはずなのに生きているからだ。

どうやら、神は更紗帆奈生存説を支持しているようである。

だが、話が進まなさそうなので家には入れてやった。

 

「・・・今の神浜を見て気分はどうかしら?」

 

「最高だよ、あっは!」

 

とりあえず安物の紅茶を淹れる。

 

「そう・・・こっちは最悪よ」

 

「自信満々で挑んでコテンパンになったから?

せっかく強くてニューゲームしたのにねー、あっは!」

 

「・・・あなたに隠し事は無駄みたいね。

私の方からも聞きたいけど、秋山くんにどうして姿を見せなかったの?」

 

秋山聡は帆奈と仲の良い転生者で、彼女の死後も生存説を信じて捜したくらいだ。

彼という人間がいながらも、結局、彼女は凶行に及んだのだ。

それを知った彼は何度も何度も彼女を説得しようとしたが、失敗したらしい。

 

「・・・だって、面倒くさいもん。色々と突っ込んでくるし、うるさいし。

アイツ、妙に鋭いから、隠れ場所も何度か変えないといけなかったんだよ。

というか、どうせ今頃は別の世界で別の女の尻でも追っかけてんじゃないの?

”アンタたち”ってそういう()()のはずでしょ」

 

「・・・否定はできないわね。じゃあ、次の質問よ」

 

「言っとくけど、かこの件については無関係だよ。

そもそも、あの語尾だけが残念な王子様は変な力に目覚めたじゃん。

アンタらがいるせいで、変なことが起きてるんじゃないの?」

 

「じゃあ、もう質問はないわ。あなたの話をしてちょうだい」

 

「普通、あたしが先に話をするべきだと思うんだけどさ?」

 

「だって、あなたのことだから一方的に話して、それでさよならに決まってるもん」

 

ののかもある程度は帆奈との付き合い方は心得ているつもりだった。

 

「見滝原とかいう街にいるアンタらの同種が神浜に攻めてくるかもよ」

 

「そう・・・”需要と供給の関係”が理由かしら?」

 

あの街にはヒロインが数人しかいないのだ。

それで、今になってヒロインがたっぷりの神浜に目をつけたのかもしれない。

 

「アンタらの考えることなんて意味不明だから、あたしに聞かないでよ」

 

「それもそうね。まあ、鎮圧くらいは簡単よ」

 

「ははっ・・・大した自信だね!」

 

「こちとらワルプルギスの夜に打ち勝ったのよ。犠牲が多すぎたけど」

 

「それもそうだね!じゃあ、帰るよ」

 

「その前に秋山くんの遺言、聞いてくれる?」

 

「いいよー、紅茶マズかったど、それくらいはいいかな」

 

「”帆奈、君のことを待ってる”・・・彼は多分、転生しないわ」

 

「ほんっと、アイツって馬鹿だね」

 

「墓は北養区の山中にあるから、見つからないように墓参りしなさい」

 

「はーい」

 

後日、帆奈は言われたとおりにこっそりと墓を訪れた。

そこには菊の花も供えられていた。

 

「・・・聡、アンタって本当に馬鹿だね~。

あたしみたいなのにいちいち構って、時間を無駄にして・・・。

その挙句に、あのおっかない魔女に殺されるだなんてね。

・・・あれ、雨なんて降ってたっけ?」

 

頬が濡れた感覚がした。それは彼女の目から流れ落ちた涙だった。

 

「・・・アンタ、本当に馬鹿だね。私なんて待たずに転生していいよ。

あたしみたいなのに構わないでさ、もっといい人生を送ってよ」

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