ARIA The PIACERE 3 その素敵な出会いの先に 作:neo venetiatti
「そんなことがあったの?フフフフ」
「アサカさん、ご存知なんですか?」
アサカは改めて、娘のアンナの結婚のことで、ARIAカンパニーを訪ねていた。
「アラトリアは、私がお世話になっている方のお孫さんで、小さい頃からよく知っているの」
「そうだったんですか」
「彼女は、思ったら行動に移さないと、いてもたってもいられない性分で。その事が時として周りの誤解を生んでしまうこともあるんだけど、決して悪意はないのよ」
アサカは何かを思い出すような、穏やかな笑みをたたえた。
「ただ、今回はちょっとやり過ぎたかもね」
そういって、今度は困ったような苦笑いの表情を灯里に向けた。
灯里は、そんなアサカの話を、やさしい笑みを浮かべて聞いていた。
「なんか、アリスちゃんのためならということだったらしいです」
「オレンジぷらねっとのアリスさんね?私も聞いてる、そのはなし」
「ストーカーとかなんとか・・・」
「えっ?ストーカー?」
「私も最近そんな人に会ってたような、ないような・・・」
「灯里さん、大丈夫?」
「ああ~~私は~~大丈夫なんですぅ~~」
「そうなの?それならそれでいいのだけど」
「ただですね」
「ただ、ナニ?」
「ただ、話がですね、私の予想を越えて、ちょっと大きくなってきてしまったような・・・」
「どういうこと?」
「その、アリスちゃんがティンカーベルで魔法の粉をかける予定だったアンドレさんも、サン・ジョルジョ・マッジョーレ教会の存在を知って、それなら自分たちもそこで結婚式を挙げられないかって。そんな話になったようなんです」
「そうなんだ」
「ただそれには、そのアラトリアさんという方が、それはいいんじゃないかと、かなりプッシュされたということのようで」
「ああ、なるほど。アラトリアね」
アサカは、腕組をして、う~んとうなるように目を閉じた。
だが、軽く微笑むと、ふっと息を吐いた。
「彼女は彼女で、罪悪感を感じてるんだと思う。それに、アリスさんの信頼を損なったことは、アラトリアにとって、本当に落ち込むような出来事だったと思うの。あの子、ああ見えて、根は純粋だから」
「はあ」
「ちょっとね、伝わりづらいところがあるのよ」
「そうなんですか」
「そうなの。大目に見てやってくれない?」
「いえ、私は、まだ、そんなに存じ上げていないので」
「そうね。でも多分だけど、これからあるかもしれないので」
「ええ~!どういうことがあるんですか?」
「フフフフ。冗談よ、灯里さん!」
「アサカさ~~ん」
「それで灯里さんとしては、どう考えてるの?」
「それなんです」
灯里はちょっと難しそうな表情でアサカの顔を見た。
「最初は、このネオ・ヴェネツィアで結婚式だなんて、とても素敵なことだと思っていたんです。でもまさか、こんなふうに、続けて結婚式の話が出てくるなんて、考えもしなくて」
「それはそうでしょうね。私も話を聞いていて、そんな珍しいことがあるんだなって思った。灯里さんが困惑するのも無理もないと思う。ただ・・・」
「なんですか、アサカさん?」
「なんか、もう、答えが出てるような気もするんだけど」
「どういうことですか?」
「これまでの話、全て灯里さんがその中心にいるように、私には見える」
「私が?」
「そうじゃない?」
「ただの偶然かと・・・」
「こんなにも続く偶然てあるの?それってもう、必然といってもいいんじゃない?」
「必然・・・」
「そう。起こるべくして起こった、といったら言い過ぎかしら」
「でもアサカさん?さっき、答えが出てるって言ってましたけど、それってどういうことですか?」
「すべては灯里さんを指し示しているとしたら、灯里さんが思うことを、そのままやればいいんじゃないかってこと」
「私が思うこと」
「灯里さんが描いていた風景は、どんな風景なの?」
灯里はアサカの問いかけに、キョトンとした表情でアサカの顔を見返していた。
「その風景を、私にも見せてくれない?」
午後からの予約客のことを聞いたアサカは、ARIAカンパニーをあとにすることにした。
灯里の困った顔に対して、どんな結果になっても、アンナなら理解してくれるはずだと、灯里を安心させようと言葉をかけて店を出てきた。
そして、桟橋を渡ったところで振り返った。
明るい日射しの下、ARIAカンパニーは、いつもと変わらない姿をしていた。
その光景を見たアサカは、ARIAカンパニーが、これまでも、そしてこれからも、変わらずにARIAカンパニーであり続けていくのだろうと感じずにはいられなかった。
その時だった。
「あの、失礼ですが」
アサカは、不意に背後から声をかけられ、驚いて振り返った。
「あの、もしかして・・・」
目の前に現れたその女性は、かけていたメガネをはずしながら、アサカに改めて視線を向けた。
その、一層磨きがかった美貌と、落ち着いた物腰、眩しさに目を細める表情の中にたたえた優しさは、見るものを魅了せずにはいられない輝きを放っていた。