ARIA The PIACERE 3 その素敵な出会いの先に   作:neo venetiatti

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第27話

サン・マルコ広場の目の前にある船着き場には、3艘のゴンドラが係留されていた。

他のゴンドラの姿はなく、その様子はまるで、その3艘のゴンドラのために用意されたような光景だった。

しかも、普段一般客用に係留されているものでなく、特別な装飾を施したプリマ・ウンディーネ専用のゴンドラだったため、誰もが目を引く光景になっていた。

そして、その船着き場の側には、三人のウンディーネが並んで立っている。

それぞれ、違う会社の制服を着ていた。

そのことが、一層周りの興味を惹き付ける理由となっていた。

「あのさぁ、さっきからジロジロ見られてるような感じがするんだけど」

「藍華先輩?見られてるようなではなく、はっきりと注目を浴びています」

「でも、なんかドキドキするねぇ~」

「それにさっきから気になってんだけど。あそこの人だかりは、なに?」

「ほんとだねぇ。なんだろう~」

「あ、あれは、おそらく・・・」

「後輩ちゃん?なんか知ってるの?」

「多分なんですが、プロポーズの儀式かと」

「何それ?そんなの、やることになってたの?」

「確か、そんなような・・・」

「灯里、聞いてた?」

「わたし、聞いてないよ」

その時、その人だかりを掻き分けて、ひとりの少女が飛び出してきた。

「アリス様~~!おはようございます~~~!」

「明らかに後輩ちゃんを呼んでるわよね。誰?」

「えっと、あの人はですね・・・」

「アラトリアさんでしょ?あの人」

「灯里、知ってる人?」

「ほら、アリスちゃんの大ファンだっていう人」

「じゃあ、あの子がお嬢様でストーカーだってわけ?」

アラトリアは三人の前までやって来ると、息を弾ませ、そしてアリスの方に顔を向けた。

「アリス様、本日はお日柄もよく、好天に恵まれ、このような良き日を迎えることができ、本当に良かったですわ!」

「そうですね。それは何よりで」

「はい!」

「後輩ちゃん、なんかやる気なさそうなんだけど」

藍華が不思議そうにしている横で、アリスは、なぜかばつの悪そうな顔をしていた。

「それにしても、せっかくの結婚式なのに、あんなところで騒がれちゃ台無しよねぇ」

「藍華様?」

「わ、わたし?」

「ええ、もちろんですわ。それに灯里様」

「ええ~!私も何かあるの?」

「この度の合同結婚式に、わたくしも協力させていただける機会をいただいたこと、本当に感謝いたしておりますの」

「協力?」

「ええ、そうでございますわ」

「協力って、何?」

「プロポーズですわ!」

「ちょっと、後輩ちゃん?どういうこと?」

「ああ~~!だから賛成しなかったのにぃ~!」

「アリス様?今さら何をおっしゃっておいでで?」

「どういうことよ?」

「つまりですね、この船着き場付近をお借りして、プロポーズの儀式を行うということで」

「どうせなら、盛大に行いましょうとなった次第ですわ。藍華様?」

「誰がそんなことを?」

「もちろん、アリス様とわたくしの案でございます!」

「アリスちゃん、素敵なアイデアだねぇ~」

「灯里様!そう言っていただけると思っておりました!」

「でも、もうひとりの発案者は、あまり乗り気ではないように見えるけども」

アリスは、その場で思いっきりため息をついた。

「アンドレさんの件は、これまでの経緯もありますし、絶対結婚式を実現しないと、と言ったんです。だからそれについては、私の方も協力するつもりだとは言いました」

「言ったのね?」

「確かに言いました!でもこんな派手な演出を頼んだわけではありません!第一、結婚式は、あのサン・ジョルジョ・マッジョーレ教会で行うわけですから」

「でもこれからここでプロポーズをするんでしょ?アリスちゃん!素敵なアイデアだと思うよ!」

「灯里さぁ、あんたは本当に、そうやってマイペースで生きてくのね。わかってたことだけども」

「なんか、へん?」

「三組の合同結婚式をサン・ジョルジョ・マッジョーレ教会で行うっていうだけでも、派手なことだと思うけど。こんな形で注目を集めてさぁ、悪目立ちしちゃってる ってことないの?」

「その辺は大丈夫でございますの、藍華様?」

「なんで大丈夫なの?」

「そこはちゃんと、ネオ・ヴェネツィア行政区より許可をいただいておりますので」

「許可?そんなのが下りんの?」

「はい!」

「一般の人よねぇ?今日結婚する人たちって」

「あのぉ、藍華先輩?時間がかかりそうなので、その辺はおいおいと、ということで」

「もういいわ。詳しいことは後で聞くから。それよりも、また人の数が増えてんじゃないの?」

「ほんとですわ!こんなことをしている場合ではありませんわ!」

アラトリアは勢いよく、走り去っていった。

 

 

「じゃあ、私たちはしばらくここで待ってるってこと?」

「まあ、そんな、感じで」

「はぁ~そうですか・・・ん?」

カメラを持ったひとりの男性が、海の方にカメラを向けていたかと思うと、そのカメラを藍華たち三人の方に向けてシャッターを切り出した。

バシャッバシャッバシャッ

「ちょっと、そこの人?さっきからバシャッバシャッって、何勝手に撮ってんの?」

「あっ、ウンディーネさん!お久し振りです!」

「あ、あんた!あのストーカー男!」

「あの時はお世話になりました!」

「お世話って、いったいどういう・・・」

そのタキシード姿の男は、藍華の前を通りすぎると、灯里の前で立ち止まり、感激した表情で灯里の両手を握った。

「はひっ!」

「ぬな?」

「おおー」

「何が〈おおー〉なのよ、後輩ちゃん?」

「もしかして、灯里先輩もプロポーズだったんですか?」

「お世話になりましたっていうプロポーズが、いったいどこにあんの?」

「私がプロポーズの一番目なの?」

「ああ~~!わけがわからん!」

 

「専属カメラマン?」

「はい!今回の合同結婚式のカメラマンに任命していただきました!」

「ちょっと待って。そんなのさぁ、任命するとかしないとか、そもそも誰がそんな許可を出せるわけ?」

「そうですよ。そもそも結婚式を行うことが決まってるだけで、主催者がいるとか、そんな話はないはずですよ」

「アラトリアさんという方ですけど」

その場の三人が、一瞬凍ったかのように動きが止まった。

「後輩ちゃん」

「アリスちゃん」

「し、知りませんよ!そんな、ふたりして見ないでください!」

アリスは必死の表情で否定した。

「大丈夫です!任せておいて下さい!バッチリいいのを撮りますよ!」

藍華は横目でジロリと、その男を見た。

その前で、固く手を握る男の満面の笑顔を見ながら、灯里は苦笑していた。

「あんた!いつまで手を握ってるの!」

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